自転車事故で保険未加入だと補償はどうなる?4つの問題と解決策

自転車事故で保険未加入だと補償はどうなる?4つの問題と解決策

自動車の交通事故と違い、自転車事故の被害者になると、十分な補償を受けられない可能性があります。

加害者が保険に加入していない可能性があるからです。

三井住友海上が実施した調査によると、自転車利用中7割以上が事故を経験しているものの、6割近くの方が自転車保険未加入の状態でした(2022年6月現在)。

この記事では、自転車事故で相手が保険未加入だった場合の問題点や、その解決策について解説します。

自転車事故で保険未加入だった場合には、被害者も加害者も大きな損害と責任を負う可能性があります。

過去の裁判例や自転車事故の現状なども紹介しますので、参考にしてみてください。

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結論からいうと、自転車事故で保険未加入だった場合は、当事者同士で直接示談交渉をする必要があります。示談交渉をスムーズに進めたい場合は、弁護士に相談・依頼することをおすすめします

弁護士の相談・依頼することで以下のようなメリットを得ることができます。

  • どれくらいの賠償額が発生するかがわかる
  • 示談交渉をスムーズに進めるためのアドバイスがもらえる
  • 依頼した場合、交渉で必要となる書類作成や資料集めなどを代行してくれる
  • 依頼した場合、法的に妥当な金額の支払いを受けられる可能性が高まる

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この記事を監修した弁護士
大隅愛友 弁護士
大隅 愛友弁護士(弁護士法人ベストロイヤーズ法律事務所)
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自転車事故で保険未加入だった場合の4つの問題点

自転車事故に遭ったときに保険未加入だった場合には、当事者同士が直接示談交渉をしなければなりません。

保険に加入していないことで、次のような問題が発生します。

①賠償金の支払いを保険に頼れない

自転車事故の加害者が保険に加入していなかった場合、賠償金は加害者本人が負担しなければなりません。

自転車事故の加害者側になると、事故による被害が大きかった場合には支払いきれないほど多額の賠償金を請求される可能性があります。

実際、被害者に重度の障害を負わせた裁判例では、1億円近い額の支払いを命じられたケースもあるのです。

被害者側であれば、加害者に資力がなければ、賠償金の支払いを約束したとしても十分な支払いを受けられないこともあるでしょう。

②示談交渉が困難

当事者同士で直接話をすることで、感情的になったり自己防衛的になったりして、示談交渉が困難になる可能性があります。

自転車事故で保険未加入だった場合には、被害者と加害者が話し合って過失割合や賠償金額などを決めなければなりません

自転車事故では、加害者だけが100%悪いというケースはあまり考えられません。

そのため、被害者の過失がどれだけあったかを検証し、それによって加害者の損害賠償を割り引くことになります。

過失割合は、自転車事故では裁判例もまだ少なく、自動車事故のようにドライブレコーダーもないため、決めるのが困難です。

特に当事者同士で話し合うと責任の押し付け合いになり、話が進まないことも考えられます。

賠償金額も同様に、法律的な専門知識がないとお互いに納得できる金額を決めることが難しいでしょう。

法律や交通事故の知識がない当事者同士で、示談交渉をスムーズに進めるのは非常に困難です。

③後遺障害の損害賠償算定が難しい

自転車事故の場合、後遺障害の損害賠償を算定する機関がありません。

そのため、損害賠償算定が難しくなります。

自動車事故であれば、後遺障害認定は自賠責保険会社を通して調査事務所が判定し、判定結果をもとに加害者と示談交渉するという仕組みができています。

しかし、自転車事故の場合はこのような後遺障害認定制度がありません。

そのため、被害者も加害者も保険に加入していなかった場合、被害者は自分自身で診断書を準備し、後遺障害等級のどの程度に該当するかを証明しなければなりません。

その場合、根拠が乏しいと加害者側が争うことも十分に考えられ、交渉での解決が難しくなる可能性があるでしょう。

④事故を起こしたのが未成年の場合請求が困難なケースも

加害者が未成年の場合、十分な資力がないために十分な賠償を受けられない可能性があります。

未成年の場合、民法では親が監督義務者として責任を負うこととされています。

民法の規定は以下のとおりです。

(責任無能力者の監督義務者等の責任)
第七百十四条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

ただし、未成年でも、本人に責任能力があると判断される場合は、親ではなく未成年本人が損害賠償責任を負うことになります。

その際、法律上は親の資産から賠償額を支払う義務はありません。

責任能力は、過去の判例では12歳または13歳以上とされているため、中学生程度であれば本人に賠償責任があると判断されることも十分に考えられます。

通常中学生に自分名義の資産や収入があるとは通常考えにくいため、未成年が加害者の場合は請求が困難になるでしょう。

自転車事故で保険に加入していれば受けられる補償

自転車事故で保険に加入していたなら、どのような補償が受けられるのでしょうか。以下で、パターン別に解説します。

自転車対車・バイクの場合

自分が自転車で相手が車やバイクだった場合、相手側の過失が大きければ、相手の自賠責保険や任意の自動車保険から補償を受けられます

自賠責保険はバイクや自動車に乗る際には加入が義務づけられているため、たとえ相手が任意保険に加入していなかったとしても、自賠責保険から最低限の補償は受け取ることができるでしょう。

ただし、自分の方の過失が大きかった場合には、自分が加入する自転車保険などから相手側の被害を補償しなければなりません。

その事故で自分がけがをした場合も、自分の加入する自転車保険から補償を受けられます。

自転車対歩行者の場合

自分が歩行者で自転車に接触されてけがを負ったような事故では、加害者が加入する自転車保険や、自動車保険の特約などから補償を受けることができます。

自賠責保険は、自動車やバイクが関連していない事故には適用されません。

そのため、自転車事故の場合は、相手の自賠責保険では補償されません

相手が任意保険の特約や自転車保険に加入していなければ、保険会社からの補償は受けられず、相手に直接請求する必要があります。

自転車事故の現状

ここまで自転車事故が発生した際に保険に未加入だった場合の問題点や、加入してれば受けられた補償について解説しました。

では、実際自転車事故はどの程度発生しており、自転車保険はどの程度必要とされているのでしょうか。

以下で、国土交通省の調査データをもとに解説します。

自転車事故の調査結果

国土交通省の調査によると、自転車事故の発生件数自体は、年々減少が続いています。

対して自動車対歩行者の事故件数は減少せず、横ばい状態です。

また自転車同士の事故は、2015年から増加傾向が続いています。

自転車事故の年齢層の統計では、16歳から19歳が最も多く、また未成年の割合は全体の38%にのぼることがわかっています(2017年)。

自転車事故のよくある発生原因としては、以下のような行為が考えられます。

  • スマートフォンを操作しながら運転している
  • 夜、ライトを点けずに運転している
  • 友人と並んで会話しながら運転している
  • 一旦停止を無視

未成年者が起こした自転車事故の被害者のなかには、加害者が保険に加入していなかったことで、十分な補償を受けられない方もいるでしょう。

参照元:自転車事故の損害賠償に係る現状について

自転車事故で保険未加入は条例違反の可能性も

国土交通省では、自転車事故による被害者救済のため、都道府県に対し、自転車損害賠償責任保険への加入を義務付ける条例の制定を要請しています。

現在条例で自転車損害賠償責任保険への加入を義務付けているのは東京都、大阪府などを含む30都府県で、その他9の自治体で努力義務とされています。

そのため、居住する地域によっては、自転車保険に加入せずに自転車に乗ることは条例違反となり、処罰される可能性もあるのです。

地方公共団体の条例の制定状況
条例の種類都道府県
義務宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、新潟県、静岡県、岐阜県、愛知県、三重県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
努力義務北海道、青森県、茨城県、富山県、和歌山県、鳥取県、徳島県、高知県、佐賀県

引用元:道路:自転車損害賠償責任保険等への加入促進について – 国土交通省

加入すべき保険

国土交通省では、加入すべき自転車保険の条件を、以下のように指定しています。

・補償内容は対人賠償(死亡・けがなど)
・支払限度額は1億円以上

自転車事故の補償を受けられる保険には、個人賠償責任保険やTSマーク付帯保険があります。

個人賠償責任保険は本人または同居家族が負った損害賠償責任を補償します。

自動車保険、火災保険または傷害保険の特約として付帯されていることもあります。

TSマーク付帯保険とは、自転車安全整備店に勤務する自転車安全整備士が点検し、安全だと判定した自転車に貼られる「TSマーク」に付帯する保険です。

TSマークが貼られてから1年以内に発生した重度な自転車事故の損害賠償を補償します。

自転車事故で保険未加入は危険|高額賠償命令が出た裁判例

自転車は運転免許も不要で、未成年からお年寄りまで運転することが可能です。

しかし、最近の自転車では時速20キロ以上の速さを出すこともできるため、人と衝突すれば大きな事故に発展することも十分考えられます。

以下は、自転車事故で高額賠償が命じられた裁判例の一部です。

自転車事故で高額賠償が命じられた裁判例

参照元:自転車事故の損害賠償に係る現状について|国土交通省

神戸地方裁判所のケースでは、加害者は小学校5年生の少年でした。

自転車で坂を下っていた少年が歩行中の62歳の女性と衝突、女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となりました。

加害者の少年に対し神戸地方裁判所は、9,521万円の損害賠償を命じています。
【神戸地方裁判所 平成 25年7月4 日判決】

東京地方裁判所の事件は、被害者男性に重篤な障害が残ったケースです。

男子高校生が自転車を運転中、横断歩道のかなり手前の歩道から斜めに横断歩道に侵入し、対向車線を自転車で直進してきた 24 歳会社員男性と衝突し、会社員に言語機能喪失等の重大な障害を負わせました。

この事件で東京地裁は男子高校生に対し、9,266万円の賠償を命じています。
【東京地方裁判所 平成 20年6月5日判決】

このように、自転車と歩行者、または自転車と自転車の場合、打ちどころによっては被害者を死亡させたり、重篤な障害を負わせたりする可能性もあります。

裁判になればその責任として1億円近い金額の支払いを命じられることもあるため、保険に未加入の状態で自転車に乗ることは非常に危険だといえるでしょう。

自転車事故で保険未加入なら弁護士に相談すべき理由

実際に保険未加入で自転車事故が発生してしまったら、交通事故に注力している弁護士に相談・依頼をしましょう。

自転車事故といえども、交通事故には違いありません。

交通事故を弁護士に依頼することには、以下のようなメリットがあります。

示談交渉がスムーズに進む

まずは、法律問題や交通事故の基準に詳しい弁護士が代理人として相手と交渉するため、示談交渉がスムーズに進みます。

事故の当事者同士で話し合いをすると、相手が自己弁護に終始したり、お互いに感情的になったりして、なかなか話がまとまらないこともあるでしょう。

交渉の上で必要となる書類の作成や資料集めなども代行してもらえます。

弁護士に依頼することで相手との対応をすべて任せられるため、精神的な負担も大幅に減少</spanするでしょう。

被害者側の場合は、治療にゆっくり専念できます。

法的に妥当な賠償額になる

弁護士に依頼することで、法的に妥当な金額の支払いを受けられる可能性が高まります

相手が話し合いに応じない場合には、訴訟や強制執行などの法的手続きをとることもできるでしょう。

加害者側であっても、弁護士に依頼することで納得のいく示談内容にまとめられるため、法外な請求を受けることもないでしょう。

弁護士が法律の専門家として話し合いをまとめますので、感情的な衝突もなく、冷静に話し合えるでしょう。

まとめ

自転車事故で自転車保険に加入していなかった場合、被害者側は十分な補償を受けられない可能性があります

自転車保険未加入者が事故を起こした場合のデメリットには、以下の点が挙げられます。

  • 賠償金の支払いを保険会社に頼れない
  • 相手との示談交渉が困難
  • 後遺障害認定の損害賠償額算定が困難

自転車保険の普及は都道府県によっては条例で義務づけられているところもありますが、まだまだ一般的だとはいえないでしょう。

万が一自分が自転車事故の被害者になり、相手が保険に未加入だったときには、弁護士に相談・依頼しましょう

弁護士が代理人として相手と交渉することで、法的に妥当な賠償額で示談を成立させることができるでしょう。

相手と直接話し合わずに済み、治療にも専念できます。

自転車事故の交渉を弁護士に任せることで、相手が保険に加入していなかったとしても、適切な補償を受けることができるでしょう。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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