強制性交等罪とは?強姦罪からの変更点や今後の法改正についてわかりやすく解説!

強制性交等罪とは?強姦罪からの変更点や今後の法改正についてわかりやすく解説!

強姦罪は、平成29年改正前刑法に規定されていた犯罪の一種であり、男性が暴行や脅迫を用いて13歳以上の女性に対して姦淫をした場合に成立します。

いわゆるレイプのことで、非常に重い刑事罰が科されていました。

現在は強制性交等罪という名称に変わり、従来の強姦罪に比べて行為の対象は拡大され、刑事罰も重く課されるようになっています。

本記事では、強姦罪の定義や強制性交等罪との違いについて解説します。

また、強制性交等罪で逮捕される注意点や弁護士に依頼するメリット、現在改正が検討されている「不同意性交等罪」についても説明します。

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この記事を監修した弁護士
加藤孔明弁護士
加藤 孔明弁護士(神戸カトウ法律事務所)
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強姦罪とは?準強姦罪やそのほかの罪との違い

強姦罪や準強姦罪とH29年改正前刑法に規定されていた犯罪で、現行法ではそれぞれ強制性交等罪と準強制性交等罪という罪名に変わっています。

まずは、旧刑法で規定されていた強姦罪や準強姦罪などの基礎知識について解説します。

強姦罪|暴力や脅迫を用いて姦淫に及ぶ

強姦罪とは、改正前刑法第177条に規定されていた「暴行または脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した場合」または「13歳未満の女子を姦淫した場合」に成立する犯罪です。

法定刑は、3年以上の有期懲役と定められていました。

第百七十七条

暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

引用元:法務省「刑法の一部を改正する法律案新旧対照条文」

姦淫とは、いわゆる性交(セックス)のことで、男性が女性の膣内に陰茎を挿入する行為を指します。

つまり、キスやハグといった行為は含まれません。

また、条文に「女子を姦淫した」と書いてあるとおり、強姦罪の被害者は女性だけに限られています。

男性が被害に遭ったとしても、強姦罪が成立することはありませんでした。

準強姦罪|心神喪失や抵抗不能状態で姦淫に及ぶ

準強姦罪とは、改正前刑法第178条に規定されていた「女性の心神喪失や抗拒不能に乗じて姦淫した場合」に成立する犯罪です。

具体的には、お酒で酔わせて酩酊状態にさせてから性交に及ぶことなどが挙げられます。

罪名に「準」とついていますが、強姦罪に比べ罪が軽い訳ではなく、法定刑は強姦罪と同じ「3年以上の有期懲役」でした。

第百七十八条

(略)

2女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。

引用元:法務省「刑法の一部を改正する法律案新旧対照条文」

強姦致死傷罪|強姦・準強姦で被害者を死傷させる

強姦致死傷罪とは、改正前刑法第181条2項に規定されていた「強姦または準強姦をしたり、これらの未遂罪を犯したりしたことにより被害者を死傷させた場合」に成立する犯罪です。

既遂の場合だけでなく、未遂の場合も対象となっています。

法定刑は強姦罪や準強姦罪より重く、「無期または5年以上の有期懲役」と定められていました。

2第百七十七条若しくは第百七十八条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は五年以上の懲役に処する。

引用元:法務省「刑法の一部を改正する法律案新旧対照条文」

2017年に強姦罪から強制性交等罪へ変更(厳罰化)

2017年7月13日より、強姦罪は強制性交等罪に、準強姦罪は準強制性交等罪にそれぞれ変更されました。

これに伴い以下のように、どちらの犯罪も従来よりも犯罪の行為が拡大し、法定刑も重くなっています。

【強姦罪と強制性交等罪の主な違い】

改正前刑法

(強姦罪、準強姦罪)

現行刑法

(強制性交等罪、準強制性交等罪)

行為姦淫性交等
被害者女性女性、男性
告訴の有無親告罪非親告罪
法定刑3年以上の有期懲役5年以上の有期懲役

ここでは、法改正によって具体的にどのような変更がおこなわれたのかについて確認しましょう。

性交から「性交等」に拡大された

強姦罪では、「姦淫のみ」が犯罪の対象でした。

しかし、強制性交等罪では「性交等」と範囲が広がっており、性交類似行為の場合でも犯罪が成立するようになりました。

具体的には、以下のような行為をした場合に成立します。

  • 性交
  • 肛門性交(アナルセックス)
  • 口腔性交(オーラルセックス)

男性が被害者の場合でも成立する

強姦罪の条文には「13歳以上の女子」「13歳未満の女子」と規定されていました。

しかし、法改正に伴いこの文言はなくなり、「13歳以上の者」「13歳未満の者」と規定され、現行法では被害者の性別は問われないようになっています。

これにより男性も被害者として訴えることができます。

要するに、女性が暴行脅迫を用いて男性に対して性交等を迫った場合でも強制性交等罪が成立するのです。

告訴が不要な非親告罪に変更された

強姦罪は、改正前刑法第180条に規定されていたとおり「親告罪」でした。

親告罪とは、被害者が告訴しないと検察が起訴できない犯罪のことです。

つまり、被害者が加害者を訴える意思がなければ、刑事上の責任を問うことができませんでした。

しかし、現行法では非親告罪に変更されたため、被害者の告訴がなくても起訴することができます。

5年以上の有期懲役に厳罰化された

強姦罪・準強姦罪は、どちらも「3年以上の有期懲役」と規定されていました。

しかし、現行法の強制性交等罪と準強制性交等罪の法定刑は「5年以上の有期懲役」に変更され、法定刑の下限が上がることで厳罰化されています。

罰金刑はなく、原則として執行猶予もつかないため、有罪判決を受けた場合は刑務所へ服役する必要があるでしょう。

2023年3月に閣議決定された「不同意性交等罪」とは?

2023年3月14日に、政府は強制性交等罪と準強制性交等罪を一本化し、「不同意性交等罪」に変更する改正案を閣議決定しました。

改正の目的には、現行法の曖昧な基準をなくし、成立要件を明確にすることなどが挙げられています。

また、公訴時効の延長や性交同意年齢の引き上げなどもおこなわれる見込みとなっています。(※2023年5月28日時点の情報となります。)

(不同意性交等)

第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛(こう)門性交、口腔(くう)性交又は膣(ちつ)若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。

2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。

3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

引用元:刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案

強姦罪(強制性交等罪)で逮捕されるケース

一般的に、逮捕の要件は「被疑者が犯罪をしたことを疑うだけの相当な理由があること」と「被疑者が逃亡する虞や証拠隠滅する虞があること」の2つとされています。

ここでは、強姦で逮捕される可能性がある「逃亡の虞がある場合」と「証拠隠滅の虞がある場合」について解説します。

逃亡の恐れがある場合

逃亡のおそれとは、被疑者が捜査機関や裁判所に対して所在不明になる行為を指します。

被疑者の生活環境や前科前歴などの観点から検討されますが、たとえば、単身で定職がないなどの場合は、逃亡するおそれが高いと判断される傾向があります。

一方、身元引受人がいる、定職についている、住居が持ち家であることなどは、逃亡の可能性が低い事情として判断されます。

証拠隠滅の恐れがある場合

証拠隠滅のおそれとは、証拠を捨てたり、被害者や事件関係者に接触して供述を変更させたり、共犯者と口裏を合わせたりする行為を指します。

強姦事件では、加害者が被害者や目撃者を脅したり、口裏を合わせるよう強要したりすることも考えられます。

また、証拠となる写真や動画などの削除も容易です。

そのため、自首などの事情がない限りは、強姦事件では高い確率で逮捕されるでしょう。

強姦(強制性交等)をした場合の注意点

刑事事件には、有罪判決を受けた人が刑の執行を猶予される「執行猶予制度」や、起訴後勾留中の被告人の身柄を解放する「保釈制度」などがあります。

しかし、現行法の強制性交等罪では、法定刑の下限が5年と定められているため、これらの制度が利用できない可能性が高いといえます。

ここでは、強姦(強制性交等)をした場合の注意点について解説します。

有罪の場合は執行猶予が原則つかない

執行猶予とは、有罪判決を受けた人に対して、情状により一定期間刑の執行を猶予できる制度のことです。

執行猶予がつくケースは、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金のいずれかに限られています(刑法第25条)。

そのため、法定刑が「5年以上の有期懲役」と決まっている強制性交等罪の場合は、執行猶予がつくことはありません。

ただし、自首などの事情により減刑された場合には、執行猶予付き判決が出る可能性はあります。

保釈を獲得することが難しい

保釈とは、保釈保証金を裁判所に納付する代わりに、起訴後勾留中の被告人の身柄を一時的に解放してもらう制度のことです。

この保釈には、主に権利保釈と裁量保釈の2種類があります(刑事訴訟法第89条、第90条)。

  • 権利保釈:法律で定められた例外の事案を除き、必ず釈放が認められる制度のこと
  • 裁量保釈:特別な事情がある場合に裁判所の判断で被告人の釈放を認める制度のこと

権利保釈を利用できる場合は必ず保釈が認められます。

しかし、権利保釈には除外事由がいくつかあり、強制性交等罪は「1年以上の懲役にあたる罪を犯したとき」という除外事由に該当します。

そのため、権利保釈を利用することができません。

ただし、逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合では、裁量保釈が認められる可能性はあります。

強姦で逮捕された場合はすぐに弁護士に相談を

強姦で逮捕された場合は、刑事事件や性犯罪が得意な弁護士に相談・依頼するのが望ましいでしょう。

弁護士に依頼すれば、以下のようなサポートを受けられます。

なお、すでに逮捕されている場合は「当番弁護士制度」を利用するのもおすすめです。

1回限りですが、弁護士が被疑者のもとに来てくれて、無料でアドバイスをしてくれます。

【弁護士に依頼した場合に受けられる主なサポート】

  • 被害者に対する謝罪を伝えてくれて、示談交渉を進めてくれる
  • 早期釈放や不起訴処分を獲得するためのサポートをしてくれる
  • 再犯防止をするための環境整備などをサポートしてくれる
  • 無罪獲得のための証拠集めやサポートをしてくれる(否認事件の場合) など

まとめ|強姦は「強制性交等罪」として扱われる

旧刑法では強姦罪・準強姦罪として規定されていましたが、2017年7月以降はそれぞれ強制性交等罪と準強制性交等罪に変わっています。

これに伴い、犯罪となる行為は姦淫から性交等(性交類似行為を含む)へ拡大され、法定刑は3年以上の有期懲役から5年以上の有期懲役へと変更されました。

そのため、執行猶予の獲得などは難しくなっています。

執行猶予以外にも、早期釈放や不起訴処分などの獲得を目指したいなら、まずは弁護士に相談・依頼するのが重要です。

弁護士に相談・依頼すれば、被害者との示談交渉、家族や会社とのやり取り、取り調べに関するアドバイスなどのサポートが受けられます。

まずは「ベンナビ刑事事件」で、性犯罪が得意な弁護士を探してみましょう。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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