入通院慰謝料
交通事故による通院・治療期間の延ばし方|治療費打ち切りへの対処法を解説
2023.10.12
交通事故のけがで通院しているときに、保険会社から治療費を打ち切ると言われて戸惑っている方は多いでしょう。
「治療費打ち切りを打診されたら絶対に応じないといけない?」「治療費を打ち切られたら治療もやめないといけない?」などの不安・疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、治療費打ち切りを打診された場合の通院期間の延ばし方、打ち切りの打診に応じた場合のデメリットを解説します。
また、打ち切りが決まった場合の対処法についても解説します。
交通事故後の通院期間について悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
交通事故によるけがで通院する場合、いつまで治療費が支払われるのでしょうか。
まずは、保険会社からの治療費支払いに関する基本的な内容について解説します。
治療費は、けがが治癒もしくは症状固定するまで支払われます。
治癒と症状固定のそれぞれの定義は、以下のとおりです。
けがが治癒もしくは症状固定したかどうかは医師が判断します。
治癒・症状固定と診断されたあとの治療については、症状改善に有効と認められないため、原則として、加害者や保険会社に治療費を請求することはできません。
※将来治療費が認められる事案もないとは言えません(高次脳機能障害などの重傷案件の一部)。
症状固定後も後遺症が残ってしまった場合は、後遺障害慰謝料や逸失利益として加害者や保険会社に損害賠償を請求することになります。
治療期間中は基本的に保険会社から治療費が支払われますが、場合によっては治療費の打ち切りを打診されることがあります。
保険会社としては少しでも治療費や慰謝料を抑えたいため、治療期間が長引いていると「けがは完治しているはずなので治療費を打ち切ります」と主張してくるわけです。
また、保険会社は必要かつ相当と認められる治療に対してしか補償しません。
「これ以上治療を受ける必要はない」と保険会社が判断した場合にも、治療費の打ち切りを打診してくる可能性が高いと考えられます。
ただし、けがが完治しているかどうか、今後も治療を続ける必要があるかどうかは、あくまでも医師が決めることです。
保険会社に治療費打ち切りを打診されたからといって、治療をやめる必要はありません。
保険会社の主張を鵜呑みにせず、医師の判断をあおぐことが大切です。
保険会社から治療費の打ち切りを打診され、受け入れてしまった場合はどうなるのでしょうか?
ここからは、保険会社からの治療費打ち切りに応じた場合の主なデメリットを3つ紹介します。
保険会社からの治療費打ち切りに応じてしまうと、自費で通院しなければならなくなります。
治療内容や通院頻度にもよりますが、経済的に大きな負担になることもあるでしょう。
治療費打ち切り後も通院を続けるのであれば、健康保険を利用して、できるだけ費用負担を抑えるようにしてください。
また、病院で受け取った領収書は必ず保管しておきましょう。
治療を継続する必要性が認められた場合には、加害者側にあとから請求できる可能性があります。
治療費の打ち切りに応じた場合、入通院慰謝料が低額になりやすいデメリットもあります。
通院期間が長くなればなるほど、入通院慰謝料も増額されるケースが一般的です。
仮に治療費の打ち切りにあわせて通院をやめてしまうと、その時点で入通院慰謝料の増額が打ち止めになってしまいます。
同じ理由で、休業損害の補償額に悪影響が及ぶ可能性もあるでしょう。
もちろん不必要に治療費を受け取りながら、通院を続けることはおすすめしません。
しかし、実際に治療を要する状態にあるのであれば、しっかりと治療費を受け取ったうえで通院を続け、その分の入通院慰謝料も適切に損害賠償請求するべきです。
治療費打ち切りに応じた場合のデメリットは、後遺障害等級で不利になりやすいことです。
けがが完治せず後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定の手続きをおこないます。
後遺障害等級とは、後遺症の程度によって認定される等級のことで、1級〜14級に分かれています。
後遺障害が重いほど高い等級に認定され、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益をより多く請求することが可能です。
しかし、後遺障害等級の認定審査では治療期間・通院日数などをチェックされるため、治療を早くやめてしまうと等級が低くなってしまったり、そもそも等級認定されなかったりするおそれがあります。
例えば、後遺障害14級に認定されるために必要な通院日数は合計60日以上、通院期間は6ヵ月以上が目安です。
これらの要件を満たしていなかった場合は後遺障害14級に認定されず、どの等級にも認定されない「非該当」となってしまいます。
相応の等級に認定されなかった場合は後遺障害慰謝料が減額されてしまうどころか、まったく受け取れない可能性もあるので、デメリットはかなり大きいといえるでしょう。
保険会社から治療費の打ち切りを打診された場合、すぐに受け入れてしまうとさまざまなデメリットがあります。
それでは、治療費の打ち切りを阻止し、通院期間を延ばすにはどうすればよいのでしょうか。
ここからは、けがの治癒・症状固定まで通院期間を延ばす方法について解説します。
まずは、医師に治療継続の意見書を作成してもらうとよいでしょう。
保険会社から治療費を打ち切ると言われても、治療を今後も継続する必要があるかどうかは医師が判断することです。
医師に「治療を継続する必要がある」という旨を意見書に書いてもらえば、医学的にみた治療の必要性を示せるので、打ち切りを延期してもらいやすくなります。
「なんとなくまだ痛みがあるので打ち切らないでください」など、主観的な理由を述べても保険会社に応じてもらえない可能性が高いため、治療費の打ち切りを打診されたらまず医師に相談してください。
治療費請求を得意とする弁護士に相談するのもおすすめです。
治療費の打ち切りを打診された際に自力で対応しようとすると、保険会社から高圧的な態度をとられて心理的なストレスを感じたり、言いくるめられてしまったりする可能性があります。
その点、弁護士に相談・依頼をすれば、弁護士が保険会社との交渉を代わりにおこなってくれます。
弁護士は医師と面談をして「現在のけがの状況はどうか」「今後も治療を続けたほうがよいか」などについて意見を聞き、保険会社の主張が正しいかどうかを調べます。
保険会社の主張に間違いがある場合は保険会社と交渉をしてくれるので、治療費打ち切りを延期してもらえる可能性が高くなるでしょう。
治療費打ち切りをめぐるトラブルを多数解決してきた弁護士なら、保険会社との交渉に慣れているので安心して任せられます。
被害者が一人で立ち向かうよりも交渉がスムーズに進み、治療に専念できるでしょう。
交通事故の治療費請求について相談できる弁護士を探すなら、「ベンナビ交通事故」がおすすめです。
ベンナビ交通事故とは、交通事故トラブルを得意とする弁護士が多数登録されているポータルサイトです。
地域や相談したい内容を設定したうえで検索できるので、自分に合った弁護士を効率よく見つけ出すことができます。
また、「何度でも相談無料」「通院・治療中の相談可」など細かい条件を指定することも可能です。
治療費打ち切りを迫られどうしたらよいかわからない方は、ぜひ一度利用してみてください。
治療費は、原則としてけがが治癒または症状固定したと診断されない限り支払われ続けます。
しかし、場合によっては治療が終わっていないにもかかわらず、治療費の打ち切りが決まってしまうこともあります。
では、治療費が打ち切られてしまった場合、その後の治療費は全て自己負担となってしまうのでしょうか。
ここからは、治療中に治療費打ち切りが決まった場合の対処法を4つ紹介します。
まず、ご自身が加入している健康保険を使えば、治療費負担を3割に抑えられます。
交通事故では健康保険を使えないと思っている方もいるかもしれませんが、基本的には利用可能です。
ただし、交通事故によるけがで健康保険を利用する場合は、加入している保険組合に以下の書類を提出する必要があります。
交通事故証明書以外の書類については、加入している保険組合のホームページからダウンロードすることが可能です。
交通事故証明書は、加害者側の保険会社に問い合わせれば郵送で送られてきます。
交通事故で健康保険を使う際の流れは、以下のとおりです。
治療費の負担はゼロではありませんが、健康保険を使わない場合に比べると負担を7割も抑えられます。
また、事故の状況によっては、労災保険や人身傷害保険を利用できる場合があるので、一度確認しておくようにしましょう。
治療費が打ち切られてから症状固定するまでの治療費は、あとで加害者側の任意保険会社に請求できます。
治療費が打ち切られたからといって、必ずしも全額自己負担となるわけではないので安心してください。
ただし、任意保険会社が「打ち切り後の治療費については支払えない」と主張し、請求に応じない場合も考えられます。
その場合は、訴訟を提起して、裁判所に最終的な判断を委ねることも選択肢に入ってきます。
加害者側の自賠責保険会社に被害者請求をおこない、立て替えた治療費分を支払ってもらうことも可能です。
被害者請求とは、交通事故の被害者が自賠責保険会社に直接賠償金の支払いを請求することです。
被害者請求をすれば示談が成立する前に支払いを受けられるので、金銭的な負担や生活への悪影響を抑えられます。
ただし、自賠責保険はあくまでも被害者の損害額を最低限補償するためのものです。
補償の上限は120万円と決まっているため、立替え分全てを支払ってもらえるとは限らない点には注意しましょう。
後遺症を負った場合は、後遺障害等級の認定手続きをおこないましょう。
後遺障害等級に認定されれば、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができます。
後遺障害等級認定の申請手続きには、被害者請求と事前認定の2つの方法があります。
被害者請求とは、申請手続きに必要な書類を被害者が全て集めて提出・申請する方法です。
書類を集める手間はかかりますが、書類に十分な内容が記載されているかを確認したうえで提出できるので、等級認定される可能性が高くなります。
被害者請求に必要な書類は、主に以下のとおりです。
一方、事前認定とは、後遺障害診断書のみを提出して申請する方法です。
ほかの必要書類は、加害者側の任意保険会社が準備します。
被害者が用意するのは後遺障害診断書のみなので、被害者請求に比べ書類収集の手間を省くことが可能です。
しかし、保険会社が準備する書類に、必要な内容がきちんと記載されているかを被害者が確認することはできません。
書類の内容が不十分だと相応の等級に認定されるための十分な根拠が揃わず、等級が低くなってしまったり、等級認定されなかったりするおそれがあります。
任意保険会社は、慰謝料を少しでも抑えるために最低限の書類しか提出しないことがあるので、被害者側で内容をチェックできないのは大きなデメリットです。
後遺障害等級は、後遺障害慰謝料を決めるうえで重要な要素なので、妥当な慰謝料を確実に受け取りたいなら被害者請求をおこなったほうがよいでしょう。
【関連記事】後遺障害の基本を徹底解説|交通事故に遭った人が知っておきたい基礎知識
ここでは、交通事故の通院期間・治療期間に関するよくある質問をまとめています。
治療費打ち切りについて疑問を抱えている方はぜひ参考にしてください。
保険会社は平均的な治療期間に達したころに、治療費の打ち切りを打診してくるケースが一般的です。
けがの内容に応じて、おおむね以下のタイミングで打ち切りを打診される可能性があります。
また、治療の状況をみて打ち切りを打診してくることもあります。
保険会社は、治療費支払いの手続きのために、被害者が治療を受けている病院から診療報酬明細書や診断書などを取り寄せます。
これらの書類で、通院頻度の低下や治療内容の簡易化などが見受けられると、「治療の必要がないのに通院している」「症状固定しているように見える」と判断され、治療費打ち切りを打診される場合があります。
自己判断で通院頻度を下げてしまうと保険会社から治癒または症状固定していると疑われるだけでなく、入通院慰謝料が少なくなってしまうおそれもあります。
通院は医師の指示に従って適切な頻度でおこない、必要な治療をきちんと受けるようにしましょう。
治療費打ち切りの連絡を無視すると、保険会社は治療費の支払いを終了してしまうので注意しましょう。
保険会社は高圧的な態度で主張してくることがあるので、保険会社との連絡を負担に感じる方は多いかもしれません。
しかし、連絡を無視してしまっては打ち切り延期の交渉もできません。
医師に意見書を書いてもらったり弁護士のサポートを受けたりして、「けがが完治していないので治療費打ち切りを延期してほしい」としっかり伝えましょう。
一括対応とは、自賠責保険と任意保険から支払われる治療費を、任意保険会社がまとめて被害者に支払う仕組みのことです。
まず任意保険会社が医療機関に対して治療費全額を支払い、あとで自賠責保険に立替分を請求する流れになっています。
なお、一括対応は任意保険会社が実施しているサービスのひとつであり、法的な義務ではありません。
そのため、一括払いに対応するかどうかは任意保険会社が自由に決められます。
交通事故によるけがの治療で通院していると、保険会社から治療費打ち切りを打診されて困ることもあるでしょう。
治療費打ち切りに安易に応じてしまうと慰謝料が少なくなってしまったり、後遺障害等級認定で不利になったりします。
けがが治癒か、もしくは症状固定していないのなら打ち切りを阻止すべきです。
しかし、被害者が保険会社と対等に交渉を進めるのは簡単ではありません。
保険会社からの高圧的な態度に負け、言いくるめられてしまう可能性もあるでしょう。
治療費打ち切りをめぐる保険会社との交渉は、治療費請求が得意な弁護士に依頼するのがおすすめです。
治療費請求トラブルの解決実績が豊富な弁護士なら、保険会社との交渉をスムーズに進め、打ち切りの延期を実現することもできます。
治療費請求に強い弁護士は、ベンナビ交通事故で簡単に検索できるので、少しでも不安があるのなら、一度気軽に相談してみるとよいでしょう。