損害賠償・慰謝料請求
交通事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット10選|デメリットはある?
2024.05.07
本記事でのもらい事故とは、こちらに責任が一切なく完全に加害者の不注意により発生する事故のことです。
このような事故の場合、被害者は被った損害全額を加害者に対して請求できますが、事故後の対応を間違えると適正な補償を受けられなくなってしまう可能性もあります。
この記事では慰謝料の相場や事故後の対応など、慰謝料請求の基礎知識についてご紹介します。
もらい事故とは、一般的に被害者側に過失のない交通事故のことをいいますが、このような交通事故では、被害者側の加入する任意保険会社による示談代行サービスを利用することができません。
このような交通事故では、被害者側には加害者側に対する賠償責任が生じないため、被害者側保険会社は交通事故に何ら利害関係を有しません。
このように何ら利害関係を有しない保険会社が、被害者側の示談代行を行うことは法律上許容されていないため、被害者は示談代行サービスを利用できず、自ら加害者側と協議・交渉を進めなければならないのです。
交通事故の被害者は、加害者側に慰謝料を請求することができますが、このような慰謝料の算定基準には以下ような基準があります。
自賠責基準は、強制加入保険である自賠責保険の定める補償基準です。
計算方法や計算式は法律により決まっています。
任意保険基準は、任意保険会社が独自に設ける内部基準です。
公表されている基準ではありませんので、具体的な数値は不明ですが、自賠責保険より高額でありつつも、弁護士基準よりは低水準であることが通常です。
弁護士基準は、過去の交通事故に関する裁判判例から統計的に算出された基準です。
これは裁判を行った場合を想定した基準であるため、他の2つの基準に比して、相対的に慰謝料額は高額となりやすい基準といえます。
交通事故で傷害を負った場合はその精神的苦痛に対して慰謝料の請求が可能です。(物損事故の場合は原則として慰謝料の請求はできません。)
慰謝料の額は傷害の度合いにより決定されるため「もらい事故なら100万円!」みたいな相場は存在しません。
しかし、傷害の程度に応じてある程度の基準は定められているので、当記事ではその基準をご紹介していきます。
(※日本損害保険協会のデータによると運転者の7割以上は任意保険に加入しているため、大半の交通事故は弁護士依頼をしない限り任意保険基準で処理されている)
入通院慰謝料とは、入院・通院をする負傷を負わされた精神的苦痛に対して請求できる慰謝料です。
入通院日数と入通院期間によって慰謝料が決定されます。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
1カ月で12日通院した場合 | 10万800円 | 12万6,000円 | 28万円 |
2カ月で25日通院した場合 | 21万円 | 25万2,000円 | 52万円 |
40日入院した場合 | 16万8,000円 | 50万4,000円 | 101万円 |
80日入院した場合 | 33万6,000円 | 75万6,000円 | 145万円 |
10日間の入院後2ヵ月間で20日の通院をした場合 | 25万2,000円 | 50万4,000円 | 105万円 |
1ヵ月の入院後3ヵ月間で30日の通院をした場合 | 50万4,000円 | 63万円 | 126万円 |
基準ごとの大体の目安がつきやすいように上記では各状況の比較を紹介させて頂きました。
入通院費用の算出方法は以下の記事で解説していますので、詳細が気になる場合はそちらをご参考に下さい。
後遺障害慰謝料とは、事故で後遺症を負わされた精神的苦痛に対して請求できる慰謝料です。
後遺症の度合いによって慰謝料が決定されます。(※等級の青文字をタップすると、それぞれの障害の判断基準を確認可)
等級 | 自賠責基準 | 任意保険基準(目安) | 弁護士基準 |
1級 | 1,100万円 | 1,300万円 | 2,800万円 |
2級 | 958万円 | 1,120万円 | 2,400万円 |
3級 | 829万円 | 950万円 | 2,000万円 |
4級 | 712万円 | 800万円 | 1,700万円 |
5級 | 599万円 | 700万円 | 1,440万円 |
6級 | 498万円 | 600万円 | 1,220万円 |
7級 | 409万円 | 500万円 | 1,030万円 |
8級 | 324万円 | 400万円 | 830万円 |
9級 | 255万円 | 300万円 | 670万円 |
10級 | 187万円 | 200万円 | 530万円 |
11級 | 135万円 | 150万円 | 400万円 |
12級 | 93万円 | 100万円 | 280万円 |
13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
死亡慰謝料とは、被害者を失った精神的苦痛に対して遺族が請求できる慰謝料です。被害者の家族構成や家庭内の立場により慰謝料が決定されます。
<自賠責基準の死亡慰謝料相場額>
請求する要項 | 慰謝料額 |
死者本人に対する慰謝料 | 350万円 |
死亡者に扶養されていた場合 | 200万円 |
慰謝料を請求する遺族が1人の場合 | 550万円 |
慰謝料を請求する遺族が2人の場合 | 650万円 |
慰謝料を請求する遺族が3人の場合 | 750万円 |
(※遺族が死者本人に扶養されていた場合のみ200万円が加算されます。
遺族が1人で扶養されている場合:350万円+200万円+550万円=1,100万円)
<任意保険基準・弁護士基準の死亡慰謝料額相場>
死亡者の立場 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
一家の支柱 | 1,500~2,000万円 | 2,800万円 |
配偶者、母親 | 1500~2000万円 | 2500万円 |
上記以外 | 1200~1500万円 | 2000万~2500万円 |
(※本人に対する慰謝料と遺族に対する慰謝料を合算した額です。)
冒頭でも紹介しましたが、もらい事故とは被害者側に一切の責任が生じない事故です。
過失割合が『加害者10:被害者0』になるのが基本なので、過失相殺はされません。
例えば、過失割合が『加害者8:被害者2』の事故では慰謝料が100万円の場合だと過失相殺により2割減額された80万円の請求しか認められません。
しかし、もらい事故であれば算出した慰謝料を丸々全て請求が可能です。
「右折をしたら信号無視の車と衝突をした」「対向車が逆走をしてぶつかってきた」「信号停止をしたら後ろから突っ込まれた」など、どんなに自分が注意していても避けられない事故状況であれば、もらい事故として扱われることになるでしょう。
お互いに過失のある事故だと自分の加入している保険会社に示談交渉を任せられますが、過失0のもらい事故の場合は弁護士資格を持たない第三者に示談交渉を依頼するのは禁じられているため、被害者本人が手続きを進めていかないといけません。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
引用元:弁護士法第七十二条
「過失0なら揉め事もないし不安はないのでは?」と思われるかもしれませんが、示談交渉は少しでも対応を間違えると請求できる慰謝料が減ってしまうので注意が必要です。
示談交渉の相手は交通事故問題のプロである任意保険会社の社員のため、何も知識がない状態で言われるがまま交渉を進めてしまうと損をする可能性が高いです。
示談交渉に臨む前には必ず示談の基礎知識を身に着けておきましょう。
交通事故に遭ったらまず直ぐに警察に連絡をして下さい。
警察を呼ばないと事故証明書が発行できないので、最悪のケースだと保険金が受け取れなくなる可能性があります。
その場の口約束だけで示談を進める約束をしたけど、後から「あなた誰ですか?私と事故なんて勘違いじゃありません?」と言われてしまい、事故証明書がなくて事故を証明できずに泣き寝入りなんて状況もあり得ない話ではありません。
事故証明書は事故の事実を証明するための重要な証拠です。
また、事故後の警察への報告は法律(道路交通法第72条)でも義務付けられているので、急いでいるからとその場で解決しようとするのは絶対に避けるようにしましょう。
警察に連絡をしたら警察が到着するまでに事故状況の記録をとっておきましょう。
後々に加害者から反論をされ不利な状況に陥るのを防ぐためです。
状況を書き起こしたメモや加害者との会話の音声データなどを用意して、事故の経緯で加害者と食い違いがおきないよう備えておくと事故後の手続きがスムーズに進行します。
また、事故の目撃者がいるようであれば連絡先を聞いておくと良いでしょう。
第三者の証言も事故では大きな証拠として扱われます。
警察を呼んで事故の手続きが終わったら病院で身体に異常がないか診断を受けましょう。
むちうちや脳内出血など、交通事故では後から負傷が発覚するケースは珍しくないので、事故直後に痛みがなくても必ず病院に行くことをおすすめします。
もし、物損事故として処理をされてしまった場合でも事故から10日以内であれば、病院の診断書を警察に持ち込めば人身事故への切り替えも可能です。
交通事故で慰謝料を請求できるのは被害者に負傷がある状況の時だけなので、首が痛むなど少しでも身体に違和感があるのであれば、医師から診断書をもらうようにして下さい。
自分が加入している任意保険に弁護士費用特約が付属している場合は保険会社から弁護士費用を負担してもらえるので、示談交渉を自己負担なく弁護士に依頼できます。
下記の『もらい事故で弁護士依頼をするメリット』でも紹介しますが、示談交渉を弁護士に依頼すると被害者本人が交渉するよりも慰謝料がほぼ間違いなく増額します。
弁護士費用特約は加入率が高いですが、保険契約者が忘れているケースが多く使用率が低い保険サービスなので、任意保険に加入している場合は事故後に自分の保険でも使えるのかを一度確認しておくと良いでしょう。
「100万円で勘弁して頂けないでしょうか…?」など、加害者によってはその場で示談を持ち掛けてくるケースがありますが、事故現場での示談交渉には絶対に応じないようにして下さい。
事故直後では自分が負傷をしていても、後遺障害の有無や入通院期間がどれくらいかかるかの判断ができません。
そんな状況で適正な慰謝料を決定するのはほぼ不可能であると言えるでしょう。
原則的に示談で成立した内容を後から変更することは認められていません。
後から慰謝料が足りないことが分かっても示談のやり直しはできないので、示談交渉は必ず治療が終了して慰謝料が確定した後からするようにしましょう。
なお、加害者側も被害者から「100万円で許してやる」と迫られることがあるかもしれません。
しかし、一度支払うと被害者側がこれにつけこんでくる可能性がありますし、警察を呼ばないとせっかく加入している保険会社に費用を請求することもできません。
また、被害者の言い値で支払った金銭については、保険会社から負担を拒否される可能性もあります。なので、被害者から強行に金銭を求められても、絶対にその場では応じないで下さい。
治療期間が長引いていると保険会社から症状固定とするよう催促されることがありますが、症状固定後の治療費・入通院慰謝料は基本的に請求できません。
しかし、症状固定とは、治療をしてもこれ以上回復しない状態を言いますが、この判断は医師が行うものです。
したがって、保険会社から当該催促を受けた場合はまずは医師に相談しましょう。
後遺障害を認めてもらう方法には、保険会社に手続きを任せる事前認定と被害者が手続きを進めていく被害者申請の2通りがあります。
事前認定では保険会社が事務的に手続きを進めるだけですが、被害者申請だと被害者が医師へ後遺障害申請書に書いてもらいたい内容を直接伝えられるので、被害者申請の方が事前認定よりも後遺障害が認められる確率が高いです。
後遺障害の有無によって慰謝料は100万円近く変わってくるので、少し手間はかかりますが少しでも認定の確率を高めるため、被害者申請をすることをおすすめします。
もらい事故であることが明白である場合(例えば、被害者側が停車中の事故であったり、追突事故であるなどの場合)には過失割合が問題となることはありません。
しかし、適正な補償を受けるためには、過失割合以外にも以下のような点について注意しておくべきでしょう。
入通院慰謝料は、通院期間と通院頻度に従って算定します。
そのため、治療を要する状態にある(痛みや疼痛が続いている)のに、適切な通院を行っていない場合、適正な補償を受けることができなくなる可能性があります。
無論、慰謝料を請求するために通院するわけではありませんので、過剰な通院や不必要な通院は厳に控えるべきです。しかし、何らか症状があるものの、面倒だから通院しないという姿勢でいれば、結果的に十分な補償を受けられなくなってしまいますので、注意しましょう。
負傷について治療を尽くしたものの一定の症状(疼痛、しびれ等)が軽快しないのであれば、症状固定としたうえで別途後遺障害として補償を受けることを検討するべきでしょう。
この場合、加害者側の自賠責保険会社に対して必要書類を提出して後遺障害認定の申請を行うのが一般的です。
結果、後遺障害と認定されれば、負傷に対する補償とは別に、後遺症についてもスムーズな補償が受けられると思われます。
負傷の治療について相当期間治療を続けたものの、症状が良くならないという場合には、それ以上の治療の継続はあまり意味がないこともありますので、上記のような次のステップに進むことを積極的に検討するべきかもしれません。
もらい事故の場合は、自身の加入する保険会社の示談代行サービスを利用できず、被害者自らが加害者側と協議・交渉をしなければならないことは冒頭で述べたとおりです。
しかし、加害者側と独力で交渉するのは、知識・経験の問題、交渉力の問題、感情的な問題から難しい場合が多いです。
このような場合、交通事故問題の処理について知識・経験のある弁護士に対応を依頼することで、自身の負担を大幅に軽減できます。
また、弁護士に依頼すれば、慰謝料について最も高額となりやすい弁護士基準での請求をスムーズに行ってくれることもメリットです。
上記の『もらい事故の相場』を見てお気づきかと思いますが、弁護士が慰謝料を算出する弁護士基準が最も高額な慰謝料を請求できます。
任意保険基準では保険会社の社内データを基に慰謝料を計算するのに対して、弁護士基準では弁護士が法律と過去の裁判結果を基に慰謝料を算出してくれるので、法に従った正当な金額の慰謝料請求が可能です。
弁護士費用特約に加入していなくても、治療が6ヵ月近く長引いていたり後遺障害が関わってくる傷害であれば、弁護士費用を差し引いても収支が増える可能性が高いので、弁護士に相談をして見積もりを出してから依頼を検討すると良いでしょう。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、示談交渉はもちろん保険会社との対応やそれまでの手続きを全て任せることができます。
示談交渉前にも治療期間の申告や後遺障害申請など慰謝料に関わる手続きがいくつかあるので、それらを弁護士が代行してくれるのはかなり心強いのではないでしょうか。
また、弁護士依頼をしていれば手続きを慣れない手続きに頭を悩ませることはなくなりますし、平日の日中に保険会社との対応に時間を割かなくてもよいので、精神的な負担を軽減できるのも弁護士依頼の大きなメリットであると言えるでしょう。
もらい事故では被害者に責任が一切ないので過失相殺はされませんが、示談交渉を被害者本人が進めないといけません。
事故後から示談までの対応で請求できる慰謝料の金額は変わってくるので、正しい知識を身に付け慎重に手続きを進めていきましょう。