むちうち
むちうち事故で弁護士に依頼するなら必見!弁護士特約のメリットと利用手順
2023.09.08
「むちうち」は、交通事故の被害者に生じやすい症状のひとつです。
比較的軽度の症状だと思われがちですが、治療を続けても完治せず、痛みやしびれが残ることもよくあります。
むちうちが完治せず後遺症が残った場合は、後遺障害等級の認定を受けたうえで、加害者側に対して損害賠償を請求しましょう。
後遺障害等級認定の申請や損害賠償請求をおこなう際には、弁護士に依頼してください。
本記事では、交通事故によってむちうちになった場合の、後遺障害等級認定や損害賠償請求について詳しく解説します。
「むちうち」とは、首に大きな負担がかかることで発生する、痛みやしびれなどの神経症状全般です。
交通事故では、衝突したときの衝撃で頭が揺さぶられ、首に負荷がかかってむちうちを発症するケースがよくあります。
では、具体的にどのような症状が出ると「むちうち」といえるのか、詳しく見ていきましょう。
むちうちの症状は多様であり、一例として以下の症状が挙げられます。
なお、「むちうち」の症状が見られる場合、病院では頚椎捻挫・腰椎捻挫・外傷性頚部症候群などと診断されるケースが一般的です。
むちうちの治療期間は、症状の程度によって異なります。
軽傷のむちうちであれば、1ヵ月から3ヵ月程度で治癒することが多いです。
これに対して、重傷のむちうちになった場合は、3ヵ月から6ヵ月程度の治療を要します。
交通事故によるむちうちが完治せず、痛みやしびれなどの神経症状が残った場合は、後遺障害等級の認定を受けることができます。
むちうちで認定される可能性がある後遺障害等級は、主に12級13号または14級9号の2種類です。
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
後遺障害12級13号は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」について認められます。
後述する14級9号と比較すると、12級13号については神経症状が「頑固」であることが要件とされています。
実務上、後遺障害12級13号と14級9号は「他覚的所見」の有無によって区別されています。
詳しくは後述しますが、レントゲン・MRI・CTなどの画像検査や神経学的検査によって神経症状の原因が表れている場合には、12級13号が認定される可能性が高いです。
後遺障害12級13号が認定されると、加害者側に対して請求できる後遺障害慰謝料および逸失利益は、14級9号よりも高額となります。
後遺障害14級9号は、「局部に神経症状を残すもの」について認められます。
12級13号とは異なり、14級9号は、画像検査などによる他覚的所見がない場合でも認められる可能性があります。
すなわち、被害者が痛みやしびれなどの自覚症状のみを訴えているに過ぎないとしても、後遺障害14級9号の認定は受けられることがあります。
自覚症状のみのケースにおいて、14級9号の認定を受けるためには、その自覚症状が医学的に説明可能と認められることが必要です。
医学的な説明可能性は、主に医師が作成する後遺障害診断書から判断されます。
事故直後から継続的に通院し、かつ医師と適切にコミュニケーションをとることが、14級9号の認定を受けるための重要なポイントです。
むちうちの後遺障害等級認定は難しいといわれることも少なくありません。
実際にどのようなケースで非該当とされてしまうのでしょうか。
非該当にされてしまう主なケースを5つ紹介します。
むちうちの後遺障害等級認定では、症状を医学的に証明・説明できない場合、非該当とされてしまう可能性が高くなります。
後遺障害等級認定を受けるには、後遺障害の存在を客観的に示さなければなりません。
しかし、むちうちによる痛みやしびれなどの症状は本人の自覚症状にとどまるケースも多く、客観的な証明が難しいため、非該当となってしまうのです。
具体例として、MRI画像やレントゲン検査で異常が見られない場合や、神経学的検査で明確な異常が確認できない場合などが挙げられます。
ただし、自覚症状しかない場合でも、適切な通院期間と頻度を保ち、医師による詳細な診断書を用意すれば、認定の可能性を高めることは可能です。
むちうちの後遺障害等級認定において、軽微な事故で後遺症との関連性が薄いと判断された場合も非該当になりやすいといえます。
後遺障害等級認定の審査では、事故と症状の因果関係が重要視されます。
軽微な事故では、重大な後遺症が生じる可能性が低いと考えられるため、後遺症が事故に起因するものかどうかの判断が厳しくなります。
例えば、駐車場での低速接触事故や車体にわずかな傷しか残らないような軽い衝突事故では、身体への負担が小さく、むちうち症状と事故との関連性が低いと判断され、非該当となることもあるでしょう。
症状の一貫性・連続性が認められない場合も、むちうちの後遺障害等級認定が非該当とされてしまう可能性が高くなります。
後遺障害の認定には、症状が継続的かつ安定していることが求められるためです。
例えば、症状の訴えが診察ごとに大きく変わったり、長期間通院を中断したあとに突然症状が悪化したと主張したりしていると、一貫性や連続性が疑われるおそれがあります。
そのため、適切な後遺障害等級認定を受けるためには、定期的に通院し、医師に対して日常的に生じる症状を具体的に伝えていくことが重要です。
むちうちの後遺障害等級認定では、通院期間・頻度が不十分な場合も非該当とされてしまうことがあります。
通院期間・頻度は、症状の重症度や継続性を示す重要な指標です。
十分に通院していない状況では、「症状が軽微である」「日常生活を問題なく送れている」とみなされ、等級認定を受けられない可能性が高くなります。
むちうちの場合、等級認定に必要な通院期間は6ヵ月以上、通院頻度は月10日以上が目安とされています。
長期間の通院中断がある場合も、症状の継続性が疑われる原因となるので注意してください。
むちうちの後遺障害等級認定において、事故後しばらくしてから通院を始めた場合も非該当とされてしまう可能性が高くなります。
通院が遅れるほど、「後遺症が残るほどのけがはしていなかった」「事故と後遺症は直接関係していない」と判断されやすくなるからです。
例えば、事故直後は軽症と判断して通院せず、数ヵ月後に症状が悪化してから通院を始めたようなケースが該当します。
むちうち症状は事故直後から現れるとは限らず、数日後に症状が顕在化することもあります。
そのため、事故後は症状の有無に関わらず、できるだけ早く医療機関を受診することが重要です。
ここでは、むちうちで後遺障害等級認定を受けるためのポイントを4つ解説します。
むちうちで後遺障害等級認定を受けるためには、適切な検査を受けることが重要です。
むちうちの症状は自覚的なものが多いため、検査結果による医学的な裏付けが必要不可欠となります。
むちうちの後遺障害等級認定に有効な検査には、以下のようなものが挙げられます。
なお、画像検査や神経学的検査は、事故後できるだけ早い段階で受けることが望ましいといえます。
時間が経過すると、事故との因果関係が否定されやすくなるので注意してください。
むちうちで後遺障害等級認定を受けるためには、医師に対して自覚症状を具体的に伝えることも大切です。
むちうちの症状は自覚的なものにとどまり、客観的な検査で証明できないケースも少なくありません。
その場合、医師に症状の詳細を正確に伝え、具体性のある診断書を作成してもらうことで、適切な等級認定を受けられる可能性が高まります。
例えば、「首が痛い」と伝えるのではなく、「長時間パソコンで作業していると肩から腕にかけてしびれが生じる」など、具体的な症状や日常生活への影響を詳しく説明してください。
また、痛みの程度を数値化したり、症状が出現する時間帯や持続時間を記録して、医師に提出したりすることも効果的です。
症状固定になるまで継続して通院することも、むちうちで後遺障害等級認定を受けるためのポイントといえます。
継続的な通院実績が、症状の程度や持続性を示すことになるからです。
ケースバイケースですが、むちうちで後遺障害等級認定を受けるには、少なくとも6ヵ月程度の通院期間が必要とされています。
医師の指示に従うことが前提ですが、月に10日程度の通院頻度を維持しながら、治療を続けるようにしましょう。
通院先は、整形外科を選ぶようにしてください。
ただし、むやみに通院期間を延ばすことは避けるべきです。
等級認定や保険金目当ての通院だとみなされ、審査で不利になるおそれがあります。
むちうちで後遺障害等級認定を受けるためには、医師に適切な後遺障害診断書を作成してもらうことも重要です。
後遺障害診断書は等級認定の判断材料として、最も重視される書類のひとつです。
要点を抑えて記載された診断書は、後遺障害等級認定の妥当性を客観的に示す強力な証拠となります。
しかし、担当医が必ずしも後遺障害診断書の作成に慣れているとは限りません。
そのため、交通事故問題を得意とする弁護士に依頼し、診断書の内容をチェックしてもらったり、医師に対して意見してもらったりすることも大切です。
むちうちで後遺障害等級が認定されない場合、異議申立てを検討する必要があります。
初回の認定結果が必ずしも最終的なものではなく、アプローチを変えて申請すれば、等級認定される可能性は十分あります。
例えば、新たに画像検査や神経学的検査を実施し、検査結果をまとめた資料を追加すれば、14級に認定されたり、14級から12級に修正されたりすることがあるかもしれません。
ただし、非該当とされた理由を分析し、具体的な反論や新たな証拠を提示することは簡単ではないでしょう。
自力で対応しても時間の無駄になりかねないので、弁護士のサポートは必要不可欠といえます。
また、異議申立てでも等級認定が難しい場合は、自賠責保険・共済紛争処理機構に調停を依頼したり、裁判所に訴訟を提起したりする方法も選択肢に入ってきます。
むちうちの後遺症について後遺障害等級の認定を受けた場合、加害者に対して「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」の賠償を請求できます。
「後遺障害慰謝料」とは、交通事故の後遺症が残ったことにより、被害者が受けた精神的損害の賠償金です。
後遺障害慰謝料の算定に当たっては、3つの基準が存在します。
例えば、自賠責基準と弁護士基準では、後遺障害慰謝料の金額に以下のような違いがあります。
<後遺障害慰謝料の目安額>
後遺障害等級 | 自賠責基準による慰謝料額 | 弁護士基準による慰謝料額 |
1級 | 1,150万円 | 2,800万円 |
2級 | 998万円 | 2,370万円 |
3級 | 861万円 | 1,990万円 |
4級 | 737万円 | 1,670万円 |
5級 | 618万円 | 1,400万円 |
6級 | 512万円 | 1,180万円 |
7級 | 419万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
弁護士基準で算出した場合、12級13号であれば290万円、14級9号であれば110万円が後遺障害慰謝料の目安です。
なお、加害者側の任意保険会社と示談交渉をする際には、自賠責基準に近い後遺障害慰謝料を提示される可能性が高いので、弁護士を代理人として交渉をおこない、後遺障害慰謝料の増額を求めましょう。
むちうちで後遺障害等級認定を受けた場合は、後遺障害逸失利益を請求できます。
「逸失利益」とは、交通事故で後遺症が残らなければ、本来得られていたであろう収入のことです。
逸失利益の金額は、以下の式によって計算します。
1年当たりの基礎収入は、事故前の年収を基礎に計算するケースが一般的です。
専業主婦・主夫の場合は、賃金センサスに基づく女性労働者の全年齢平均給与額を参考にします。
労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて以下のように定められています。
<労働能力喪失率>
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 33% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
むちうちの後遺症である神経障害の場合、12級13号であれば14%、14級9号であれば5%の労働能力喪失率が認められます。
労働能力喪失期間は、原則として事故時点の年齢に応じた就労可能年数となります。
ただし、むちうちの後遺症である神経障害については、通常よりも労働能力喪失期間が制限されることが多いです。
一般的には、12級13号の場合は5年から10年程度、14級9号の場合は5年程度の労働能力喪失期間が認められます。
そして、ライプニッツ係数は労働能力喪失期間ごとに、以下のように定められています。
労働能力喪失期間 | ライプニッツ係数 |
1年 | 0.9709 |
10年 | 8.5302 |
15年 | 11.9379 |
30年 | 19.6004 |
50年 | 25.7298 |
(例1)
逸失利益=500万円×14%×8.530=597万1,000円
(例2)
逸失利益=500万円×5%×4.580=114万5,000円
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