「債務整理と自己破産って具体的に何が違うの?」
「自分にはどの手続きが合ってるかな?」
借金の整理を考えている方の中には、このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
債務整理とは、法律の力を使って借金を減額または免除してもらう手続き全般を指し、自己破産は債務整理の中の一つです。
債務整理の中には、自己破産以外にも任意整理・個人再生といった手続きがあり、それぞれ手続き方法や特徴が異なるため、違いをしっかりと理解しておく必要があります。
本記事では、自己破産とそのほかの債務整理の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて紹介します。
自己破産にするか、そのほかの債務整理にするか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
債務整理と自己破産の違い
まずは、債務整理と自己破産の違いを確認しておきましょう。
債務整理とは|借金を整理する手続きの総称のこと
債務整理とは、借金を減額または免除してもらう法的手続きの総称のことです。
インターネット広告で「国から認められた借金減額制度」などと紹介されているものは、基本的に債務整理全般を指していると考えていいでしょう。
債務整理と呼ばれる手続きには、以下の3つが含まれます。
【債務整理の主な手段】
- 任意整理:弁護士を通じて債権者(お金を借りている相手)と直接交渉し、借金の利息や遅延損害金(延滞料のようなもの)を減額してもらう手続き
- 個人再生:裁判所に申し立て、借金の総額に応じて最大で10分の1にまで借金を減額してもらう手続き
- 自己破産:裁判所に申し立て、税金や保険料などを除いたほぼ全ての借金の返済義務を帳消しにしてもらう手続き
上記3つの債務整理の種類によって、それぞれで借金の減額効果や手続きに伴うリスクが異なります。
一般的に「任意整理」は最も手軽かつリスクを抑えながら借金の減額ができる一方で、大幅な減額は狙いづらいです。
反対に「自己破産」はほぼ全ての借金が免除されるという強力な手続きですが、その分リスクが大きいといえます。
「個人再生」は、「任意整理」と「自己破産」の中間のような位置付けと理解しておきましょう。
自己破産とは|債務整理の一種で、裁判所を通じて借金を免除してもらう手続きのこと
自己破産とは、債務整理の一種であり、裁判所に申し立てて借金の返済義務を免除してもらう手続きです。
自己破産をすると、税金や保険料の滞納分や養育費、損害賠償など、一部の法的に免除が認められない債務を除き、ほぼ全ての借金の返済義務が免除されます。
自己破産以外の債務整理は、あくまで借金が減額されるだけですが、自己破産は借金自体がなくなるという点で大きな違いがあります。
ただし、その分一定以上の価値がある財産は債権者への分配のために没収されるなど、デメリットもあります。
どの手続きが自分に適しているかを選ぶには、弁護士などの専門家のアドバイスを受けたうえで慎重に選ぶ必要があるでしょう。
自己破産とほかの債務整理のメリット・デメリットの違い
借金の返済に苦しんでいるが、どの手続きを選ぶべきかわからないという方も多いはずです。
ここでは、自己破産とほかの債務整理のメリット・デメリットの違いをそれぞれ紹介します。
1.自己破産のメリット・デメリット
自己破産のメリット・デメリットは、主に以下のとおりです。
メリット | ✔全ての借金を返済する必要がなくなる ✔債権者からの取り立てや訴訟が停止する ✔給料やボーナスなどの差し押さえが解除される |
デメリット | ✔特定の財産以外は手放すことになる ✔信用情報機関に事故情報が登録される ✔破産手続き中は一部職種において制限が課される ✔破産手続き中は居住地が制限される ✔保証人の返済義務は免除されない |
自己破産の大きなメリットは、全ての借金の返済義務が免除される点です。
税金や保険料の未払金など、非免責債権と呼ばれる一部の支払いを除いた全ての借金は免除されるため、借金額が大きく多少減額された程度では現実的な返済が不可能という方に向いています。
その一方で、借金が免除される代わりに一定の財産を手放さなくてはいけない点は大きなデメリットです。
自己破産によって借金が免除されると、債権者側からすると貸したお金が戻ってこなくなるため大きな損害を受けることになります。
そこで、債権者の権利を少しでも守るために、持ち家や高価な自動車などお金に換えられるだけの価値があるものは没収されて、債権者に分配される決まりになっているのです。
そのほかにも、自己破産をしたあと一定期間は信用情報機関に事故情報が記録され、クレジットカードやローンが利用できなくなるというデメリットもあります。
【関連記事】自己破産のメリットとデメリットとは?条件や誤解されている点も解説【弁護士監修】
2.任意整理のメリット・デメリット
任意整理のメリット・デメリットは、主に以下のとおりです。
メリット | ✔返済期間中の利息をカットしてもらえる可能性がある ✔遅延損害金を免除できる可能性がある ✔借金の返済方法を変更できる可能性がある ✔裁判所を介さないため負担が少ない ✔手続きによる職業・資格制限がない ✔家や自動車などの財産を維持できる ✔任意の業者とだけ交渉をおこなえる |
デメリット | ✔借金を大幅に減額できるわけではない ✔信用情報機関に事故情報が登録される ✔全ての業者が交渉に応じてくれるわけではない ✔自力で交渉しようとしても受け付けてくれない可能性が高い |
任意整理は、弁護士などの専門家を通して債権者と直接交渉して借金を返済しやすくしてもらう手続きです。
具体的には、現在残っている借金にかかる利息をカットしてもらえたり、滞納により発生している遅延損害金を免除してもらえたりする可能性があります。
債権者からすると、借金の返済ができないまま自己破産をされるよりは、元本だけでもしっかり回収できたほうが損失が少なくて済む点でメリットがあり、元本のみの返済に応じてくれる可能性があるというわけです。
また、任意整理は自己破産とは異なり裁判所を介さない手続きであるため、手続きのほとんどを弁護士に任せておけば、時間や手間の負担が少ない点も大きなメリットです。
加えて、家や自動車などの高価な財産を没収される心配もありません。
一方で、任意整理はあくまで利息や遅延損害金のみをカットする手続きなので、借金自体を大幅に減額できるわけではありません。
ある程度安定した収入があり、利息さえなくなれば現実的な返済が可能という方向けの手続きであると覚えておきましょう。
【関連記事】借金を減らす任意整理のメリット・デメリットと注意点|手続きの流れと費用も解説
3.個人再生のメリット・デメリット
個人再生のメリット・デメリットは、主に以下のとおりです。
メリット | ✔借金を最大10分の1に減額できる ✔自宅を手放さずに借金を減らせる ✔免責不許可事由があっても利用できる ✔自己破産と異なり手続き期間中の制限が少ない |
デメリット | ✔あくまでも減額なので返済は続ける必要がある ✔全ての借金を減額対象にしなくてはいけない ✔手続きが複雑で時間と費用がかかる ✔信用情報機関に事故情報が登録される |
個人再生は、自己破産と同様に裁判所に申し立てて借金を減額してもらう手続きです。
自己破産では、持ち家などの不動産は借金が免除される代わりに没収されてしまいます。
しかし、個人再生では「住宅ローン特則」というルールが適用されるため、住宅ローンのみは今後も同じように返済を続けることにより、持ち家を手元に残しながら借金を減額できるメリットがあります。
また、自己破産には「免責不許可事由」というものがあり、一定の条件下では自己破産の手続きが認められない可能性がありますが、個人再生は手続き費用さえ用意できれば基本的に誰でも利用可能です。
ただし、個人再生はあくまで借金の減額にとどまるため、手続き後も借金返済を続ける必要があります。
加えて、個人再生では全ての債権者の借金を減額対象にしなくてはならず、保証人や担保がついている債務を抱えている場合は、個人再生を避けたほうがいいケースがあるので注意が必要です。
【関連記事】個人再生とは?メリット・手続きの流れ・費用を解説
自己破産にするかほかの債務整理にするか迷ったときの3つの判断基準
自己破産とほかの債務整理にするか迷ったときの判断基準としては、以下の3つが挙げられます。
- 安定した収入があるかどうか
- 借金を返済できる見込みがあるか
- 処分したくない財産があるかどうか
それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。
1.安定した収入があるかどうか
どの債務整理を選ぶべきか判断する際には、安定した収入があるかどうかが重要な基準となります。
債務整理のうちの「任意整理」および「個人再生」は、借金の元本または利息のみが減額される手続きです。
そのため、手続き後も継続して借金の返済を続ける必要があります。
安定した収入が得られていない方が任意整理や個人再生をしても、その場しのぎにしかならず、結果として返済が苦しくなり結局自己破産をする流れになるケースもありえるでしょう。
一方で、自己破産では一定以上の価値がある財産は没収されるなどの大きなデメリットがある反面、全ての借金の返済義務が免除されます。
そのため、現状安定した収入が得られていない方や、無職で生活保護を受給している方などでも、借金問題を根本から解決できる可能性があるでしょう。
安定した収入がある方は「任意整理」や「個人再生」を検討する価値がありますが、そうでない場合は自己破産一択だと認識しておきましょう。
2.借金を返済できる見込みがあるか
どの債務整理を選択するべきかの基準として、手続き後に借金を返済していける見込みがあるかどうかも非常に重要です。
任意整理や個人再生は、借金の利息や元本が減額される手続きなので、手続き後に借金を返済し続けられる見込みがあるかどうかを十分に検討しておく必要があります。
一方で、自己破産は全ての借金の返済義務が帳消しになる手続きなので、手続き後に借金返済ができるかどうかは関係ありません。
なお、任意整理の場合は原則として現状残っている借金の利息のみが減額され、個人再生の場合は元本を含めて最大で10分の1まで減額が可能です。
それぞれの手続きをしたあとに、弁護士費用の支払いも加味して、毎月どの程度の支払いが必要になるかしっかりとシミュレーションをしておきましょう。
3.処分したくない財産があるかどうか
どの債務整理を選ぶかにおいては、処分したくない財産があるかどうかも非常に重要なポイントです。
3種類の債務整理は、それぞれ借金の減額効果も異なりますが、手続きの中で没収対象になる財産にも差があります。
【手続きの中で没収対象になる可能性がある財産】
選んだ債務整理 | 没収対象になる可能性がある財産 |
任意整理 | 特になし |
個人再生 | ローン返済中の自動車やバイク |
自己破産 | 査定額が20万円以上の財産全て(東京地裁の場合) |
処分したくない財産がある場合は、その旨を弁護士に相談すれば自分の希望に合った手続きを提案してくれるはずです。
債務整理をするかどうか迷ったときのおすすめの相談相手2選
- 「借金がいつになっても減らなくて困ってるけど、友達や家族には相談できない…。」
- 「本当に債務整理をしてもいいのだろうか…。」
こんな悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
債務整理をするかどうか迷ったときは、ずばり弁護士や司法書士などの専門家に相談するのがおすすめです。
借金に関する相談であれば、多くの法律事務所が初回は無料で引き受けてくれます。
ここからは、弁護士と司法書士のそれぞれについて、債務整理について相談するメリットを簡単に紹介します。
1.弁護士|債務整理の手続き全般について任せられる
債務整理をするかどうか迷ったときは、まずは弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士は「法律の専門家」というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実は弁護士は借金問題解決のプロフェッショナルでもあります。
弁護士であれば、任意整理・個人再生・自己破産のいずれの債務整理でも、全ての手続きを任せられます。
個人再生や自己破産は、専門的な書類を用意して裁判所に申立てをする必要がありますが、書類の準備や記入はほぼ全て弁護士が代行してくれます。
また、裁判所の担当者や債権者との面会にも代理人として出席してくれるでしょう。
任意整理を選択した際、債権者との和解がなかなかできずに裁判にもつれこむケースもありますが、弁護士に依頼しておけば裁判をスムーズに進めてくれるでしょう。
また、借金問題に強い弁護士であればどの債務整理を選ぶべきかについても適切な助言がもらえるはずです。
2.司法書士|借金額が140万円以下の任意整理を任せられる
借金問題については、弁護士ではなく司法書士にも相談できます。
司法書士は、基本的には登記などの法律に関する書類の専門家ですが、借金額が140万円以下の場合は任意整理の代理人も務められます。
司法書士は、弁護士と比較すると依頼費用が安いケースが多いです。
しかし、借金額が大きい場合は司法書士では対応できないうえ、個人再生や自己破産は司法書士の業務範囲外です。
債権者との交渉がうまくいかずに裁判に発展した場合も、司法書士が代理人を務めることはできないので注意しましょう。
さいごに|債務整理が得意な弁護士を探すならベンナビ債務整理がおすすめ
本記事では、自己破産とそのほかの債務整理の違いや、どの債務整理を選ぶべきか判断する基準などについて解説しました。
債務整理の手続きは3種類ありますが、それぞれにメリット・デメリットが存在し、借金額や収入状況によって選ぶべき債務整理は異なります。
借金問題の解決に注力している弁護士であれば、一人ひとりの状況に適した債務整理を提案してくれるうえ、手続きのほとんど全てを任せられるでしょう。
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