内定を取り消されたら損害賠償請求は可能?|違法性や裁判例を解説

内定を取り消されたら損害賠償請求は可能?|違法性や裁判例を解説

せっかく希望の会社に就職が決まったのにもかかわらず、突然、内定取り消しを受けて途方に暮れている方はおられるのではないでしょうか。

近年、会社の内定取り消しが増加する要因の一つとして、新型コロナウイルスの蔓延等による会社の収益悪化・業績不振が挙げられます。

新型コロナウィルスの蔓延によって事業環境が大きく変容することで、多くの会社が苦しい経営状況に陥り、やむを得ず、内定取り消しを行った会社は少なくないと思われます。

しかし、労働者にとって、内定取り消しは、人生設計に大きな影響を及ぼす可能性がある事態です。

また、労働者にとって、一度決まった内定が取り消されることは、就職・転職活動を一からやり直さなければならなくなり、大変な苦労を生じさせるものです。

そこで、会社の違法な内定取り消しを無効にすることができたり、違法な内定取り消しに対する損害賠償請求をおこなったりできる場合があります。

内定を取り消された場合、違法な内定取り消しの無効や損害賠償請求について弁護士に相談し、会社との交渉をしっかり進める必要があります。

この記事では、内定取り消しが違法になるケース・認められるケース、内定取り消しの損害賠償の相場、内定取り消しの裁判例や内定取り消しによる損害賠償請求を弁護士に依頼するメリットなどについて解説します。

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この記事を監修した弁護士
玉真聡志
玉真 聡志弁護士(たま法律事務所)

中央大学大学院法務研究科卒業。埼玉県内の法律事務所に入所後、千葉県内の法律事務所へ移籍。たま法律事務所を平成30年9月に松戸駅近くで開所。迅速・丁寧・的確な対応をモットーにしている。

内定取り消しが違法になるケース

労働契約とは、会社から雇用されて賃金を受け取る契約を指します。

会社から内定が出たときに、会社と内定者の間に労働契約(始期付・解約留保権付)が成立し、内定者は労働者になるので、内定後の内定取り消しには、労働契約法に従って正当な理由がない限り、違法無効となります。

会社が行った正当な理由のない一方的な内定の取り消しは、労働契約法に違反し無効となる可能性が高いでしょう。

なお、会社側による内定取り消しが有効とされるケースは以下の場合が挙げられます。

  • 会社が採用内定を出した時、会社が全く知り得なかった業務に支障を生じさせる事実が内定者に有ることが発覚した場合
  • 内定の取り消しに客観的合理的な理由(正当な理由)があって、その処分も相当性が有る場合(一般常識に照らして相当といえる場合)

内定取り消しが認められるケース

それでは、どのようなケースで内定取り消しが認められたでしょうか。内定取り消しが認められるケースは、おもに以下の場合です。

  • 内定者側が経歴を詐称した場合
  • 内定者が、内定後、会社が入社時に求める条件を満たさなくなった場合
  • 内定者が入社前に重大な傷害を負う等して業務を遂行できなくなった場合
  • 会社側が整理解雇を行う場合

これらのケースの場合、内定取り消しが無効であると判断される可能性は低いでしょう。

そのため、内定者はこれらの事由を行わない様十分注意して、就職・転職活動をおこなう必要があります。

内定者側の経歴詐称

内定者の経歴詐称が発覚した場合、内定が取り消される場合が有ります。この場合の内定取り消しは有効と判断される可能性が高いです。

内定者の経歴は、会社側がスキルや適性を判断するうえで非常に重要な事実であるため、内定者が虚偽の経歴を申告した場合、内定者のスキルや適性に問題ありとして、会社が内定を取り消すことが有効とされるケースはあります。

内定者が入社条件を満たさなかった場合

内定者が、内定後、入社時に会社が求める条件を満たさなくなった場合も同様です。

内定者が会社から内定を受けたときに学生だった場合、入社時に学校を卒業していることが前提です。

しかし、内定者が万が一卒業できなかった場合、内定者は大学に通学するため会社の業務に専念するのが難しくなることから、内定取り消しは有効とされる可能性が高いです。

また、内定の条件が一定の資格の取得を必要とする場合、試験に落ちる等して資格を得られなかったことで内定取り消しが認められるケースはあります。

この場合、内定者が入社条件を満たさない事情を踏まえ、会社が内定を取り消す正当な理由があるとして、内定取り消しが有効とされることが多いです。

内定者が重大な傷害を負う等して業務を遂行できなくなった場合

内定者が入社前に重大な傷害を負う等して業務を遂行できなくなった場合も、内定取り消しが認められる可能性があります。

これは、内定者が自身の労働能力を会社に提供できなくなるためです。

内定者が入社前に重大な傷害を負って業務を遂行できなくなることは、会社にとっても想定外の事態ですし、業務遂行ができない以上、労働契約に基づき提供されるべき労務を提供できないことになります。

そのため、内定者が入社前に重大な傷害を負うことは、会社側の内定取り消しの正当な理由として認められる場合もあります。

ただ、その傷害が、会社に入社した後の業務に支障を生じさせないと見込まれる場合、内定の取り消しは違法無効とされる場合が多いです。

会社側が整理解雇をおこなう場合

会社の事業環境の悪化によって整理解雇をおこなう場合など、会社都合により内定取り消しが行われる場合があります。

会社が内定を出した後で、経営環境が悪化して、整理解雇いわゆるリストラが必要となった場合、業績を回復させる手段の一つとして、内定者に対する内定取り消しが行われる場合が有ります。

会社側が、従業員の整理解雇を行わなければならないほど経営環境が悪化している状況でも、

  1. 人員を削減する必要性
  2. 内定取り消しを回避する努力が尽くされた
  3. 内定を取り消される者の人選が適切かつ合理的である
  4. 内定を取り消される者と十分協議したこと等の会社側の事情が認められる

上記の場合、内定者に対する内定取り消しが認められる場合が有ります。

近年、新型コロナウイルス症の感染拡大により、経営環境が急激に悪化している会社は増えているとのことです。

そこで、会社の経営状況を確認しつつ、慎重に就職・転職活動をおこなう必要は有ると思われます。

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内定取り消しによる損害賠償(賃金相当損害金)の相場

内定取り消しの場合、内定者の状況によって異なりますが、賃金のおおよそ3ヶ月分を損害賠償金として支払うこととされた裁判例があります。

ただ、内定の段階では、内定者は会社での業務をまだおこなっていないため、一般労働者の解雇事例より、損害賠償金の額が低くなる場合は多いです。

もっとも、内定を取り消されたときには、損害賠償請求を見越して会社との話し合いを進めることをおすすめします。

内定取り消しの裁判事例

実際に、内定取り消しによって裁判になった事例があります。ここでは、その一部をご紹介します。

中途採用予定の内定者の性格や評判に問題が有るとして内定を取り消した会社がありました。

この内定者は、内定を得たことで他社からの内定を断る等身辺整理をしていたことを理由として、100万円の損害賠償金が認められました。

内定取り消しによる損害賠償請求を弁護士に依頼するメリット

内定取り消しによる損害賠償請求を弁護士に依頼するメリットは、おもに以下の2つです。

  • やり取りや手続きを一任できる
  • 適切な金額での請求が可能

内定取り消しの違法無効を主張し、会社への入社を試みたり、違法な内定取り消しを理由とする損害賠償請求の手続きを自分だけで進めるのはなかなか難しいです。

そのため、これらの法的手続をおこなう場合、早めに弁護士へ相談・依頼されることをお勧めします。弁護士に依頼し、有利に会社との話し合いを進める方がよいでしょう。

やり取りや手続きを一任できる

弁護士に依頼することで、会社とのやり取りや法的手続を一任できます。内定取り消しといっても、内定者のご状況により、取るべき手続やその進め方は異なります。

会社が応じない場合には裁判に発展する可能性もあるため、その場合の手続はより複雑になります。

早い段階で弁護士に損害賠償請求を代理してもらうことで、会社との話し合いをスムーズに進められます。

適切な金額での請求が可能

違法な内定取り消しについて、弁護士に依頼することで適切な金額で損害賠償請求を行うことが可能です。

会社側から内定者にとって有利な和解条件を提示されているのにもかかわらず、法的知識がなかったことで有利な和解条件を断ってしまったケースはあります。

また、損害賠償請求をする場合、内容証明の作成では専門的な知識が必要です。

損害賠償の交渉で損しないためにも、早急に弁護士への依頼を検討し、手続を進めたほうがよいでしょう。

違法な内定取り消しによる損害賠償請求は弁護士に相談

違法な内定取り消しによる損害賠償請求は、できる限り早く弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談することで、損害賠償金の計算や内容証明、訴状等の会社に対する書類の作成まで一括で任せることができます。

内定取り消しが違法か合法かはケースによって異なり、一概に判断できません。

また、自分だけで会社とやり取りするのは大変なので、早い段階で弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼することで、会社側の都合に流されず、自身に有利に話し合いを進められます。

違法な内定取り消しによる損害賠償請求について、適切な金額で会社と和解を行うためにも、早めに弁護士へ相談してください。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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