交通事故後の対応
自損事故で保険金はいくらもらえる?保険の種類ごとに詳しく解説
2024.10.16
追突事故のような交通事故は、被害者側に過失がないため、被害者本人が加害者の保険会社と交渉することになるケースが多いといわれています。
本記事では、追突事故を弁護士に相談するメリットやデメリット、弁護士に依頼するべきかどうかの判断基準などを紹介します。
追突事故の事故対応で不安な点がある場合には、参考にしてみてください。
追突事故の場合、ほかの交通事故のように慰謝料請求がうまくいかない可能性があります。
ここでは、追突事故での慰謝料請求が困難な理由を3つ解説します。
交差点での信号待ちや渋滞での減速中に後ろから衝突される、というのが追突事故の典型例です。
追突事故の大半は「追突された側0:追突した側10」の過失割合になります。
このようなもらい事故の場合、被害者側の任意保険会社は示談代行のサポートができず、被害者自身で相手方と示談金の交渉をおこなわなければいけません。
保険金を負担する必要のない被害者の保険会社は事故とはなんの利害関係もなく、そのような状況では以下のように被害者を代理する行為(非弁行為)は禁じられているからです。
弁護士法第72条
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
引用元:弁護士法
これが、追突事故の慰謝料請求が難しいといわれる理由のひとつです。
相手側の保険会社は、自社の利益のために支出(保険金)を抑えようとする傾向が強いので、交渉経験のない素人では不利な条件で示談を承諾することになる恐れがあります。
追突事故の被害に遭った場合、むちうちなどのけがを負うこともあります。
むちうちのように目立った外傷のないけがの場合、ある程度の段階で相手保険会社が「もうこれ以上の治療は不要」と判断して治療費を打ち切られる恐れがあります。
いつまで治療を続けるべきかは状況によって異なり、対応を誤ったりすると、その後の慰謝料請求で本来獲得できたはずの金額よりも低額になる可能性があります。
後遺障害とは、交通事故によるけがが後遺症として残り、後遺障害等級の認定を受けたものをいいます。
けがの治療を受けて主治医から症状固定を言い渡されたのち、後遺障害診断書・MRI・レントゲンなどを提出して「認定基準を満たしている」と判断されれば後遺障害等級認定が受けられます。
しかし、むちうちの場合、自分では痛みやしびれなどの自覚症状があっても、見た目では症状の有無がわかりにくいという特徴があります。
症状の存在を医学的に証明できずに後遺障害認定が受けられないと、その後の慰謝料請求で獲得できる金額が減ってしまいます。
追突事故で確実に適正な金額の慰謝料を請求したいのであれば、弁護士への依頼が有効です。
ここでは、交通事故で弁護士に依頼する3つのメリットを紹介します。
交通事故の慰謝料は、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3種類の算定基準を用いて計算されます。
慰謝料を決める3つの基準 | |
自賠責基準 | 交通事故により負傷した被害者に対して、法令で決められた最低限の補償をおこなうことを目的とした基準。 |
任意保険基準 | 自動車保険会社が独自に設けている基準。自賠責基準と同程度の補償を受けられる。 |
弁護士基準・裁判所基準 | 裁判所の判例などを参考にした基準。自賠責基準や任意保険基準よりも高額な慰謝料が設定されることが多い。 |
通常は、自賠責基準または任意保険基準で慰謝料が計算されるケースが大半です。
しかし、弁護士に依頼をすれば慰謝料が最も高額になる可能性のある弁護士基準で交渉を進めてくれます。
保険会社が提示する金額よりも、慰謝料を増額できる可能性が高いでしょう。
被害状況 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
入通院慰謝料 | ||
1ヵ月の通院 | 12万6,000円 | 28(19)万円 |
3ヵ月の通院 | 37万8,000円 | 73(53)万円 |
6ヵ月の通院 | 64万2,000円 | 116(89)万円 |
後遺障害慰謝料 | ||
12級の傷害 | 110万円 | 280万円 |
14級の傷害 | 40万円 | 110万円 |
※弁護士基準の()はむちうちなどの他覚症状がないけがの場合
弁護士に対応を依頼すれば、保険会社とのやり取りを一任できます。
平日の日中に時間を割いて保険会社との電話対応をせずに済みますし、仕事・学業を休んで保険会社と示談交渉の日程を設ける必要もありません。
また、示談の手続きや治療の受け方について不明点があれば、その都度、弁護士からのアドバイスを受けられます。
事故で生活リズムが乱れているなか、不慣れな手続きに時間を割かずに済むので、肉体的にも精神的にも事故被害の負担を大きく軽減できるでしょう。
通常だと、後遺障害等級認定の申請は、担当医から受け取った診断書を加害者側の保険会社に提出して手続きを任せるのが一般的です。
ただし、保険会社では事務的に手続きを進められるので、診断書や書類に不備があったとしても、必ずしも連絡をくれるとはかぎりません。
弁護士に後遺障害等級認定の手続きを任せれば、適切な後遺障害等級が認定されるように配慮して手続きに取り組んでもらえます。
「保険会社の申請では失敗したが、弁護士が申請したことで等級認定された」というケースは多々あるので、等級認定の可能性を少しでも高めたいのであれば、弁護士への依頼を検討しましょう。
一方、追突事故の手続きを弁護士に依頼した場合、以下の2つのデメリットがあります。
弁護士に事故対応を依頼する場合、主に以下のような費用がかかります。
たしかに弁護士費用がかかる点はデメリットですが、「初回相談無料」「着手金無料」「分割払い可能」などの法律事務所もあります。
また、弁護士費用特約を利用することで自己負担0円で済むケースもあり、詳しくは「追突事故で弁護士に依頼を検討したほうがよい状況」で後述します。
けがの治療などで慌ただしい中で一から弁護士を探すというのは、時間も手間もかかって大変でしょう。
「ベンナビ交通事故」では、交通事故トラブルが得意な全国の弁護士事務所を掲載しています。
地域や相談内容などから絞り込んで一括検索できるので、弁護士探しが初めての方でもスムーズに相談先を探せるのが特徴です。
初回相談無料の法律事務所も多く掲載しており、まずは一度利用してみることをおすすめします。
弁護士費用は、依頼する弁護士によって料金形態や金額が異なります。
あくまで目安ですが、以下の金額が追突事故被害の手続きを依頼する場合の大体の相場といわれています。
料金形態 | 着手金 | 報酬金 |
着手金あり | 10万円~20万円程度 | 獲得金額の10%~20%程度 |
着手金なし | 無料 | 獲得金額の20%~30%程度 |
なお、示談交渉が成立せずに裁判まで発展した際には、別途裁判対応について費用が発生する場合があります。
交通事故の弁護士費用に関する詳細が気になる方は、以下の記事をあわせてご覧ください。
【関連記事】交通事故の被害者必見!弁護士費用の相場と節約方法
弁護士に依頼するべきかの一つの判断基準は、「弁護士への依頼で増額できる金額>弁護士費用になるかどうか」です。
依頼前に法律相談を利用すれば、事前に弁護士からもアドバイスを得られますが、特に以下の3つのいずれかに該当する場合は弁護士への依頼をおすすめします。
後遺障害等級が認定されると、入通院慰謝料だけでなく、後遺障害慰謝料の請求も可能です。
そのぶん弁護士基準での慰謝料請求による増額分も大きくなるので、弁護士費用を差し引いても経済的なメリットを得られる可能性が高いです。
また、後遺障害はなくても治療期間が半年近く長引いている状況なら、弁護士に依頼したほうが有利な結論を得られる可能性があります。
「治療期間が長引いている場合」または「後遺障害等級が認定される可能性がある場合」には、一度弁護士に相談して見通しを案内してもらうとよいでしょう。
「明らかに加害者側からの提示額が相場よりも少なく、それを指摘しても納得できる返答がもらえない」というような状態で示談交渉が難航している場合は、弁護士への依頼を検討したほうがよいかもしれません。
弁護士であれば、過去の判例や法的根拠を提示して交渉を進めてくれるので、個人では拒否されていた要求があっさり認められるケースもあります。
相手の保険会社がこちらが折れるのを待っている状態だと、それ以上個人での交渉を続けるのは難しいので、もし無理だと感じるようなら弁護士に示談交渉を任せたほうがよいでしょう。
弁護士費用特約とは、ご契約されている任意保険会社が弁護士費用を負担してくれる保険サービスです。
弁護士費用特約がある場合は、弁護士に相談や依頼をする際の弁護士費用の負担がなくなるので、特約を付しているのであれば悩まずに弁護士へ依頼しましょう。
なお、自身の保険だけでなく、同居している家族などの保険に付いている弁護士費用特約も利用できる場合があります。
弁護士費用特約は加入率が高い保険サービスであり、もし契約したかどうか覚えていない場合や家族の弁護士費用特約が利用できるか不明な場合は、一度保険会社に問い合わせをしてみることをおすすめします。
交通事故で弁護士に相談や依頼をするベストタイミングは交通事故発生直後です。
依頼するのが早ければ早いほど、手続きを誤るリスクが減って保険会社の対応をする手間も少なくなります。
弁護士に依頼することを決めているのであれば、可能なかぎり早めに相談するとよいでしょう。
基本的には、弁護士への依頼は「事故発生から示談成立までの期間」ならいつでも大丈夫です。
なお、示談成立後にやはり納得いかないからと弁護士に相談をしても、示談内容を変更することはできないので注意してください。
追突事故で弁護士に依頼するメリットは、主に以下の3点です。
「弁護士に依頼することで増額が見込める金額が弁護士費用を上回るかどうか」は弁護士への相談や依頼を決める際の一つの判断基準になります。
とはいえ、交通事故の知識を持ち合わせていないと、自身だけで判断するのは難しいでしょう。
依頼をするしないにかかわらず、弁護士との法律相談だけは一度しておくことをおすすめします。
最近では初回無料相談を受け付けている事務所も増えてきているので、検討してみてください。