当て逃げをしたら逮捕される?問われる罪や刑罰、逮捕の可能性を解説

当て逃げをしたら逮捕される?問われる罪や刑罰、逮捕の可能性を解説

内閣府が公表している「令和3年版交通安全白書」によると、令和2年中に全国で発生した交通事故の件数は309,178件でした。

道路交通事故による交通事故発生件数、死者数、負傷者及び重症者の推移

引用元:令和3年版交通安全白書|内閣府

1日あたりに換算すると約847件の交通事故が発生している計算になるため、いつ、誰が加害者になってしまうかもわかりません。

そして、とつぜん巻き込まれる交通事故トラブルに気が動転してしまい、その場で正しい行動を取ることができなくなってしまうという事態もめずらしくはないでしょう。

「当て逃げ」はその典型ともいえる行為です。

当て逃げをしてしまったドライバーの多くは「いつかバレるのではないか」「逮捕されてしまうかもしれない」といった不安を抱えてしまいます。

当て逃げで問われる罪や逮捕の可能性、当て逃げをしてしまった場合の正しい対処法などを解説していきましょう。

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この記事を監修した弁護士
門屋 徹
門屋 徹弁護士(丸の内中央法律事務所)
慶應義塾大学法科大学院卒業後、2013年に弁護士登録。性犯罪・薬物・暴行・窃盗・詐欺など、あらゆる刑事事件分野に注力。また刑事事件に限らず企業法務や借金問題、離婚問題、相続問題等、多岐にわたり注力している。

「当て逃げ」とは

「当て逃げ」に対する一般的な認識と法的な解釈には差があります。

まずは「当て逃げ」がどのような行為を指すのかを確認しましょう。

一般的な意味

「当て逃げ」という用語の一般的な認識としては、広く「交通事故を起こしてその場から逃げること」と理解されています。

たしかにその理解は間違いではありませんが、道路交通法の考えかたに照らすと正確ではありません。

道路交通法や警察の考えかた

道路交通法に「当て逃げ」という文字はありません。

また、警察においても明確な定義は公表されていません。

ただし、道路交通法第72条には「交通事故の場合の措置」が定められており、第1項において次のように明記されています。

(交通事故の場合の措置)
第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

引用元:道路交通法|e-Gov

この条文をみると、交通事故の当事者には次の2つの義務が課せられていることがわかります。

これらの義務に違反し、なんら危険防止措置を講じず、警察への報告も怠った場合を「当て逃げ」と呼ぶことになります。

「当て逃げ」と「ひき逃げ」の違い

当て逃げと紛らわしく、また一般的には明確に区別されず同じような意味で使われているのが「ひき逃げ」です。

しかし、道路交通法や警察の解釈において、両者は明確に区別されています。

ポイントは「死傷者の有無」

当て逃げと同様で、道路交通法のどこを見ても「ひき逃げ」という文字はありません。

ただし、警察が公開している資料ではひき逃げについて「人の死傷を伴う道路上の交通事故に係る救護措置義務違反」と定義しています。

つまり、ひき逃げは「交通事故を起こして人を死傷させたのに救護義務を果たさなかった事件」という意味だと解釈できます。

当て逃げとひき逃げは、どちらも交通事故を起こした現場における義務を果たさないという点で同じですが、死傷者が存在するかどうかで区別されるのです。

ひき逃げはきわめて検挙率が高い

ひき逃げは飲酒運転や無免許運転と同じように悪質性の高い違反行為として位置づけられています。

その証拠に、ひき逃げ事件の検挙率は全体で64.4%、重症事故では84.2%、死亡事故ではなんと100.8%という高い数字が記録されているのです。

ひき逃げ事件 発生件数・検挙率の推移

引用元:令和2年版犯罪白書|法務省

ひき逃げを起こせば、きわめて高い割合で特定されて検挙されることになります。

当て逃げに適用される違反

当て逃げは道路交通法に違反する行為です。

では、具体的にはどのような違反に該当するのでしょうか?

危険防止措置義務違反

交通事故の当事者には、事故後の危険を防止する措置を講じる義務が課せられています。

これらの義務を果たさない場合は「危険防止措置義務違反」です。

なんら措置を講じることなくその場から走り去るため、危険防止措置義務違反の成立は免れません。

報告義務違反

交通事故が発生した際には、現場に警察官がいる場合は警察官に、周囲に警察官がいない場合は最寄りの警察署や交番に、事故の発生を報告しなければなりません。

報告の方法は問わないので、110番通報・警察署の代表電話・交番への直通電話のほか、目の前に警察施設がある場合は駆け込んで知らせるという方法も可能です。

警察への報告を怠ると「報告義務違反」となります。

道路交通法第72条1項には、報告のタイミングについて「ただちに」と明記しているので、厳密にみれば次のようなタイミングで報告しても違反です。

もちろん、駐車車両に衝突したが周囲に誰もいなかったので通報しなかったといったケースは報告義務違反となります。

当て逃げで問われる責任

当て逃げをしてしまった場合に問われる責任はひとつではありません。

刑事責任|刑罰を受ける

当て逃げは道路交通法に違反する行為です。

道路交通法違反にあたる行為にはそれぞれ罰則が設けられており、法定刑の範囲内で刑罰が下されます。

違反の種類 罰則
危険防止措置義務違反 1年以下の懲役または10万円以下の場金
報告義務違反 3か月以下の懲役または5万円以下の罰金

飲酒運転や無免許運転のように悪質な違反と比べると罰則は軽微ですが、懲役刑を受けるおそれもあるため軽視すべきではありません。

行政処分|運転免許上の処分を受ける

行政処分とは、違反内容に応じた点数を付加・累積することで、一定の基準を超えた違反者に科せられる処分を指します。

違反の種類 違反点数
危険防止措置義務違反 5点
報告義務違反 2点

当て逃げの場合はこれらの両方が同時に成立するため、合計で7点が加算され、それまでに累積点数が0点だったとしても30日間の免許停止を受けます。

過去に1回でも行政処分を受けたことがあれば90日間の免許停止、2回なら免許取り消し+1年間の欠格です。

運転免許の停止・取り消しを受けると、仕事や日常生活に大きな支障をきたすことになるでしょう。

民事責任|事故相手への賠償

交通事故を起こした場合は、相手の車両などに与えた損壊を賠償する責任が生じます。

これは当て逃げの場合も同様です。

当て逃げは逮捕されるのか?実際に逮捕されたケースから分析

当て逃げをしてしまった方がもっとも不安に感じるのが「逮捕されてしまうのか?」という点でしょう。

当て逃げが発覚すると逮捕されてしまうのでしょうか?

実際に当て逃げ容疑で逮捕されたケースを参考に分析していきましょう。

ケース1 無免許運転の発覚をおそれて当て逃げ

2021年4月、札幌市南区の路上で乗用車を電柱に衝突させ逃走したとして、警察は37歳の男をあてにげなどの疑いで逮捕しました。
(中略)
同容疑者は4月20日、札幌市南区川沿1条5丁目付近で、乗用車を電柱に衝突させる事故を起こし、警察に報告しなかった事故不申告などの疑いがもたれています。
警察によりますと、ナンバープレートが外され乗り捨てられた車から同容疑者が浮上。
また同容疑者は2012年に免許取消処分を受け無免許だったことも明らかとなりました。
警察の調べに同容疑者は容疑を否認していて警察は逃げた理由などを調べています。

引用元:9年前に免許取り消し…電柱激突後に車放置して逃走 “当て逃げ”などの疑いで37歳男を逮捕 容疑を否認|FNNプライムオンライン

このケースでは、車を接触させたのは「電柱」であり、死傷者は存在していません。

しかし、運転手は過去に免許取消処分を受けており、そのまま再取得せずに無免許で車を乗り回していたようです。

無免許運転は3年以下の懲役または50万円の罰金が科せられる重罪なので、発覚をおそれて通報を避けたくなるかもしれません。

しかし、悪質な違反を隠すために当て逃げをすれば証拠隠滅を図る危険があるため、警察が逮捕に踏み切る可能性が高まるでしょう。

ケース2 飲酒運転の発覚をおそれて当て逃げ

神奈川県警相模原署は13日、相模原市中央区、会社員の男(51)を道交法違反(酒気帯び運転)容疑で逮捕したと発表した。逮捕は12日。
発表では、男は12日午後8時25分頃、同区内の市道で、酒気を帯びた状態でフォークリフトを運転した疑い。容疑を認めているという。
トラックを運転していた男性から「当て逃げされた」と通報があり、駆けつけた同署員が運転中の男を発見。呼気を調べると基準の値を超えるアルコール分が検出された。フォークリフトは勤務する会社のもので、ナンバーがなく公道は走れないという。同署で経緯を調べている。

引用元:ナンバーなし、公道走れないフォークリフトで当て逃げ…酒気帯び運転の男を逮捕|読売新聞オンライン

次のケースは、飲酒運転の発覚をおそれて当て逃げをした事例です。

また、公道を走行できないフォークリフトで接触事故を起こしたという点も逃走の理由にあるとみられています。

酒気帯び運転は3年以下の懲役または50万円以下の罰金、酒酔い運転なら5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

重責をおそれての当て逃げは、すでに逮捕の要件である「逃亡のおそれ」を満たしており、さらに証拠隠滅を図るおそれもあるため、警察が逮捕に踏み切る危険は高いでしょう。

「違反隠し」の当て逃げは逮捕される危険が高い

ここで挙げた2つの事例は、無免許運転や飲酒運転といった悪質な違反行為の発覚を逃れようとして当て逃げをはたらいたものです。

いわゆる「違反隠し」を目的とした当て逃げはきわめて悪質性が高いため、警察も強い姿勢で逮捕に踏み切るでしょう。

一方で、気が動転してしまい通報を失念してしまった、そもそも接触に気が付かなかったといった事例は悪質性が高くありません。

事故後の対処が正しければ、逮捕される危険は低いといえます。

当て逃げをしてしまった場合の正しい対処法

事故時に気が動転してしまい通報を怠ってしまった、事故にまったく気づかなかったがあとで自分の車両をみると接触の痕跡があったといったケースでは、後日になって当て逃げ容疑者として特定される危険があります。

当て逃げをした自覚がある場合は、ただちに正しい対処法を講じなければなりません。

時間が経っていてもみずから警察に申告する

もし当て逃げをした自覚があるなら、すでに時間が経過していても事故現場を管轄する警察にみずから事故を申告するべきです。

すでに管轄の警察は当て逃げ事件として捜査を開始しているかもしれません。

みずから事故を申告することで、逃亡や証拠隠滅を図る意図はないことを主張し、逮捕を避ける効果を高めるでしょう。

保険会社に対応を任せる

自分の車両に損壊があるなら、加入している自動車保険会社に対応を任せるのも有効です。

自動車保険会社に相談すれば、事故証明を取得するために事故現場を管轄する警察署との連絡を尽くすことになります。

すでに当て逃げ被害が届けられていれば事故相手も特定できるので、保険会社に賠償の交渉を一任できます。

弁護士に相談する

逮捕や刑罰に不安を感じているなら、弁護士に相談して対応を検討しましょう。

弁護士のサポートを得れば、警察への申告の同行や事情聴取への対応に向けたアドバイスが得られます。

すでに警察が逮捕に向けて捜査を進めている場合でも、弁護士を介してみずから事故を申告すれば逃亡や証拠隠滅を図るおそれはないと判断されやすくなり、逮捕を回避できる可能性が高まるでしょう。

身におぼえのない当て逃げを疑われた場合の対処法

警察が当て逃げ事件を捜査する場合は、目撃情報や防犯カメラに記録された映像、現場に残された事故車両の痕跡などから加害者を特定します。

とはいえ、警察捜査が間違いを起こさないとも限らないので、身におぼえのない当て逃げを疑われるかもしれません。

もし身におぼえのない当て逃げを疑われたら、ただちに弁護士に相談しましょう。

警察に逮捕されてしまうと、警察段階で48時間、検察官の段階で24時間の身柄拘束に加えて、最長20日間にわたる勾留を受けて社会から隔離されてしまいます。

会社からの解雇、学校からの退学、家族との離縁や離婚といったさまざまな不利益を引き起こす原因にもなるため、逮捕の回避や身柄拘束からの早期釈放が大切です。

弁護士に弁護活動を依頼することで、当て逃げの当事者ではないことを客観的に証明する証拠を収集し、捜査機関に対して主張できます。

誤認逮捕や冤罪を引き起こす危険があることを検察官・裁判官に説明し、逮捕や勾留、起訴といった刑事手続きを回避できる可能性も高まるでしょう。

まとめ

「当て逃げ」とは、死傷者のいない交通事故の現場において、危険防止措置や警察への報告といった義務を怠る行為を指します。

無免許運転や飲酒運転といった悪質な違反の発覚をおそれての当て逃げは逮捕される危険が高い一方で、気が動転してしまった、事故に気が付かなかったといったケースで逮捕される可能性は決して高くありません。

当て逃げをした自覚がある場合は、ただちに弁護士に相談して正しい対応についてのアドバイスを受けたうえで、警察への申告をサポートしてもらうのが最善策です。

当て逃げ事件を穏便に解決するためには弁護士のサポートが欠かせません。

交通事故・事件の解決実績が豊富な弁護士を探して相談しましょう。

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この記事の調査・編集者
みーさん
2017年にライターとしてアシロに入社し、主に交通事故とIT分野の執筆に携わる。2019年によりIT媒体の専任ディレクターになり、コンテンツの執筆・管理などを行っている。