損害賠償・慰謝料請求
交通事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット10選|デメリットはある?
2024.05.07
自転車に衝突されてケガをした場合、基本的には自動車事故と同様に、さまざまな種類の損害賠償を請求できます。
ケガの程度が重い場合には、賠償金が高額になるケースも少なくありません。
自転車事故の損害賠償請求を行う際には、事故の客観的な状況を踏まえたうえで、法的な観点からの検討をおこなうことが必要不可欠です。
弁護士のサポートを受けながら、適切に損害賠償請求の準備を進めましょう。
本記事では、自転車事故の賠償金の種類・金額や、損害賠償請求を行う際の注意点などを解説します。
自転車事故に遭った方は、加害者(加害者が任意保険に加入している場合は、保険会社)に対して、主に以下の損害賠償を請求できます。
自転車事故によるケガの治療にかかった医療費につき、その全額の賠償を請求できます。
医療機関で支払った費用のほか、薬局で支払った費用も損害賠償の対象です。
治療のために支払った費用の領収書は、損害賠償請求に備えてすべて保管しておきましょう。
自転車事故によるケガを治療するために通院した場合、通院に要した交通費の損害賠償を請求できます。
公共交通機関の利用料金は、原則として全額が損害賠償の対象です。
自家用車を用いて通院した場合は、走行距離に応じて通院交通費の賠償を請求できます。
公共交通機関がなく、車も保有していない場合は、タクシー代も合理的な範囲で損害賠償の対象になり得ます。
自転車事故によるケガの治療やリハビリなどに必要な装具・器具の購入費用は、原則として全額が損害賠償の対象となります。
義歯・義手・義足・眼鏡・車いす・コルセット・サポーターなど、さまざまな装具・器具の購入費用について損害賠償を請求可能です。
購入した物について、領収書をきちんと保管しておきましょう。
自転車事故によるケガの治療を目的とした入院・通院について、被害者に家族が付き添った場合は、付添費用の損害賠償を請求できます。
入院の付添費用は1日当たり5,500円から7,000円程度、通院の付添費用は1日当たり3,000円から4,000円程度です。
また、職業付添人に付き添いを依頼した場合は、合理的な範囲の依頼費用が損害賠償の対象となります。
自転車事故によるケガを治療するために入院した場合、日用品などの購入費用に当たる入院雑費の損害賠償を請求できます。
入院雑費の目安額は、入院1日当たり1,500円程度です。
自転車事故によるケガの影響で仕事を休んだ場合、得られなかった賃金につき、休業損害の賠償を請求できます。
仕事を休んだ日が無給だった場合に加えて、有給休暇を取得した場合にも、休業損害の賠償を請求可能です。
休業損害の金額は、以下の式によって計算します。
1日当たりの基礎収入は、原則として以下の金額
(a)給与所得者(会社員など)の場合
事故前3か月の給与÷90日(b)自営業者の場合
事故前年の所得額※÷365日
※所得額=確定申告書に記載された額(c)専業主婦(専業主夫)の場合
賃金センサスに基づく女性労働者の全年齢平均給与額※÷365日
※2022年の賃金センサスでは394万3,500円
自転車事故によるケガの治療やリハビリのために入院・通院をした場合、それに伴う精神的損害につき、入通院慰謝料の損害賠償を請求できます。
入通院慰謝料の金額は、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)の別表Iまたは別表IIを基準に算定するのが一般的です。
入院および通院の期間、並びにケガが重傷か軽傷かによって、入通院慰謝料の金額が変動します。
(例)
骨折で入院1カ月、通院6か月の場合
→149万円捻挫で通院1か月の場合
→19万円
自転車事故によるケガが完治せずに後遺症が残った場合、その部位や症状に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。
交通事故の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて目安が決まっています。
<後遺障害慰謝料の目安額>
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級(要介護を含む) | 2800万円 |
2級(要介護を含む) | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
【参考】後遺障害等級表|国土交通省
自動車事故であれば、自賠責保険の保険会社を通じて申請することで、損害保険料率算出機構による後遺障害等級の認定を受けられます。
これに対して自転車事故の場合は、損害保険料率算出機構による後遺障害等級の認定を受けられません。
そのため、示談交渉を通じて後遺障害等級を合意するか、または訴訟を通じて後遺障害等級に関する事実認定を受けるなどの形で解決します。
自転車事故によって被害者が死亡した場合は、遺族が死亡慰謝料を請求できます。
死亡慰謝料の金額は、家庭における被害者の立場に応じて、以下のとおり目安額が異なります。
<死亡慰謝料の目安額>
家庭における被害者の立場 | 死亡慰謝料 |
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親、配偶者 | 2,500万円 |
その他 | 2,000万円~2,500万円 |
自転車事故によって被害者に後遺症が残り、または被害者が死亡した場合は、逸失利益の損害賠償を請求できます。
「逸失利益」とは、後遺症による労働能力の喪失または死亡により、将来にわたって失われた収入です。
逸失利益の金額は、以下の式によって算定します。
収入が多い場合や、事故当時の年齢が若い場合には、逸失利益はかなり高額になる可能性が高いです。
※1年当たりの基礎収入は、事故前の年収の実額
※専業主婦(専業主夫)の場合は、賃金センサスに基づく女性労働者の全年齢平均給与額
※2022年の賃金センサスでは394万3,500円
<労働能力喪失率>
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 33% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
(例)
1年当たりの基礎収入:500万円
労働能力喪失率:27%(10級)
事故当時の年齢:40歳(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数:18.327)逸失利益
=500万円×27%×18.327
=2,474万1,450円
自転車事故によって被害者が死亡した場合、遺族は葬儀費用の損害賠償を請求できます。
葬儀費用の損害賠償が認められるのは、原則として150万円程度までの実費に限られます。
ただし、被害者の社会的な立場ゆえに大規模な葬儀が必要な場合などには、より高額の葬儀費用につき損害賠償が認められる余地もあります。
自転車事故の損害賠償を請求する際には、以下の各点について十分留意のうえでご対応ください。
自動車事故の場合、被害者は少なくとも自賠責保険の保険金を受け取れます。
自動車の運転者には、自賠責保険への加入が義務付けられているためです。
また、交通事故に備えて任意保険に加入している自動車の運転者も多いです。
加害者が任意保険に加入していれば、任意保険の保険金も受け取れます。
これに対して、自転車の運転者には、自賠責保険への加入義務が課されていません。
また、任意保険(自転車保険)の普及率は自動車に比べて低い状況です。
そのため、自転車は無保険の状態で運転されているケースが非常に多くなっています。
自転車事故の加害者が無保険の場合、被害者は保険金を受け取ることができません。
この場合、自転車事故の損害賠償を受けるためには、加害者と直接示談交渉をすることになります。
加害者本人との示談交渉は、保険会社との示談交渉と異なり、建設的な話し合いにならないケースもよくあります。
加害者の交渉態度を観察しながら、いっそう慎重な対応が求められますので、弁護士に依頼するのがおすすめです。
自転車事故の加害者が任意保険に加入している場合は、保険会社と示談交渉をおこないます。
保険会社との示談交渉は、加害者本人の間で行う場合に比べれば、建設的な話し合いになることが期待できます。
しかし被害者側としては、保険会社の提示する示談金(保険金)をそのまま受け入れるべきではありません。
被害者に生じた客観的な損害額ではなく、保険会社独自の基準(任意保険基準)に基づいて算定された金額である可能性が高いからです。
保険会社から示談金(保険金)を提示されたら、その金額が妥当であるかどうかを、必ず一度持ち帰って検討しましょう。
法的な観点から示談金額の妥当性を確認したい場合は、弁護士にご相談ください。
自転車事故の損害賠償額には、当事者間の過失割合が大きく影響します。
たとえば歩行者と自転車の接触事故により、歩行者が大けがをして1,000万円相当の損害を被ったとします。
事故のすべての責任が自転車側にあれば(過失割合10対0)、歩行者は自転車の運転者に対して、1,000万円全額の損害賠償を請求可能です。
これに対して、歩行者側に1割の過失が認められれば(過失割合9対1)、歩行者が自転車の運転者に対して請求できる損害賠償は900万円にとどまります。
このように、過失割合に応じて損害賠償が減額されることを「過失相殺」といいます。
自転車事故について適正な損害賠償を受けるためには、事故の状況に応じた適切な過失割合に基づき損害額を計算することが大切です。
加害者(保険会社)から示談金額を提示されたら、その金額がどのような過失割合に基づいているのかを必ず確認し、不適切であれば修正を求めましょう。
自転車事故の損害賠償請求は、弁護士に依頼することをおすすめします。
損害賠償請求を弁護士に依頼することの主なメリットは、以下のとおりです。
自転車事故の損害賠償請求は、示談交渉・裁判外紛争解決手続(ADR)・訴訟などを通じておこないます。
これらの手続きについて適切に対応するためは、専門的知識と多大な労力を必要とします。
被害者ご自身で対応するのは非常に大変です。
弁護士に依頼すれば、示談交渉・ADR・訴訟などの手続きを一任できます。
損害賠償請求に関する労力や心労を大幅が軽減され、被害者はケガの治療に専念することが可能となります。
自転車事故について請求できる損害賠償の項目は、きわめて多岐にわたります。
適正な損害賠償を受けるためには、被害者に生じたすべての損害を漏れなく把握しなければなりません。
弁護士には、自転車事故による損害額の積算・見積もりも依頼できます。
弁護士のサポートを受けながら、生じ得る損害の種類を網羅的に検討することにより、請求できる賠償金の見落としを防げます。
加害者側が提示する示談金額は、適正な水準とは限りません。
特に保険会社との示談交渉では、客観的な損害額に満たない任意保険基準による金額を提示されることが多いため、増額交渉をおこなうべきです。
弁護士に依頼すれば、被害者の客観的な損害額を算定する「弁護士基準(裁判所基準)」に基づき、適正な損害賠償を請求できます。
加害者側の保険会社も、弁護士から法的な根拠のある金額提示を受ければ、無下に断ることは難しいでしょう。
その結果、弁護士への依頼によって賠償金の増額が期待できます。
自転車事故の損害賠償請求を弁護士に依頼する場合、主に以下の弁護士費用がかかります。
各弁護士費用の金額目安(実費については具体例)は、以下のとおりです。
※「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考にしています。
自転車事故を弁護士に相談する場合、一般的には30分5,500円程度の費用がかかります。
ただし、弁護士(法律事務所)によっては、無料相談を受け付けている場合があります。
着手金は、弁護士に依頼する際に必ず支払う必要がある費用です。
一般的には、10万円~100万円程度が想定されます。
報酬金は、弁護士が事件を解決した際に支払う費用です。
最終的に得られた利益(賠償金)の金額によって、報酬金として支払う金額が変わってきます。
たとえば、弁護士の交渉により和解が成立し、最終的に得られた金額が100万円(経済的利益)とした場合、報酬金額は17万6,000円となります。
<計算例>
100万円(経済的利益)×0.176=17万6,000円
経済的利益の額が300万円以下の場合 | 経済的利益の額の17.6% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 経済的利益の額の11%+19万8,000円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の額の6.6%+151万円8,000円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の額の4.4%+811万8,000円 |
※獲得額を経済的利益として計算
日当は、事件の交渉や裁判などで弁護士が出張する際にかかる費用のことです。
金額は、実際の移動回数などによって異なりますので、事前に依頼を検討している弁護士に確認するとよいでしょう。
半日(往復2時間超4時間以内) | 3万3,000円以上5万5,000円以下 |
一日(往復4時間超) | 5万5,000円以上11万円以下 |
実費とは、書類郵送費など、事件を処理するために必要な費用のことです。
日当と同様に、こちらも案件によって金額が変わってきますので、事前に確認することをおすすめします。
自転車事故の損害賠償請求を依頼できる弁護士に心当たりがない方は、「ベンナビ交通事故」を活用するのが便利です。
「ベンナビ交通事故」を使えば、地域や相談内容に応じて簡単に弁護士を比較できます。
無料相談を受け付けている弁護士も多数登録されており、メールや電話で直接の問い合わせが可能です。
複数の弁護士の無料相談を利用することもできるので、比較検討した上で依頼する弁護士を選べます。
自転車事故の損害賠償請求は、弁護士に依頼することで成功率が高まります。
示談交渉・ADR・訴訟などの対応を弁護士に一任できるため、労力や精神的負担が大幅に軽減される点もメリットです。
思いがけず自転車事故に遭ってしまい、加害者側に損害賠償を請求したい方は、「ベンナビ交通事故」を通じて弁護士へご相談ください。