死亡事故によって被害者が命を失ってしまい、被害者遺族の喪失感としては計り知れないものがあるでしょう。
遺族は加害者側に対して損害賠償金を請求できますが、示談交渉の進め方によって獲得金額は変わり、できるだけ納得のいく額を受け取るためには弁護士のサポートが欠かせません。
しかし、初めて弁護士に依頼する場合、以下のような疑問が生じるでしょう。
- 死亡事故の対応を弁護士に依頼するメリットは何?
- 死亡事故の解決を依頼する際の弁護士費用の相場はいくら?
- 弁護士費用を安くする方法はある?
- 死亡事故ではどのような弁護士に依頼するべき?
本記事では、死亡事故を弁護士に解決してもらうメリットや弁護士費用の相場、弁護士費用を抑える方法や弁護士の選び方などを解説します。

死亡事故で弁護士に依頼するメリット
死亡事故が起きた場合に弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
- 示談金が増額する可能性が高い
- 加害者や相手保険会社とのやり取りを一任できる
- スムーズな示談成立が望める
ここでは、それぞれのメリットについて解説します。
示談金が増額する可能性が高い
死亡事故の場合、被害者側の証言を得られないため加害者側の主張が通りやすく、被害状況に見合った額の賠償金が受け取れないおそれもあります。
弁護士に依頼すれば、証拠などを集めて相手側の主張に的確に対応してくれるため、不当な過失割合などを提示された場合も十分に対抗できるでしょう。
また、弁護士に依頼すれば「弁護士基準」という計算基準を用いて慰謝料請求などをしてくれて、当初の提示額よりも2倍以上増額できることもあります。
加害者や相手保険会社とのやり取りを一任できる
突然の交通事故によって家族を失い、遺族としては十分に事故対応できるような状態ではない方もいるでしょう。
弁護士は、代理人として示談交渉などの事故後手続きを一任できます。
示談交渉がうまくいかずに裁判に移行する場合も引き続き対応してくれて、事故対応にかかる負担を大きく軽減できます。
スムーズな示談成立が望める
交通事故の示談交渉では、示談金や過失割合などの主張がぶつかってしまって難航する場合もあります。
弁護士であれば、事故で生じた損害を算定したうえで損害賠償請求してくれたり、裁判例を用いて過失割合を主張してくれたりするなど、交渉ノウハウや法律知識などを活かして対応してくれます。
弁護士に依頼することで、弁護士無しで対応するよりもスムーズかつ納得のいく形での示談成立が望めます。
死亡事故でかかる弁護士費用
死亡事故を弁護士に解決してもらう場合、着手金や報酬金などの弁護士費用がかかります。
ただし、弁護士費用は法律事務所や依頼内容などによってもバラつきがあるため、正確な金額を知りたい方は直接事務所に確認しましょう。
ここでは、2004年3月まで用いられていた「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」をベースに解説します。
弁護士費用の内訳・相場
弁護士費用は、法律相談料・着手金・成功報酬・日当・実費などに分けられます。
各項目の相場は以下のとおりです。
相談料|30分あたり5,000円~1万円程度
弁護士との相談料は「30分あたり5,000円~1万円程度」が相場です。
なお、初回相談無料の弁護士事務所や、交通事故被害者・被害者遺族を対象に何回でも無料相談できる弁護士などもいます。
当社が運営する「ベンナビ交通事故」では、交通事故トラブルが得意な全国の弁護士を掲載しているので、まずは相談先を探してみましょう。
着手金|経済的利益によって異なる
基本的に着手金は「依頼者の経済的利益の○%」という計算方法になっており、以下のように設定されています。
- 経済的利益が300万円以下の場合:経済的利益の8%
- 300万円超~3,000万円以下の場合:経済的利益の5%+9万円
- 3,000万円超~3億円以下の場合:経済的利益の3%+69万円
- 3億円超の場合:経済的利益の2%+369万円
着手金は依頼時点で支払う必要があるため、不足がないように準備してください。
なお、なかには着手金0円プランを設定している弁護士事務所などもあり、すぐには弁護士費用を準備できない場合などにはおすすめです。
【関連記事】交通事故で弁護士に依頼するといくら?弁護士費用相場と弁護士費用特約のメリット
報酬金|経済的利益によって異なる
基本的に報酬金も「依頼者の獲得した経済的利益の○%」という計算方法になっており、以下のように設定されています。
- 経済的利益が300万円以下の場合:経済的利益の16%
- 300万円超~3,000万円以下の場合:経済的利益の10%+18万円
- 3,000万円超~3億円以下の場合:経済的利益の6%+138万円
- 3億円超の場合:経済的利益の4%+738万円
なお、報酬金は「弁護士に依頼して成功した場合に発生する費用」であり、死亡事故の解決が不成功に終わった場合は発生しません。
日当|1日あたり5万円~10万円程度
日当とは「弁護士が事務所を離れて活動する場合に発生する費用」です。
日当の相場としては「1日あたり5万円~10万円程度」です。
実費|依頼内容によって異なる
実費とは「弁護士が事件処理する際にかかった費用」のことです。
一例としては、通信費・交通費・出張旅費・訴訟時の印紙代・コピー代などがあり、依頼内容によって金額は異なります。
なお、日当や実費は依頼先によって支払うタイミングが異なるため、依頼する際は事前に確認しておきましょう。
弁護士費用を安く抑える方法
弁護士に依頼する前にはおおよその見積もりを出してもらうこともできますが、なかには「弁護士費用を支払える余裕がない」という方もいるでしょう。
弁護士費用を安く抑える方法としては、法テラスの民事法律扶助制度や弁護士費用特約などがあります。
法テラスの民事扶助法律制度とは、経済的理由で弁護士に依頼できない方を対象にしたサービスのことで「30分×3回までの無料法律相談」や「弁護士費用の一時立替払い」などが利用できます。
ただし、収入や資産などの利用要件が定められているほか、弁護士は自由に選択できないため注意してください。
弁護士費用特約とは自動車保険に付帯できる特約のひとつであり、「法律相談料:10万円まで、弁護士費用:最大300万円まで」の補償が受けられます。
具体的な補償範囲は保険会社によっても異なりますが、もし利用できる場合は自己負担0円で弁護士に依頼できる可能性があります。
なお、当社では「ベンナビ弁護士保険」という保険サービスも提供しており、今後のために備えておきたい方は検討してみましょう。
死亡事故で弁護士に依頼する際の探し方
死亡事故の無念を晴らしたい方や、十分な額の賠償金を獲得したい方は、以下の条件に該当する弁護士を選んでください。
ひとつでも多くあてはまる弁護士であれば、より納得のいく形で死亡事故を解決してくれるでしょう。
1.交通事故トラブルの解決実績が豊富であること
弁護士にはそれぞれ注力分野があり、交通事故の解決実績が豊富な弁護士に依頼すれば死亡事故にも適切に対処してくれます。
死亡事故を解決するためには専門知識が必要であり、場合によっては医学的な知識も求められますが、経験豊富な弁護士はどちらも兼ね備えています。
慰謝料などの提示額が低い場合は正当な理由で反論し、遺族側にとって納得のいく額の賠償金を獲得してくれるでしょう。
2.交通事故の専門書を監修していること
死亡事故の解決を依頼したいときは、交通事故の専門書を監修している弁護士を選びましょう。
専門書を監修している弁護士であれば、死亡事故の原因などを正確に分析したうえで、適正な過失割合や賠償金を計算してくれます。
交通事故について裁判で争う場合でも、裁判官が納得する理論の展開や重要な証拠の提示により、依頼者側にとって有利な展開にしてくれるでしょう。
交通事故の専門書は大型書店や通販サイトなどが扱っており、専門家向けの実務書などを監修している弁護士を探してください。
3.弁護士費用の説明がわかりやすいこと
現在では弁護士費用は各弁護士が自由に設定できるので、法律事務所によって料金体系などが異なります。
弁護士に依頼する場合、着手金や報酬金のほかに実費や日当なども発生し、訴訟を起こすときは裁判費用も必要です。
各費用の算出根拠や請求のタイミングなどもわかりやすく説明してくれる弁護士であれば、支払いトラブルは発生しないでしょう。
4.土日祝日や夜間でも相談できること
死亡事故の解決を依頼するときは、土日祝日や夜間でも相談できる弁護士を選ぶのがよいでしょう。
土日祝日や19時以降などでも対応している弁護士であれば、平日は仕事が忙しくて時間が確保できない方や勤務形態が変則的な方でも、出社前や退社後などに相談できます。
「ベンナビ交通事故」では、早朝や深夜でも相談に応じてくれる弁護士なども掲載しているので、ぜひ活用してください。
5.自分と相性がよいこと
死亡事故の対応を弁護士に任せたい方は、必ず相性の良さもチェックしてください。
特に死亡事故では原因の調査や証拠収集などに一定の時間がかかるため、弁護士との付き合いも長くなります。
裁判を起こす場合は判決までに1年~2年程度かかることもあり、弁護士との相性の良さは重要です。
まずは無料相談などを活用して弁護士と面談し、人柄や相性などもよく確認しておくとよいでしょう。
死亡事故に関する弁護士の解決事例
死亡事故で納得のいく額の賠償金を受け取るためには、証拠などを用いて的確に主張していく必要があります。
弁護士に交渉対応などを依頼すれば賠償金を大幅に増額できることもあり、ここでは「ベンナビ交通事故」に掲載している実際の解決事例を紹介します。
示談金を0円から約4,800万円に増額できたケース
頭部挫傷により被害者が死亡した事故で、保険会社の当初提示額は0円だったところ、弁護士の介入によって慰謝料を含む賠償金の増額に成功したという事例です。
この事例では、センターラインのない道路でのカーブ時に車同士が衝突し、加害者側は自身に過失がないことを主張しており、慰謝料の当初提示額も0円でした。
しかし、遺族が弁護士に依頼し、交通事故調査会社による双方車両の走行軌跡の解析などがおこなわれた結果、加害者8:被害者2の過失割合となって裁判上の和解となり、最終的に約4,800万円の賠償金を獲得することができました。
【参考元】加害者側の過失0の主張に対して、過失割合8対2で裁判上の和解をし、4800万円の支払いを受けた事例
損害賠償請求して約1億円を獲得できたケース
被害者が信号待ちでバイクを停車していたところ、後方のダンプカーが被害者に気付かないまま発進して被害者が亡くなったという事例です。
当初の加害者側の主張は「被害者のバイクがすり抜けようとした」というものでしたが、被害者は事故直前まで動いていなかったことをドライブレコーダーの映像で立証することができました。
弁護士の弁護活動により被害者側の無過失を証明することができ、最終的に約1億円の賠償金を獲得することができました。
死亡事故で請求できる賠償金の内訳・相場
死亡事故の加害者側に請求できる賠償金としては、主に以下のようなものがあります。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、被害者本人や遺族の精神的苦痛に対して支払われるお金です。
死亡慰謝料には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準などの算定基準があり、どの基準が適用されるのかによって金額が異なります。
まず「任意保険に加入していない」というようなケースでは自賠責基準が適用され、以下のように計算します。
請求する要項 | 慰謝料額 |
---|---|
死者本人に対する慰謝料 | 400万円(2020年4月1日以前に発生した事故に関しては350万円) |
死亡者に扶養されていた場合(※) | 200万円 |
慰謝料を請求する遺族が1人の場合 | 550万円 |
慰謝料を請求する遺族が2人の場合 | 650万円 |
慰謝料を請求する遺族が3人の場合 | 750万円 |
※遺族が死亡した被害者本人に扶養されていた場合のみ200万円が加算されます。
(遺族が1人で扶養されている場合:400万円+200万円+550万円=1,150万円)
次に「任意保険に加入している」という場合は任意保険基準、「弁護士に依頼する」という場合は弁護士基準が適用され、それぞれの相場は以下のとおりです。
死亡者の立場 | 任意保険基準(推定) | 弁護士基準 |
---|---|---|
一家の支柱 | 1,500万円~2,000万円程度 | 2,800万円 |
配偶者・母親 | 1,500万円~2,000万円程度 | 2,500万円 |
上記以外 | 1,200万円~1,500万円程度 | 2,000万円~2,500万円 |
※被害者本人に対する慰謝料と遺族に対する慰謝料を合算した額
死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、事故に遭わず被害者が生きていれば得られたはずの将来分の収入のことです。
計算式は上記のとおりで、「被害者が亡くなる前の収入」や「あと何年就労できたか」などが考慮されます。
死亡逸失利益の計算は複雑であるため、正確な金額を知りたい方は弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
遺体の処置費用
遺体の処置費用も賠償金に含まれるので、以下のような費用を病院や葬儀会社に支払ったときは加害者側に請求してください。
- 遺体処置料:2万円~5万円程度
- 死体検案書の発行手数料:5,000円~1万円程度
- 検案料:2万円~3万円程度
- 解剖料:8万円~12万円程度
- ドライアイスや特殊防臭剤の措置費用:5,000円~2万円程度
- 遺体の修復費用:7万円~12万円程度
- 遺体の搬送料:1万2,000円~1万5,000円程度
- 納体袋の費用:3万円~10万円程度 など
なお、死因究明を目的として行政解剖がおこなわれる場合、地域によっては検案料・解剖料・死体検案書の発行手数料などが遺族負担になります。
葬儀費用
被害者の葬儀費用も損害賠償請求の対象であり、自賠責保険からは原則として100万円まで補償されます。
ただし、社会通念上の必要性が認められるときは、日本弁護士連合会の基準に従い、以下のように170万円程度まで請求できるケースもあります。
- 交通事故損害額算定基準:原則130万円~170万円の葬儀費用が基準
- 民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準:原則150万円までが葬儀費用の基準
なお、四十九日法要にかかった費用や仏壇・仏具・墓石などの購入費なども、死亡事故がなければ発生しなかった費用であるため、損害賠償請求の対象になります。
治療費や入院慰謝料など(死亡するまで治療を受けていた場合)
「交通事故後に病院で治療を受けたものの亡くなってしまった」というようなケースでは、以下のような費用も加害者側に請求できます。
- 入院慰謝料・入通院慰謝料
- 治療費・入院雑費
- 付添看護費
- 通院交通費
- 休業損害 など
入院慰謝料も死亡慰謝料と同様に3種類の計算基準があり、それぞれ以下のように金額が異なります。
入院期間 | 自賠責基準 | 任意保険基準(推定) | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|---|
軽度 | 重度 | |||
1ヵ月 | 12万9,000円 | 12万6,000円程度 | 35万円 | 53万円 |
2ヵ月 | 25万8,000円 | 25万2,000円程度 | 66万円 | 101万円 |
3ヵ月 | 38万7,000円 | 37万8,000円程度 | 92万円 | 145万円 |
4ヵ月 | 51万6,000円 | 47万9,000円程度 | 116万円 | 184万円 |
5ヵ月 | 64万5,000円 | 56万7,000円程度 | 135万円 | 217万円 |
6ヵ月 | 77万4,000円 | 64万3,000円程度 | 152万円 | 244万円 |
弁護士基準で請求すれば金額が2倍以上になることもあるので、弁護士に請求対応を依頼することをおすすめします。
さいごに|死亡事故では弁護士への相談がおすすめ
死亡事故では、遺族には大きな精神的ダメージがかかるうえ、葬儀・法要・相続などのさまざまな手続きにも対応しなければいけません。
弁護士であれば事故後対応を一任できるため手続きの負担を大きく軽減できるうえ、賠償金の増額やスムーズな示談成立なども望めます。
できるだけ納得のいく形で問題解決するためには弁護士選びも重要ですが、当サイト「ベンナビ交通事故」なら交通事故問題が得意な弁護士を一括検索できます。
初回相談無料・土日祝日相談可などの弁護士事務所も多く掲載しているので、まずは一度利用してみることをおすすめします。
