駐車場事故で揉めないための基礎知識|過失割合の考え方や事故後の対応方法を解説

駐車場事故で揉めないための基礎知識|過失割合の考え方や事故後の対応方法を解説

駐車場での思わぬ事故でお互いにけががなくてホッとしたものの、車には傷が…。

「これからどうやって話し合いを進めたらいいんだろう?」

そんな不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、駐車場で事故を起こしてしまったときに知っておきたい以下の基本知識を解説します。

  • 事故の状況によって変わる「過失割合」の考え方
  • 事故が起きてから解決までの流れ
  • 弁護士への相談という選択肢

本記事を読めば、落ち着いて事故後の対応を進められるようになるはずです。

スムーズな解決を目指すためにも、ぜひ最後まで参考にしてください。

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駐車場事故は、そこが私有地・道路どちらとみなされるかで扱いがかわる

駐車場で事故が起きたとき、まず知っておきたいのは、その駐車場が法律上「道路」として扱われるのか、それとも「私有地」として扱われるのか、ということです。

これによって、事故後の対応、特に警察への連絡義務などが変わってくることがあります。

以下では、それぞれの場所での事故がどのように扱われるのか見ていきましょう。

道路とみなされる場合、警察への通報義務がある

スーパーやデパート、病院の駐車場、コインパーキングなど、不特定多数の人や車が自由に出入りできる駐車場で起きた事故については、道路上での事故と同じように警察への通報義務が生じます

なぜなら、法律ではこのような場所を「一般交通の用に供するその他の場所」としており、道路交通法が適用されるからです。

もし警察に連絡しないと、報告義務違反として3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があるので、必ず警察に連絡しましょう。

私有地とみなされる場合、警察へ通報しなくても罰せられない

月極駐車場や会社の駐車場、個人宅の車庫など、「私有地」とみなされる場所での事故については、通報義務はありません

このような場所は、基本的に道路交通法の適用外となるため、事故を起こしても警察への報告義務はないのです。

しかし、警察に連絡しないと、事故があったことを公的に証明する「交通事故証明書」が発行されないため注意が必要です。

この証明書がないと、あとで車の修理代などを保険で支払ってもらう際に、手続きがスムーズに進まない可能性があります。

そのため、たとえ私有地での事故であっても当事者同士で解決しようとせず、警察に連絡することをおすすめします

また、人が死傷している場合には、私有地であっても自動車運転過失致死傷罪などに問われる可能性があるため、救急車を呼ぶことも忘れないようにしましょう。

よくある駐車場事故の基本過失割合

駐車場事故と一言でいっても、その状況はさまざまです。

ここでは、よくある事故のパターン別に、基本的な「過失割合」を見ていきましょう。

通路を直進する車と出庫する車の事故|30:70

駐車スペースからバックで出ようとした車(出庫車)と、通路をまっすぐ走ってきた車(直進車)がぶつかったケースの基本過失割合は以下のとおりです。

  • 直進車 30% : 出庫車 70%

駐車場では、通路を走行している車が優先されるのが基本です。

駐車スペースから出る車は、通路を走る車がいないか、より注意深く安全確認をする必要があるため、出庫する側の過失が大きくなります。

一方で、直進車も駐車スペースから車が出てくる可能性を予測して運転すべきだった、ということで30%の過失が認められるのが一般的です。

通路を直進する車と入庫する車の事故|80:20

通路を走っていた車(直進車)と、駐車スペースにバックで停めようとしていた車(入庫車)がぶつかったケースの過失割合は、以下のとおりです。

  • 直進車 80% : 入庫車 20%

この場合、駐車しようとしている車はハザードランプを点けるなどして、周りに「今から駐車します」という合図を送っていることが多いです。

その動きを見れば、直進車は「この車はこれから駐車するんだな」と予測し、安全に通り過ぎるか、止まって待つなどの対応ができたはずです。

そのため、周りの状況への注意が足りなかったとして、直進車の過失が大きくなる傾向にあります。

入庫する車と駐車している車の事故|100:0

駐車スペースに停まっているだけの車に、別の車が駐車しようとしてぶつけてしまったケースでは、基本過失割合は以下のようになります。

  • 駐車中の車 0% : 入庫する車 100%

このケースでは、正しく駐車している車には何の落ち度もありません

エンジンも止まっており、動いていないため、事故を避けることも不可能です。

そのため、一方的にぶつかった側の過失が100%となります。

入庫する車と出庫する車の事故|30:70

駐車スペースに停めようとしている車(入庫車)と、別の駐車スペースから出ようとしている車(出庫車)がぶつかったケースでは、基本過失割合は以下のようになります。

  • 入庫車 30% : 出庫車 70%

この場合、一般的に入庫しようとする車はすでにある程度通路に出ており、周りから認識されやすい状態です。

一方、出庫する車はこれから通路に出るため、より周囲への安全確認が求められます。

このことから、出庫する側の過失が大きくなるのが基本です。

入庫する車同士・出庫する車同士の事故|50:50

お互いに駐車スペースから出ようとしていた車同士がぶつかった場合や、向かい合う駐車スペースに停めようとした車同士がぶつかった場合、基本過失割合は以下のようになります。

  • 50% : 50%

このケースでは、お互いが同じような動きをしており、どちらかに過失責任が偏ることはありません

双方に同じくらいの注意義務があったと考えられるため、過失割合は50:50の五分五分となるのが基本です。

十字路での出会い頭の事故|50:50

駐車場内の通路が交差する十字路で、お互いに直進してきた車同士がぶつかったケースの基本過失割合は以下のとおりです。

  • 50% : 50%

信号や一時停止の標識がない駐車場内の交差点では、どちらの車に優先権があるかを明確に判断できません

そのため、お互いに同程度の注意義務があったとされ、過失割合は50:50となるのが一般的です。

ただし、一方が明らかに広い通路を走っていた場合などは、そちらが優先と判断されて過失割合が変わることもあります。

T字路で右折・左折する車と直進する車の事故|60:40

駐車場内のT字路で、直進してきた車と、突き当りの道から右左折してきた車がぶつかったケースでは、基本過失割合は以下のようになります。

  • 右左折車 60% : 直進車 40%

一般的な道路と同じように、駐車場内でも基本的には直進する車が優先されます。

そのため、曲がろうとした車の方の過失が大きくなります。

ただし、直進車側にも、T字路にさしかかる際は左右から車が来る可能性を予測して減速するなどの注意義務があったとされ、40%程度の過失が認められます

車と歩行者の事故|90:10

駐車場内を歩いている歩行者と車がぶつかった事故では、基本過失割合は以下のようになります。

  • 車 90% : 歩行者 10%

車と歩行者の事故では、基本的に車を運転している側の責任が非常に重くなります

なぜなら、車は歩行者にとって大きな脅威であり、運転手には歩行者を保護する義務があるからです。

そのため、車の過失が90%と非常に高くなります

歩行者側にも「周りをよく見ていなかった」などの不注意があったとして10%程度の過失が認められることがありますが、基本的には車側の責任が圧倒的に大きいと覚えておきましょう。

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駐車場事故における過失割合の主な修正要素と修正割合の目安

これまで見てきた過失割合は、あくまで基準となる割合にすぎません。

実際の事故では、個別の状況に応じて過失割合がプラスされたりマイナスされたりします。

この過失割合を変動させる要素のことを「修正要素」と呼びます。

例えば、以下のような状況があると、過失割合が見直される可能性があります。

【駐車場事故における過失割合の主な修正要素】

修正要素(過失が大きくなる側の行動)修正される割合の目安
明らかな不注意脇見運転(スマホ・カーナビ操作など)+10%~20%
かなりのスピード違反+20%
ハザードランプやウィンカーの不履行+5%~10%
夜間なのに無灯火+5%~10%
ブレーキとアクセルの踏み間違い+10%
危険な運転駐車スペースの横切り、ショートカット+15%~20%
飲酒運転+20%以上
一方通行の逆走+20%
その他相手が子ども、高齢者、身体の不自由な方+5%~10%
通路が広く、優先が明らかな場合相手側の過失が-10%~20%

これらの要素が複数重なると、さらに割合が変動します。

相手の保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合は、「相手にこのような不注意があった」と具体的に主張することが大切です。

駐車場事故を起こした場合にやるべきこと

万が一、駐車場で事故を起こしてしまったら、パニックにならず、落ち着いて行動することが重要です。

やるべきことを以下の順番に解説します。

  1. けが人の救護と車の移動
  2. 警察への通報
  3. 証拠の確保
  4. 保険会社への連絡
  5. 病院の受診
  6. けがの治療・車両の修理
  7. 示談交渉

1.けが人の救護と車の移動

駐車場で事故に遭った場合、何よりもまず、けが人がいないかを確認してください。

もし誰かがけがをしていたらすぐに119番に通報し、救急車を呼びましょう

救急車が来るまでは、可能であれば安全な場所に移動させ、応急処置をおこないます。

その後、ほかの車の通行を妨げないように、事故を起こした車を安全な場所に移動させます。

二次被害を防ぐためにも、ハザードランプを点灯させたり、停止表示器材を置いたりすることが大切です。

2.警察への通報

次に、警察へ通報します。

けが人がいなくても、車が傷ついただけの物損事故でも、警察への連絡は必須です。

「大した事故じゃないから」「相手がいい人そうだから」と当事者同士で話を済ませてしまうのは絶対にやめましょう。

警察に連絡しないと、保険金の請求に必要な「交通事故証明書」が発行されません

また、その場では「大丈夫」と言っていた相手が、あとから「やっぱり痛い」と言い出してトラブルになるケースもあります。

そのため、事故を起こした場合は必ず警察を呼び、事故の状況を客観的に記録してもらいましょう。

3.証拠の確保

警察が来るまでの間に、事故の証拠を集めておきましょう

以下のような証拠は、あとで過失割合を話し合う際に非常に重要な材料となります。

相手の情報を聞く・氏名、住所、電話番号
・加入している自賠責保険と任意保険の会社名、証明書番号
・車のナンバー
事故状況を記録する・スマートフォンなどで、事故現場全体の写真、車の損傷部分の写真などをさまざまな角度から撮影する
・ドライブレコーダーの映像を保存する
・事故が起きた時間や、どのようにぶつかったかをメモしておく
目撃者を探すもし事故を見ていた人がいれば、証人になってもらえないかお願いし、連絡先を聞いておく

4.保険会社への連絡

自分が加入している任意保険会社に、事故が起きたことを連絡します。

多くの保険会社には、24時間365日対応の事故受付窓口があります。

保険会社の担当者に事故の状況を説明し、今後の対応について指示を仰ぎましょう。

相手との交渉を代行してくれるサービスが付いている保険も多いので、まずは自分の保険会社に相談することが大切です。

5.病院の受診

交通事故に遭った際は、たとえ痛みがなかったとしても、必ず病院で診察を受けてください

事故直後は興奮や緊張によって、痛みを感じにくくなっていることがあります。

しかし、「たいしたことはない」と自己判断して放置してしまうと、あとから症状が悪化するリスクがあります。

特に、頭を打った場合や首まわりに衝撃を受けた場合は、時間が経ってから深刻な症状が現れることもあるため注意が必要です。

また、事故から時間が経って受診すると、けがと事故との因果関係を証明するのが難しくなってしまうことがあります。

物損事故として処理されていたとしても、あとからけがが判明した場合には、人身事故へ切り替えることも可能です。

そのためにも、早めに受診し、医師から診断書をもらっておくことが大切です。

後の補償や示談においても、診断書が重要な証拠となります。

6.けがの治療・車両の修理

病院の指示に従って、けがの治療に専念します。

車の修理が必要な場合は、修理工場に見積もりを出してもらいましょう。

ただし、勝手に修理を進めてしまうと、あとで保険会社とトラブルになる可能性があります。

必ず事前に保険会社の担当者に連絡し、許可を得てから修理に出すようにしてください

7.示談交渉

けがの治療が終わり、車の修理代など損害額が全て確定したら、相手方(または相手方の保険会社)との間で「示談交渉」が始まります

示談交渉とは、過失割合や損害賠償額などについて話し合って決める手続きのことです。

多くの場合、自分の保険会社の担当者が交渉を代行してくれます。

しかし、保険会社が提示する過失割合や示談金に納得できない場合や、自分に過失がない「もらい事故」のケースでは、自分の保険会社は交渉を代行できません

駐車場事故に関してよくある質問

さいごに、駐車場事故について多くの人が疑問に思う点を解説します。

似たような疑問を抱えている方はここで解消しておきましょう。

駐車場事故は管理者も責任を問われる?

原則として、駐車場の管理者が事故の責任を負うことはありません

駐車場の看板に「場内での事故・盗難などについては一切責任を負いません」と書かれているのを見たことがある人も多いでしょう。

基本的には、事故は運転者同士の責任となります。

ただし、例外があるのも事実です。

例えば、「駐車場の照明が切れていて真っ暗だった」「路面がひどく陥没していて、それを避けるために事故が起きた」など、駐車場の設備に明らかな問題があった場合は、管理者に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

駐停車禁止の場所に停めてある自動車にぶつけた場合の過失割合は?

通常、ぶつけた側の過失が大きくなりますが、停めていた側にも一定の過失が認められることがあります。

駐車が禁止されている場所に車を停めるのは、もちろんルール違反です。

しかし、だからといってぶつけて良いわけではありません。

動いている車を運転している側には、前方をよく見て安全に運転する義務があります。

そのため、基本的にはぶつけた側の過失が80%~90%と大きくなります。

一方で、ルール違反の場所に車を停めていた側にも、「事故の原因を一部作った」として10%~20%程度の過失が認められるのが一般的です。

さいごに|駐車場事故に関する悩み・疑問は弁護士に相談を!

本記事では、駐車場事故の基本的な過失割合や、事故が起きてしまったときの対処法について解説しました。

駐車場での事故は、誰にでも起こりうる身近なトラブルです。

しかし、いざ当事者になると、相手方の保険会社との交渉には専門知識も必要で、精神的にも大きな負担となります。

そのため、もしも対応に悩んだときは弁護士に相談することが大切です。

弁護士に相談すれば、あなたの状況に合った適切な過失割合を主張してくれたり、あなたに代わって相手方と交渉してくれたりします。

最近では、初回相談を無料でおこなっている法律事務所もたくさんあるので、まずは一度相談してみるとよいでしょう。

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監修記事
立花志功法律事務所
立花 志功 (札幌弁護士会)
立花志功法律事務所は、北海道札幌市の法律事務所。トラブルに巻き込まれた方々を全力で助けるため、活動している。
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アシロ編集部
編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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