交通事故の過失割合とは、被害者と加害者の責任の度合いを示したもので、一般的には「40:60」「4対6」などのように表します。
過失割合は当事者同士で話し合って決定し、双方の位置関係・信号機の色・違反の有無などの事故状況を確認したのち、過去の裁判例なども参考にしながら判断します。
自分側の過失が大きいほど受け取れる示談金は減ってしまうため、交通事故に遭った際は不当に高い過失割合にならないように納得のいくまで話し合うことが大切です。
本記事では、交通事故の過失割合の決め方や手続きの流れ、パターンごとの目安や過失割合で揉めた場合の対処法などを解説します。
交通事故の過失割合とは?
まずは、交通事故の過失割合の決め方について解説します。
過失割合は誰が決める?
交通事故の過失割合は当事者同士で決めるのが通常です。
なお、任意保険に加入している場合は保険会社の担当者、弁護士に依頼した場合は弁護士が代わりに対応することになります。
交通事故では警察を呼んで実況見分などのやり取りもおこなわれますが、警察には民事不介入の原則があるため過失割合の交渉には関わりません。
過失割合はいつ決まる?
交通事故の過失割合は示談交渉の際に決定します。
示談交渉を始めるタイミングは、以下のように被害状況によって異なります。
- 物損事故:修理費などの損害が確定してから
- 人身事故(けがが完治した場合):けがの治療を終えてから
- 人身事故(後遺症が残った場合):後遺障害等級の認定を受けてから
交通事故で過失割合を決める際の流れ
交通事故の過失割合は、基本的に以下のような流れで決定します。
ここでは、各手続きの流れについて解説します。
1.当事者間で事故状況をすり合わせる
まずは、どのような事故だったのか当事者双方の認識をすり合わせます。
主に以下のような証拠をもとに、双方の位置関係・車両の種類・道路形態・信号機の色などを確認します。
- 当事者の証言
- 事故現場で撮った写真
- ドライブレコーダーの映像
- 現場付近の防犯カメラの映像
- 警察が作成した実況見分調書 など
2.基本過失割合を確認する
交通事故の過失割合は、事故状況が似ている過去の裁判例をベースに判断するのが通常です。
「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」や「別冊判例タイムズ」などの本にはパターンごとの過失割合が載っており、これらを用いて基本となる過失割合を確認します。
3.修正要素などを確認して過失割合を修正する
修正要素とは、過失割合を加算・減算する要素のことです。
一例としては以下があり、該当する場合は5%~20%ほど修正される可能性があります。
- 脇見運転などの前方不注視
- 時速15km以上30km未満の速度違反、時速30km以上の速度違反
- 直近右折、早回り右折、大回り右折
- 大型車両の運転
- 酒気帯び運転・酒酔い運転
- 居眠り運転
- 無免許運転
たとえば「加害者と被害者の過失割合が60:40」というケースで加害者側がスマートフォンを見ながら運転していた場合には、過失割合が70:30に修正されたりする可能性があります。
4.話し合いをおこなって過失割合を決定する
修正要素などを確認したのち、最終的な過失割合を決定します。
なお、交通事故では「過失相殺」という減額処理がおこなわれ、自分側の過失が大きいほど受け取れる示談金は減額されます。
たとえば「自分の損害額が100万円、自分と相手の過失割合が20:80」という場合、自分側の過失分にあたる20万円を差し引くことになり、相手に請求できる金額は80万円となります。
特に損害額が高額なケースでは、過失割合が少し変わるだけでも受け取れる金額が数百万円変わったりすることもあります。
【ケース別】交通事故の過失割合の具体例
ここでは、自動車同士の事故・自動車とバイクの事故・自動車と歩行者の事故での過失割合の目安を紹介します。
自動車同士の場合
まず、自動車同士の事故での過失割合について解説します。
信号機のある交差点での事故
上図の基本過失割合は、A:B=20:80です。
基本的に信号機のある交差点内では、直進・左折・右折の順に優先度が高くなるため、この場合は右折車Bのほうが責任が重く、80%の過失が生じます。
ただし、直進車Aについても、対向車に注意して安全に運転する義務を怠ったとして20%の過失が生じます。
信号機のない交差点での事故
上図の基本過失割合は、A:B=20:80です。
「信号機のある交差点での事故」のケースと同様、右折車Bのほうが優先度が低く責任が重いため過失は80%、直進車Aには20%の過失が生じます。
駐停車車両との追突事故
上図の基本過失割合は、A:B=100:0です。
このようなケースでは、後方から走行してきたAには危険を回避する義務があり、基本的に駐停車車両Bには一切過失がありません。
ただし、交差点内やトンネル内などの禁止場所に停めていたり、ハザードランプを付けていなかったりした場合には、駐停車していた側にも過失が生じる可能性があります。
駐車場内での事故
引用元:駐車場内での事故|ソニー損保
上図の基本過失割合は、A:B=100:0です。
このような駐車場内での事故の場合、駐車スペースに侵入してきたAに一方的な過失があり、基本的に駐車車両Bには一切過失が生じません。
自動車とバイクの場合
次に、自動車とバイクの事故での過失割合について解説します。
信号機のある交差点での事故
上図の基本過失割合は、A:B=15:85です。
自動車同士の事故のケースと同様、右折車のほうが優先度が低く責任が重いため過失は85%、直進車には15%の過失が生じます。
なお、自動車とバイクの事故では、バイクのほうが大きな被害を負いやすいため「交通弱者」として扱われ、基本的にバイク側の過失は低めに算定されます。
信号機のない交差点での事故
上図の基本過失割合は、A:B=20:80です。
交差点で左折する際は、車道左端に寄って後方確認をしながら安全に左折する必要があり、このようなケースでは左折車Bのほうが責任が重く、80%の過失が生じます。
ただし、直進車Aについても、巻き込み事故に注意して安全に運転する義務を怠ったとして20%の過失が生じます。
自動車と歩行者の場合
次に、自動車と歩行者の事故での過失割合について解説します。
道路上での事故
上図の基本過失割合は、A:B=20:80です。
このような自動車と歩行者の事故では、歩行者のほうが大きな被害を負いやすいため「交通弱者」として扱われ、基本的に歩行者側の過失は低めに算定されます。
歩行者Aについては横断歩道のないところを横断しようとしたため過失は20%、自動車Bについては歩行者の飛び出しに注意して安全に運転する義務を怠ったとして80%の過失が生じます。
交差点での事故
上図の基本過失割合は、A:B=70:30です。
このような事故の場合、赤信号を無視しているため歩行者Aのほうが責任が重く、70%の過失が生じます。
ただし、直進車Bについても、歩行者の飛び出しに注意して安全に運転する義務を怠ったとして30%の過失が生じます。
交通事故の過失割合を決める際の注意点
交通事故の過失割合を決める際は、以下のような点に注意しましょう。
過失割合が10対0の場合は保険会社に示談交渉を依頼できない
通常の交通事故では加入先保険会社が示談交渉を代行してくれますが、もらい事故のような自分に一切過失のない事故の場合は対応してくれません。
その場合は自分で損害賠償額について示談交渉することになりますが、素人では保険会社を相手に対等に交渉を進めるのは難しいため、弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。
弁護士なら、過失割合が10対0の事故でも依頼者の代理人として交渉してくれます。
相手保険会社が提示する過失割合は必ずしも適切とはかぎらない
保険会社によっては、できるだけ支払いを安く抑えるために被害者側の過失割合を高く設定してくることもあります。
あくまでも過失割合は話し合いで決めるものですので、相手保険会社から言われるがまま応じる必要はなく、不利な過失割合を提示された場合は納得のいくまで交渉を重ねましょう。
適切な過失割合がわからない場合や、お互いに主張がぶつかって交渉が難航している場合などは、弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
交通事故の過失割合に納得いかない場合の対処法
相手方が提示する過失割合に納得いかない場合、以下のような対処法があります。
過失割合を証明する証拠を集めて交渉する
過失割合について揉めている場合、ただやみくもに主張や反論をしても解決は望めません。
「交通事故で過失割合を決める際の流れ」でも紹介したように、以下のような事故状況を示す証拠となるものを集めましょう。
- 当事者の証言
- 事故現場で撮った写真
- ドライブレコーダーの映像
- 現場付近の防犯カメラの映像
- 警察が作成した実況見分調書 など
これらの証拠を揃えることで主張にも説得力が増し、相手方も納得して受け入れてくれる可能性が高まります。
ADR・調停・裁判を利用する
交通事故の過失割合を決める方法としては、交渉のほかにADR・調停・裁判などがあります。
交渉を続けても解決が難しそうであれば、これらの手続きに移行することで解決が望めます。
- ADR:第三者機関の和解あっせんや審査などによって、裁判所を介さずに解決を目指す手続き
- 調停:調停委員による仲介のもと、裁判所で話し合いをおこなって解決を目指す手続き
- 裁判:裁判所で双方が主張立証をおこない、最終的に裁判官の判決で決着がつけられる手続き
なお、裁判手続きに関しては複雑で手間がかかるため、弁護士に依頼してサポートしてもらうのが一般的です。
交通事故に強い弁護士に相談する
過失割合などの交通事故トラブルでは、弁護士が心強い味方になってくれます。
交通事故に強い弁護士なら、相手方が主張する過失割合が適切なのかどうか、個別具体的な事情なども踏まえてアドバイスしてくれます。
弁護士には、依頼者の代理人として交渉対応を依頼することもでき、相手が不当に高い過失割合を提示している場合は過去の裁判例などを用いて的確に反論してくれます。
弁護士に依頼することで、スムーズに適切な過失割合を獲得できる可能性が高まるため、自力での対応が不安な場合は一度相談してみることをおすすめします。
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さいごに
多くの交通事故では被害者側にもある程度の過失が認められますが、なかには相手方が不当に高い過失割合を提示してくるケースもあります。
適切な過失割合を得てできるだけ多くの示談金を受け取るためには、過失割合に関する知識だけでなく、主張を裏付ける証拠や交渉力なども必要となります。
弁護士なら過失割合の算定や交渉などの対応を一任でき、依頼者が損を被らないように尽力してくれます。
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