交通死亡事故の賠償金相場はどのくらい?増減要因や約1億円となった事例も解説

交通死亡事故の賠償金相場はどのくらい?増減要因や約1億円となった事例も解説
目次
  1. 交通死亡事故の賠償金は平均でどのくらい?相場は?
    1. 死亡慰謝料 | 被害者が死亡したことによる精神的損害に対する賠償金
    2. 葬儀関係費用 | 被害者の葬儀などにかかった費用
    3. 死亡逸失利益 | 被害者が生きていれば得られていたはずの労働収入
    4. 治療費等 | 被害者が交通事故による治療を受けていた場合
  2. 交通死亡事故の賠償金は自動計算機をつかえば簡単におおよその額がわかる
  3. 交通死亡事故の賠償金が増減額する主な要因
  4. 交通死亡事故の慰謝料は被害者の年齢で変わる?
    1. 死亡慰謝料は年齢によって差はない
    2. 死亡逸失利益は年齢によって変わる可能性がある
    3. 被害者が子どもや高齢者だった場合、過失割合が争点になりやすい
  5. 交通死亡事故の賠償金を加害者が払えない場合の対処法は?
    1. 分割での支払いを提案する
    2. 加害者に対する強制執行を検討する
    3. 加害者の自賠責保険に被害者請求をする
    4. 被害者自身が加入している保険の利用も検討する
    5. 加害者が会社の車で事故を起こしたのであれば、会社への請求も検討する
    6. 政府保証事業制度の利用を検討する
    7. 弁護士に相談する
  6. 交通死亡事故の賠償金請求を弁護士に依頼すべき理由
    1. 弁護士が加わるだけで、相手方の態度が変わる場合がある
    2. より高い算定基準で慰謝料を請求できる
    3. 賠償金の増額が望める
    4. 適正な過失割合を主張できる
    5. 示談交渉など相手とのやりとりを一任できる
    6. 交渉をスムーズに進められるようになるので、賠償金を早く受け取れる
  7. 賠償金額が約1億円になるケースも?弁護士に依頼し高額な賠償金を獲得した事例3つ
    1. 加害者が任意保険に加入していなかったものの約1億円の賠償金を獲得した事例
    2. 被害者の無過失を工学鑑定で立証し、約1億円の賠償金を獲得した事例
    3. 被害者の死亡逸失利益を適正に請求し、1億円超の賠償金を獲得した事例
  8. さいごに | 交通死亡事故の賠償金請求については弁護士に相談を!

交通死亡事故に巻き込まれた場合、遺族は加害者に対して賠償金を請求することができます。

ただ、交通死亡事故では被害者が死亡しているため、賠償額が高額になることが多いです。

そのため、賠償責任を軽減しようと加害者側が示談交渉に難癖をつけたり、そもそも示談交渉に応じようとさえしなかったりするケースも少なくありません。

また、示談契約どおりに賠償金を支払わず、踏み倒しを狙うケースも見られます。

本記事では、交通死亡事故の賠償金の相場や内訳、賠償金を増額するためのコツ、加害者側が賠償金を支払わないときの対処法、弁護士に相談・依頼するメリットなどについてわかりやすく解説します。

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交通死亡事故の賠償金は平均でどのくらい?相場は?

交通事故で被害者が死亡した場合、被害者の家族は加害者に対して不法行為責任を追求できます。

不法行為責任を追求するときの代表的な賠償項目は以下のとおりです。

  • 死亡慰謝料:被害者が死亡したことで生じる精神的損害に対する賠償金
  • 葬儀関係費用:被害者の葬儀などに要した費用分に対する賠償金
  • 死亡逸失利益:被害者が死亡しなければ本来得られていたはずの収入に対する賠償金
  • 治療費:被害者が死亡する前に治療を受けていたときの治療費などに対する賠償金

まずは、被害者死亡の交通事故において加害者側に請求できる損害賠償項目の内容とその相場や平均額について解説します。

死亡慰謝料 | 被害者が死亡したことによる精神的損害に対する賠償金

死亡慰謝料とは、被害者の死亡という事実によって生じた精神的損害に対する賠償金のことです。

理屈上、死亡慰謝料は以下2つに分類されます。

  • 死亡した被害者本人が被った精神的損害に対する慰謝料
  • 死亡した被害者の家族や近親者が被った精神的損害に対する慰謝料(遺族固有の慰謝料)

まず、「交通事故で死亡した被害者本人が死亡によって精神的苦痛を被った」という理屈に違和感を抱く人も少なくはないでしょう。

ただ、法律上は交通事故で「死亡」という被害を受けた本人も精神的損害を強いられており、加害者に対して慰謝料請求することが可能だと考えられています。

ただし、被害者本人は死亡しているので謝料請求権を行使できません。

そのため、被害者分の慰謝料請求権を行使するのは相続人です。

なお、交通事故の死亡慰謝料を本人に代わって請求できる相続人は、基本的に配偶者・子ども・親・兄弟姉妹に限られると理解されています。

また、交通事故で被害者が死亡すると、被害者の家族なども辛い気持ちになるはずです。

交通事故実務では、このような家族の精神的苦痛を法的に保護する必要があると捉えて、遺族固有の慰謝料請求を認めています。

死亡慰謝料の算定基準には3つある

死亡慰謝料の相場を知るには、死亡慰謝料の算定基準について理解する必要があります。

死亡慰謝料の算定基準は以下3つに分類されます。

  1. 自賠責保険基準(自賠責基準)
  2. 任意保険基準
  3. 弁護士基準
自賠責保険基準の死亡慰謝料相場

まず、自賠責保険基準(自賠責基準)とは、交通事故被害者に生じた損害を最低限保障する目的で定められた基準のことです。

ほかの2つの基準に比べると、死亡慰謝料の金額は低く見積もられています

自賠責保険基準では、交通事故死亡事故の支払い額に上限が定められており、死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬儀関係費用などすべて合算して3,000万円までです。

自賠責保険では死亡慰謝料を計算するときに以下の表を活用します。

項目金額
死亡した被害者本人分の慰謝料400万円
遺族固有の慰謝料(請求権者が一人の場合)550万円
遺族固有の慰謝料(請求権者が二人の場合)650万円
遺族固有の慰謝料(請求権者が3人の場合)750万円
被害者に扶養者がいる場合さらに200万円追加

死亡した被害者本人分の慰謝料額は400万円に固定されていますが、遺族固有の慰謝料については、請求権者の人数と扶養の有無によって異なります。

たとえば、死亡した被害者に配偶者と未成年の子どもが二人いる事案では、死亡慰謝料の金額は以下のように算出されます。

死亡慰謝料額 = 400万円 + 750万円(請求権者3人の場合)+ 200万円(扶養の場合)= 1,350万円
任意保険基準の死亡慰謝料相場

任意保険基準とは、任意保険会社がそれぞれ定めている独自の算定基準のことです。

任意保険基準で算出された死亡慰謝料額は、自賠責保険基準よりも高く、弁護士基準よりも低くなることが多いです。

各社の任意保険基準の詳細は公表されていませんが、一般的には、以下のような金額相場になります。

  • 被害者が一家の家計を支えていた場合:1,500万円〜2,000万円
  • 被害者が専業主婦・専業主夫の場合:1,300万円〜1,600万円
  • 被害者が子どもや高齢者の場合:1,100万円〜1,500万円

なお、自賠責保険基準とは異なり、任意保険基準で死亡慰謝料を算出するときには、被害者本人の慰謝料と遺族固有の慰謝料は区別されません。

弁護士基準の死亡慰謝料相場

弁護士基準とは、過去の交通事故事案の裁判例・判例から導き出された算定基準です。

自賠責保険基準・任意保険基準よりも高額の死亡慰謝料が算定されるので、被害者側にとってもっとも有利な基準といえます。

弁護士基準によって算出される死亡慰謝料相場は以下のとおりです。

  • 被害者が一家の家計を支えていた場合:約2,800万円
  • 母親・配偶者の場合:約2,500万円
  • そのほかの場合(独身者、子ども、高齢者など):約2,000万円〜2,500万円

なお、任意保険基準と同じように、弁護士基準で死亡慰謝料を算出するときにも、被害者本人の慰謝料と遺族固有の慰謝料は区別されません。

葬儀関係費用 | 被害者の葬儀などにかかった費用

交通事故で被害者が死亡した場合、被害者の葬儀などに要した費用を加害者側に請求できます。

葬儀関係費用として請求できる金額には、以下の上限額が定められています。

  • 自賠責保険基準:原則として100万円まで
  • 弁護士基準:原則として150万円まで

ただし、実際に支出した葬儀関係費用がこの上限額にまで至らない場合には、実際に拠出した実費分までが賠償の対象になります。

なお、葬儀などに要した費用として加害者側に請求できる範囲は、社会通念上必要かつ相当と認められる範囲の葬祭に関する費用に限られます。

葬儀関係費用として加害者側に請求できる項目に該当するかについては以下を参考にしてください。

  • 通夜代、告別式代
  • 葬式代
  • 火葬代
  • 埋葬料
  • 読経代
  • 法名代
  • お布施
  • 葬儀広告費
  • 四十九日忌までの法要費 など

一方、仏壇や祭壇の購入費用、墓石の購入費用については、葬儀費用に含まれるかどうかで判断が分かれます。

また、四十九日忌を過ぎたあとの法要費、遺族以外の関係者が葬儀参列のために要した交通費、香典返しや引き出物の代金などは、原則として葬儀関係費用として相手方に請求できません

死亡逸失利益 | 被害者が生きていれば得られていたはずの労働収入

被害者が交通事故で死亡しなければ、その後の人生でさまざまな仕事をして収入を得られたはずです。

そこで、交通事故で被害者が死亡した場合には、死亡していなければ本来得られたはずの労働収入を死亡逸失利益として加害者に賠償請求できると考えられています。

死亡逸失利益は、以下の計算式で求められます。

死亡逸失利益 = ①基礎収入額 ×( 1 – ②生活費控除率 )× ③就労可能年数に対応するライプニッツ係数

まず、死亡逸失利益の算定根拠になるのが「①基礎収入額」です。

基礎収入額とは、原則として交通事故の直近の年収を意味します。

ただし、実際に計算根拠になる基礎収入額を決定するときには、交通事故被害者の属性(給与所得者、自営業、学生、無職、失業中、高齢など)や、勤労能力・勤労意欲・学歴・職歴などを前提とした就労可能性、賃金センサスなどが総合的に考慮されるのが一般的です。

次に、「②生活費控除率」とは、交通事故で死亡しなければ消費したであろう生活費などの経費を控除するときの割合のことです。

基礎収入から生活費を控除したものを加害者に対して請求するために設定されています。

生活費控除率は、被害者の生活実態、被扶養者の数、家計への貢献度などから画一的に算定されることが多いです。

「③就労可能年数に対応するライプニッツ係数」は、死亡逸失利益を現在価値に引き直すための数値のことで、中間利息控除係数とも呼ばれます。

就労可能年数とライプニッツ係数については、国土交通省が公表している「就労可能年数とライプニッツ係数表」が参考にされます。

死亡逸失利益の詳細な計算方法や注意事項については以下のリンク先の記事を参考にしてください。

【関連記事】死亡事故における逸失利益とは?金額の計算方法と求め方を解説

治療費等 | 被害者が交通事故による治療を受けていた場合

交通事故の被害者が死亡する前に、通院・入院をして治療を受けていた期間がある場合には、その期間に生じた治療費などを加害者側に請求できます。

治療費等として加害者側に請求できる可能性がある項目として以下のものが挙げられます。

  • 入院費用
  • 入院雑費
  • 入院付添看護費用
  • 治療費
  • 通院交通費
  • 整骨院・接骨院・カイロプラクティックなどの施術費用
  • 装具・器具購入費用 など

治療費などとして加害者側に請求できる項目一覧、具体的な金額については、以下のリンク先の記事を参考にしてください。

【関連記事】交通事故の治療費は誰が支払う?請求方法や立て替えが難しい場合の対処法

交通死亡事故の賠償金は自動計算機をつかえば簡単におおよその額がわかる

交通事故で被害者が死亡した場合、生じた損害に対して適切な賠償金を支払ってもらうには、被害者側で賠償項目をひとつずつピックアップする作業が必要です。

とはいえ、家族が交通死亡事故に巻き込まれるというたいへんな状況のなかで、交通事故トラブルの処理についてゆっくり時間を割くのは簡単ではないでしょう。

そこで、交通死亡事故の賠償金の目安額を確認するツールとしておすすめなのが、ベンナビ交通事故の「交通事故の慰謝料計算機」です。

ベンナビ交通事故の自動計算機を使えば、交通死亡事故が発生した所在地、被害者の年齢、交通事故当時の職業、前年度の年収、家庭の状況、性別、扶養の人数などの基本項目を入力するだけで、30秒程度で損害賠償請求額の目安総額を算出できます(ただし、交通死亡事故の場合、葬儀関係費用や治療費などは含まれません)。

任意保険会社に対応を任せた場合と弁護士基準を適用した場合との差額も瞬時にわかるので、弁護士に依頼するメリットを実感できるでしょう。

また、自動計算機を使用すれば、加害者側の任意保険会社から提示された賠償額が適切かも判断しやすくなるはずです。

ベンナビ交通事故の自動計算機は誰でも無料で利用可能です。

特別な登録手続きも必要ないので、交通死亡事故の被害にあって事後処理にお困りの方は、この機会にぜひご活用ください。

交通事故の慰謝料計算機

交通死亡事故の賠償金が増減額する主な要因

交通死亡事故の賠償金は、交通事故や被害者の個別事情によって増減されます。

ここでは、交通死亡事故の賠償金が増額・減額する主な要因を簡単に整理していきます。

交通死亡事故の賠償金が増額する主な要因
要因概要
加害者に故意・重過失がある場合・被害者を轢き殺そうとした殺人事件
・無免許運転による死亡事故
・ひき逃げによって救護が遅れて被害者が死亡した事例
・飲酒や薬物摂取などによって正常な判断能力を失って運転した結果、交通事故を起こして被害者が死亡した交通事故
・著しいスピード違反、煽り運転、交通ルールを過度に違反した結果生じた交通死亡事故 など
加害者に反省の態度がない場合・裁判や示談交渉のなかで、加害者が嘘をついていたり、供述に変遷があるなどの理由で信憑性に欠けたりする場合
・交通事故被害者に対してクレーム・苦情をするなどして、反省の態度が一切見受けられない場合 など
被害者側の特殊事情がある場合・被害者が一家の支柱として世帯収入を支えていた場合
・家事などによって家計に貢献していた場合
・子どもが被害者になって遺族に生じた精神的苦痛が大きい場合
・扶養家族が多い場合
・社会的地位が高い場合
・年収や資産が高額の場合 など
交通死亡事故の賠償金が減額する主な要因
要因概要
過失相殺が適用される場合交通死亡事故について被害者側にも過失が認められる場合には、被害者側の過失相当分が賠償請求額から割り引かれる。
損益相殺が適用される場合自賠責損害賠償、遺族厚生年金、休業補償給付金などから一定の金銭を受け取っていた場合には、被害者の二重取りを防ぐ目的から、加害者の賠償責任からその金額が減額される。
ただし、生命保険金、生活保護法に基づく扶助費、香典、見舞金などは損益相殺の対象外。
被害者側の特殊事情がある場合・世帯の家計や家事などに貢献していなかった場合
・無職期間が長い場合
・被害者が子どもや高齢者の場合
・扶養家族がいない場合
・独身の場合 など

交通死亡事故の慰謝料は被害者の年齢で変わる?

ここでは、交通死亡事故の慰謝料が被害者の年齢に影響されるかについて説明します。

死亡慰謝料は年齢によって差はない

死亡慰謝料は、交通事故によって被害者が死亡したときに生じる精神的苦痛に対して支払われるものです。

そして、死亡した被害者の立場や年齢が変わったところで、人が死亡した以上、感情面のつらさには違いはないはずです。

そのため、「子どもだから死亡慰謝料が類型的に高額になる」「高齢者だから死亡慰謝料が低くなる」ということはありません。

ただし、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準のいずれについても、被害者が置かれていた家庭における立場が一定程度考慮されるのが実情です。

死亡逸失利益は年齢によって変わる可能性がある

死亡慰謝料とは異なり、死亡逸失利益を計算するときには、交通死亡事故の被害者の年齢・属性が影響します。

死亡逸失利益の計算式では、基礎収入額・生活費控除率・就労可能年数・ライプニッツ係数・賃金センサスなど、年齢によって左右される要素が用いられるからです。

たとえば、高齢者の場合には就労可能年数が少なくなるので、死亡逸失利益は低額になる傾向にあります。

一方、死亡した被害者が子どもなら、就労可能年数が長いため高額の死亡逸失利益を請求しやすくなるでしょう。

被害者が高齢者の場合は、年金を死亡逸失利益として含められる場合がある

交通死亡事故の被害者が高齢者だと、すでに年金を受給している場合があるはずです。

高齢の被害者が死亡すると、その時点で受給していた年金を受け取ることができなくなってしまいます。

そこで、交通死亡事故が原因で受け取ることができなくなった年金が死亡逸失利益に含まれるかが争点になります。

現在の交通事故実務では、交通事故被害者が受け取っていた年金の性質・種類によって、死亡逸失利益に含むかどうかが区別されています。

死亡逸失利益に含まれる年金死亡逸失利益に含まれない年金
・退職共済年金
・恩給・老齢基礎年金
・老齢厚生年金
・障害基礎年金
・障害年金の加給年金
・老齢年金の加給年金
・遺族厚生年金
・軍人恩給扶助料

被害者が子どもや高齢者だった場合、過失割合が争点になりやすい

交通事故の損害賠償額を決定するときには、過失割合が争点になりやすい傾向にあります。

なぜなら、交通事故について被害者側にも過失割合がある場合には、その分だけ加害者側の賠償責任が減額されるので、賠償額を引き下げたいと希望する加害者側が被害者の過失を立証しようとするからです。

そして、交通事故の被害者が高齢者・子どもの事案では、被害者側の過失が指摘される傾向にあります。

あくまでも一般論ですが、子どもや高齢者は交通ルールを無視したり不注意な行動をとっていたりする可能性があるからです。

そのため、交通死亡事故の被害者が子どもや高齢者の事案では、過失割合が争点になったときに備えて、できるだけ早いタイミングで弁護士に依頼をすべきだと考えられます。

被害者側に落ち度はなかったこと、加害者側の不注意が大きかったことなどを根拠付ける証拠を用意することで、賠償額の増額を期待できるでしょう。

交通死亡事故の賠償金を加害者が払えない場合の対処法は?

交通死亡事故が起きると、加害者側は数千万単位の高額の損害賠償責任を負担しなければいけません。

通常であれば、加害者側の任意保険会社から被害者に対して賠償金が支払われますが、問題は、加害者が任意保険に加入していなかった場合です。

なぜなら、加害者が自動車保険に加入していない以上、交通死亡事故の被害者遺族は加害者に対して直接損害賠償請求をする必要がありますが、加害者側が高額の賠償請求に対して一括で支払う経済力を有していないケースが多いからです。

ここでは、交通死亡事故の賠償金を加害者が一括で支払えないときの対処法について解説します。

分割での支払いを提案する

加害者が給与所得者のように継続的かつ安定的な収入を得ている場合には、賠償金の分割払いを提案するのも選択肢のひとつです。

一括では数千万円の賠償金を支払うのが難しくても、分割払いなら対応が可能だということで、加害者側が示談に応じてくれやすくなるでしょう。

加害者に対する強制執行を検討する

加害者が自主的に賠償金を支払わないときには、強制執行によって債権を回収する手段が考えられます。

強制執行とは、債務者の財産を強制的に差し押さえて回収する法的措置のことです。

示談契約通りに債務者が賠償金を支払わなかったり、民事訴訟で判決が確定したのに債務者がこれを無視したりする場合、債務者が所有している不動産や株式、預貯金、給与などを差し押さえることができます。

ただし、強制執行の手続きは複雑ですし、債務者がどのような財産を所有しているかを債権者側が調査しなければいけないなどの手間もかかります。

また、差し押さえをおそれて債務者に財産を費消されると、強制執行が空振りに終わりかねません。

そのため、交通死亡事故の加害者が損害賠償請求に応じてくれないときには、できるだけ早いタイミングで弁護士まで相談するのがおすすめです。

加害者の自賠責保険に被害者請求をする

自賠責保険は強制加入なので、任意保険未加入の加害者も自賠責保険には加入しているはずです。

そこで、加害者が自主的に賠償金を支払わないときには、加害者の自賠責保険に被害者請求する方法が考えられます。

ただし、交通死亡事故の場合、自賠責保険の被害者請求には3,000万円の上限額が定められています。

交通死亡事故で3,000万円以上の損害が生じているのなら、自賠責保険の被害者請求だけでは満足を得ることができません。

このケースでは、自賠責保険では賄うことができない賠償金の回収方法を別途検討する必要があります。

また、加害者が無免許運転の場合、自賠責保険の有効期限が切れていた場合、ひき逃げ事件で加害者を特定できていない場合には、自賠責保険の被害者請求を利用することができない点にも注意が必要です。

被害者自身が加入している保険の利用も検討する

被害者側に加入している保険があるなら、手元の保険証書の内容を確認してください。

保険の内容によっては、交通死亡事故の被害者になったときにも保険金を受け取れる可能性があります。

被害者側が利用できる可能性がある保険として、以下のものが挙げられます。

  • 人身傷害保険
  • 搭乗者傷害保険
  • 無保険車傷害保険
  • 代車等諸費用特約
  • ファミリーバイク特約
  • 生命保険
  • 健康保険
  • 労災保険 など

加害者が会社の車で事故を起こしたのであれば、会社への請求も検討する

加害者が社用車で交通事故を起こした場合や、通勤途中にマイカーで交通事故を起こした場合には、会社に対して損害賠償請求できます。

このケースでは、業務中に交通事故が起きたと考えられるので、会社側に運行供用者責任が発生するからです。

もちろん、会社に運行供用者責任があるからといって、加害者本人の不法行為責任が免除されるわけではありません。

ただ、加害者個人の資力と会社の経済力を比較すると、会社に対して不法行為責任を追求したほうが、被害者が賠償金を受け取れる可能性は高まるでしょう。

ただし、社用車での交通事故が勤務時間外であったり、加害者が通常の通勤ルートを外れて移動している途中に事故を起こしたりした場合には、会社の法的責任は否定されます。

このように、会社に対する法的責任を追求する場面では個別具体的な事情が細かくチェックされるので、弁護士に対応を任せるべきでしょう。

政府保証事業制度の利用を検討する

加害者が自賠責保険にさえ加入していない場合や、ひき逃げによって加害者を特定できない場合には、交通事故被害者自身が損害の負担を強いられかねません。

このような無保険者による交通事故やひき逃げ事故の被害者を救済する目的で制度化されているのが、政府の自動車損害賠償保障事業(政府保障事業)です。

政府保障事業制度を利用すれば、交通事故で生じた損害について国から被害者に対して直接補填がおこなわれます。

そして、国が交通事故加害者に対する損害賠償請求手続きを代位行使するので、加害者による賠償金不払いリスクを国が肩代わりしてくれます。

政府保障事業制度の詳細や申し込み先については、以下のページを参考にしてください。

【参考記事】政府保障事業|国土交通省

弁護士に相談する

交通死亡事故の加害者が賠償金を支払ってくれないときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談してください。

交通事故トラブルを得意とする弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得られるからです。

  • ひき逃げ事件のような加害者の特定が難しい事案でも、警察と連携しながら加害者を特定する作業を進めてくれる
  • 加害者との話し合いのなかで、分割払いなどの条件を提示しながら、賠償金の支払いについて合意を引き出してくれる
  • 示談交渉に応じようとしない加害者や、締結した示談契約を無視して賠償金を踏み倒そうとする加害者に対して民事訴訟や強制執行などの必要な措置をとり、賠償請求権の早期満足を目指してくれる
  • 加害者側の保険会社から提示される賠償額に納得できないときには、賠償額の増額を目指して交渉などを進めてくれる
  • 被害者に代わって交通事故トラブル解決に必要な手続きなどを代理してくれるので、被害者遺族は相続手続きや感情の整理に集中できる など

ベンナビ交通事故では、交通死亡事故などの対応実績豊富な弁護士を紹介中です。

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交通死亡事故の賠償金請求を弁護士に依頼すべき理由

ここからは、交通死亡事故の被害にあったときに弁護士を頼るべき理由をさらに詳しく解説します。

弁護士が加わるだけで、相手方の態度が変わる場合がある

交通事故に巻き込まれると、被害者と加害者との間で示談交渉をおこなう必要があります。

示談交渉が円滑に進めば問題ないのですが、事案によっては、被害者遺族本人が直接話し合いをしたことによって、「加害者が連絡を無視する」「加害者が嘘をついて過失を認めようとしない」などの事態が生じかねません。

このようなケースでは、法律のプロである弁護士が代理人として参加することで、加害者側が事態の深刻さを理解して、急に態度を改めて誠実に示談交渉などに向き合うようになる可能性があります。

「素人だという理由だけで舐められているのではないか」などの不安を抱いている方は、弁護士の力を借りてみるといいでしょう。

より高い算定基準で慰謝料を請求できる

死亡慰謝料を算定するときの基準には、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の3つが存在します。

被害者側にとってもっとも有利なのは弁護士基準ですが、弁護士基準を活用して死亡慰謝料を算定できるのは、弁護士が示談交渉などに参加したときだけです。

そのため、できるだけ高額の死亡慰謝料を請求したいと考えているなら、弁護士への相談・依頼は不可欠でしょう。

賠償金の増額が望める

交通死亡事故の示談交渉では、加害者側の保険会社との間で賠償額や賠償項目について細かく話し合う必要があります。

話し合いの際、加害者側の保険会社はできるだけ賠償額を引き下げようとしてくるので、被害者側としては、交通死亡事故と因果関係が存在する損害項目をひとつずつ整理して、証拠を示しながら正当な賠償額を主張しなければいけません。

交通事故トラブルを得意とする弁護士に依頼すれば、被害者側の主張を根拠付ける証拠を用意してくれるので、賠償金の増額を期待できるでしょう。

適正な過失割合を主張できる

交通事故の示談交渉や民事訴訟で争点になることが多いのが過失割合です。

とくに、交通死亡事故では賠償額が高額になるため、少しでも賠償負担を軽減したい加害者側が、交通事故について被害者側の過失を主張してくることが多いです。

その点、弁護士に依頼すれば、ドライブレコーダーや監視カメラの映像、実況見分調書などの客観的証拠を活用しながら、交通事故の実態に即した過失割合を主張・立証してくれるでしょう。

示談交渉など相手とのやりとりを一任できる

交通死亡事故が発生したあとは、葬儀や相続手続き、遺品整理などで非常に忙しい日々が続きます。

このような状況で、示談交渉や民事訴訟、各種保険手続きなどを並行して進めるのは簡単ではありません。

交通事故トラブルを得意とする弁護士に依頼すれば、交通事故の事後処理に要するほとんど全ての手続きを代理でしてくれるので、被害者の遺族の負担が大幅に軽減されるでしょう。

交渉をスムーズに進められるようになるので、賠償金を早く受け取れる

交通事故が発生したあとは、当事者間で示談交渉を進めて、示談条件について合意に至ればその時点で紛争は解決します。

しかし、示談交渉が難航したり、お互いの意見が噛み合わなかったりすると、民事訴訟で解決を目指さざるを得ません。

交通事故トラブルが民事訴訟に発展すると、最終的に判決が確定するまでに年単位の期間を要します。

紛争が長期化するほど当事者双方が疲弊しますし、いつまでも賠償金を受け取れず、損害が補填されないままです。

その点、交渉ノウハウや交通事故トラブルの解決実績が豊富な弁護士に依頼すれば、示談段階での紛争解決を目指してくれるので、賠償金を受け取るタイミングを前倒しできるでしょう。

賠償金額が約1億円になるケースも?弁護士に依頼し高額な賠償金を獲得した事例3つ

さいごに、弁護士に依頼することで高額の賠償金獲得に成功した事例を紹介します。

加害者が任意保険に加入していなかったものの約1億円の賠償金を獲得した事例

本件は、被害者が歩道を歩いていたところ、縁石を飛び越えて歩道に乗り上げてきた自動車に轢かれて死亡した交通事故です。

自動車を運転していた加害者が任意保険に未加入だったため、死亡慰謝料や死亡逸失利益を全額回収できないリスクが存在しました。

ただ、弁護士が代理人として就任して精査したところ、被害者側の任意保険契約に無保険車傷害特約が付帯されており、最終的には被害者側の任意保険会社の保険を利用すれば損害額全額が補填される状況であるが判明しました。

そこで、加害者及び保険会社に対して直接民事訴訟を提起したところ、 9,475万円で裁判上の和解が成立するに至りました。

弁護士が代理人として民事訴訟に参加したことで弁護士基準が適用されて、正当な賠償額が算定された事例といえるでしょう。

【参考記事】被害女性が歩道を通行中、自動車にひかれて亡くなった事故。賠償額9475万円で解決した事例

被害者の無過失を工学鑑定で立証し、約1億円の賠償金を獲得した事例

本件は、バイクを運転中の被害者が赤信号で停車していたところ、ダンプカーが後方から追突し、被害者が死亡した事例です。

刑事裁判及び民事裁判において、加害者側が、「ダンプカーで左折しようとしたところ、被害者がすり抜けようとしてきた」と被害者側にも過失があると主張してきました。

そこで、本件で就任した弁護士は、ドライブレコーダーのデータを映像解析し、工学鑑定により加害者の主張内容が事実ではないと証明しました。

結果として、本件では被害者側が無過失であったと認定され、工学鑑定に要した費用などを含めて総額約1億円の賠償金の獲得に成功しました。

【参考記事】被害者の無過失を工学鑑定により立証した事件

被害者の死亡逸失利益を適正に請求し、1億円超の賠償金を獲得した事例

原付バイクに乗車していた被害者少年が右折自動車に衝突されて死亡した事例です。

事故直後の加害者側の対応に不信感を抱いた被害者の母親が弁護士に相談・依頼し、刑事裁判に被害者参加していました。

そして、本件の示談交渉にも弁護士が介入していたため、死亡慰謝料として約2,800万円、死亡逸失利益として約7,600万円、合計1億円超の賠償金で示談契約が成立しました。

交渉途中で加害者側から被害者側の過失を指摘する旨の主張がなされましたが、刑事裁判の証拠から被害者側には一切過失がないことが明らかになり、加害者側の主張は取り下げられるに至っています。

交通死亡事故では、刑事事件と民事事件が同時に進むことが少なくありません。

交通事故案件を得意とする弁護士に相談・依頼すれば、刑事事件の資料を積極的に活用するなどして、民事事件でも有利な解決を期待できるでしょう。

【参考記事】【原付バイク事故】死亡逸失利益・死亡慰謝料合わせ1億円の賠償金を獲得した事例

さいごに | 交通死亡事故の賠償金請求については弁護士に相談を!

交通死亡事故では、損害賠償請求についてさまざまな争点が生じます。

少しでも被害者にとって有利な条件での紛争解決を希望するなら、交通事故発生直後から弁護士に相談・依頼をして、早期に適切な賠償額を受け取りやすい状況を作り出すべきでしょう。

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監修記事
弁護士法人かがりび綜合法律事務所
野条 健人
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アシロ編集部
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本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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