交通事故後の対応
自損事故で保険金はいくらもらえる?保険の種類ごとに詳しく解説
2024.10.16
自損事故を起こしてしまったとき「できれば保険から修理代をもらいたい」と考える人は多いのではないでしょうか?
結論からお伝えすると、自損事故で補償を得られるかどうかは、加入している保険の種類によって異なります。
また、修理費などをいくらもらえるかは、補償内容を確認する必要があります。
そこで本記事では、自損事故で保険から補償がおりるケースや、具体的にいくらもらえるのかなどを解説します。
自損事故を起こしてしまい、車の修理費などで悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
自損事故をおこした際に自動車保険から保険金が支払われる可能性があるのは、以下の保険に加入していた場合のみです。
以下では、それぞれの保険の内容やいくらもらえるのかを詳しく解説します。
自損事故保険とは、自損事故を起こしたドライバーや搭乗者が死傷した場合に受け取れる保険です。
自損事故保険は、一般的な自動車保険に自動的に付帯しているケースが多いので、その場合には特別に他の保険に加入したり特約をつけたりする必要はありません。
なお、自損事故保険の一般的な補償額は以下のとおりです。
自分の状態 | 一般的な保険金額 |
死亡 | 1,500万円 |
後遺障害 | 50~2,000万円(認定等級によって異なる) |
要介護 | 200万円 |
入院・通院 | 通院・入院の日数による(上限100万円) |
自損事故保険の補償上限額は死亡時に1,500万円、入院時でも100万円と決して十分とはいえません。
また、保険を適用すると等級が下がるため、翌年以降の保険料が上がってしまう点にも注意が必要です。
自損事故保険を適用するかどうかは、受け取れる金額と引き上がる保険料を比較したうえで利用を検討しましょう。
搭乗者障害保険とは、被保険者や家族、契約自動車に乗車していた人などが人身損害を負うと適用される保険です。
自損事故によってドライバーや同乗者が死傷すると、人身障害補償保険に加えて、搭乗者傷害保険も受け取れます。
搭乗者保険の補償金は、実損害に対して支払われるのではなく「入院1日〇〇万円」「頸部の骨折〇〇万円」など、あらかじめ決められた金額を受け取るのが通常です。
人身傷害補償保険とは、被保険者や家族、契約自動車に乗車していた人が人身障害を負った場合に適用される保険です。
自損事故によってドライバーや同乗者が死傷すると、保険加入時に設定した金額を上限として以下の費用が支払われます。
搭乗者保険へ加入している場合には、搭乗者保険と合わせて補償を受けられます。
なお、人身傷害補償保険は自損事故保険よりも適用範囲が広いため、人身傷害補償保険が適用される場合には、自損事故保険は適用されません。
両方を受け取ることはできないため注意しましょう。
自分の車が壊れた場合に利用できるのが車両保険です。
車両保険とは、保険契約している自動車が破損した場合に、修理費用の補償を受けられる保険です。
車両保険には一般型とエコノミー型があります。このうちエコノミー型では、自損事故が対象になっていないケースが多いため注意しましょう。
車両保険の一般型・エコノミー型それぞれの補償範囲は、以下のとおりです。
事故 | 一般コース | エコノミーコース |
車やバイクとの接触 | ◯ | × |
自転車との接触 | ◯ | × |
自損事故 | ◯ | × |
当て逃げ | ◯ | × |
転覆や墜落 | ◯ | × |
火災、爆発、台風、洪水、高潮 | ◯ | ◯ |
窓ガラスの損害や飛び石 | ◯ | ◯ |
盗難、いたずら、落書き | ◯ | ◯ |
また、車両保険も使用することによって等級がダウンし、翌年の保険料が高くなってしまいます。
修理代と引き上げになる保険料を勘案し、金銭的に損にならないことを確認したうえで車両保険の利用を検討してください。
他人の物を壊した場合には、対物賠償責任保険が利用できる場合があります。
対物賠償責任保険とは、事故によって他人の所有物を壊してしまった場合の修繕費用等を補償する保険です。
自損事故の場合には、ガードレール、他人の住宅や塀、街路樹などを破損してしまう可能性があります。
このようなときに対物賠償責任保険に加入していれば、修繕費用を保険金で賄えます。
なお、対物賠償責任保険を使用すると保険の等級が3等級ダウンします。
翌年以降の保険料が高くなってしまうため、壊してしまった他人のものがそれほど高額でない場合には保険を使用しない選択肢も考えるべきでしょう。
保険料のシミュレーションをおこなったうえで、金銭的に損がないことを確認して利用しましょう。
自損事故で利用できる保険へ加入していたとしても、以下のようなケースは保険適用の対象外になることがあります。
運転者の重大な過失や故意によって起こした事故や、盗難車の運転中など、犯罪行為の最中に起こした事故はいくら保険に加入していても、保険金が支払われない可能性が非常に高くなります。
どのようなケースで保険金が支払われないのかは、保険会社によって詳細に決められています。詳しくは保険会社の約款やパンフレット、ホームページなどで確認してください。
自動車保険には、保険料の割増率・割引率を決定するノンフリート等級があります。
ノンフリート等級は20段階に分かれており、1等級〜5等級は保険料が割増に、6等級〜20等級は保険料が割引になる仕組みです。
事故を起こして保険を使うと等級が下がるため、保険料は上がっていきます。反対に、1年間保険を使わなければ等級が1つ上がり、保険料は安くなっていくのです。
等級ごとの保険料の割増・割引率は、以下を参考にしてください。
【ノンフリート等級の割引率】
等級 | 無事故 | 事故あり |
1 | 108%割増 | |
2 | 63%割増 | |
3 | 38%割増 | |
4 | 7%割増 | |
5 | 2%割増 | |
6 (契約時) | 13%割増 | |
7 | 27%割引 | 14%割引 |
8 | 38%割引 | 15%割引 |
9 | 44%割引 | 18%割引 |
10 | 46%割引 | 19%割引 |
11 | 48%割引 | 20%割引 |
12 | 50%割引 | 22%割引 |
13 | 51%割引 | 24%割引 |
14 | 52%割引 | 25%割引 |
15 | 53%割引 | 28%割引 |
16 | 54%割引 | 32%割引 |
17 | 55%割引 | 44%割引 |
18 | 56%割引 | 46%割引 |
19 | 57%割引 | 50%割引 |
20 | 63%割引 | 51%割引 |
保険契約時には6等級または7等級からスタートするため、13年間〜14年間を無事故で保険を使用しなければ、20等級となり、保険料が最も安くなります。
反対に保険を使用すると等級が下がります。
等級がどれくらい下がるかは、事故の内容によって異なります。例えば車両保険における保険使用時の等級の下がり方は以下のとおりです。
3等級ダウン | 電柱、ガードレール、車庫への衝突 当て逃げ 車同士の接触 その他の転落、横転等 |
1等級ダウン | 落書き、イタズラ、窓ガラス破損 飛来中、落下中の他物との接触 台風、竜巻、洪水、高潮 火災、爆発 盗難 |
運転手に過失がある事故であれば3等級ダウンし、運転手に過失がないものであれば1等級ダウンとなります。
事故を起こして車両保険を使うと、事故後の3年間は事故有係数が適用されるため、保険料が高くなります。
そのため、保険を使用するかどうかは、どの程度保険料が上がるのかを考慮したうえで使用することが重要です。
では、実際に以下の条件で保険料がどの程度引き上げになるのかをシミュレーションしてみます。
次年度は11等級へ下がりますが、その後無事故であれば以後3年間の保険料は以下のようになります。
等級 | 保険料 | |
次年度 | 事故あり11等級 | 50,000円 |
2年後 | 事故あり12等級 | 49,000円 |
3年後 | 事故あり13等級 | 48,000円 |
3年間の合計保険料 | 147,000円 |
次に、保険を適用しなかった場合の3年間の保険料と等級は以下のようになります。
等級 | 保険料 | |
次年度 | 無事故15等級 | 29,000円 |
2年後 | 無事故16等級 | 29,000円 |
3年後 | 無事故17等級 | 28,000円 |
3年間の合計保険料 | 86,000円 |
保険を使用しない場合の3年間の保険料は86,000円ですが、保険を使用した場合は147,000円となるため、保険料は61,000円高くなります。
つまり、このケースで修理代が61,000円未満であれば保険を使用しないほうが得ですが、61,000円を超える場合であれば保険を使用したほうが得であることがわかります。
自損事故を起こしてしまったら、以下の4点は必ず実施するようにしてください。
警察や保険会社への連絡はもちろん、写真で証拠を残しておくことや、病院へ行くことも重要です。
以下では、自損事故を起こした際にすべき4つのことを詳しく解説します。
自損事故であっても必ず警察へ連絡し事故処理をしてもらいましょう。
自損事故の場合には基本的に刑事責任は問われませんし、行政処分もありません。
そのため「自損事故だから呼ばなくていいだろう」と考えている方もいるでしょう。
しかし、自損事故であっても次のような理由で必ず警察を呼ぶ必要があります。
事故で警察を呼ぶことは道路交通法に定められた義務ですし、もしも他人の車や塀や建物などを傷つけてしまい、所有者が被害届を出した場合には、当て逃げとして刑事責任を追わされる可能性があります。
また、自損事故に関して補償を受けたい場合には、保険会社へ「交通事故証明書」を提出しなければなりません。
事故証明書を取得するには警察への届出が必要です。
自分の身を守るためにも、保険金を受け取るためにも、自損事故を起こしてしまったら必ず警察へ連絡してください。
任意保険に加入している場合には、自損事故であっても必ず保険会社へ連絡したほうがよいでしょう。
自損事故の際に保険会社へ連絡することで以下のようなメリットがあります。
事故後というのは動揺するものですので、冷静に適切な対処法を教えてもらえるだけでもメリットがあります。
事故を起こしたら、必ず保険会社へ連絡してください。
事故状況の写真を撮影しましょう。
保険請求の際には、事故の状況や被害を詳細に説明しなければならないケースが多いため、以下のような事故直後の写真は有力な証拠になります。
これらを撮影し、事故の状況や被害がわかるようにしておきましょう。
事故によって自身や同乗者に明確な怪我などがない場合も、念のため病院を受診しておきましょう。
事故当初は痛みがなくても、あとから痛みが出ることもあります。
あとから痛みが出て人身事故へ切り替える手続きは、事故と痛みの因果関係を証明しなければならないため手続きが面倒です。
事故による体への影響を事故直後の段階で適切に把握するために、例え痛みがなくても病院を受診してください。
自損事故で保険を利用することについてよくある質問を紹介します。
似たような悩みを持っている方は、ぜひ参考にしてください。
自損事故で後遺障害残った場合、補償が受けられるかどうかは加入している保険によって異なります。
以下のような保険に加入している場合には、自損事故による後遺障害の補償を受けられます。
なお、これらの保険に加入していれば、後遺障害保険を受け取れたり、搭乗者保険の補償対象になったりする場合があります。
一方、任意保険でこれらの保険に加入していない場合には、自損事故による後遺障害があっても補償の対象にはなりません。
自損事故の発生を警察へ知らせることを怠らない限り、基本的に違反点数が付くことはありません。
ただし、事故によって壊してしまった物を補償する賠償責任は生じます。
なお、自損事故によって他人の家やビルなどを壊した場合や、そのほかの交通違反があった場合には違反点数が付くことがあります。
人身傷害保険に加入していると、自損事故であっても慰謝料を受け取れます。
慰謝料や物損などの補償金とは別に受け取ることができ、受け取った慰謝料は自由に使用可能です。
そのため、慰謝料を受け取ったことについて「儲かった」と感じる人も多く、「自損事故で保険を使うと儲かる」という情報もよく目にします。
しかし、慰謝料は事故によって生じた精神的苦痛に対して支払われる補償ですので、厳密には儲かったわけではありません。
また、慰謝料は入院日数や通院日数によって決まるため、多くの慰謝料を受け取るために通院日数を伸ばす人もいます。
しかし、このような行為は保険金詐欺に該当する可能性があるため、無理に多くの金額を受け取るために通院日数を増やすような行為はしないでください。
自損事故で車両保険を使用すると損をするケースがあります。
損をするかどうかを判断するには、以下の2つを勘案してシミュレーションする必要があります
車両保険には、一定額がドライバー負担となる「免責額」というものが設けられています。
例えば免責額10万円の場合には、10万円までの修理費はドライバー負担で、10万円を超えた分に対して保険金が支払われます。
また、保険を使用すると等級がダウンして保険料が上がります。
免責額と引き上げになる保険料の合計額を計算して、自己資金で車両を修理したほうが得なのか損なのか検討しましょう。
修理代金が免責額を少し超える程度の少額であれば、車両保険を使用したほうが高額になる可能性があります。
自損事故で保険が適用されるかどうかや、補償金をいくらもらえるかは加入している保険によって異なります。
自賠責保険では自損事故に対する補償はされないため、自損事故に対して補償が必要な場合には任意保険に加入する必要があります。
自損事故でも大きな怪我を負ったり、高額な賠償が必要になったりするケースも多いため、万が一に備えて保険に加入することも検討しましょう。
なお、車両保険などは保険を利用することで等級が下がってしまうため、保険料負担が高額になり、保険を使ったことでむしろ金銭的に損をしてしまう可能性があります。
保険を利用する前に等級ダウン時の保険料のシミュレーションをおこない、金銭的な負担がないことを確認しましょう。