損害賠償・慰謝料請求
交通事故の慰謝料は自分で決められない!弁護士に依頼するとどう変わる?
2024.12.02
交通事故でけがをしてしまい通院することになったものの、適切な通院頻度がわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
実際、「毎日通院したほうが慰謝料を多く請求できる」といった情報もあるなかで、何が正しいのかを判断することは簡単ではありません。
本記事では、交通事故によるけがの通院頻度を相談できる窓口や入通院慰謝料を増額するためのポイントなどについて解説します。
交通事故後の通院について悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
結論からいうと、毎日通院しても慰謝料が必ず増えるとは限りません。
その理由は、入通院慰謝料の計算方法と関係があります。
まずは、入通院慰謝料の基本的な計算方法を紹介したうえで、慰謝料と通院頻度との関係性について解説します。
交通事故によるけがで通院・入院をしたときに請求できる慰謝料のことを、入通院慰謝料といいます。
入通院慰謝料を算定する方法は、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つに分かれており、このうち自賠責基準が最も金額が低いとされています。
自賠責基準 | 最低限度の補償を目的とした基準。最も低額になりやすい |
---|---|
任意保険基準 | 各任意保険会社が独自に定める基準。自賠責基準と同額かやや高い程度 |
弁護士基準 | 過去の裁判例に基づく基準。最も高額になりやすい |
上記のうち、自賠責基準と弁護士基準は明確な計算方法が公開されているので、詳しく見ていきましょう。
まず、自賠責基準による入通院慰謝料の計算式は以下のとおりです。
上記のうち、金額が低いほうが採用されます。
例えば、通院期間が90日・実通院日数が46日の場合、1つ目の式の計算結果は38万7,000円、2つ目の式の計算結果は39万5,600円となるので、より低額である38万7,000円を請求することが可能です。
一方、弁護士基準による入通院慰謝料は、軽症・重症に分けて、以下の表に基づき算出します。
例えば、重症の骨折で90日間通院したのであれば、73万円を入通院慰謝料として請求することになります。
弁護士基準では入通院慰謝料を通院期間に基づいて算出するので、通院頻度は基本的に関係しません。
一方、入通院慰謝料を自賠責基準で算出すると、通院頻度が影響するケース、影響しないケースが出てきます。
ここでは、自賠責基準による入通院慰謝料と通院頻度の関係性を詳しく見ていきましょう。
通院期間が60日の場合を想定した場合、通院頻度ごとの慰謝料額は以下のとおりです。
通院頻度 | 慰謝料 |
---|---|
毎日 | 25万8,000円 |
2日に1回 | 25万8,000円 |
3日に1回 | 17万2,000円 |
上記のとおり、毎日通院しても2日に1回通院しても入通院慰謝料は変わりません。
つまり、毎日通院したからといって必ずしも入通院慰謝料が高額になるとは限らないということです。
入通院慰謝料を増額するために、無理に毎日通院する必要はないといえるでしょう。
交通事故によるけがで通院する場合は、医師の指示に従い適切な頻度で通うことが大切です。
必要以上に毎日通院してしまうと、「本当に毎日通院する必要があったのか?」などと、治療の必要性・相当性が疑われてしまう可能性があります。
その治療が必要なものであったと証明できなければ慰謝料を減額されることがあるので、必ず医師の指示に従って通院するようにしてください。
交通事故の通院頻度は、原則として医師の指示に従うことをおすすめします。
しかし、「主治医に3日に1回通院するよう言われたが、納得がいかない」「けがが痛むので、通院頻度を上げたほうがよいのではないか」などの疑問がある場合は、以下のような窓口で通院頻度について相談することが可能です。
主治医の診断・説明に納得がいかない場合は、ほかの医療機関でセカンドオピニオンを受けてみるとよいでしょう。
別の医師の意見を聞けばより納得できる通院頻度や治療方法を知ることができるかも知れません。
ただし、セカンドオピニオンに必ず納得できるとは限らないので、いきなり転院を決めるのは避けましょう。
セカンドオピニオン目的で別の医療機関を受診する場合や転院を考えている場合は、以下の流れで進めるとよいでしょう。
「セカンドオピニオンを受けたい」という意思は、必ず主治医に伝えましょう。
主治医に伝えて紹介状や検査結果などの客観的なデータをもらうことで、セカンドオピニオン先の医師も今後の治療方針について判断しやすくなります。
また、転院する場合は保険会社にも必ず伝えておきましょう。
通院中は保険会社から治療費が支払われるので、転院の必要性を認めてもらえないと治療費を打ち切られる可能性があります。
保険会社とのトラブルを避けるためにも、連絡は忘れずおこなってください。
日弁連交通事故相談センターとは、自動車事故に関する相談を無料で受け付けている公益財団法人です。
全国157ヵ所に相談所が設置されており、電話か面談形式で相談することができます。
交通事故の問題を得意とする弁護士が多数在籍しているので、法律的な観点からアドバイスを受けられます。
面談形式で相談する場合は、診断書などの必要書類を用意したうえで最寄りの相談所に電話をして面談予約をします。
予約ができたら、実際に弁護士に会って相談をしましょう。
「1回あたり30分」「原則5回まで」といった時間制限・回数制限があるので、あらかじめ相談したい内容をメモしておくと安心です。
ただし、相談できるのは国内での自動車・二輪車事故の場合に限られます。
自転車と歩行者の交通事故は相談できないので注意しましょう。
【参考元】【公式】日弁連交通事故相談センター|弁護士が全国無料相談
「ベンナビ交通事故」では、インターネット上で交通事故トラブルが得意な弁護士を効率よく探すことができます。
ベンナビ交通事故とは、お住まいの地域やお悩みに合った弁護士を検索できるポータルサイトです。
交通事故のトラブルを多数解決してきた弁護士が多数掲載されており、「初回の面談相談無料」「休日の相談可」などの細かい条件を指定することができるので、自身の理想に近い弁護士を効率的に探せます。
弁護士は法律の専門家なので、「どのくらいの頻度で通院すれば適切な慰謝料を請求できるか」といった疑問について、法的な観点からアドバイスを受けられます。
また、弁護士基準で算定してもらうことで慰謝料を増額できる可能性も高いため、少しでも多くの慰謝料を受け取りたいと考えている方は、弁護士に一度相談してみるとよいでしょう。
交通事故によるけがで通院をした場合の慰謝料を少しでも多く請求するには、どうしたらよいのでしょうか。
ここからは、入通院慰謝料を増額するためのポイントを2つ紹介します。
弁護士基準を使えば、入通院慰謝料を増額できる可能性が高いでしょう。
弁護士基準とは、弁護士や裁判所が入通院慰謝料を算定する際に使う基準のことです。
慰謝料の算定基準には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つがありますが、このうち弁護士基準が最も高額とされています。
つまり、被害者が自力で慰謝料を請求するよりも、弁護士に依頼したほうがより高額な慰謝料を請求できるということです。
なお、後遺症が残ったときの後遺障害慰謝料についても、弁護士基準で算出すれば大幅な増額が期待できます。
自分の過失割合を小さくすることで、慰謝料を増額できる可能性が高くなります。
過失割合とは、加害者と被害者の交通事故に対する責任の割合のことです。
自らの過失割合の分だけ、請求できる慰謝料が相殺される仕組みになっています。例えば、被害者が支払った治療費が100万円だった場合、過失割合が「加害者:被害者=10:0」なら100万円全額を請求することが可能です。
一方、過失割合が「加害者:被害者=9:1」の場合は90万円しか受け取れず、自己負担が大きくなってしまいます。
過失割合は相手方の保険会社との交渉によって決まるため、交渉のなかで過失割合をできるだけ小さくするよう努めましょう。
しかし、保険会社は少しでも慰謝料を少なくするために、被害者に高めの過失割合をつけてくることがあるので注意しましょう。
保険会社は交渉のプロなので、あたかも被害者にも過失があるかのように強く主張してくることがあります。
交渉の際はすぐに相手の主張に乗らず、提示された過失割合が適切なのかきちんと見極めることが大切です。
交通事故の慰謝料を請求するなら、弁護士に依頼するのがおすすめです。
ここからは、慰謝料請求を弁護士に依頼する主なメリットを3つ紹介します。
弁護士に依頼するメリットの1つ目は、損害賠償を増額できる可能性が高いことです。
弁護士は、弁護士基準を使って入通院慰謝料を算定するため、自分で保険会社と交渉するよりも慰謝料を増額できるケースがほとんどです。
例えば、治療期間60日、実通院日数30日の場合の自賠責基準・弁護士基準の慰謝料を比較すると、以下のようになります。
上記のとおり、同じケースでも自賠責基準と弁護士基準では26万円以上の差があることがわかります。
また、後遺症が残った場合には、弁護士が適切な後遺障害等級認定を獲得してくれるため、後遺障害慰謝料や逸失利益などが高額になりやすいことも覚えておきましょう。
そのほか、交通事故では治療費・付添看護費・通院交通費・休業損害などさまざまな費用を請求できますが、請求項目に漏れがないかチェックしてもらえる点も大きなメリットといえます。
【参考記事】交通事故で弁護士を雇うデメリットは?慰謝料増額のメリットとの比較
弁護士に依頼するメリットの2つ目は、相手方との交渉を一任できることです。
入通院慰謝料は、加害者が加入している保険会社との交渉で決めることがほとんどです。
しかし、保険会社は慰謝料を少しでも低くしようと強く主張してきたり、高圧的な態度をとってきたりすることがあります。
被害者が一人で交渉に臨むことは可能ですが、対等に話し合い、有利な条件で慰謝料を請求することは決して容易ではありません。
そのうえ保険会社から心ない言葉を言われてしまい、心理的なストレスを抱えてしまうおそれもあるでしょう。
その点、弁護士に依頼すれば保険会社との交渉を任せることができます。
交通事故トラブルの解決実績が豊富な弁護士なら、交通事故に関する法律の知識も豊富なうえ交渉スキルにも長けています。
自分で交渉に臨むよりも精神的な負担を抑えられ、トラブルをスムーズに解決することが可能です。
保険会社との交渉に少しでも不安を感じるなら、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼するメリットの3つ目は、保険会社からの治療費の打ち切りについて対応してもらえることです。
交通事故によるけがで通院をしている間、保険会社から病院に対して治療費が支払われます。
しかし、治療期間が長引くと保険会社の負担が増えてしまうため、「そろそろ完治するころですので治療費を打ち切ります」などと言って、早期に治療費を打ち切ろうとすることがあります。
この場合、弁護士に依頼すれば、保険会社と交渉して治療費の打ち切りを延期できる可能性があります。
「治療費を打ち切られたら治療をやめないといけないのか?」と悩む必要がなくなり、安心して治療を続けることができます。
交通事故によるけがで通院する場合、医師の指示に従って適切な頻度で治療を受けることが大切です。
ここでは、自己判断で必要以上に毎日通院した場合のリスクを3つ紹介します。
自己判断で毎日通院をした場合、慰謝料や治療費を減額されるおそれがあります。
入通院慰謝料は、必要性・相当性が認められる範囲内でしか請求できません。
必要以上に通院してしまうと、保険会社との交渉の際に「本当は治療の必要がないのにわざとたくさん通院したのではないか」と疑われてしまいます。
毎日通院すべき理由を医学的に証明できなければ、かえって慰謝料が減ってしまう可能性があるので、通院頻度については必ず医師の判断をあおぐようにしましょう。
必要以上に通院していると、治療費を早期に打ち切られる可能性がある点にも注意が必要です。
多くの保険会社は、治療費や慰謝料を少しでも抑えようと画策してきます。
過剰に通院していると、その分保険会社の負担が大きくなることから、早期に治療費打ち切りに乗り出してくる可能性が高くなってしまうのです。
治療費の支払いを打ち切られた場合、残りの治療費は自分で負担しなければなりません。
自己負担を抑えて適切な慰謝料を受け取るためにも、過剰に通院することは避けましょう。
自己判断で過剰に通院した場合は、示談成立までに時間がかかる可能性がある点にも注意しましょう。
毎日通院がしばらく続くと、保険会社から「損害賠償を増やすために通院しているのではないか」と疑われてしまいます。
一度疑われてしまうと、毎日通院した理由を証明するために根拠となる資料を集め、それを基に立証する必要があるため手間と時間がかかります。
結果的に、慰謝料を受け取るまでに時間がかかってしまうので、できるだけ早く問題解決できるよう自己判断で必要以上に通院しないようにしましょう。
ここからは、交通事故の通院に関してよくある質問をまとめています。
同様の疑問を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
整骨院・接骨院を利用する場合も、医師の指示に従って適切な頻度で通院しましょう。
慰謝料は、必要かつ相当と認められる治療に限り支払われます。
整骨院・接骨院を利用する場合でも、治療の必要性・相当性が重要であることは変わらないので、必ず医師の判断に従いましょう。
なお、整骨院・接骨院に通う場合でも、最低月に一度は病院の整形外科にも通うようにしてください。
整骨院・接骨院への通院を続けるには定期的に医師の診察を受け、整骨院への通院の必要性を都度判断してもらう必要があります。
医師の許可を得ないままでいると「整骨院での治療は本当に必要だったのか?」と疑われてしまい、場合によっては慰謝料や治療費が減額されてしまうおそれがあります。
相応の慰謝料を受け取るためにも、病院と整骨院・接骨院を適切に併用しましょう。
弁護士費用特約とは、弁護士費用の一部が保険会社から補償される自動車保険の特約のことです。
弁護士に依頼する場合、高額な費用がかかることが多いため、全て自分で支払うのは金銭的に大きな負担がかかります。
しかし、弁護士費用特約があれば多くの場合、相談料10万円、依頼にかかる費用300万円まで補償を受けることが可能です。
交通事故トラブルの弁護士費用はおおむね300万円までに収まることが多いため、自己負担なしで弁護士に依頼できるケースがほとんどです。
弁護士費用を支払えるか不安な方は、加入している自動車保険に弁護士費用特約が付帯しているかチェックしてみるとよいでしょう。
なお、自身で弁護士費用特約に加入していなくても、配偶者・同居の親族などが加入していれば補償を受けられる可能性があります。
加入している自動車保険に弁護士費用特約がなかった場合は、家族の自動車保険の補償内容も確認してみてください。
交通事故によるけがで通院する場合は、必ず医師の指示に従って適切な頻度で通うようにしましょう。
自己判断で過度に通院してしまうと、かえって慰謝料を減額されてしまう可能性があるので注意が必要です。
適切な通院頻度がわからない場合や、慰謝料を少しでも多く請求したい場合は、弁護士に依頼してみるとよいでしょう。
弁護士は法律の専門家なので、法律的な観点から適切な通院頻度についてのアドバイスを受けられるほか、慰謝料増額のための交渉を任せることができます。
自力で交渉するよりもトラブルをスムーズに解決でき、慰謝料も大幅に増額できる可能性が高いでしょう。
交通事故問題に強い弁護士は、「ベンナビ交通事故」で簡単に検索することができます。
お住まいの地域や相談内容に合った弁護士を効率的に見つけられるので、依頼先に悩んだときはうまく活用してみてください。