死亡事故
死亡事故の慰謝料はいくら?|弁護士に依頼したときの費用相場やメリットも紹介
2023.05.29
死亡事故によって、被害者が将来にわたって得られた収入や機会の損失、遺族の喪失感には計り知れないものがあります。
遺族は賠償金を請求できますが、示談交渉によって変わるため、弁護士のサポートが欠かせません。
しかし、初めて弁護士に依頼するときは、以下のような疑問も生じるでしょう。
本記事では、死亡事故を弁護士に解決してもらうメリットや賠償金の内訳、弁護士費用の相場、節約方法などをわかりやすく解説していきます。
死亡事故の遺族は賠償金を請求できますが、自分で示談交渉すると、加害者側の保険会社に低額回答されたり、請求漏れが生じたりするので注意が必要です。
賠償金には以下の種類があるので、算定基準を理解しておくとよいでしょう。
死亡慰謝料とは、被害者本人と遺族の精神的苦痛を慰めるお金です。
死亡慰謝料には自賠責保険と任意保険、弁護士それぞれの算定基準があり、任意保険の算定基準は非公開ですが、自賠責と弁護士基準は以下のように死亡慰謝料を計算します。
自賠責基準 | 弁護士基準 |
・被害者本人の死亡慰謝料:400万円 ・慰謝料の請求者が1人:550万円 ・慰謝料の請求者が2人:650万円 ・慰謝料の請求者が3人以上:750万円 ・被害者に被扶養者がいる場合:上記に200万円を加算 | ・被害者が一家の支柱だった場合:2,800万円 ・母親、配偶者の場合:2,500万円 ・その他:2,000万~2,500万円 |
自賠責基準の場合、被害者に配偶者と未成年の子どもが1人いたとして、どちらも被扶養者であれば、死亡慰謝料は以下のようになります。
一方、弁護士基準の場合、一家の支柱が亡くなると死亡慰謝料は2,800万円になるため、遺族の補償は大きく変わります。
弁護士は「誰が亡くなったか」を基準にしますが、自賠責保険は「遺族の人数」なので、手厚い補償は弁護士基準といえるでしょう。
死亡事故の遺族には死亡慰謝料以外の補償もあるので、以下の損害賠償金を加害者側の保険会社に請求できます。
請求漏れがないように、葬儀費用などの領収書は必ず保管しておきましょう。
死亡逸失利益とは、被害者が生きていれば得られたであろう将来的な収入です。
計算式は上記のようになっており、被害者が亡くなる前の収入や、あと何年就労できたかが考慮されています。
遺体の処置費用も賠償金に含まれるので、以下の費用を病院や葬儀会社に支払ったときは、加害者側の保険会社に請求してください。
なお、死因究明を目的として行政解剖がおこなわれる場合、地域によっては検案料や解剖料、死体検案書の発行手数料が遺族負担になります。
被害者の葬儀費用も損害賠償請求の対象になっており、自賠責保険からは原則として100万円まで補償されます。
ただし、社会通念上の必要性が認められるときは、日本弁護士会連合会の基準に従い、以下のように170万円程度まで請求できるケースもあります。
四十九日法要にかかった費用や、仏壇・仏具・墓石などの購入費についても、死亡事故がなければ発生しなかったため、損害賠償請求の対象になります。
交通事故からしばらく経って被害者が亡くなられた場合、以下の費用も加害者側の保険会社に請求できます。
入院慰謝料は被害者本人への補償となり、自賠責基準と任意保険基準、弁護士基準ではそれぞれ以下のように金額が異なります。
入院期間 | 自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
軽度 | 重度 | |||
1ヵ月 | 12万9,000円 | 12万6,000円 | 35万円 | 53万円 |
2ヵ月 | 25万8,000円 | 25万2,000円 | 66万円 | 101万円 |
3ヵ月 | 38万7,000円 | 37万8,000円 | 92万円 | 145万円 |
4ヵ月 | 51万6,000円 | 47万9,000円 | 116万円 | 184万円 |
5ヵ月 | 64万5,000円 | 56万7,000円 | 135万円 | 217万円 |
6ヵ月 | 77万4,000円 | 64万3,000円 | 152万円 | 244万円 |
弁護士基準は自賠責や任意保険の2倍以上になるケースもあるので、入院慰謝料は弁護士に算定してもらうべきでしょう。
死亡事故の慰謝料は過失割合に影響されるため、被害者に落ち度がない、または軽微な落ち度であったことを立証できれば、大幅に増額されるケースがあります。
ベンナビ交通事故には以下のような増額事例が掲載されているので、保険会社が提示した慰謝料に納得できない方は、過失割合や弁護活動の重要性を参考にしてください。
以下の死亡事故は過失割合が争点となり、保険会社の提示額は0円だったところ、za 弁護士の介入によって慰謝料を含む賠償金増額に成功した事例です。
センターラインのないカーブで車同士が衝突した事故ですが、加害者側は過失がないことを主張し、慰謝料の提示額も0円でした。
遺族からの依頼で弁護士が介入し、交通事故調査会社が双方の車両の走行軌跡を解析した結果、加害者8・被害者2の過失割合になり、裁判上の和解となった事例です。
【参考】加害者側の過失0の主張に対して、過失割合8対2で裁判上の和解をし、4800万円の支払いを受けた事例
被害者が信号待ちでバイクを停車していたところ、後方のダンプカーが被害者に気付かないまま発進したため、追突によって被害者が亡くなった死亡事故です。
加害者の主張は「被害者のバイクがすり抜けようとした」でしたが、事故直前まで動いていなかったことをドライブレコーダーの映像で立証した事例です。
弁護活動により被害者の無過失は証明されましたが、遺族が諦めなかったことも大きな要因といえるでしょう。
死亡事故の無念を晴らしたい方や、十分な遺族補償を獲得したい方は、以下の条件に該当する弁護士を選んでください。
1つでも多く当てはまる弁護士であれば、納得できる形で死亡事故を解決してくれます。
弁護士にはそれぞれ注力分野があるので、交通事故の解決実績が豊富な弁護士に依頼しておけば、死亡事故にも適切に対処してくれます。
死亡事故の解決には専門知識が必要となり、場合によっては医学的な知識も求められますが、経験豊富な弁護士はどちらも兼ね備えています。
慰謝料の提示額が低いときは正当な理由で反論し、遺族にとって必要な賠償金を獲得してくれるでしょう。
死亡事故の解決を依頼したいときは、交通事故の専門書を監修している弁護士を選んでみましょう。
専門書を監修している弁護士であれば、死亡事故の原因を正確に分析し、適正な過失割合や慰謝料を計算してくれます。
交通事故を裁判で争う場合でも、裁判官が納得する理論展開や、重要証拠の提示により、有利な展開にしてくれるでしょう。
交通事故の専門書は大型書店や通販サイトが扱っているので、専門家向けの実務書などを監修している弁護士を探してください。
弁護士費用は各弁護士が自由に設定できるので、法律事務所によって料金体系が異なります。
よく知られている弁護士費用は着手金と報酬金ですが、実費や日当も発生し、訴訟を起こすときは裁判費用も必要です。
各費用の算出根拠や、請求タイミングなどもわかりやすく説明してくれる弁護士であれば、支払いトラブルは発生しないでしょう。
死亡事故の解決を依頼するときは、土日や夜間でも相談できる弁護士を選んでください。
土日も対応している弁護士の場合、平日の仕事が忙しく、退社時刻が遅い方でも死亡事故の解決を依頼できます。
また、夜間にも対応している弁護士であれば、勤務形態が変則的な方でも出社前や退社後に相談できるでしょう。
ベンナビ交通事故で検索すると、電話やメールで予約すると早朝や深夜でも相談に応じてくれる弁護士がいるので、ぜひ活用してください。
死亡事故の解決を弁護士に任せたい方は、必ず相性をチェックしてください。
死亡事故の原因調査や証拠収集には時間がかかるため、弁護士との付き合いも長くなります。
交通事故裁判を起こすと判決までに1~2年かかる場合もあるので、弁護士との相性はかなり重要です。
まず無料相談を活用して弁護士と面談し、人柄や相性をよくみておくとよいでしょう。
死亡事故を弁護士に解決してもらう場合、着手金や報酬金などの弁護士費用がかかります。
現在の弁護士費用に統一基準はありませんが、2004年4月廃止の旧報酬規程をベースにしている弁護士が多いので、一般的には以下のような費用相場になるでしょう。
弁護士の法律相談料は30分で5,500円、1時間で1万1,000円程度が一般的な相場です。
初回の相談を無料にしている弁護士や、交通事故の被害者や遺族に限り、何回でも無料相談できる弁護士もいるので、ベンナビ交通事故で検索してみましょう。
着手金は「依頼者が獲得できる経済的利益×○%」の計算方法になっており、以下のように設定されています。
着手金は委任契約の際に支払うので、不足がないように準備してください。
【参考】交通事故で弁護士に依頼するといくら?弁護士費用相場と弁護士費用特約のメリット
報酬金の計算方法も「依頼者が獲得できる経済的利益×○%」になっており、経済的利益に応じて以下のように設定されています。
報酬金は弁護士の成果報酬になるため、死亡事故の解決が不成功に終わったときは発生しません。
実費には通信費や交通費、出張旅費や訴訟時の印紙代などが含まれます。
コピー代なども実費に含まれるので、契約前に内訳をよく確認しておきましょう。
また、日当は1時間1万円程度が相場になっており、弁護士が法律事務所以外で活動する際に発生します。
実費と日当は発生の都度請求されることが多いので、請求タイミングも必ず確認してください。
弁護士費用特約や弁護士保険に加入している場合、以下の弁護士費用が保険会社負担になります。
弁護士費用得特約は自動車保険などの付帯契約になっており、弁護士保険は単独契約が一般的です。
死亡事故を含む交通事故の解決であれば、弁護士費用の自己負担はほぼないでしょう。
弁護士費用特約と弁護士保険は家族を補償するタイプが多いので、被害者が未加入でも1親等内の家族が加入していれば、無料で弁護士に依頼できる場合があります。
今後加入される方や、乗り換えを検討していらっしゃる方は、ベンナビ弁護士保険を検討してみるとよいでしょう。
また、法テラスの民事扶助法律制度を利用すると、30分×3回までの無料相談と弁護士費用の立替払いに応じてもらえます。
ただし、収入や資産が一定額以下である必要があり、弁護士も選べないので注意してください。
死亡事故の解決を弁護士に依頼すると、以下のメリットがあります。
死亡事故は被害者の証言を得られないため、加害者の主張が通りやすくなってしまいます。
弁護士に依頼すると重要証拠を集め、矛盾を見抜いてくれるので、不当な過失割合を提示されても十分に対抗できるでしょう。
死亡事故を裁判で争う場合でも、代理人として被害者や遺族のために闘ってくれます。
亡くなられた家族の無念を晴らしたい方は、弁護士に任せて十分な遺族補償を獲得してください。
また、交通事故裁判に勝訴すると、弁護士費用の10%程度が加害者負担になる可能性もあります。
死亡事故は被害者が亡くなっており、事故の発生後はすべて遺族が対応するため、わからないことが連続します。
死亡事故に関するQ&Aをまとめてみましたので、家族を失くされた方は以下を参考にしてください。
警察は遺族からも遺族調書を取ります。
本来は加害者と被害者から事故の状況を聴き取り、供述調書を作成しますが、死亡事故の場合は、被害者の生前の様子や遺族の処罰感情を聴き取り、遺族調書が作成されます。
事故の直後で混乱しているかもしれませんが、率直な気持ちを警察に伝えてください。
四十九日を過ぎた後に保険会社から打診されますが、まず弁護士に相談してください。
加害者が刑事事件で裁かれる場合、すでに示談が成立していると、遺族に処罰感情がないものと判断されるため、不起訴や軽い刑罰になる可能性があります。
保険会社から示談交渉を持ちかけられたときは、弁護士に開始時期をアドバイスしてもらいましょう。
ひとまず弁護士に相談してください。
香典や見舞金には量刑を軽くする目的が考えられるので、受け取ったために加害者が不起訴となり、賠償金も低くなる可能性があります。
加害者が自宅を訪ねてきたときは一旦断り、すぐに弁護士へ連絡しておきましょう。
税金はかからないので安心してください。
加害者側からの損害賠償は原則として非課税なので、申告や納税は不要です。
ただし、被害者が生命保険に加入しており、死亡保険金を受け取ったときは、契約形態に応じて相続税や贈与税、所得税のいずれかが課税される場合があります。
受取人に死亡保険金が支払われたときは、弁護士に相談しておくとよいでしょう。
死亡事故は遺族の精神的ダメージが大きい中で、さらに葬儀や法要、相続手続きなども発生します。
しかし、亡くなった方の無念は遺族しか晴らせないため、加害者には十分な賠償金を請求する必要があります。
死亡事故を納得できる形で解決したいときは、まず弁護士に相談してください。