- 「結婚する気がないのに相手に近づき、金銭を要求した」
- 「親族の医療費や結婚資金といった理由を口実に、お金を要求した」
こうした行為は、結婚詐欺として刑事責任を問われる可能性があります。
とくに、たとえ「恋愛感情があった」「相手も納得していた」と主張しても、客観的に見て詐欺の要件を満たしていれば、犯罪と判断されることがある点には注意が必要です。
本記事では、結婚詐欺で逮捕される具体的なケースや、詐欺罪が成立する条件、逮捕後にどうなるのか、そして少しでも軽い処分を目指すためのポイントについて解説します。
「自分の行為は詐欺になるのだろうか」「今からできる対応はあるか」といった不安を抱えている方に向けて、正しい判断と早めの対処のために役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
結婚詐欺によって逮捕される可能性は十分ある!
結婚詐欺とは、相手と結婚する意思がないにもかかわらず、結婚をほのめかして相手を信用させ、金銭をだまし取る行為です。
そして、結婚詐欺は刑法第246条第1項で定められている「詐欺罪」に該当することが多いので、逮捕される可能性は十分にあります。
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
たとえば、最初から相手をだます目的で近づき、金銭を受け取った場合には、「人を欺いて財物を交付させた」と判断されます。
そのため、被害者が警察に相談すれば、捜査がおこなわれたのち加害者が逮捕されるケースもあるのです。
「うまくごまかせばバレない」と思っていても、法的には重い責任を問われることがあるので、甘く見てはいけません。
結婚詐欺を理由に警察に逮捕される場合の2つの要件
たとえ詐欺にあたる行為があったとしても、必ずしも逮捕されるわけではありません。
逮捕の要件を満たさない限りは、逮捕されないのが原則です。
結婚詐欺の場合、逮捕の要件は以下の2つです。
- 結婚詐欺をおこなったと疑われる事情があること(逮捕の理由)
- 逃げるおそれや証拠を隠す可能性があること(逮捕の必要性)
それぞれの要件について、詳しく解説します。
1.結婚詐欺をしている疑いがあること
結婚詐欺で逮捕されるひとつ目の要件は「結婚詐欺をしている疑いがあること」です。
単なる恋愛トラブルとは異なり、「最初から結婚する意思がないにもかかわらず、相手を信じ込ませて金銭をだまし取った」といった明確な詐欺の意図が疑われる場合、警察が捜査に乗り出す可能性が高くなります。
たとえば、以下のような事情があれば、詐欺の疑いが高いと判断されやすくなるでしょう。
- 初めから相手を騙すつもりで近づいた
- 金銭を騙し取るために嘘をついた
- 被害者が加害者の嘘を信じて、金銭を手渡した
2.逃亡や証拠隠滅の可能性があること
結婚詐欺で逮捕される2つ目の要件は「逃亡や証拠隠滅の可能性があること」です。
警察は、被疑者が今後の捜査や裁判に協力しない可能性があると考えた場合、身柄を確保するために逮捕することがあります。
たとえば、以下のような事情があれば、逃亡や証拠隠滅の可能性があると判断されやすくなるでしょう。
- 金銭を受け取ったあと、突然連絡が取れなくなり所在が不明になっている
- 被害者とのLINEやメールなどを削除している
- すでにほかの被害者が複数存在し、事件の全容解明のため証拠の保全が必要とされている
結婚詐欺を理由に逮捕された場合の3つのデメリット
結婚詐欺で逮捕されると、以下のようなデメリットが生じます。
- 身柄を拘束される
- 逮捕歴が付くことになる
- 実名報道をされるリスクがある
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
1.身柄を拘束される
結婚詐欺で逮捕されると、基本的に警察署の留置場などに身柄を拘束されます。
逮捕後は、最長72時間にわたって警察や検察による取り調べがおこなわれます。
その後、勾留が認められると、さらに最長20日間身柄を拘束されたままになります。
身柄拘束中は、外部と連絡がとれず、当然仕事や学校を休まなければなりません。そのため、欠席や欠勤が続いたことを理由に、退学・解雇処分を受ける可能性も出てきます。
社会とのつながりがほぼ断たれるので、精神的にも大きな負担となるでしょう。
2.逮捕歴が付くことになる
結婚詐欺で逮捕されると逮捕歴が付いてしまう点もデメリットです。
逮捕歴は、逮捕された時点で公的に記録されます。
不起訴処分や無罪判決を受けた場合でも、逮捕歴自体は消えることなく残り続け、基本的に一生消えることはありません。
逮捕歴そのものが日常生活に悪影響を及ぼすことはありませんが、再び刑事手続きにかかった際に再犯の可能性があるとみなされ、量刑の判断において不利に評価される可能性があります。
3.実名報道をされるリスクがある
結婚詐欺で逮捕されると、実名報道をされるリスクもあります。
「結婚詐欺くらいで実名報道はないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
もちろん、実名報道がされるかどうかは報道機関次第ではあるものの、社会的関心の高い事件では、マスコミによる報道対象となることがあります。
そして、インターネット上では一度出回った情報は半永久的に残り続けます。
たとえその後不起訴処分や無罪判決になったとしても、「結婚詐欺で逮捕された」という情報がネット上に残り続けてしまうのです。
その結果、就職や転職の際に不利になったり、これまでの人間関係が壊れたりするおそれがあるでしょう。
実際に結婚詐欺(詐欺罪)で警察に逮捕された事例2選
ここでは、実際に警察に逮捕された結婚詐欺の事例を紹介します。
同様の手口をおこなった場合には、同じリスクにさらされる可能性があるということを肝に命じておきましょう。
1.グループで結婚詐欺を仕組んで現金をだまし取った事例
2024年7月、30代の男性会社員から現金をだまし取ったとして、Aさん・Bさん・Cさんの3名が詐欺の疑いで逮捕されました。
本事件では、A・B・Cがそれぞれ以下のような役割を担って犯行に及んでいます。
- Aさん(無職の男性):事件の中心的な役割
- Bさん(飲食店で働く女性):実行役
- Cさん(建築業の男性):サポート役
Bさんは、以前から男性会社員に対して「結婚する意思がある」と思わせ、信頼関係を築いていました。
その事実を知っていたAさんが男性会社員に対し、「Bさんは自分に50万円の借金がある。
あなたが金を返さなければ、この女を好きにしていいのか」といった脅すような言葉を使い、実際には存在しない借金を理由に金銭支払いを要求しました。
男性会社員はその言葉を信じ、2回に分けて合計45万円を振り込んでしまいました。
また、男性会社員は、本件以外にも合計300万円~400万円ほど支払っていたと話しています。
【参考元】「この女を好きにしていいのか」結婚詐欺の疑い 男女3人を逮捕 熊本 | TBS NEWS DIG (1ページ)
2.結婚する意思がないのに相手をだまして手術費用を受け取った事例
2024年11月、東京都八王子市に住む30歳の男性が、詐欺の疑いで逮捕されました。
警察によると、男性は2019年2月初旬、マッチングアプリを通じて北海道旭川市在住の37歳の女性と知り合い、直接会った際に「将来は結婚しよう」などと話し、交際をスタートさせました。
しかし、実際には結婚する意思がなかったにもかかわらず、男性は女性に対して、「脳腫瘍が見つかった」「手術しなければ死ぬ」といった嘘のメッセージを送り、2019年2月中旬、女性から4万円を口座に振り込ませました。
女性が金銭を振り込んだ直後から男性との連絡が途絶えたため、同年4月に「お金を貸した相手と連絡が取れなくなった」と警察に相談したことで、事件が明るみになりました。
その後、警察は約5年半にわたり男性の行方を追い、2024年11月28日に東京都内で身柄を確保しました。
男性は「嘘をついてお金を借りたのは事実だが、返すつもりだった」と供述しています。
【参考元】「いずれ結婚しよう」→「脳腫瘍が見つかった…」「手術費用が足りない…」“結婚詐欺”で4万円だまし取った30歳の男を逮捕 アプリで知り合い半月で振り込ませ連絡つかなくなる
結婚詐欺による逮捕や勾留を回避するための3つのポイント
結婚詐欺に関与してしまった場合でも、適切な対応を早めに取ることで、逮捕や勾留、不起訴処分を回避できる可能性があります。
とくに重要になる対応は、以下の3つです。
- 被害者との示談を成立させる
- 早めに自首や出頭をおこなう
- 刑事事件が得意な弁護士に依頼する
ここから、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
1.被害者との示談を成立させる
結婚詐欺での逮捕を避けるためには、できるだけ早く被害者と示談を成立させることが重要です。
示談が成立すれば、警察や検察は「逃亡や証拠隠滅のおそれが低い」と判断しやすくなり、逮捕を回避できる可能性が高まります。
また、示談が成立していると「不起訴処分」となる可能性が高くなります。
不起訴とは、検察官が「起訴の必要なし」と判断し、事件を終わらせる処分です。
検察官は起訴・不起訴の判断にあたって、事件の内容、証拠の状況、加害者の反省態度、被害者の処罰感情などを総合的に考慮します。
なかでも、被害弁済や謝罪、被害者が処罰を望んでいない旨が示されている示談書の存在は、被疑者にとって有利な事情とされます。
不起訴になれば、前科はつかず、今後の生活や仕事への影響も最小限に抑えられるでしょう。
2.早めに自首や出頭をおこなう
結婚詐欺での逮捕を回避するには、早めの自首や出頭を検討することも大切です。
自首とは、事件が捜査機関に発覚する前に、自らその犯罪事実を申告することをいいます。
自首した場合には刑を軽くできる旨が刑法に定められているため、自首をすることで刑罰が軽減される可能性が高いです。
また、自首をしていれば「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」と判断されやすく、逮捕を回避できるだけでなく、不起訴処分となる可能性も高まります。
ただし、警察がすでに犯人を特定している場合は「自首」とは認められません。
この場合は「出頭」として扱われます。
出頭には法律上の減軽効果はありませんが、自ら進んで警察に出向いたという事実は、反省の意思があると受け取られやすく、身柄拘束を避けるうえで有利な判断材料になります。
3.刑事事件が得意な弁護士に依頼をする
逮捕や勾留を本気で避けたいのであれば、刑事事件を多く扱っている経験豊富な弁護士への早期依頼が欠かせません。
弁護士に依頼することで、以下のようなさまざまなサポートが受けられます。
- 逮捕前のアドバイスや警察への対応支援
- 勾留を回避するための弁護活動
- 裁判に至った場合の量刑軽減に向けた弁護
- 被害者との示談交渉の代理・サポート
- 自首に関する助言や同行支援
状況に応じて適切に弁護をしてもらうことで、処分の軽減や前科回避につながる可能性が高まります。
さいごに|詐欺事件が得意な弁護士はベンナビ刑事事件で探せる
本記事では、結婚詐欺における逮捕の可能性について、わかりやすく解説しました。
結婚詐欺に関与してしまった場合、詐欺罪として逮捕される可能性は十分にあります。
逮捕されると、長期間にわたって身体を拘束されたり、実名で報道されたりするおそれもあります。
こうした事態を避けるためには、被害者との示談の成立や自首といった対応を早めに取るのが重要です。
適切に対応するためには、刑事事件に強い弁護士のサポートが欠かせません。
とはいえ、どの弁護士に相談すればよいのか迷ってしまう方も多いでしょう。
そんなときに活用できるのが、「ベンナビ刑事事件」です。
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早めの行動が、リスクの軽減につながります。
少しでも不安がある場合は、ベンナビ刑事事件で信頼できる弁護士を探しましょう。

