売掛金の回収方法を弁護士が解説!債権が回収できない場合の各種対応まとめ

売掛金の回収方法を弁護士が解説!債権が回収できない場合の各種対応まとめ

「売掛金」とは、商品など販売したときに受領できる対価(代金)のことで、後で支払ってもらうものを指します。

販売する商品などの引き渡しと代金の支払いを同時に行うこともありますが、継続反復して商売を行っていると、納品を先に行い、代金は月毎にしめて後で支払ってもらうということも日常的に行われています。売主は納品先に対して請求権(債権)を持っていることになりますので、法律的には、売掛金のことを「売掛債権」や「売掛金債権」、「代金債権」と表現します。売掛債権を有する売主が「債権者」、支払義務(債務)を負う買主が「債務者」となります。

本記事では、売掛金を支払ってもらえない(回収できない)場合にどうすれば良いか、また、そのリスクを回避するにはどうすれば良いかなど、弁護士の視点で解説します。

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この記事を監修した弁護士
南 陽輔 弁護士
一歩法律事務所
大阪大学法学部卒業。法律事務所に12年勤務した後、2021年3月独立開業。いわゆる「町弁」として、労働トラブルや、離婚トラブル等の一般民事事件全般、刑事事件トラブルなどを主に取り扱っている

売掛金が回収できない場合の対応フロー

売掛金の支払方法については、例えば、「毎月末日締め、翌月末日支払い」等、基本的には取引開始当初に支払方法・支払期限の取り決めをしているはずです。通常は締め日を基準に請求書を発行・送付し、請求書記載の支払期限までに支払われるという流れになります。しかし、決められた支払期限(約定日)までに入金がなかった場合、どのように対処すれば良いでしょうか。

ここでは、期日までに支払がなかった場合の対応方法について解説します。

1.未入金の理由を明確化する

まずは、相手方に入金がないことを連絡し、その理由を尋ねるようにしましょう。相手方の単純ミスで支払いが漏れている場合もあり、その場合はすぐに支払ってもらえるでしょう。しかし、「今、金銭的に苦しいので待ってほしい」、「業者からの入金がないので支払いができない」等の理由であれば、後述する対処方法を検討する必要があります。

2.支払いを催告する

民法では、金銭債権の不履行については、不可抗力をもって抗弁とすることはできないと定められています(民法419条3項)。つまり、「今、金銭的に苦しいので待ってほしい」とか、「入金がないから支払えない」というのは、法律的には弁済できないことへの何ら正当な理由とは言えないということになります。

約定日までに入金がなく、その理由が相手方のミスでもない場合にはすぐに対処すべきです。その対処方法の一つとして、まず改めて支払いを催告するということが挙げられます。催告書には、売掛金の請求額を明記したうえで、相手に支払義務があることを強く認識させ、支払を促すために、遅延損害金が発生する旨と、○○日以内に支払がない場合には訴訟等の法的手続きを取らざるを得ない旨を記載しましょう。

内容証明郵便を送付する

上記の催告書は、「内容証明郵便」で送付するほうが良いです。内容証明郵便で送付しておけば、請求金額や請求内容が記録として残りますので、後で裁判になったときに、相手方が正当な理由なく支払っていないことを根拠づける証拠として利用できます。

3.取引を停止する

未入金の売掛金の支払いを催告しても支払いがない場合は、相手方との取引を停止しましょう。取引を継続し、納品しても、その納品分も更に支払ってもらえず、未入金額が増え、損失が大きくなってしまいます。

相手方と取引基本契約書等の契約書を交わしている場合には、通常は売掛金の未払いがある場合には取引を停止する旨の条項が記載されていることが多いです。契約書にそうした条項がない場合や、契約書を交わしていない場合であっても、民法上の同時履行の抗弁権(民法533条)により、納品を拒否することができます。

4.法務部門・弁護士へ相談する

社内に法務部がある場合には、未収が判明した時点ですぐに法務部に連絡しましょう。また、顧問弁護士がいる場合には顧問弁護士に相談するのが良いです。顧問弁護士がいない場合には、弁護士会の法律相談や、知り合いに紹介してもらうなどして、弁護士に相談しましょう。

こうした法律の専門職に相談することで、売掛金の未回収にどう対応すればよいか適切なアドバイスをもらうことができます。

調停・訴訟・強制執行といった法的手段をとる

相手方に催告しても支払いがない場合には、何らかの法的手段を取ることを検討せざるを得ません。法的手段を取るとは、つまり、裁判所に何らかの申し立てをするということですが、その申立て内容(手段)としては、調停や訴訟というものが挙げられます。

調停は、裁判所で裁判官や調停員に間に入ってもらって話し合いをするということです。訴訟は、話し合いではなく、売掛金の支払いを命じる判決を裁判所に出してもらうためのものです。調停で合意が成立して調停調書を作成したのにそれでも支払いをしない場合や、裁判所に判決を出してもらった場合には、これらの調停調書、判決をもとに強制執行ができます。

また、強制執行を実行すれば、相手方の財産を裁判所が差押え、競売等で換価して売掛金の支払いに充てることができます。強制執行の前に相手方が財産処分をするのを回避するために、訴訟を行う前に相手方の財産を仮差押えするという方法もあります。

弁護士へ債権回収の代行を依頼する

調停や訴訟、強制執行、仮差押え等の法的手段は、裁判所への申立てを行う必要があります。申立て書類を作ったり、証拠を提出したり、裁判所に出廷したり…といった対応が必要になります。そのため、裁判手続きに不慣れな方が行うのは難易度が高いです。

調停、訴訟等の裁判に至らない場合でももしものときに強制執行できるように公正証書を作成した方が良いですが、不慣れな方はそこまで意識が回らないかもしれません。弁護士に債権回収を依頼すれば、こうした法的手続きをすべて弁護士が代わりに行ってくれます。もちろん、相手方との交渉や公正証書の作成なども弁護士が代理人として行ってくれるので、不慣れな人は相談をしてください。

ファクタリングで債権を売却する

売掛金を回収する一つの方法として、「ファクタリング」というものが挙げられます。ファクタリングとは、端的には債権を売却(譲渡)するということです。

売掛金債権を、ファクタリング業者に売り、その対価を得ることで売掛金の未収分に充てることができます。売却した後は相手方に対して、ファクタリング業者に売掛金債権を譲渡した旨を通知し、その後の売掛金回収はファクタリング業者が行うことになります。

ただし、ファクタリング業者は債権額を額面通りに買ってくれることはまずありません。ファクタリング業者は、譲り受けた売掛金の回収を行う手間がありますし、倒産するなどの未回収のリスクも負うことになるからです。割引率は、ファクタリング業者によって異なります。

債権回収代行の依頼内容と費用相場

ここでは、弁護士に債権回収を依頼した場合にかかる弁護士報酬(着手金、報酬)について解説します。

なお、弁護士報酬は現在では各法律事務所によって自由に決められるようになっていますが、かつて存した日弁連弁護士報酬基準を目安に決めている法律事務所が多いですので、ここでは、旧日弁連弁護士報酬等基準をもとにします。

催告書・支払い督促

相手方に送付する催告書という書面作成だけであれば、弁護士費用としては概ね3~5万円程度です。催告書送付後の相手方との交渉を含めて依頼する場合には着手金10万円程度で、成功報酬は回収できた金額の10~16%程度となります。

簡易裁判所への支払督促の申立てを依頼することもできます。支払督促は、相手方が異議を出さなければ判決と同じ効力、つまり強制執行が可能となる決定をもらうことができます。この手続きを弁護士に依頼した場合の着手金は、請求額の1~2%程度、報酬は回収できた金額の5~8%程度となります。

任意交渉

未回収の売掛金の支払いに関して、相手方との交渉を依頼する場合、弁護士費用としては、着手金10万円程度、成功報酬は回収できた金額の10~16%程度とされることが多いです。ただし、請求金額が3000万円を超える大きく金額となる、成功報酬の割合は5~10%以下となります。

民事調停・訴訟

裁判所での話し合いである民事調停について弁護士に依頼した場合は、着手金は請求額の5~8%程度(最低額10万円)、報酬は回収額の7~10%程度が目安となります。判決を得るための訴訟を弁護士に依頼した場合、着手金は5~8%程度(最低額10万円)、報酬は回収額の10~16%程度となります。

仮差押・仮処分・強制執行

訴訟に先立ち、相手方の財産の保全するための仮差押、仮処分を依頼した場合、着手金額は請求額の2.5%~4%程度(最低額10万円)、報酬については、仮差押・仮処分の命令が得られたことを報酬発生の条件とする場合には被保全債権(請求額)の3~5%程度を目安に決められます。しかし、本案(訴訟)の報酬を含め、回収できたときを報酬発生の条件とすることも多く、その場合には訴訟の報酬を含め、回収額の10~16%程度が報酬となります。

なお、仮差押では、弁護士費用とは別に、仮差押命令の発令を担保するために供託金を納付する必要があります。供託金の金額は、債権額をもとに裁判所が決定します。供託金は、訴訟等が終了することで戻ってくるお金ですが、それまでの間は法務局に供託したままとなり、利用することはできません。

判決が得られた後の強制執行を弁護士に依頼した場合には、請求額の2.5%~4%程度(最低額10万円)、報酬は拐取できた金額の2.5~4%程度となります。ただし、これは強制執行のみを依頼した場合の目安です。一般的には強制執行の前の訴訟から依頼しているケースが多いでしょうが、その場合は、強制執行は着手金のみかかり、報酬については訴訟を含めて回収額の10~16%程度とすることが多いです。

売掛金が回収不能になった場合の対応策

相手方が破産してしまうなどした場合は、法律上は売掛金債権がありますが、現実的な回収は得られないことになってしまいます。そういった場合に、どのような対処法を取るべきかについて解説します。

売掛金の放棄・損金処理をする

相手方の破産手続で配当見込みがない場合などでは売掛金を放棄するというのも一つの方法です。また、帳簿上は、売掛金は、売上等の債権として計上されますが、代金回収が不可能となった場合には損金処理して経費として計上し、課税対象額を下げることができます。

「取引企業倒産対応資金」の融資を検討する

取引先が倒産するなどして事業資金に困窮する事態に陥った場合には、日本政策金融公庫の取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)の利用を検討するのも一つの方法として挙げられます。売掛金50万円以上ある場合には、事業用運転資金として、セーフティネット貸付を受けられる可能性があります。

債権譲渡や売掛金担保ローンを利用する

ファクタリング業者等の債権買取りを事業としている業者に売掛金を売却したり、あるいは、売掛金を担保に貸付を受けるという売掛金担保ローンを利用したりすることで、売掛金を換価することができます。ただし、売掛金の額面通りに換価することはできず、各業者が定める割引率により売掛金債権額から控除された金額しか手にすることはできません。売掛金の全額が回収不可能となるリスクは回避することができます。

買掛金と相殺する

相手方に対して、買掛金などの支払うべきもの(反対債権)があれば、相殺することができます。相手方との契約内容により相殺を禁止することが定められている場合もありますが、民法の原則としては、売掛金の期限が到来している限りは、相手方の承諾なく一方的な意思表示により相殺できます(民法505条)。

売掛金を回収不能にしないために心がけるポイント

売掛金が支払ってもらえなかった場合を想定して解説してきましたが、そもそも売掛金の未払いが生じないように対策しておくことも重要なので、以下のポイントに気を付けていきましょう。

取引先の与信調査(信用調査)を徹底する

売掛金の未払いが生じないようにするために、予め相手方(取引先)の与信調査(信用調査)を行うというのが一つの方法として挙げられます。取引開始する段階で、調査会社に委託するなどして、相手方の経営者、決算書、資産状況、経営状態などのできる限りの信用調査を行っておくべきです。

ただ、会社の内部事情を正確に把握するのは難しく、また、取引開始後に経営状況が悪化するということもあるため、与信調査を行ったからといって、未払リスクがゼロになるわけではありません。また、取引開始後も定期的に相手方の与信調査を行い、与信管理を実践するようにしましょう。

取引先とこまめなコミュニケーションを欠かさない

取引先とのコミュニケーションを欠かさないということも一つの予防策となります。ふとした雑談の中からでも相手の経営状況が垣間見えてくることもあります。電話や面談等を日常的に行うことで、メールや書類のみで取引を行っていては見えてこないところが見えることもあります。

入金が遅延しないための仕組みを整える

相手方からの入金が遅延しないための仕組みを整えることも大切です。例えば、取引基本契約を結ぶ際に保証人を付けたり、相手方の機械設備に譲渡担保権を設定したりするなどしておくのも一つの方法です。ただ、これらは相手方の承諾がないとできませんので、取引開始時に交渉する必要があります。

決済代行サービスを活用する

入金が遅延しない仕組みとして最適なのは、決済代行サービスを利用するということでしょう。決済代行サービスは、身近なところでは、クレジットカード払いや電子マネー決済、QRコード決済を利用するというところです。これらの決済方法は、現金払いと同様ですので、未回収の問題はほぼ防止できると言えます。ただ、相手方の事業者がこれらの決裁サービスを導入している必要があります。

また、これらの決済方法以外にも、事業者間での決済についてサービス会社に回収を委託するという方法もあります。売掛金の回収などをすべて決済代行サービス会社に委託することで、未回収のリスクを避けることができます。ただ、こうした回収委託では、決済代行サービス会社への手数料を支払う必要があり、手元に入るお金が少なくなるというデメリットもありますので、導入するかどうかは慎重に検討しましょう。

売掛金の消滅時効までに適切な対応を行う

かつての民法のもとでは、債権の種類によって1~3年で時効消滅する短期消滅時効の制度がありましたが、平成29年(2017年)改正、2020年4月から施行されている改正民法により、売掛金を含めた債権の時効期間は、行使できることを知ったときから5年、あるいは権利行使できるときから10年として統一されました(民法166条)。

したがって、売掛金に関しては、基本的には5年で時効完成すると認識し、5年以内に訴訟等の法的手続を取るようにしましょう。

売掛金の回収は弁護士に依頼すべき?弁護士依頼のメリット

売掛金の回収を弁護士に依頼すべきかどうか、お悩みの方へ、弁護士に依頼するメリットをお伝えします。

相手方が態度を改める可能性がある

弁護士に回収を依頼すると、相手方への催告書等の相手方に送付する書面は代理人として弁護士の氏名が表示され、また、その後の交渉も弁護士が窓口となって行います。相手方からすると、弁護士が対応しているということは、未払いのまま放置すると仮差押えを受けたり、訴訟に至るリスクがあったりなど、強く認識することになります、直接交渉するよりも支払いに応じる可能性が高くなります。弁護士に依頼することでトラブル解決の可能性が高くなります。

回収の労力や負担を軽減できる

売掛金の請求は正当な権利行使ですが、正当であっても相手方に電話などして直接話をすることは心理的な負担・労力がかかります。相手方の事務所に直接訪ねていくのも労力の負担があります。また、聞きたくもない相手方の言い分を聞き続けなければならない場面もあります。当事者同士で交渉すると感情的になるなどして不要なトラブルを招きかねません。

弁護士に依頼すれば、相手方との交渉はすべて弁護士が行ってくれます。弁護士は相手方から話を聞き、交渉に必要な点を整理して伝えてくれますので、直接交渉するよりも負担や労力を大幅に軽減できます。

法的なサポートを受けることができる

弁護士に依頼することで、内容証明郵便の作成やその後の交渉、公正証書の作成、売掛金の回収保全のために行うべき仮差押え、訴訟提起など、どのように処理するのが最適か法的なサポートをしてくれます。支払いの交渉においても、保証人を付けたり、担保を付けるなどのアドバイスもしてもらえます。

まとめ

売掛金の未払いが生じた場合には以下の点を確認しましょう。

また、売掛金の未払いが生じないようにするためには以下のような方法があります。

売掛金の未払いというのは事業を行っていくうえで不可避な問題です。

未払いの額によってはこちらの経営状況が悪化してしまう等のリスクも考えられます。

売掛金を回収するにはどうすれば良いか、相手方との交渉や法律上の手段を含め、弁護士に相談すれば、事案に応じた最適な方法をアドバイスが得られるでしょう。

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この記事の調査・編集者
梶原美香
法律系SEOライターとして入社。何よりも読者第一であることを掲げ、読みやすく、理解しやすいコンテンツ制作を心がけている。離婚問題に注力している。