養育費を払えないときの対処法|減額が認められやすい条件と払わないときのリスクを解説

養育費を払えないときの対処法|減額が認められやすい条件と払わないときのリスクを解説

養育費は子どもが自立するまで払い続けるため、数百万円や一千万円を超えるケースもあるようです。

しかし、高額な借金を背負ったり、収入の減少などがあったりすると、養育費の支払いが難しくなるので、以下のような疑問も生じてくるでしょう。

  • 養育費は無職でも払わなければならない?
  • 借金を減らす方法はある?
  • 養育費の減額はどんなときに認められる?
  • 養育費を払わなかったらどうなる?

養育費の支払いは非監護親の義務になっており、原則的に未払いが認められないので注意してください。

本記事では、養育費を払えないときの対処法や、減額が認められやすい条件などをわかりやすく解説していきます。

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この記事を監修した弁護士
加藤 惇弁護士(CSP法律会計事務所)
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養育費を払えないときの対処法4つ

養育費の支払いが難しくなったときは、以下の対処法を検討してください。

借金が原因で養育費を払えない場合、債務整理で毎月の返済負担を軽減できます。

また、収入の減少や当初に決めた養育費が高過ぎた場合は、相手との交渉や調停・審判などの対処法もあります。

債務整理で借金の負担を軽くする

養育費を支払えない原因が借金であれば、まず債務整理を考えてみましょう。

債務整理には以下の種類があり、借金の返済負担軽減や、全額免除も可能です。

  • 任意整理:債権者との直接交渉で借金を減額してもらう方法
  • 個人再生:裁判所を介して借金を5分の1程度に減額してもらう方法
  • 自己破産:裁判所を介して借金全額を免除してもらう方法

任意整理に成功すると、返済期間を延長して1回分の返済額を低くする、または利息分のカットなどに応じてもらえます。

個人再生は車や住宅を残せる可能性があるので、生活に大きな影響がありません

一方、自己破産は住宅などを失いますが、借金が全額免除されるため、収入さえ確保できれば養育費の支払いを継続できます。

なお、債務整理には専門知識が必要になるので、弁護士にサポートしてもらうとよいでしょう。

離婚した相手と話し合う

離婚した相手が話し合いに応じてくれるときは、養育費の減額を交渉してください。

リストラや会社の倒産など、やむを得ない事情がある場合、養育費の減額や支払いの一時中断を認めてもらえる可能性があります。

あとで言った・言わないの水掛け論にならないよう、養育費の減額などを取り決めた際は、必ず書面に記録しておきましょう。

養育費の減額請求調停を申し立てる

相手との話し合いに決着がつかないときは、家庭裁判所に養育費の減額調停を申し立ててみましょう

調停では調停委員が当事者の間に入り、双方の主張を聞いてくれるので、養育費の減額を認めてもらえる可能性があります。

ただし、根拠のない主張は調停委員にとりあってもらえないため、養育費の減額が妥当である旨を自分で説得しなければなりません。

また、調停は裁判官の判決が下されるわけではないので、相手が養育費の減額に納得しないときは調停不成立となります。

養育費の減額審判

養育費の減額調停が不成立になると、自動的に審判へ移行します。

審判の場合は裁判官が一定の判断を下すので、双方が納得できる結論を得られるでしょう。

ただし、審判の結果に従わなかった場合、以下の措置が実行されるケースもあります。

  • 履行勧告
  • 履行命令
  • 強制執行による財産の差し押さえ

履行勧告に強制力はありませんが、履行命令を無視すると10万円以下の過料を支払わなければならないことがあります。

強制執行の場合、給与や家財、不動産などを差し押さえられるので、養育費の未払いが思わぬ不利益になることがあります

養育費の減額が認められやすい条件

養育費の支払義務者が以下の条件に該当する場合、調停や審判で減額を認めてもらいやすくなります

複数の条件に当てはまるときは、養育費を大幅に減額してもらえる可能性もあるでしょう。

育児の負担で十分に働けなくなった場合

育児の負担で短時間しか就労できず、十分な収入を確保できなくなったときは、養育費の減額が認められやすくなります。

たとえば、離婚時に父親が長男の親権者となり、母親が次男の親権者となった場合に、長男の介護が必要になったりすると、父親はこれまでどおりの仕事が難しくなるでしょう。

もともと正社員として働いていても、育児のためにパートタイマーになったケースであれば、家庭裁判所も「やむを得ない事情」と判断してくれる可能性があります。

病気やけがなどが原因で収入が減少した場合

病気やけがが原因で働けなくなったときや、コロナ禍などが原因で自営業者の収入が減少した場合、養育費の減額が認められやすくなります。

収入が途絶えている場合は、養育費を全額免除してもらえる可能性もあるでしょう。

また、養育費の金額は給与所得や事業所得を基準にしますが、支払義務者が病気やけがであれば、傷病手当金や就労不能保険の額が養育費の算定基準になります。

ただし、病気やけがの完治により、収入が元どおりになったときは、養育費の支払いを再開しなければなりません

生活保護を受給することになった場合

生活保護を受給することになれば、本人に支払い能力がないため、基本的には養育費の減額が認められます。

ただし、生活保護を受給している場合でも、養育費の支払い義務が免除されるわけではないので、自己判断で減額しないように注意してください。

役所に生活保護を申請する際は、養育費の支払いが困難になることを相手に連絡し、承諾を得ておかなければなりません。

相手が納得しないときは、家庭裁判所に調停を申し立てる必要もあるでしょう。

就職が決まり、安定収入を確保できるようになったら、養育費の支払いを再開してください。

再婚後に扶養家族が増えた場合

自分が再婚して扶養家族が増えた場合、養育費の減額が認められるケースがあります。

扶養義務の負担が大きくなると、従来どおりの養育費を払えなくなるため、減額に応じてもらえる確率が高いでしょう。

養育費請求者の収入が増えた場合

養育費は支払義務者と請求者の収入を考慮するので、請求者の収入が上がると、養育費の減額が認められやすくなります。

面会交流などを通じて元配偶者と情報交換し、収入が上がっているようであれば、減額交渉してみましょう。

子どもが就職した場合

子どもが就職して経済的に自立した場合、養育費の支払いが不要になります。

ただし、自己判断で支払いをやめるとトラブルになりやすいので、必ず相手の承諾を得てください。

相手が納得しなければ、調停で解決するケースもあります。

子どもと再婚相手が養子縁組した場合

養育費の請求者が再婚し、子どもが再婚相手の養子になった場合、基本的には養育費を支払う必要がありません

養親となった再婚相手は養子の扶養義務を負うため、養育費の支援が不要となります。

ただし、離婚によって夫婦関係が解消されると、再び自分が養育費を支払うことになるので注意してください。

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養育費の減額が認められにくい条件

自分の収入が減少している場合でも、以下のようなケースは養育費の減額が認められません

養育費の減額を要求するときは、合理的な理由が必要です。

意図的に収入を減少させている場合

養育費の支払いを免れるため、意図的に収入を減少させた場合は減額が認められません。

給与水準の低い会社へ転職する、またはわざと事業所得を低くするなど、養育費の減額や免除が目的であれば、相手や裁判所の理解は得られないでしょう。

また、特に理由もなく働いていない場合も、「養育費の支払いを免れようとしている」とみなされる可能性があります。

元配偶者の再婚を理由とした減額の要求

元配偶者の再婚だけでは、養育費を減額する理由になりません

また、元配偶者の再婚相手が高収入であっても、子どもと養子縁組していない場合は、養育費の減額が認められないでしょう。

減額の要求に合理性がない場合

養育費を減額してもらうときは、合理的な理由も必要です。

収入に見合わない高額商品の購入や、ギャンブルなどに浪費している場合、お金がない旨を主張しても、養育費の減額や免除は認められません

養育費を払えないときに発生するリスク

養育費を払えなくなった場合、正当な理由がなければ以下のリスクが発生します。

あくまでも子どものために必要なお金なので、なぜ養育費を支払うのか、原点を忘れないように注意してください。

面会交流を拒否される可能性がある

養育費の支払いが滞ると、相手に面会交流を拒否される可能性があります。

本来、面会交流と養育費の支払いは別問題ですが、相手には「義務を果たさず、権利だけ行使する」といった身勝手な行動にみえるでしょう。

面会交流を拒否された場合、調停を申し立てなければ解決しないケースが多いため、決着までに半年~1年近くかかってしまいます。

養育費が支払われず、面会交流もできなくなると、子どもに悪影響が出てしまうので注意しなければなりません。

遅延損害金が発生する

養育費の未払いは債務不履行になるため、遅延損害金が発生します。

遅延損害金は養育費の支払いが遅延した日から発生し、利率は約定利率と法定利率のどちらかで計算します。

離婚時に夫婦間で遅延損害金の利率を定めた場合は、その約定利率を適用しますが、特にルールを定めていなかったときは、法定利率が適用されます。

2023年4月1日~2026年3月31日までの法定利率は年3%ですが、2023年3月31日以前に養育費の未払いがあった場合、年5%が適用されるので注意してください。

たとえば、合計60万円の養育費を払わないまま1年経過しており、年5%の法定利率が適用される場合、相手には63万円程度の金額を払わなくてはなりません。

なお、遅延損害金の計算方法は「未払い額×年率×遅延日数÷365日」です。

財産が差し押さえられる

養育費の未払いが続くと、強制執行により財産が差し押さえられる恐れもあります。

離婚協議書を公正証書にしており、養育費の支払いを取り決めている場合や、調停や訴訟によって養育費が決定すると、相手は強制執行の申し立てが可能になります。

差押えの対象は給与や預貯金、車などの動産や不動産などであり、生活に支障をきたすこともあるでしょう。

給与の差し押さえは会社側に通知されるので、社内の評価が下がり、昇進や昇給の機会を失う可能性もあります。

「離婚後の財産状況は相手にわからない」と思われるかもしれませんが、2020年4月に法改正があったため、元配偶者は金融機関や勤め先に情報照会できます

【参考】第三者からの情報取得手続 | 裁判所

刑事罰の対象になる可能性がある

離婚した相手が強制執行を申し立てる場合、差し押さえできる財産があるかどうか調べるため、裁判所を介して財産開示を請求するケースがあります。

財産開示の請求を無視したときや、財産を隠すために嘘をついたときは刑事罰の対象になるので、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金刑に処されるかもしれません。

以前は「30万円以下の過料」でしたが、2020年4月の法改正によって刑事罰になったため、開示請求の無視や虚偽の報告があると、前科者になる可能性もあるでしょう。

養育費を払えないときの注意点

養育費の支払いが難しくなった場合、調停で減額が認められるケースもありますが、相手が交渉に応じてくれるときは話し合いからスタートします。

また、借金が原因で養育費を払えないときは、債務整理も検討するべきでしょう。

ただし、相手と養育費の減額を話し合うときや、債務整理するときは、以下の点に注意しなければなりません。

養育費は自己破産しても免除されない

自己破産すると借金は帳消しになりますが、養育費は免責債権ではないため支払いは免れません

また、自己破産には債権者平等の原則があるので、偏頗弁済にも注意が必要です。

養育費の請求だけに応じると平等な弁済にならないため、裁判所が「管財事件」として扱う可能性があります。

管財事件は破産管財人が選任されるので、破産管財人に支払う費用も発生します。

自己破産の完了は最短でも3~4ヵ月程度かかるので、手続き中に養育費を請求されたときは、支払いを待ってもらうしかないでしょう。

養育費に関する取り決めは口約束でも成立する

相手と養育費のルールを取り決める場合、口約束であっても双方の合意が成立します。

口約束は証拠が残らないため、相手が養育費の減額を認めても、あとで「来年以降の話だ」などと言われてしまう可能性があります。

養育費の減額などを取り決めたときは、必ず書面に記載して双方で確認し、公正証書にするとよいでしょう。

未婚の父親でも認知した子どもの扶養義務がある

親同士に婚姻関係がなくても、認知された子どもがいる場合は父親に扶養義務が発生します。

母親が親権者になった場合、父親は扶養義務として養育費を払わなければなりません。

また、父親が子どもを認知していなくても、子どもが裁判所に調停認知を申し立てると、DNA鑑定などによって父子関係が証明されるケースもあります。

さいごに|養育費を払えないときは弁護士に相談してみましょう

養育費の負担は法律上の義務になるため、収入減少などの理由で払えなくなったときは、まず相手に減額交渉してみましょう。

交渉が決裂したときは調停を申し立て、専門家を交えて話し合いを進めてください。

また、借金が原因で養育費を払えなくなった場合、未払いが長期化する可能性があるので、債務整理も検討しなければなりません。

養育費を払えなくなると、最悪の場合は刑事罰の対象になるため、困ったときは弁護士に相談しておきましょう。

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※一部の法律事務所に限り初回相談無料の場合があります
この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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