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自賠責保険の上限額は120万?費用の内訳と金額に納得いかない場合の対処法を解説
2024.10.16
警察庁が公開している「令和2年中の交通重症事故の発生状況」によると、令和2年中に交通事故によって負傷した人の数は全国で369,476人でした。
うち、1か月以上の治療を要する重傷者は27,774人、治療日数が1か月未満の軽症者は341,702人です。
治療日数が長期にわたれば、仕事を休んで治療に専念しなければならない期間も長引きます。
仕事ができないために給料などの収入が減少してしまうので、加害者に対して「減収分を補償してほしい」と求めるのは当然でしょう。
このような状況で請求できるのが「休業損害」です。
交通事故における「休業損害」の意味や補償される対象、基本的な計算式や職業別の計算方法・必要資料などを解説します。
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まずは「休業損害」とはどのようなものなのかを確認します。
交通事故における「休業損害」とは、交通事故の被害によって負傷し、仕事を休まなくてはならない状態に陥ったために得られなかった収入分を指します。
交通事故における損害は「積極損害」と「消極損害」の2種類に大別されますが、休業損害は消極損害に属します。
損害の種類 | 意味 | 対象となる損害 |
---|---|---|
積極損害 | 事故によって支払いが生じた損害 | ・入通院治療費 ・入通院の交通費 ・入院中の雑費 ・入通院の介添費用 ・車両などの修理費用 ・物の修繕費用 ・葬儀代 など |
消極損害 | 事故によって利益を失った損害 | ・休業損害 ・逸失利益 |
休業損害として補償されるのは、交通事故による「収入の減少分」です。
たとえば、次のようなものは休業損害として認められます。
サラリーマンの方は、基本給のほかに残業代・歩合給・職務手当・家族手当・住宅手当・交通費などが加算されるのが一般的ですが、これらも含めた請求が可能です。
ただし、残業代については通常どのくらいの残業が発生しているのか、そもそも残業の必要はあるのかといった点まで証明しなければならないので、容易には認められません。
休業損害と紛らわしい用語に「休業補償」や「逸失利益」があります。
それぞれの違いを確認しておきましょう。
休業補償とは、労災保険による給付金のひとつです。
仕事中の事故などを原因とした負傷によって仕事を休むことになり、収入が減少した場合に給付されます。
休業損害との違いは、休業補償は「業務に関する事故」を対象としている点です。
休業補償は、客先をまわる際に営業車で交通事故を起こした、高所作業中に転落した、通勤・帰宅の途中に怪我をしたなど、業務に関する事故による収入の減少を補償します。
一方の休業損害は、交通事故による収入の減少を対象とします。
逸失利益とは、交通事故によって負った怪我の治療が終了してもなお後遺障害が残った場合や、死亡した場合に、失われた将来の収入を指します。
両者の決定的な違いは、減収分が「いつ」のものなのかという点です。
休業損害は、仕事を休んだことで既に発生した減収分を指します。
一方で、逸失利益は「将来」の減収分を指します。また訪れていない将来に得られるはずだった収入の減少分を計算するものであり、休業損害とは性質が異なります。
休業損害の請求額は、一定の計算式に従って算出します。
基本的な計算式には「自賠責保険に請求した場合」と「実際の収入を基準とした場合」の2種類があるので、ここで確認しておきましょう。
すべての自動車は、原則として自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)への加入が義務付けられています。
つまり、交通事故の被害に遭って負傷した場合は、少なくとも自賠責保険による賠償が得られることが多いです。
休業損害を自賠責保険会社に請求した場合の計算式は、原則として次のとおりです。
ただし、会社側が発行した休業損害証明書などの立証資料によって1日あたりの収入額がこれを超えることが明らかであれば、1日あたり19,000円を上限に引き上げられます。
この計算式では、請求者の職業などを考慮しません。
そのため、計算結果と実際に生じた減収分との間に大きな差が生じてしまう可能性があります。
なお、自賠責保険では、休業補償・治療費・慰謝料などを含めた傷害に対する賠償額の上限が120万円に定められています。
入院が長引いて治療費が高額になった場合は、たとえ長期の休業を強いられても、自賠責保険からは減収分の満額は得られない可能性があります。
自賠責保険による補償では不十分な場合は、実際の収入を基準とした損害を算出し、差額分を相手方本人や相手方保険会社に賠償請求することになります。
実際の収入を基準とする場合は、まず「1日あたりの基礎収入」を算出しなければなりません。
1日あたりの基礎収入が算出できれば、あとは実際の休業日数を乗じるだけです。
実際の収入を基準とした計算では、被害者の職業によって計算方法や証明に必要な資料が変わります。
会社から給料をもらっている給与所得者・サラリーマンの場合は、収入額が明確なので計算も簡単です。
事故前直近の3か月分の給与は、会社に「休業損害証明書」を作成してもらって証明することになります。
保険会社側が用意した様式を利用するのが一般的ですが、会社側が独自に作成した証明書を交付されることもあるので、必要事項がしっかりと充足されているかのチェックが大切です。
休業損害証明書とあわせて源泉徴収票や自治体が発行する所得額証明の提出を求められることもあるので、臨機応変に対応しましょう。
個人商店の経営者やフリーランスなどの自営業者は、事故前直近1年間の所得額を基準として1日あたりの基礎収入を算出します。
所得額を証明するために、確定申告書の控えや課税証明書の提出を求められるのが一般的です。
確定申告をしていない場合や、節税などの目的で過少申告していたため所得額が実収入額を反映していない場合は、銀行口座の取引明細・帳簿類などで丁寧に証明することが必要になります。
所得額は実収入から経費などを控除した金額なので、間違いのないように注意しましょう。
専業主婦・専業主夫といった家事労働者でも休業損害の請求が可能です。
この場合は実収入が存在しないので、性別・年齢に応じた「賃金センサス」の平均給与額を参考にします。
なお、兼業主婦・兼業主夫の場合は、実際の収入額と賃金センサスを参考とした平均給与額のいずれか高い一方を基準とするのが一般的です。
また、具体的な証拠によって兼業の状況を明らかにできる場合は、実態に即した計算も可能です。
アルバイト・パート従業員などの非正規雇用の場合でも、サラリーマンと同じように休業損害の請求が可能です。
ただし、シフト制で勤務することの多いアルバイト・パート従業員の場合は、勤務日数が一定でなかったりして、月ごとの収入にばらつきが生じやすくなります。
このようなケースでは、90日で割るのではなく、実際の稼働日数で割って日額を算出することもあり得ます。
原則として、失業中の無職者では休業損害の請求は認められません。
ただし、すでに就職が内定していた、一定期間をおいて就職する蓋然性が高かったといった事情があれば、内定先の給与額や賃金センサスを参考とした休業損害の請求が認められる可能性があります。
【就職先が内定していた場合】
休業損害=内定先の3か月の給与合計額÷90日×休業日数
【就職する蓋然性が高かった場合】
休業損害=賃金センサスを参考とした平均年収÷365×休業日数
学生も収入がない立場なので、基本的には休業損害の請求は認められません。
ただし、アルバイトとして働いていた場合や、すでに就職先が内定していた場合は、休業損害を請求できる可能性があります。
【アルバイトとして働いていた場合】
休業損害=事故直近3か月の給与の合計額÷90日×休業日数
【就職先が内定していた場合】
休業損害=内定先の3か月の給与合計額÷90日×休業日数
または
休業損害=賃金センサスを参考とした平均年収÷365×休業日数
すでに就職が内定しており大学卒業をひかえていたタイミングで交通事故に遭遇して就職が遅れたといったケースでは、就職が遅れた期間を休業日数と考えることになるでしょう。
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交通事故の被害に遭って長期の治療を要する状態になると、収入が減少することで生活が困難になってしまいます。
できれば毎月の収入と同じようなタイミングで休業損害を得たいと考えるのも当然ですが、治療を継続している最中でも休業損害を請求できるのでしょうか?
休業損害は減収分を補うための補償です。
怪我の治療にかかった費用や慰謝料は「治療が終わったタイミング」で示談交渉を始めるのが一般的ですが、治療が終わるまでの生活を支えるには、随時、休業損害が支払われる必要があります。
そのため、まだ治療中の段階で示談交渉が始まっていない段階でも、休業損害だけは別途請求するというかたちの対応を取るケースも多数です。
給料と同じように毎月請求する、といった方法でも問題はありません。
休業損害を請求すると、書類に不備がなければおおむね1~2週間以内に支払われます。
治療が長引いて毎月のように請求する場合は、勤務先にその旨を伝えておくと休業損害証明書の取得がスムーズになるでしょう。
加害者側の保険会社が提示した休業損害の金額に納得できない、保険会社が休業損害の請求に応じてくれないなどのトラブルがあれば、ただちに弁護士に相談してサポートを受けましょう。
保険会社が提示する休業損害の金額は、自賠責保険または任意保険の基準で計算された最低限に近いものになるケースが多数です。
1日あたり6,100円の補償では生活が立ち行かないといった方も少なくないでしょう。
弁護士に対応を依頼すれば、実態に即した収入額での休業損害の請求が期待できます。
任意保険基準の金額でしか賠償に応じない姿勢をみせていた保険会社も、弁護士が対応するだけで請求に応じてくれるケースも珍しくありません。
元気に仕事をしていたときと同等の休業損害を得られれば、安心して治療に専念できるでしょう。
実際の収入を基準とした休業損害を請求する場合は、事故前の収入額や稼働状況を客観的に証明する資料・証拠を提示しなくてはなりません。
交通事故トラブルや労務関係に詳しくない個人がこれらの資料・証拠を集めるのは容易ではないでしょう。
突然の交通事故に巻き込まれて、精神的苦痛を受けながらも治療に取り組んでいる状況であればなおさらです。
職業に応じて必要な資料・証拠の収集は、弁護士に任せるのが最善でしょう。
休業損害の請求トラブルについて解決実績を豊富にもつ弁護士であれば、どのような資料が有効なのか、どのような証拠を用意するべきなのかのノウハウも充実しています。
休業損害は、示談をまとめる前段階からでも請求可能です。
治療期間が長引けば保険会社とやり取りを繰り返す回数も増えるので、わずらわしさを感じることになるでしょう。
また、まだ治療が必要で休業もやむを得ない状況なのに保険会社が「そろそろ打ち切りにしたい」と打診してくることもあります。
個人で対応しても真摯な対応が期待できない場合は、弁護士に一任するのがベストです。
交渉・やり取りのわずらわしさから解放されるだけでなく、保険会社に主導権を握られて不利な条件を強いられる状況も回避できるでしょう。
休業損害に関するトラブルを納得できるかたちで解決するには弁護士のサポートが欠かせません。
ただし「弁護士なら誰でもいい」というわけではないので注意が必要です。
休業損害の請求をはじめとした交通事故トラブルを解決するには、交通事故トラブルの解決に力を注いでいる実績豊富な弁護士を探して相談しなくてはなりません。
弁護士には、借金問題の解決に注力している、刑事事件に注力している、労働問題、離婚問題、知的財産問題に注力しているなど、それぞれに得意としている分野があります。
すべての弁護士が交通事故トラブルの解決を得意としているわけではないので、弁護士選びを間違えると期待した結果が得られないおそれがあるのです。
休業損害トラブルの解決が得意な弁護士を探すには、交通事故トラブルに特化した弁護士紹介のポータルサイトを活用するのが近道です。
交通事故弁護士ナビでは、お住いの地域・相談内容を選択するだけで、あなたの街で活躍している交通事故トラブルの解決実績が豊富な弁護士がヒットします。
休業損害トラブルの解決に力を注いでいる弁護士の検索に加えて、初回相談無料・夜間や休日の相談可能・着手金0円プランありといった条件での検索も可能です。
交通事故における休業損害とは、交通事故の被害によって負傷し、休業を余儀なくされたことで生じた減収分を指します。
どの程度の金額が補償されるのかは被害者の職業・性別・年齢などによって上下しますが、加害者側の保険会社に対応を任せていると満足できる対応は期待できません。
十分な補償を得るには、休業損害の請求をはじめとした交通事故トラブルの解決実績を豊富にもつ弁護士のサポートが必須です。
交通事故弁護士ナビをご活用いただき、休業損害の請求をサポートしてくれる心強い弁護士を探しましょう。
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