交通事故の示談交渉は弁護士に依頼しよう|示談交渉を依頼するべき状況と弁護士の選び方

交通事故の示談交渉は弁護士に依頼しよう|示談交渉を依頼するべき状況と弁護士の選び方

交通事故の被害者になった場合、示談交渉では被害の補償について話し合います。

しかし、交通事故の対応に慣れている被害者はほとんどいないため、以下のような疑問や不安も多いのではないでしょうか。

  • 示談交渉は弁護士に任せたほうがいいの?
  • 示談交渉はどんな流れになる?
  • 慰謝料はいくら請求できる?
  • 交渉が苦手なので専門家に代わってもらいたい

保険会社との交通事故の示談交渉はプロ対アマチュアの話し合いになるので、保険会社に主導権を握られてしまい、被害者側が不利になりがちです。

ここでは、交通事故の示談交渉をお願いするべき弁護士の特長や、依頼すべき状況、弁護士費用などを解説していきます。

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この記事を監修した弁護士
立花 志功弁護士(立花志功法律事務所)
交通事故案件に注力しており、キャリアの中で担当してきた大半の事件が交通事故事件となっている。今までの知見を活かし、交通事故に関する様々なサポートを行う。

交通事故の示談交渉はどんな弁護士に依頼すべき?

交通事故の示談交渉は損害賠償を決定づけるため、高度な専門知識や交渉力が必要です。

依頼者にとって有利に示談交渉を進めたいときは、以下のような弁護士に依頼してください。

示談交渉のテクニックに長けている

示談交渉のテクニックは単なる話術ではなく、以下のような要素が求められます。

  • 法律に基づいた論理的な交渉ができること
  • 主張に一貫性や合理性があること
  • 十分な証拠を揃えていること
  • 具体的な請求額を提示できること
  • 書面で交渉ができること
  • 加害者側の反応を冷静にみていること

加害者側の保険会社と示談交渉する場合、損害賠償の具体的な金額とその根拠を示さなければなりません。

過失割合を裏付ける証拠についても、すべて書面で提示できるかどうかが交渉の有利・不利に影響します。

また、示談交渉は「言った・言わない」のやりとりになるケースがあるため、メールやFAXなどを使った書面交渉も必要になるでしょう。

交通事故に詳しい弁護士はすべて対処してくれるので、保険会社に主導権を握られることがなく、事実と異なる反論や、合理性のない主張は封じ込めてくれます。

交通事故の解決実績が豊富

弁護士に示談交渉を依頼するときは、交通事故の解決実績が豊富かどうか確認してください。

法律事務所のホームページには専門分野の解決実績が掲載されているので、年間に何件の交通事故を解決しているかわかります。

なお、規模の大きい法律事務所はグループ全体の実績を掲載しているケースがあるため、所属弁護士の人数で割ってみなければ判断できません。

十分な賠償金を獲得できなかった場合でも、示談がまとまれば「解決」とみなすこともあるので、慰謝料増額などの具体的な解決事例もチェックしておきましょう。

専門書の監修などに携わっている

専門書を監修しているかどうかは、交通事故に関する高度な専門知識があり、自動車保険や医療面にも精通している証拠なので、依頼する際の基準として考えるとよいでしょう。

以下のようなキーワードは示談交渉の争点になりやすいので、大型書店やネット検索で弁護士監修の書籍を調べてみましょう。

  • 後遺障害の等級認定
  • 損害賠償の算定基準
  • 逸失利益
  • 過失割合
  • 交通事故実務マニュアル
  • 交通事故損害賠償法
  • 労働能力喪失率
  • 交通事故訴訟

いずれも専門家向けの書籍で、弁護士の実力を見極める判断材料になるので、監修している弁護士なら示談交渉も安心して任せられるでしょう。

土日や祝日、夜間でも相談に乗ってくれる

交通事故は予期せぬタイミングで発生するため、示談交渉を依頼したいときは土日や祝日、夜間でも相談に乗ってくれる弁護士を選んでください。

事故発生から何日も経過すると、証拠が集まりにくく記憶も薄れていくので、弁護士にはできるだけ早めに交通事故の状況を伝えるべきです。

平日の日中しか対応していない弁護士の場合、事故発生日によっては週明けや連休明けの相談になってしまうので依頼の際はしっかり確認しましょう。

来所不要で相談できる

来所不要の弁護士であれば、入院中や自宅療養中でも無理のない相談ができます。

電話相談はもちろんのことですが、オンライン面談や出張相談はお互いが顔を突き合わせるので、事故状況を詳しく伝えられます。

なお、入院中の場合は通信機器の使用制限をしている病室もあるので、メールやLINEで相談日を予約し、病室まで出張してもらうとよいでしょう。

交通事故の示談交渉を依頼できる弁護士の探し方

交通事故の被害者には専用の相談窓口があり、過失割合や慰謝料の算定、示談あっせんなどのサポートを受けられます。

ただし、弁護士と委任契約は結べないので、示談交渉を任せたいときは以下の方法で弁護士を探してください。

法テラス

法テラスは身近な法律問題の相談窓口になっており、交通事故の相談に弁護士が対応してくれます。

担当弁護士と委任契約も結べるので、示談交渉を依頼したいときは相談してみましょう。

また、法テラスでは民事法律扶助制度を利用できるため、経済的な余裕がない方は30分の法律相談が3回まで無料となり、弁護士費用の立替払いにも応じてもらえます。

ただし、法テラスを介した委任契約は提出書類が多く、書類準備に1ヵ月近くかかるケースがあるため、示談交渉のスタートが遅くなるかもしれません。

担当弁護士が必ずしも交通事故に詳しいとは限らないので、確実な方法で弁護士を探したいときは以下で紹介する弁護士会への相談、またはベンナビ交通事故の活用をおすすめします。

各都道府県の弁護士会

各都道府県の弁護士会に相談すると、弁護士を紹介してくれる場合があります。

ただし、交通事故の被害者サポートが弁護士会ごとに異なっており、以下のように弁護士紹介に対応していないケースがあるので注意してください。

  • 弁護士の紹介料は原則無料
  • 弁護士紹介に対応していない弁護士会がある
  • 交通事故を取り扱っていない弁護士会がある:相談のみ受付け
  • 予約が取りにくい
  • 具体的なリクエストには応じてもらえない

弁護士会では「交通事故を扱っている弁護士」を紹介してくれますが、示談交渉が得意な弁護士や後遺障害に詳しい弁護士など、具体的なリクエストには応じてもらえません。

一部の弁護士会は交通事故の相談のみとなっており、示談交渉などの委任契約はできない場合があるので、各弁護士会のホームページをよく確認しておきましょう。

ベンナビ交通事故

交通事故の示談交渉を弁護士に直接依頼したいときは、ベンナビ交通事故の活用をおすすめします。

ベンナビ交通事故は弁護士のポータルサイトになっており、交通事故の解決に注力している弁護士のみ登録されています。

ほとんどの弁護士が初回の相談料を無料にしているので、示談交渉を始める前に相談しておくとよいでしょう。

また、弁護士が示談交渉した結果、以下のように損害賠償が増額された事例も掲載されています。

  • 休業損害が認められたことによる410万円の増額
  • 適正な過失割合の算定と逸失利益の獲得による935万円の増額
  • 後遺障害等級の認定による305万円の増額

ほかにも、オンライン面談や出張相談、土日・祝日や夜間対応、弁護士費用なども掲載されており、地域別の弁護士検索にも対応しています。

交渉が苦手な方や、交通事故の対応に困っている方は、ベンナビ交通事故で身近な弁護士を探してみましょう。

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交通事故の示談交渉を弁護士に依頼したほうがよい状況

交通事故の示談交渉は保険会社が相手になるため、専門知識のない被害者は不利な立場に置かれてしまいます。

被害者の無知につけ込み、賠償金を減額されてしまう場合もあるので、以下のような状況だったときは弁護士に示談交渉を依頼してください。

治療費の支払いを打ち切られたとき

けがの完治や症状固定には平均的な期間があるため、打撲の場合は1ヵ月、むちうちは3ヵ月程度で保険会社が治療費の支払いを打ち切るケースがあります。

痛みやしびれが残っているときは治療を続ける必要があるので、治療費の打ち切りを打診されたときは、支払延長の交渉を弁護士に依頼してください。

打ち切りに応じて途中で治療をやめてしまった場合、後述する後遺障害等級の認定が難しくなったり、賠償金を減額される可能性があるので注意しましょう。

後遺障害が残ったとき

むちうちなどの後遺障害が残ったときは、弁護士に示談交渉してもらうことをおすすめします。

後遺障害等級に認定されると以下の補償を受けられますが、保険会社の提示額に妥当性がなく、裁判で争う被害者も少なくありません。

  • 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったことによる精神的苦痛への補償
  • 後遺障害逸失利益:後遺障害がなければ得られたはずの将来的な収入の補償

後遺障害慰謝料や逸失利益は高額になるため、保険会社から数百万円の金額を提示された場合、十分な補償だと思い込んでしまう被害者もいるので注意が必要です。

弁護士が算定すると保険会社の2~3倍になることが多く、等級認定もサポートしてくれるので、後遺障害が残ったときは弁護士に依頼しておきましょう。

不当な過失割合を提示されたとき

交通事故の過失は損害賠償に影響するので、保険会社から不当な過失割合を提示されたときは、弁護士に示談交渉を依頼してください。

過失割合は損害賠償責任の割合になっており、「加害者7:被害者3」の場合は被害者が3割分の賠償責任を負うことになります。

加害者100%の過失にも関わらず、保険会社から何らかの過失を主張された場合、自分に落ち度がなかったことを立証しなければなりません。

事故発生時の映像や写真がなければ立証は困難ですが、弁護士は事故態様や類型を分析してくれるので、不当な過失割合を覆すことも可能です。

加害者側も弁護士に依頼しているとき

加害者側の保険会社が弁護士に依頼した場合、被害者あてに受任通知が送付されるので、今後の交渉はすべて弁護士相手になります。

弁護士相手の示談交渉はさらに難易度が高くなり、基本的には損害賠償を減額した示談を要求されるので、被害者本人が対応すると十分な補償を受けられません。

加害者側が弁護士を立てたときは、被害者側も弁護士に対応してもらうべきでしょう。

納得できない慰謝料を提示されたとき

交通事故の慰謝料には以下の算定基準があるので、納得できない慰謝料を提示されたときは弁護士に交渉してもらいましょう。

  • 自賠責保険基準:最低限の補償となる算定基準
  • 任意保険基準:自賠責保険基準とほぼ同等の算定基準
  • 弁護士基準:過去の判例などを参考にした裁判所と同等の算定基準

弁護士基準は裁判所の基準と同等になっており、保険会社の提示額が300万円だった場合でも、弁護士が示談交渉することで1,000万円を超えるようなケースがあります。

保険会社の提示額はあくまでも独自基準なので、裁判と同等の基準で慰謝料を請求したいときは、弁護士に示談交渉を依頼してください。

交通事故を訴訟で解決したいとき

交通事故の示談が不成立となった場合、保険会社を相手取って訴訟を起こすケースがあります。

勝訴すると裁判所基準の賠償金を獲得できますが、自分の主張を裏付ける証拠が必要となり、訴状や答弁書の作成、口頭弁論などにも対応しなくてはなりません。

また、裁判所へ提出する証拠を厳選しておかなければ、相手方に反論の機会を与える結果になってしまい、不利な判決を下される可能性があるでしょう。

訴訟では相手方に弁護士がつくので、被害者側にも弁護士のサポートが必要です。

なお、訴訟が進行すると裁判官から和解を提案されるケースがあり、和解案を受け入れた場合は訴訟の終結となります。

和解するかどうかの判断は難しいので、迷ったときは弁護士のアドバイスを参考にしてください。

高額な賠償金が必要になるとき

交通事故によって後遺障害や休業損害が発生したとき、または死亡事故になった場合は高額な賠償金が必用です。

しかし、賠償金が高くなるほど示談交渉の難易度も上がるので、高度な専門知識や交渉力が求められるでしょう。

長期入院や通院のために減収となったり、高額な治療費が必要になったりしたときは、弁護士に示談交渉を依頼してください。

弁護士に示談交渉を依頼するときの費用

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると、法律相談料や着手金などの費用がかかります。

弁護士費用の報酬体系はあまり知られていないので、具体的な内訳は以下を参考にしてください。

法律相談料

弁護士の法律相談料は30分5,500円、または1時間1万1,000円が一般的な相場です。

初回のみ無料にしている弁護士が多いので、交通事故の対応に困ったときは相談だけでもしてみましょう。

また、医師の診断書や交通事故証明書、事故現場の地図や写真などを準備しておけば、短時間で交通事故の状況が伝わります。

着手金

着手金は依頼者が獲得する経済的利益がベースとなり、問題解決の成否を問わず発生する費用です。

交通事故の場合は10~20万円程度の着手金になりますが、依頼内容によっては100万円近くになる場合があるので、無料相談の際によく確認しておきましょう。

なお、一部の弁護士は着手金を無料にしているので、まとまった資金がなくても示談交渉を依頼できます。

報酬金

報酬金も依頼者の経済的利益がベースになっており、「経済的利益×○%」で計算します。

慰謝料の増額分や逸失利益の獲得が経済的利益になるため、報酬金は交通事故が解決したあとに請求されます

なお、経済的利益の考え方に食い違いがあると、報酬金の支払いトラブルが発生するので注意しなければなりません。

たとえば、当初の慰謝料50万円が弁護士の交渉で100万円になった場合、経済的利益を増額分の50万円とするか、100万円全額にするか、擦り合わせておく必要があります。

実費と日当

弁護士に示談交渉を依頼すると、診断書の発行手数料や郵便切手代、交通費などの実費が発生します。

日当は1時間1万円のタイムチャージなっているケースが多く、半日で3~5万円、一日の場合は5~10万円が目安になります。

実費と日当の請求タイミングは弁護士によって異なるので、無料相談するときに確認しておきましょう。

示談交渉を有利にするために被害者ができること

交通事故が発生した場合、初期対応が示談交渉に影響します。

以下のように対応すると、有利な条件で示談をまとめやすくなるでしょう。

事故現場の写真を撮っておく

示談交渉や訴訟では証拠が重要になるため、スマートフォンやデジカメがあれば、以下のように事故現場の写真を撮ってください。

  • 車両の破損個所
  • 車両の位置関係がわかる全体写真
  • 路面の状態や割れた窓ガラスの飛散状況
  • 加害者の免許証や車検証、保険証書やナンバープレート

事故状況が明確になっていれば、不当な過失割合を主張されても反論できます。

警察に通報する

交通事故の通報は義務化されているので、必ず110番通報してください。

警察に通報しなかったときは実況見分調書が作成されないため、過失割合の決定で不利な状況になる可能性があります。

大きな被害が出ていない場合でも、警察には必ず通報しておきましょう。

早めに病院で診察を受ける

交通事故の直後は痛みやしびれを感じにくいため、病院に行かない被害者も少なくありません。

ただし、むちうちなどの症状は数日後に自覚するケースが多く、事故から何日も経って診察を受けた場合、けがと交通事故の因果関係を疑われる可能性があります。

示談金を減額される原因になってしまうので、交通事故が発生したあとは早めに病院で診察を受けてください。

まとめ|交通事故の示談交渉を有利に進めたいときは弁護士に任せよう

示談交渉はあくまでも「被害者が補償を請求する機会」になるので、慰謝料や逸失利益などを正確に計算し、正当な要求として保険会社に提示してください。

保険会社がもっともらしい主張で反論してきたときや、交渉が苦手な方は弁護士に示談交渉を依頼してみましょう。

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交通事故の相談については、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。参考:交通事故相談弁護士ほっとライン

この記事の調査・編集者
みーさん
2017年にライターとしてアシロに入社し、主に交通事故とIT分野の執筆に携わる。2019年によりIT媒体の専任ディレクターになり、コンテンツの執筆・管理などを行っている。
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