- 「突然の事故で相手にけがをさせてしまった」
- 「このまま何もせずにいて大丈夫だろうか」
交通事故の加害者となってしまい、このような不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
交通事故の加害者には、以下のような責任が生じるため、何もせずに放置すると取り返しがつかない事態になるおそれがあります。
刑事責任 | 刑事事件に発展した場合は、懲役や罰金などの刑罰を受けることになる。 |
民事責任 | 被害者に対する損害賠償責任。加害者は被害者に対して慰謝料や車の修理費、治療費などを支払う必要がある。 |
行政責任 | 運転免許に対する処分。事故の内容に応じて免許停止や免許取り消しなどの処分を受ける可能性がある。 |
そのため、交通事故を起こして加害者となってしまった場合は、いち早く適切な窓口へ相談し、その後の対応を検討しなければなりません。
本記事では、交通事故の加害者となってしまった方に向けて、弁護士への無料相談が可能な窓口、弁護士に依頼するメリットや推奨されるケース、さらに弁護士費用の相場や支援制度の活用方法まで、必要な情報をわかりやすく解説します。
交通事故加害者が弁護士の無料相談を利用できる窓口2つ
交通事故の加害者になってしまった場合、早めに弁護士に相談することが重要です。
しかし、「費用面が不安で相談をためらっている」「どこに相談すればいいかわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、交通事故加害者が無料で相談できる窓口を2つ紹介します。
ベンナビ | 交通事故加害者に強い弁護士に無料相談が可能
ベンナビは、交通事故に関するトラブルに注力している弁護士を探せるポータルサイトです。
交通事故の加害者側の対応を得意とする弁護士が多数掲載されており、無料相談に対応している法律事務所を絞り込んで検索することも可能です。
たとえば「加害者としての相談に対応してくれる弁護士を探したい」「逮捕や勾留を避けるための助言がほしい」といったニーズにも応じた弁護士を見つけやすくなっています。
オンライン相談や休日対応に対応している事務所も掲載されているため、仕事の合間や遠方からの相談にも便利です。
まずはベンナビを活用し、条件に合った弁護士を見つけてみましょう。
日弁連交通事故相談センター|全国の相談所で最大5回まで弁護士に無料相談が可能
交通事故の加害者となってしまったときに相談できるもうひとつの窓口は、「日弁連交通事故相談センター」です。
日弁連交通事故相談センターは、日本弁護士連合会が運営する相談窓口で、交通事故に関する法的相談を無料で受けることができます。
電話相談は通話料・相談料ともに無料、さらに対面での面接相談も1件あたり30分程度を原則として、最大5回まで無料で利用可能です。
また、必要に応じて弁護士による示談のあっせんや、紛争の審査を依頼できる場合もあります。
民間の法律事務所と比べて、より中立的な立場からのアドバイスを受けたい方にとって有効な選択肢です。
最寄りの相談所は公式サイトから検索可能ですので、気になる方は一度確認してみてください。
交通事故の加害者が弁護士に相談・依頼する7つのメリット
交通事故の加害者が弁護士に相談・依頼することには、多くのメリットがあります。
ここでは、代表的な7つのメリットを紹介します。
示談交渉をスムーズに進められる
交通事故の加害者になってしまったときに弁護士に相談・依頼する一つ目のメリットは、被害者との示談交渉をスムーズに進められることです。
交通事故の加害者が被害者と直接交渉をおこなう場合、感情的なしこりが残りやすく、話し合いがうまく進まないことも珍しくありません。
特に被害者がけがを負っている場合は、加害者に対して強い怒りや不信感を抱いている可能性もあり、冷静な話し合いができないこともあります。
その点、弁護士が介入すれば、法律の専門家として中立かつ冷静な立場から交渉を進めることができ、被害者側も安心して話に応じやすくなります。
損害賠償や慰謝料の交渉においても、法的根拠に基づいた主張ができるので、無理のない条件で早期に合意を目指すことが可能です。
また、弁護士が同席することで、後のトラブルを防止する適切な示談書を作成できるのも大きなメリットといえます。
どのような刑事処分を受ける可能性があるか見込みがわかる
交通事故が刑事事件として扱われる場合、加害者は過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪などの罪に問われ、罰金刑や懲役刑、執行猶予付き判決などが下される可能性があります。
しかし、こうした処分がどのように決まるのか、加害者本人だけで判断するのは難しいのが実情です。
その点、弁護士に相談すれば、過去の類似ケースや裁判例などを踏まえたうえで、今後の流れや見通しについて具体的なアドバイスを受けられます。
「不起訴になる可能性はあるのか」「起訴されたらどうなるのか」「執行猶予がつく見込みはあるのか」といった、将来の不安についても見通しを立てて説明してもらえるでしょう。
また、事故の重大性や反省の態度、被害者との示談状況などを総合的に評価し、軽い処分を目指すための対応方針を立ててもらうことも可能です。
不当に高額な賠償金の支払いを回避しやすくなる
交通事故の加害者になってしまった場合、被害者やその家族から高額な示談金や慰謝料を請求されることがあります。
そして、加害者としての罪悪感や「早く解決したい」という焦りから、提示された金額をそのまま受け入れてしまうケースも少なくありません。
しかし、賠償金の金額は、けがの程度や過失割合、通院日数などの客観的な要素に基づいて決まるものであり、感情や主観だけで判断すべきではありません。
弁護士に相談すれば、事故の状況や損害額を精査し、相場に照らして妥当な金額を算出したうえで、減額交渉をおこなうことが可能です。
また、弁護士が代理人として対応することで、冷静かつ公正な交渉環境を整えることができます。
逮捕・勾留を避けられる可能性が高まる
交通事故の内容によっては、加害者が警察に逮捕されたり、そのまま勾留されたりする可能性もあります。
特にひき逃げや飲酒運転など、悪質性の高い事故では、そのリスクが顕著です。
このような場合、弁護士が早期に介入することで、「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」ことを主張し、勾留請求の回避や早期の釈放に向けた活動をおこなうことができます。
逮捕後に勾留されてしまうと、仕事や家庭にも大きな影響が及びます。会社に知られて懲戒処分を受けたり、信用を失って解雇に至るケースもあるでしょう。
逮捕による社会的な不利益を最小限にとどめるためにも、早い段階での弁護士相談は不可欠です。
不起訴や執行猶予を獲得できる可能性が高まる
交通事故の加害者になってしまったとき、弁護士が介入して適切な対応をとることで、事件が起訴に至らず、不起訴処分で終了する可能性を高めることができます。
また、起訴された場合でも、執行猶予付きの判決を獲得することで実刑を免れ、日常生活を続けることができる場合もあります。
しかし、不起訴や執行猶予を得るには、被害者との示談の成立、反省の態度、再発防止策の提示などが不可欠です。これらを法律知識のない素人が自力でおこなうのはこんなんでしょう。
その点、弁護士はこれらを的確に整理し、検察官や裁判官に対して有利に働く資料を提出することができます。
取り調べで取り返しがつかない結果にならないようアドバイスしてもらえる
交通事故が刑事事件として取り扱われる場合、取り調べでの発言が後の起訴・不起訴の判断や裁判結果に大きく影響することも珍しくありません。
たとえば、「自分に不利になるとは思っていなかった一言」が、後に検察側の立証材料として使用されることもあり得ます。
こうした事態を防ぐには、事前に弁護士から取り調べ対応のアドバイスを受けておくことが効果的です。
また、弁護士に相談することで、取り調べ中にどこまで話すべきか、黙秘権を行使する場面はあるかなど、加害者の立場としての正しい振る舞いを指導してもらうことも大切です。
免許停止・免許取り消しなどの処分を回避するための活動をしてもらえる
交通事故を起こした加害者には、免許停止や免許取り消しといった行政処分が下されることがあります。
これらは刑事処分とは別におこなわれる行政手続きであり、公安委員会による審査を経て決定されます。
しかし、人によっては運転免許がないと仕事ができないなど、行政処分による生活への影響が大きいケースもあるでしょう。
このような場合、弁護士に依頼して不服申立ての手続きをサポートしてもらうことで、処分の軽減や取り消しの回避を目指すことが可能です。
「業務上どうしても運転が必要」「家族の送迎に運転が欠かせない」など、生活や仕事に大きな支障が出る事情がある場合は、弁護士へ相談してみるとよいでしょう。
交通事故の加害者が弁護士に相談・依頼するのが推奨されるケース
交通事故の加害者となったときへの弁護士相談は、「誰でもすぐに必要」というわけではありません。
しかし、以下のような状況に該当する場合は、できるだけ早く弁護士に相談・依頼するべきです。
交通事故が刑事事件に発展しているケース
人身事故などで被害者に大きなけがを負わせてしまった場合や、ひき逃げ・飲酒運転などの悪質性が高い事故を起こした場合は、今すぐに弁護士へ相談しましょう。
これらの事故を起こした場合、刑事事件として立件される可能性があり、警察による捜査・取り調べに加え、逮捕・勾留・起訴といった刑事手続きが進むことになります。
刑事事件に発展するかどうかの判断は、一般の方には困難です。
しかし、弁護士に相談すれば、事故の状況や被害の程度から刑事処分の見通しを立てることができ、身柄拘束や起訴を避けるための防御活動を早期に展開することができます。
不起訴処分を目指すための示談交渉や、検察官・裁判官への反省文・誓約書の提出など、早めの対応が結果を左右することもあるため、速やかに専門家に相談しましょう。
任意保険に加入しておらず、示談交渉を保険会社に任せられないケース
任意保険に加入していない場合は、弁護士に示談交渉を依頼することが強く推奨されます。
なぜなら、任意保険に未加入の場合、保険会社による示談代行が受けられず、被害者との交渉を全て自分で対応しなければならないからです。
被害者の怒りや不満に直接向き合いながら金額交渉を進めるのは、大きな精神的負担になりますし、交渉の進め方を誤ると裁判に発展するリスクも高まります。
また、被害者側に弁護士がついている状況で、加害者本人が素人判断で対応してしまうと、交渉力や法的知識の差から相場より高額な賠償金を受け入れてしまうケースも実際にあります。
このような事態を防ぐためにも、早めに交通事故対応に注力している弁護士へ相談し、法律に基づいた冷静で適正な交渉を任せることが重要です。
弁護士が間に入ることで、被害者との関係性も穏やかになり、納得のいく示談成立が期待できます。
過失割合に不満があるケース
示談交渉における過失割合に納得できない場合は、弁護士に相談して適切な割合を主張し直すべきです。
過失割合は、事故の責任の程度を示すものであり、損害賠償額や今後の刑事処分にも影響を及ぼす重要な指標です。
しかし、保険会社や警察の判断が必ずしも正しいとは限らず、事故の具体的な事情が十分に反映されていないこともあります。
たとえば、「相手の信号無視が原因なのに、自分の過失が7割と判断された」といった事例では、加害者側に不公平な扱いがされている可能性があります。
こうした場合、弁護士に依頼すれば、ドライブレコーダーの映像や実況見分調書などを根拠に、過失割合の見直しを求める交渉が可能です。
弁護士は過去の判例や事故類型に精通しているので、客観的かつ法的に妥当な主張をおこなうことができます。
交通事故加害者が弁護士に相談する際のポイント
交通事故の加害者として弁護士に相談する際には、限られた時間の中で的確なアドバイスを得なければなりません。そのため、弁護士相談には、事前に準備をして望むことが大切です。
具体的には、以下のポイントを押さえておくことで、より有意義な相談につなげることができます。
できるだけ早く相談する
交通事故を起こしたら、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが大切です。
事故直後からの対応は、その後の刑事処分や民事上の賠償、行政処分に大きく影響する場合があります。
特に、人身事故や過失割合に争いがあるケースでは、初期対応が結果を左右することも珍しくありません。
弁護士は、早期に相談を受けることで、示談交渉や被害者対応の方針を立てやすくなり、不利な状況を避ける対策を早めに講じることができます。
事故の状況を時系列でメモなどにまとめておく
事実関係を正確に伝えるために、事故当時の状況を時系列で整理しておきましょう。
「いつ」「どこで」「どういった状況で事故が起きたのか」「警察や相手方とのやりとりはどうだったか」などを簡単にメモにしておくと、弁護士に的確な情報を伝えやすくなります。
弁護士にとっては、状況を迅速に把握できる材料があることで、初回の相談時から具体的な助言がしやすくなります。
少しでも関係がありそうな資料は全て持参する
相談前には、事故に関係する資料を一式そろえておくことが重要です。
たとえば、事故証明書、実況見分調書、医療機関の診断書、修理見積書、任意保険の契約書、ドライブレコーダーの映像、被害者との連絡記録などです。
これらの資料は、加害者側の主張の裏付けや示談交渉の根拠として役立つため、可能な限り全ての資料を揃えて持参・提出するようにしましょう。
相談・質問したい内容をまとめておく
限られた相談時間で必要なアドバイスを受けるには、聞きたいことを事前にまとめておくことも大切です。
たとえば、「示談金はいくらくらいになるのか」「逮捕される可能性はあるのか」「過失割合に異議を唱えられるのか」など、疑問点や気になる点を箇条書きにしておくとよいでしょう。
事前に質問事項を準備しておくことで、弁護士との会話がスムーズになり、的確なアドバイスが得られます。
どのような解決をのぞむか考えておく
弁護士へ相談する際は、「不起訴にしたい」「免許を守りたい」「支払いを最小限に抑えたい」など、自分が望む結果を明確にしておきましょう。
目的が定まっていれば、弁護士もその実現に向けた戦略を立てやすくなります。
逆に、要望が曖昧なままだと、対策もぼんやりしたものになりかねません。
「何を優先したいのか」「どこまでを許容できるのか」を整理して伝えることが、的確な対応方針の構築につながります。
自分にとって不利なことでも正直に話す
弁護士へ相談する際は、仮に自分にとって不利な事実であったとしても、正直に伝えることが鉄則です。
たとえば、「スマートフォンを見ながら運転していた」「制限速度を超えていた」といった事情も、包み隠さず話しましょう。
弁護士には守秘義務があり、相談内容が外部に漏れることはありません。
不利な事実も知ってもらったうえでこそ、より現実的かつ効果的な解決策を導き出すことができます。
【交通事故加害者向け】弁護士費用の相場はどのくらい?
交通事故の加害者として弁護士に相談・依頼するにあたり、「費用がどれくらいかかるのか」という不安はつきものです。
実際、弁護士費用には複数の種類があり、事故の内容や手続きの性質(刑事・民事)によっても金額が大きく変わる可能性があります。
たとえば、刑事手続きに関する対応を弁護士に依頼する場合、費用の目安は以下のとおりです。
費用項目 | 金額の目安 |
相談料 | 5,000~10,000円 |
着手金 | 0~100万円 |
成功報酬 | 0~100万円 |
日当・実費 | 内容により異なる |
刑事事件では、事件の重大性や手続きの進行状況によって費用が大きく変わります。
逮捕や勾留、起訴の有無によって、必要となる活動範囲や時間も異なるため、弁護士に早期相談し、正確な費用見積もりを出してもらうことが大切です。
一方、交通事故の損害賠償や示談交渉といった民事対応を弁護士に依頼する場合、得られる経済的利益をもとに着手金や成功報酬が計算されるのが一般的です。
以下は、日本弁護士連合会の旧報酬基準を参考にした一例です。
民事手続きにおける着手金・成功報酬の目安
経済的利益の額 | 着手金 | 成功報酬 |
125万円以下 | 0~10万円 | 0~20万円 |
300万円以下 | 経済的利益の8% | 経済的利益の16% |
300万円超~3,000万円以下 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3,000万円超~3億円以下 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円超 | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
なお、実際の金額は事務所によって異なるので、いずれにせよ事前に見積りをもらうことが大切です。
経済的に困窮している方は法テラスを利用できる場合もある
弁護士費用に不安がある場合は、法テラス(日本司法支援センター)の利用も検討しましょう。
法テラスでは一定の収入・資産基準を満たすことで、民事事件に限り、無料相談や弁護士費用の立替制度を利用できます。
弁護士費用の立て替え制度を利用した場合は、原則として月5,000円から1万円程度を分割で返済しますが、状況によっては返済免除が認められることもあります。
制度の詳細は下記の記事や、対応弁護士に確認してください。
【関連記事】
法テラスなら交通事故の弁護士無料相談や費用立替・免除が使える?注意点も解説
交通事故加害者は弁護士費用特約を使える?
自動車保険に付帯されている弁護士費用特約は、交通事故に関する弁護士費用を保険会社が代わりに負担する制度です。
ただし、弁護士費用特約が利用できるかどうかは、事故の状況によって異なります。以下では、刑事・民事のそれぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
刑事事件については使えない可能性が高い
弁護士費用特約は、刑事事件も適用対象とされるものもありますが、多くの場合には民事事件に限り適用される特約です。
そのため、過失運転致傷罪や危険運転致死傷罪など、刑事事件として扱われる交通事故では適用外となる可能性が高いでしょう。
民事事件については、場合によっては使える
損害賠償請求や過失割合に関する争いなど、民事上の対応については、加害者側でも弁護士費用特約が使えるケースがあります。
たとえば、相手にも過失がある場合や、加害者からも損害賠償請求をおこなう場合などが該当します。
ただし、加害者の立場で特約が使えるかどうかは、保険の契約内容や事故の具体的な状況によって異なります。
まずはご自身の保険証券を確認し、不明な点は保険会社に直接問い合わせるようにしましょう。
さいごに | 交通事故加害者になってしまったらなるべく早く弁護士に相談を!
交通事故の加害者になってしまったとき、被害者との示談、刑事責任や免許への影響、賠償金の支払いなど、対応を誤れば人生や仕事に大きな影響を及ぼすこともあります。
こうした局面においては、一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが重要です。
早期に弁護士へ依頼することで、逮捕や起訴のリスクを軽減し、適正な賠償交渉や免許処分への対応もスムーズに進められるようになります。
また、費用が不安な方でも、無料相談窓口や法テラス、弁護士費用特約などを活用すれば、負担を抑えて相談・依頼できる可能性があります。
不安を感じたら、迷わず交通事故に注力している弁護士への相談を検討しましょう。

