当て逃げの罰則と対処法を解説| | 現場で気付かなかった場合も罪になる?

当て逃げの罰則と対処法を解説| | 現場で気付かなかった場合も罪になる?
  • 「気づかないうちに他人の車に傷をつけてしまっていたかもしれない…」
  • 「そのまま走り去ってしまったけど、当て逃げになってしまうのだろうか?」

このような不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

当て逃げは、物損事故であっても重大な道路交通法違反とされ、厳しい罰則が科される可能性があります。

たとえ事故を起こした自覚がなかった場合でも、状況によっては「当て逃げ」と判断されてしまうこともあるため、正しい知識と冷静な対処が必要です。

本記事では、当て逃げに該当するケースや罰則の内容、事故後の正しい対応方法について詳しく解説します。

不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。

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当て逃げで捕まった場合の罰則とは?

当て逃げ事件を起こした場合は、以下3つの責任を問われることになり、それぞれで罰則が科されます

  • 刑事責任
  • 行政処分
  • 民事責任

まずは、それぞれの責任ごとに科される罰則について見ていきましょう。

【刑罰】拘禁刑や罰金刑が科せられる

道路交通法第72条では、自動車の運転者に対して、報告義務と危険防止等措置義務を課しています。

義務概要
報告義務交通事故が発生した場合、運転者は直ちに警察に事故の状況を報告する義務があります。
これは、事故の大小に関わらず、負傷者がいなくても同様です。
危険防止等措置義務運転者は、事故現場の状況を把握し、負傷者の救護、二次的な事故の防止、道路の危険排除など、必要な措置を講じる義務があります。

そのため、当て逃げ事件を起こした場合には、これらの義務に違反したとして刑事罰が科される可能性があります。

それぞれの義務や刑事罰の内容について、以下で詳しく見ていきましょう。

報告義務違反|3ヵ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金

交通事故を起こした運転手には報告義務が課されており、交通事故が発生した日時、場所、死傷者の数、負傷の程度、損壊した物と損壊の程度などの「交通事故発生日時等」を、すぐに警察に報告しなければいけません

そのため、以下のような場合には、全て報告義務違反として扱われます

  • 被害者の車両にぶつけたことを認識したのに、自分の車両をその場で停車させず、そのまま現場を立ち去った場合
  • 車両同士が軽くぶつかったので停車したが、たいした傷がついていないと当事者双方で確認をしたので、警察に通報せずにその場を立ち去った場合
  • 自動車を走行中に衝撃を受けて「何かにぶつかったかもしれない」と思ったが、「大丈夫だろう」と判断をしてそのまま現場を立ち去った場合 など

報告義務違反を理由に有罪になると、3ヵ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金刑の範囲内で刑事罰が科されます

危険防止等措置義務違反|1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金

交通事故を起こした場面では、報告義務に加えて、危険防止等措置義務も課されています

たとえば、危険防止等措置の内容として、車両を停止すること、負傷者の確認をすること、二次被害を防止すること、警察に通報することなどが挙げられます。

これらの措置をせずに現場から離れると、危険防止等措置義務違反と判断されます。

危険防止等措置義務違反を理由に有罪になると、1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金刑の範囲内で刑事罰が下されます

原則として器物損壊罪には該当しない

自動車で物損事故を起こしたとしても、刑法に規定されている器物損壊罪は適用されません

というのも、器物損壊罪は故意犯だけが処罰対象にされているからです。

運転操作を誤って他人の自動車などに傷をつけてしまった物損事故では、運転者には過失しかないので、器物損壊罪は不成立です。

ただし、「ぶつけてやろう」「ぶつかるかもしれない」などと認識をしながら車両をそのまま走行させて物損事故を起こしたと認定されるような事情がある場合には、器物損壊罪が適用されるリスクがあります。

例外的に器物損壊罪が適用される場合には、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑もしくは科料の範囲で刑事罰が科されます

死傷者がいると救護義務違反にも問われる

交通事故で死傷者がいる場合には、運転者などに救護義務が課されます

たとえば、死傷者を救助せずに現場から逃走したり、救急車を呼ばなかったりすると、救護義務違反の容疑をかけられます

救護義務違反の法定刑は、5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑です。

どれだけ軽微な交通事故であったとしても、車両と車両が接触すると、被害者が軽度のむちうちなどのけがを負う可能性はゼロではありません。

事故状況を確認せずにけが人に気付かなかったとしても「ひき逃げ犯」として捜査対象になりかねないので、交通事故を起こしたと思われるときには、念のために車両を停止して現場の状況を確認してください。

【行政処分】免許停止や取消しの処分を受ける

物損事故を起こしただけなら運転免許の違反点数が加算されることはありません

しかし、物損事故を起こしたあとに現場から逃走をすると、以下のような違反点数が加算されます。

  • 安全運転義務違反:2点
  • 危険防止等措置義務違反:5点

運転免許は、前歴なしでも6点以上の違反点数で一発免停(30日間)になるので、当て逃げ事件を起こして合計7点の違反点数が加算されると、最低でも30日間の免停処分が下されます

また、当て逃げ事件当時に飲酒をしていたり、無免許運転だったりすると、さらに重い行政処分の対象になるので注意が必要です。

さらに、被害者に死傷結果が生じていたひき逃げ事件の場合には、違反点数35点が加算されるので、一発で免許取り消し処分の対象になり、前歴がない状態でも3年間は運転免許を取得できません。

仕事や日常生活で自動車を使っている人は、当て逃げ事件が発覚するだけで一定期間自動車を使用できなくなるので、交通事故を起こしたときには、必ず報告義務・危険防止等措置義務を果たすべきです。

【損害賠償】当て逃げで壊した物を弁償する必要がある

当て逃げ事件を起こした場合には、被害者に生じた損害を賠償する必要があります。

当て逃げ事件で賠償負担を強いられる可能性がある賠償項目として、以下のものが挙げられます。

  • 修理費用
  • 買い替え費用
  • 代車費用
  • 評価損
  • 休車損害
  • 積荷損
  • 塀やガードレールなどの修理費用 など

なお、当て逃げ事件の場合には被害者本人がけがをしているわけではないので、原則として慰謝料は発生しません

ただし、被害者の車両に家族同然のペットが同乗しており、ペットが死亡したり重い障害を負ったりした場合には、例外的に慰謝料請求されるリスクがあります。

当て逃げしてしまったことに、現場で気付かなかった場合も罪になる?

前提として、「当て逃げに気付かなかった」という言い訳はほとんど通用しないと理解しておきましょう。

なぜなら、自動車を運転している際に相手車両や物にぶつかったとき、通常の判断能力を前提にすると、衝撃や音で「何か異変が起こった」「何かぶつけたかもしれない」と気付くことができると考えられるからです。

通常の人なら気付ける異常に気付けなかった場合、それだけで過失があったと判断されます。

そのため、物損事故を起こしたのに現場で気付かず、降車したタイミングで自車両の損傷を発見したようなケースであったとしても、当て逃げ犯として刑事責任を問われる可能性が高いです。

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当て逃げの時効は3年、もしくは20年

当て逃げ事件を起こしたとしても、いつまでも刑事責任を問われるリスクに晒されるわけではありません。

当て逃げ事件の「公訴時効」が完成した時点で、刑事事件として立件される可能性はゼロになります

当て逃げ事件の公訴時効は3年です。

つまり、交通事故発生時点から3年が経過した時点で、当て逃げ犯として刑事処罰されることはなくなるのです。

ただし、刑事責任を問われることがなくなったとしても、当て逃げ事件の民事の賠償責任の「消滅時効」は別問題として考慮しなければいけません。

たとえば、被害者が当て逃げ被害にあった事実及び加害者を把握している状況なら、損害賠償責任は3年で消滅します。

一方、当て逃げ被害にあった事実は把握しながらも加害者が誰かわからない場合には、当て逃げ事件から20年が経過しなければ、民事の賠償責任は消滅しません

つまり、当て逃げ事件の刑事責任を問われることがなくなったとしても、民事の賠償責任が残るケースがあり得るということです。

当て逃げがあとから発覚する理由

当て逃げ事件を起こしたことが捜査機関などに発覚するきっかけを2つ紹介します。

被害者や目撃者が車両のナンバーを記憶していた

当て逃げ事件が発生したときに被害者が加害車両のナンバープレートの数字を記憶していると、その情報を頼りに警察が車両の所有者の個人情報を特定し、検挙に至ります

また、被害者本人がナンバープレートの数字を確認できない状況だとしても、目撃者がいれば、同じように捜査活動が展開されて、加害者の身元が明らかになるでしょう。

防犯カメラやドライブレコーダーに映っていた

外題では、ドライブレコーダーが広く普及しています。

そのため、被害車両や当て逃げ事件現場を走行していたほかの車両に搭載されていたドライブレコーダーに加害車両のナンバープレートが記録されているケースも多いです。

また、現場付近を撮影した防犯カメラ映像・監視カメラ映像を解析した結果、当て逃げ犯のナンバープレートの数字が判明することもあります。

当て逃げであとから逮捕される可能性もある

当て逃げ事件を起こし、被害者などからの通報を受けて捜査活動が展開された結果、後日逮捕(通常逮捕)される可能性があります。

当て逃げ事件に関する検挙率は公開されていませんが、類似事案であるひき逃げ事件の検挙率は以下のとおりです。

  • 死亡事故検挙率:102.4%
  • 重傷事故検挙率:87.9%
  • 全体検挙率:72.1%

【参考元】令和6年版犯罪白書 -女性犯罪者の実態と処遇- |法務省 法務総合研究所

ここからわかるように、ひき逃げ事件を起こした場合の検挙率は極めて高い水準になっています。

また、加害者本人は当て逃げ事件を起こした認識かもしれませんが、実際に被害者がけがをしていた場合にはひき逃げ事件として捜査活動が展開されてしまいます。

つまり、交通事故を起こして現場から逃走をすると、ある日いきなり警察が自宅にやってきて逮捕状が執行される可能性があるのです。

当て逃げしたことに気付かなかった!後日気付いたらどうすればいい?

あとから自分の自動車についた傷を発見して、「当て逃げ事件を起こしてしまったかもしれない」と不安になるケースは少なくないでしょう。

ここでは、当て逃げ事件を起こした事実に後日気付いたときの対処法について解説します。

警察に出頭・自首する

当て逃げ事件をした可能性があるなら、念のために警察に問い合わせてみましょう

警察に問い合わせをすれば、被害者から被害届が提出されているかを確認できるので、今後の対応策を練りやすくなります。

なお、警察への問い合わせ方法は、電話ではなく、実際に警察署に訪問するのがおすすめです。

電話だけではこちら側の身分を証明することができず、かえって不信感を抱かれかねないからです。

自首をすることで示談が成立しやすくなったり、処分が減軽されたりする可能性もある

「わざわざ警察に事件のことを報告することに意味はあるの?」と思われる人も少なくはないでしょう。

しかし、警察から何のコンタクトもない段階で当て逃げ事件について自首・自白をすれば、以下のメリットを得られます。

  • 自ら犯行を自供する姿勢を見せることで、逃亡または証拠隠滅のおそれがないと判断されて、逮捕・勾留といった強制処分を回避しやすくなる
  • 自首・自白をすることによって反省の態度を示しやすくなるので、不起訴処分を獲得しやすくなる
  • 当て逃げ事件の被害が深刻だと起訴される可能性もあるが、自首・自白をしている点が評価されて、軽い量刑判断を引き出しやすくなる
  • 加害者側が自ら罪を申告しているため、被害者側の処罰感情が薄まり、示談交渉をスムーズに進めやすくなる など

そのため、「当て逃げ事件を起こしたかもしれない」などと不安に思っているのなら、念のために警察に連絡をして今後の対応について相談をするのも有効な防御活動といえるでしょう。

相手にも連絡し謝罪する

警察への問い合わせによって物損事故を起こしたことが判明し、被害者側の連絡先を入手できた場合には、速やかに被害者に直接連絡をして、謝罪の意思を示してください

これから示談交渉を開始するにあたって、いきなり示談金などの条件面についての話をもちかけると、被害者側から「反省をしていないのではないか」という疑いの目を向けられかねないからです。

反対に、謝罪によって反省の意思を示せれば、その後の示談交渉もスムーズに進む可能性が高まります

速やかに示談交渉を開始する

被害者に謝罪をしたあとは、示談交渉を開始してください

被害者側から損害額や内訳などが示されるので、その内容を精査します。

また、交通事故の状況次第では、被害者側にも一定の過失が認められる可能性があるので、過失割合についても話し合いを忘れないようにしましょう

弁護士や保険会社に相談する

ご自身が加入している自動車保険があるなら、任意保険会社にも物損事故を起こした旨を伝えましょう

任意保険を利用できる場合には、保険会社が示談交渉や保険金の支払い対応をおこなってくれます。

また、被害者側との示談交渉でトラブルが起きたときには、弁護士に相談するのもおすすめです。

示談交渉に関する注意事項やこちら側として主張するべき内容についてアドバイスをもらえるでしょう。

警察から連絡があったら応じる

当て逃げ事件は犯罪なので、警察から事情聴取を求められる可能性があります。

警察から出頭を命じられた場合には、必ず対応してください。

警察からの電話を無視したり、任意の出頭要請を拒否したりすると、以下のデメリットが生じる可能性があります。

  • 通常逮捕されて、捜査機関で強制的な身柄拘束を強いられる
  • 逮捕・勾留によって最長23日間留置場生活を強いられる
  • 起訴処分が下される
  • 有罪判決が下されて刑事罰を科される
  • 前科がついて、今後の社会生活にさまざまな支障が出る
  • 実名報道される
  • 当て逃げ事件を起こした事実が会社や学校に発覚して何かしらのペナルティを下される など

スムーズな解決を目指すためには、被害者にも警察にも誠実に対応することが大切です。

さいごに|当て逃げをしてしまったら弁護士に相談・依頼を!

本記事では、当て逃げ事件の罰則について詳しく解説しました。

当て逃げをしてしまった場合や、当て逃げをしたかもしれないと不安を感じている場合には、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください

というのも、交通事故トラブルを得意とする弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得られるからです。

  • 警察に自首するべきか、どのような供述をするべきかなどについてアドバイスをくれる
  • 逮捕されずに済むように、また、逮捕されたとしても勾留されずに済むように、捜査活動の状況を踏まえながら適切な防御活動を展開してくれる
  • 不起訴処分や軽い判決獲得を目指してくれる
  • 被害者との間でスムーズに示談交渉を進めてくれる
  • 賠償額や過失割合などが争点になったときも、客観的証拠を活用しながら有利な示談条件を引き出してくれる
  • 示談が決裂して民事訴訟を提起されたとしても、裁判手続きを代理して進めてくれる など

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アシロ編集部
編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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