交通違反・事件
過失運転致傷とは?定義と刑罰、刑事手続きの流れ、起訴率や罰金の額まで解説
2024.10.29
無免許運転は、道路交通法によって禁止されている犯罪行為です。
初犯であっても現行犯逮捕されるケースが多く、事情によっては重い罰則が科されることもあります。
もし無免許運転で逮捕されてしまったら、速やかに弁護士へご相談ください。
今回は無免許運転について、成立する犯罪・逮捕の可能性・罰則(法定刑)・刑事手続きの流れなどを解説します。
「無免許運転」とは、道路交通法によって必要とされている運転免許を受けないで、自動車または一般原動機付自転車を運転することをいいます。
道路交通法では、運転する自動車または一般原動機付自転車の種類に応じて、以下の運転免許を設けています(道路交通法84条~86条)。
<第一種免許>
自動車または一般原動機付自転車を運転するための免許です。
自動車等の種類 | 第一種免許の種類 |
大型自動車 | 大型免許 |
中型自動車 | 中型免許 |
準中型自動車 | 準中型免許 |
普通自動車 | 普通免許 |
大型特殊自動車 | 大型特殊免許 |
大型自動二輪車 | 大型二輪免許 |
普通自動二輪車 | 普通二輪免許 |
小型特殊自動車 | 小型特殊免許 |
一般原動機付自転車 | 原付免許 |
<第二種免許>
旅客自動車を、旅客自動車運送業に係る旅客を運送する目的で運転するための免許です。
自動車の種類 | 第二種免許の種類 |
大型自動車 | 大型第二種免許 |
中型自動車および準中型自動車 | 中型第二種免許 |
普通自動車 | 普通第二種免許 |
大型特殊自動車 | 大型特殊第二種免許 |
何人も、対応する上記の免許を受けないで自動車または一般原動機付自転車を運転してはなりません(道路交通法64条1項)。
違反した場合は無免許運転となり、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます(道路交通法117条の2の2第1号)。
なお、原動機付自転車のうち「特定小型原動機付自転車※」に当たるものは、2023年7月1日以降、原付免許がなくても運転できるようになりました(16歳以上の者に限ります)。
※特定小型原動機付自転車:原動機付自転車のうち、車体の大きさおよび構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものであり、かつその運転に関し高い技能を要しないものである車として、道路交通法施行規則1条の2の2に定める基準に該当するもの
(例)一定の要件を満たす電動キックボードなど
無免許運転はそれ自体が犯罪であり、罰則の対象です。
ただしそれだけでなく、無免許運転の状態で交通事故を犯すと、法定刑が加重されます。
過失運転致死傷罪 | 7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金 ※無免許運転の場合は10年以下の懲役(同法6条4項) |
過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪 | 12年以下の懲役 ※無免許運転の場合は15年以下の懲役(同法6条3項) |
危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法3条) | ①被害者を負傷させた場合 12年以下の懲役 ※無免許運転の場合は15年以下の懲役(同法6条2項)
②被害者を死亡させた場合 15年以下の懲役 ※無免許運転の場合は6か月以上(20年以下)の有期懲役(同法6条2項) |
危険運転致死傷罪(同法2条) | ①被害者を負傷させた場合 15年以下の懲役 ※無免許運転の場合は6か月以上(20年以下)の有期懲役(同法6条1項)
②被害者を死亡させた場合 1年以上(20年以下)の有期懲役 |
無免許運転の場合、もっともよく見られる過失運転致死傷罪の事案でも「10年以下の懲役」であり、非常に重い刑罰が科される可能性があるのでご注意ください。
無免許運転と逮捕・罰則に関して、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1 無免許運転をすると、逮捕されるのか?
Q2 初犯の無免許運転については、どの程度の罰則が科されるのか?
Q3 免許証を携帯せずに運転していた場合も、無免許運転になるのか?
無免許運転は事実関係の把握が容易であるため(免許を受けていないことはすぐわかるため)、逮捕に至るケースが多いです。
交通事故で他人を死傷させたケースはもちろん、そうでないケースであっても逮捕される可能性が高いといえます。
ただし、交通事故を起こしていないなどの軽微な事案であれば、勾留されず逮捕期間の満了までに釈放されることもあります。
被疑事実が無免許運転のみであれば、初犯なら罰金刑にとどまるケースが多いです。
懲役刑となる場合でも、執行猶予が付く可能性が高いでしょう。
ただし、交通事故を起こして被害者を死傷させた場合は、初犯であっても懲役の実刑となる可能性があります。
自動車等の運転に必要な免許は受けているものの、運転する際に免許証を携帯していなかったに過ぎない場合は、無免許運転には当たりません。
ただし、運転中における免許証の携帯は義務付けられており(道路交通法95条1項)、免許証の携帯義務に違反した場合は3,000円の反則金が課されます。
反則金を納付しない場合は「2万円以下の罰金または科料」に処されます(同法121条1項12号)。
無免許運転で逮捕された場合は、以下の流れで刑事手続きが進行します。
刑事手続きへ適切に対応するためには、早い段階で弁護士にご相談ください。
逮捕による身柄拘束は、最長で72時間続きます(刑事訴訟法205条2項)。
その間、被疑者は家族などと面会することはできません。
ただし、弁護人または弁護人になろうとする者には面会(接見)が認められています。
逮捕の段階から警察官や検察官の取調べがおこなわれるので、早い段階で弁護士を呼ぶことをおすすめします。
犯罪の悪質性や罪証隠滅・逃亡のおそれなどを考慮して、被疑者を引き続き身柄拘束すべきと判断した場合、検察官は裁判官に勾留請求をおこないます。
裁判官は、勾留の理由と必要性を審査して、いずれも認められると判断すれば勾留状を発します(刑事訴訟法207条2項)。
裁判官によって勾留状が発せられた場合、被疑者の身柄拘束は逮捕から起訴前勾留に切り替わります。
起訴前勾留の期間は当初10日間で、延長された場合は最長20日間です(刑事訴訟法208条2項)。
勾留期間中は、原則として家族などとの面会が認められます。
ただし、被疑者が被疑事実を否認している場合などには、裁判官によって接見禁止命令がおこなわれることがあります(刑事訴訟法207条1項、81条)。
この場合、被疑者は逮捕期間に引き続いて、弁護人または弁護人になろうとする者と面会することができません。
起訴前勾留期間中は、複数回にわたって警察官や検察官の取調べがおこなわれます。
被疑者には黙秘権があることに留意の上、供述する内容は慎重に検討しましょう。
取調べに臨む際の心構えや注意点については、弁護士に相談すればアドバイスを受けられます。
検察官は、起訴前勾留の期間が満了するまでに、被疑者を起訴するかどうかを判断します。
検察官による処分は、以下の3通りです。
正式な公判手続き(刑事裁判)による審理・科刑を求める処分です。
簡易的な略式手続きによる審理・科刑を求める処分です。
100万円以下の罰金または科料を求刑する場合のみ、検察官は略式起訴を選択できます。
略式手続きでは、書面審理のみがおこなわれるため、被告人に反論の機会は与えられません。
その一方で、スムーズに審理が進められ、早期に身柄が解放される点が大きなメリットです。
略式手続きによる審理を開始するためには、被疑者の同意が必要とされています。
被疑者を起訴せず、刑事手続きを終了させる処分です。
不起訴の場合、勾留されている被疑者は釈放されます。
犯罪の嫌疑が確実であっても、社会における更生を促すのが適当と検察官が判断した場合には、不起訴(起訴猶予)となることがあります。
検察官によって起訴された被疑者は、「被告人」と呼称が変更されます。
略式起訴の場合は書面審理のみが行われますが、正式起訴された場合は、裁判所の公開法廷において公判手続きがおこなわれます。
公判手続きでは、検察官がすべての犯罪要件を立証します。
被告人は、罪を認める場合は情状酌量を求め、否認する場合は検察官立証に対して反論します。
どちらの方針で臨むかについては、事実関係や被告人の認識などを考慮しつつ、公判手続きの見通しを立てた上で判断すべきです。
適切な方針を立て、十分な準備をして公判手続きに臨むためには、弁護士と綿密な打ち合わせを重ねましょう。
公判手続きにおける審理が熟した段階で、裁判所は判決を言い渡します。
犯罪要件がすべて立証されたと判断した場合は有罪判決、犯罪要件のうち一つでも立証不十分と判断した場合は無罪判決となります。
第一審判決に対しては控訴が、控訴審判決に対しては上告がそれぞれ認められています(控訴につき刑事訴訟法372条以下、上告につき刑事訴訟法405条以下)。
控訴・上告の期間は、判決が言い渡された日の翌日から起算して14日間です(刑事訴訟法373条、414条)。
上告審判決が宣告された日から10日間を経過した場合(またはその期間内になされた申立てに応じて、訂正の判決または棄却の決定があった場合)、または期間内に適法な控訴・上告がおこなわれなかった場合には、判決が確定します。
有罪の実刑判決であれば、その後に刑が執行されます。
無免許運転が捜査機関に発覚して逮捕された場合や、取調べを要請された場合には、早い段階で弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。
弁護士からは、取調べに臨む際の心構えや、刑事手続きの流れなどについてアドバイスを受けられます。
被疑者が身柄を拘束されている場合でも、家族との窓口を弁護士に依頼すれば、精神的な安定に繋がります。
起訴された場合には、公判手続きに向けて適切な準備を整えてもらえます。
無免許運転の刑事弁護を弁護士に依頼する場合、弁護士費用を支払う必要があります。
主な弁護士費用の内訳は以下のとおりです。
①相談料
正式な依頼前の法律相談について発生します。
②着手金
正式に刑事弁護を依頼するため、委任契約を締結した際に支払います。
③報酬金
弁護士による弁護活動が終了した段階で、刑事処分の内容等に応じた金額を支払います。
④日当
弁護活動をおこなう過程で、弁護士が出張した際に発生します。
「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考に、各弁護士費用の目安額(いずれも税込)を紹介します。
実際の弁護士費用は依頼先によって異なるので、各弁護士へ個別にご確認ください。
無免許運転に関する刑事弁護の相談料は、30分当たり5,500円程度が標準的な水準です。
ただし、弁護士によっては無料相談を受け付けています。
無免許運転に関する刑事弁護の着手金額は、事件処理の難易度などによって決まるのが一般的です。
被疑事実が無免許運転のみである場合、事実関係そのものは争わないケースが多いでしょう。
その場合、着手金は比較的低く抑えられる可能性があります。
<刑事弁護に関する着手金額の目安>
起訴前・起訴後の事案簡明な刑事事件(一審・上訴審) | 22万円~55万円 |
上記以外の起訴前・起訴後の刑事事件(一審・上訴審) 再審事件 | 22万円~55万円以上 |
※「事案簡明な刑事事件」とは、以下の①②を満たす刑事事件をいいます。
無免許運転に関する刑事弁護の報酬金額は、起訴されるかどうかや、有罪・無罪および量刑など、最終的な刑事処分の内容によって決まることが多いです。
<刑事弁護に関する報酬金額の目安>
起訴前・起訴後の事案簡明な刑事事件(一審・上訴審) | <起訴前> 不起訴:22万円~55万円 求略式命令:不起訴の報酬金額を超えない額
<起訴後> 刑の執行猶予:22万円~55万円 求刑された刑が軽減された場合:刑の執行猶予の報酬金額を超えない額 |
上記以外の起訴前・起訴後の刑事事件(一審・上訴審) 再審事件 | <起訴前> 不起訴:22万円~55万円以上 求略式命令:22万円~55万円以上
<起訴後> 無罪:55万円以上 刑の執行猶予:22万円~55万円以上 求刑された刑が軽減された場合:軽減の程度による相当額 検察官上訴が棄却された場合:22万円~55万円以上 |
※「事案簡明な刑事事件」とは、以下の①②を満たす刑事事件をいいます。
無免許運転に関する刑事弁護の日当額は、出張時における弁護士の拘束時間を基準に決まることが多いです。
<刑事弁護に関する日当額の目安>
半日(往復2時間超4時間以内) | 3万3,000円以上5万5,000円以下 |
一日(往復4時間超) | 5万5,000円以上11万円以下 |
無免許運転で取調べを受けることになった方や、家族が無免許運転で逮捕されてしまった方は、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
相談できる弁護士に心当たりがない方は、「ベンナビ刑事事件」を利用するのが便利です。
相談内容や地域に応じて、スムーズに弁護士を検索できます。
無料相談ができる弁護士も多数登録されており、メールや電話で直接の問い合わせが可能です。
特に被疑者が逮捕された場合は、刑事手続きが速いスピードで進行するので、できるだけ早期に弁護士へ相談することが大切です。
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