- 「交通事故でけがを負った際、整形外科と整骨院は併用できる?」
- 「整形外科と整骨院を併用する場合に注意すべきことはある?」
交通事故でけがをしてしまい、整形外科と整骨院の両方で治療を受けたいと考えている方も多いでしょう。
しかし、「整形外科と整骨院を併用することはできない」といった情報もあり、併用できるのかどうかわからないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
本記事では、交通事故で整形外科と整骨院の併用は実際に可能なのか、併用する場合の注意点などについて解説します。
交通事故によるけがで悩んでいる方や、整形外科と整骨院の併用について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
交通事故で整形外科と整骨院は併用できない?
まずは、交通事故での整形外科と整骨院の併用可否や、併用できないと言われる理由などについて解説します。
整形外科と整骨院は併用できる
結論からいうと、交通事故によるけがの治療のために整形外科と整骨院を併用することは可能です。
また、整骨院の施術費用については「必要かつ相当な施術行為」の範囲内であれば損害と認められ、補償を受けることができます。
必要な施術行為とは医学的にみて必要と認められる施術のことです。
必要な施術行為と認められるためには、以下2つの条件を満たす必要があります。
- 被害者の身体が、施術が必要な状態にあったこと(施術の必要性)
- 施術により症状の緩和が認められたこと(施術の有効性)
相当な施術行為とは、医学的にみて適切と認められる施術であることや、一般的にみて施術費用が妥当であることなどを指します。
相当な施術行為と認められるためには、以下の条件を満たしていることが必要です。
- 施術内容が過剰でなく、適正であること(施術内容の合理性)
- 施術を受けた期間が適切であること(施術期間の相当性)
- 施術費用が社会一般の水準と比較して妥当であること(施術費の相当性)
つまり、被害者の症状改善に有効と認められる範囲内なら、交通事故による損害として相手方に補償を請求できるということです。
交通事故のけがにより支払った治療費は「積極損害」に該当します。
積極損害とは、交通事故に遭わなければ支払う必要のなかった費用のことです。
整骨院で支払った施術費用も、妥当な範囲内であれば積極損害として請求でき、医師の指示に従って適切な治療を受けるようにしましょう。
整形外科と整骨院は併用できないと言われる理由
整形外科と整骨院の併用は可能ですが、なぜ併用できないといわれているのでしょうか?
その主な理由は、医師や保険会社の許可を得ずに併用した場合には、損害として治療費などを支払ってもらえないことがあるためです。
医師から「整骨院で治療を受けてください」と指示を受けたうえで整骨院に通院した場合は、その治療がけがの改善に必要なものだったと判断できるため損害と認められます。
しかし、医師の許可を得ずに整骨院で治療を受けてしまうと、その治療が「必要かつ相当な施術行為」に該当するのか判断がつきません。
相手方から「本当は整骨院に行く必要がなかったのではないか」と疑われてしまったら、整骨院での治療の必要性・相当性をきちんと証明する必要があり、余計な手間がかかります。
もし治療が必要かつ相当であったことを証明できなかった場合は、受け取れる補償が減ってしまったり、全額自己負担となってしまったりするおそれがあるため、整骨院に通う場合は必ず医師の指示をあおぎましょう。
また、保険会社によっては「整形外科と整骨院を併用した場合は治療費を支払えない」と主張してくることもあります。
整形外科と整骨院の両方に通う場合は、必ず保険会社に「整形外科と整骨院を併用する」という旨を事前に伝えましょう。
通院前に伝えておけば、保険会社とのトラブルを未然に防ぐことができます。
整形外科と整骨院を併用するメリット
交通事故の被害者が整形外科と整骨院を併用する主なメリットは、仕事のあとでも通院できることや、より高い治療効果が望めることなどです。
整形外科は夕方ごろには診療を終えるところが多いため、仕事をしていると診療時間内に通えないこともあるでしょう。
場合によっては、早退をしたり有休を消化したりする必要があり、仕事に影響が出ることも考えられます。
その点、整骨院なら夜遅くまで診療を受け付けているところもあるため、仕事が終わったあとに治療を受けることが可能です。
日中に治療の時間を確保できない方でも、無理なく治療を続けることができます。
整形外科と整骨院の違い
そもそも、整形外科と整骨院にはどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは、それぞれの主な特徴について解説します。
整形外科 | 整骨院 | |
必要となる資格 | 医師 | 柔道整復師 |
診断書 | 発行できる | 発行できない |
治療・施術内容 | ・痛み止めや湿布の処方 ・ブロック注射や手術 など ※リハビリをおこなう場合もあり | ・柔道整復師による施術 ・手技療法を中心とした物理療法や運動療法 など |
自賠責保険の適用 | あり | あり |
整形外科で受けられる治療
整形外科と整骨院の大きな違いは、医師が担当するかどうかです。
整形外科には医師がおり、レントゲン・MRI・CTなどによる画像検査、痛み止めや湿布などの処方、外科医による手術などを受けられます。
また、整形外科では診断書を作成してもらうことも可能です。
診断書があれば、交通事故とけがとの関連性を示しやすいため、治療費が損害として認められやすくなります。
整骨院で受けられる治療
整骨院には、医師ではなく柔道整復師がいます。
整骨院の場合、骨折・脱臼・打撲・捻挫などのけがに対して手技による施術などを受けられます。
柔道整復師は医師と同じ国家資格ですが、レントゲン・MRIなどの検査や診断書の発行などはできません。
診断書がないと、その症状が交通事故によるものなのかを証明しづらく、補償を受けられない可能性が高いといえます。
適切な補償を受けるためにも、整骨院だけでなく整形外科にも通い、診断書を作成してもらうことが大切です。
交通事故で整形外科と整骨院を併用する際の注意点
交通事故のけがで整形外科と整骨院を併用して適切な補償を受けるためには、いくつかのポイントがあります。
このポイントを知らないと十分な補償を受けられない可能性があるため、通院を始める前に必ず以下の5点をチェックしてください。
初診は整形外科で受ける
治療を始める際は、必ず整骨院ではなく整形外科を受診しましょう。
保険会社は、全ての治療費を支払ってくれるわけではなく、医師が「治療の必要がある」と診断した部位に対する治療費しか補償しません。
たとえば、医師が「首の頸椎を捻挫している」と診断した場合、首の治療に対する治療費は補償されます。
しかし、医師の診断を受けていない首以外の部位について整骨院で治療を受けてしまうと、その分の費用は対象外となるため注意が必要です。
また、整骨院は急性のけがの治療や検査には対応していません。
交通事故でよくあるのは、「事故直後はなんともなかったのに、数日経ってから痛みや痺れなどの症状が出てきた」というケースです。
しかし、事故直後に整骨院へ行っても検査は受けられず、そのときに受けた施術が治療に必要なものだったのか判断できません。
一方、整形外科ならレントゲンやMRIなどの詳しい検査に対応しており、必要な検査を受けることが可能です。
検査結果に基づき、医師が症状の内容・程度を診断書に記載してくれるため、事故との関連性や治療の必要性についてもあとで証明しやすくなります。
適切な補償を受けるためにも、まずは整形外科を受診し、整骨院にも行くべきかどうか医師の判断をあおぐようにしてください。
医師から整骨院に通院する許可を得る
整骨院に通院する前には、必ず医師の許可を得るようにしてください。
医師の許可なく整骨院に通院してしまうと、整骨院での治療の必要性・相当性が認められず、治療費を請求できない可能性があります。
医師が「整骨院での治療が必要」と判断したうえで通院すれば、整骨院での治療費も損害として認められるため、整骨院にも通院したい場合は医師へ相談しましょう。
同日に整形外科と整骨院に通う場合も医師の指示を受ける
同じ日に整形外科と整骨院に通院する場合も、医師の指示を受けるようにしましょう。
医師の指示なしに独断で同日に通院すると、過剰診療とみなされて施術費用を補償されない可能性があります。
医師の指示を受けたうえで通院したのなら「必要かつ相当な施術行為」と認められて、整形外科・整骨院のどちらの施術費用も補償されます。
保険会社に整形外科と整骨院を併用することを伝える
保険会社に対して、整骨院を併用することをあらかじめ伝えることも大切です。
保険会社に確認をせずに整骨院に通院した場合、あとから「整形外科と整骨院を併用した場合、整骨院の治療費の支払いはできない」と保険会社が主張してくることがあります。
このような場合、整骨院の治療費は全て自己負担となってしまうため注意が必要です。
通院を始める前に保険会社へ「整骨院にも通院することになった」と伝えておけば、整骨院での治療費も補償されるのかあらかじめ確認できるためトラブル防止につながるでしょう。
保険会社が治療費の支払いを認めない場合は自己負担となる
保険会社が治療費の支払いを認めなかった場合、全額自己負担となってしまうという点には注意が必要です。
医師が診断していない部位について整骨院で施術を受けた場合は「必要かつ相当な施術行為」と認められず、支払ってもらえないおそれがあります。
また、自賠責保険に被害者請求をした場合でも、必ずしも治療費が支払われるとは限りません。
整形外科と整骨院を併用する場合は、必ず医師と保険会社の両方に伝えて通院するようにしてください。
整骨院だけに通うと慰謝料などが減額されるリスクがある
整骨院に通院しただけでは、治療費などを十分に支払ってもらえない可能性があります。
保険会社は、医師が必要かつ相当と判断した範囲内で治療費などの補償をおこないます。
医師の判断なく整骨院にのみ通院してしまうと「整骨院での治療は必要だったのか」「本当は完治しているのではないか」と保険会社に疑われてしまい、慰謝料が減ってしまったり治療費の支払いを打ち切られたりする可能性があります。
定期的に整形外科にも通院し、その都度「まだ整骨院で治療を受ける必要があるか」について医師の判断をあおぐようにしましょう。
交通事故で保険会社から整骨院の利用を拒否された場合の対処法
保険会社によっては、整骨院の治療費を補償してもらえないこともあります。
以下では、そのような場合の対処法を2つ解説します。
自賠責保険を利用する
まずは、自賠責保険会社に被害者請求をするという方法があります。
被害者請求とは、けがの治療が終わったあとに自賠責保険に治療費などを請求することです。
しかし、被害者請求をおこなうためには、交通事故証明書や後遺障害診断書などのさまざまな書類を提出する必要があります。
被害者一人で書類を集めて正確に作成するには大きな労力がかかるため、スムーズに手続きを済ませるのは決して簡単ではないでしょう。
交通事故トラブルが得意な弁護士に相談する
交通事故のトラブルが得意な弁護士に相談すれば、保険会社との交渉を任せられるほか、被害者請求の手続きについてのサポートも受けられます。
被害者本人が自力で保険会社と交渉する場合、法律知識や交渉経験が足らず、保険会社側の主張に負けてしまうケースが多くあります。
その点、交通事故の問題を多数解決してきた弁護士なら、交通事故に関する知識が豊富なうえ、交渉スキルにも長けています。
保険会社との交渉にも慣れているため、法律知識を基に説得力をもって保険会社と交渉することができます。
そのため、被害者が一人で対応するよりも交渉がスムーズに進み、保険会社から適切な補償を受けられる可能性も高くなります。
また、自賠責保険に被害者請求をする場合の書類収集や手続きのサポートも受けられます。
弁護士に依頼しない場合、被害者請求に必要な書類は全て被害者自身が集めなければなりません。
その場合、書類を発行してもらうために受診した病院などを全て回る必要があり、かなりの手間がかかってしまいます。
弁護士に依頼すれば必要書類を全て代わりに集めてもらえるため、自分で収集するよりもスピーディに治療費などを請求できます。
「保険会社に整骨院の利用を拒否されて、どうしたらよいかわからない」「自賠責保険の被害者請求をしたいけど、何をしたらよいか教えてほしい」といった不安が少しでもあるなら、弁護士に相談してみましょう。
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さいごに|交通事故のけがで整骨院を利用する場合は医師の指示に従おう
医師が必要かつ相当な治療行為と認める範囲内であれば、交通事故によるけがで整形外科と整骨院を併用することは可能です。
ただし、整形外科と整骨院の治療費をどちらも補償してもらうためには、医師の許可などが必要です。
医師の許可なく整骨院に通ってしまうと、受け取れる補償額が少なくなってしまったり、治療費が全て自己負担となってしまったりするおそれがあります。
また、保険会社にあらかじめ「整形外科と整骨院を併用したい」と伝えることも大切です。
事前に連絡しておけば、あとから「整骨院の治療費は補償の対象外です」などと言われてトラブルに発展するリスクを抑えられます。
整形外科と整骨院を併用したい場合は、医師と保険会社への確認を忘れずにおこないましょう。

