- 「過失割合が10対0の物損事故の示談金相場は?」
- 「物損事故の示談金はどうやって計算するの?」
物損事故に遭ったものの、過失割合が10対0であることから自分の任意保険が使えず、このように悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
過失割合10対0の物損事故の被害者になった場合、弁護士に依頼をしない限り、被害者本人が賠償額を計算したうえで、加害者本人や相手方の保険会社との間で、示談条件などについて交渉を進めなければいけません。
そのため、被害者側としては、示談金相場をしっかりと理解したうえで、加害者側との話し合いに対応する必要があるといえるでしょう。
そこで本記事では、過失割合10対0の物損事故の示談金相場や弁護士に相談するメリット、請求可能な損害項目などについてわかりやすく解説します。
適切な示談金を受け取るためにも、ぜひ最後まで参考にしてください。
過失割合10対0の物損事故の示談金相場|被害者一人あたり平均24万円
過失割合10対0の物損事故に巻き込まれた場合、事故によって生じた被害額(物損額)は全額加害者に対して請求できますが、実際の被害額は事故によって異なるため、示談金の相場というものはありません。
しかし、物損事故の被害額(物損額)の一応の目安として、内閣府が公表した「交通事故の被害・損失の経済的分析に関する調査研究報告書概要」を参考にすることはできます。
同報告書では、「被害者1名あたりの交通事故による損失額」について、以下のデータを発表しています。
損害項目 | 被害者が死亡した人身事故 | 被害者に後遺障害が残った人身事故 | 被害者がけがをした人身事故 | 物損事故 |
人的損失 | 29,764,000円 | 8,072,000円 | 555,000円 | 0円 |
物的損失 | 368,000円 | 368,000円 | 368,000円 | 240,000円 |
事業主体の損失 | 1,075,000円 | 241,000円 | 61,000円 | 0円 |
公的機関などの損失 | 1,957,000円 | 969,000円 | 785,000円 | 4,000円 |
上記を見ると、物損事故1件あたりの平均的な被害額は約24万円であることがわかります。
過失割合10対0の物損事故で示談金が高額になる可能性があるケース
標準的な過失割合が10対0の物損事故の場合、数万円~30万円程度の賠償額を加害者に請求できるのが一般的です。
ただし、以下のように、物損事故の状況次第では、賠償金や示談金が高額になる可能性があります。
- 修理費や買替費用が高額になる場合
- 被害者が運転していた車両が新車や高級車の場合
- 業務中の交通事故で営業車などが使用できなくなった場合
- 特殊事情によって物損事故でも慰謝料請求が認められる場合
それでは、過失割合10対0の物損事故で賠償額・示談金が高額になる要素について、それぞれ解説します。
1.高額な修理費や買替費用がかかる場合
物損事故の損害項目には、車両の修理費用や買替費用が含まれます。
たとえば、物損事故によって被害者の車両が全損して、修理が不可能な「物理的全損」の状態になってしまった場合、車両の買替費用を加害者に請求できます。
また、物損事故でエンジンなどの基幹部分が損傷して車両の買い替えよりも高額の修理費用が発生する「経済的全損」のような事案でも、被害額は高額になるでしょう。
なお、交通事故実務では、買い替え費用として請求できるのは、「交通事故当時の車両の時価 ー 事故車の売却金額」とされている点に注意が必要です。
物損事故の被害を受けて買い替えを強いられる事態になったとしても、新車価格全額を加害者に請求できるわけではありません。
2.被害車両が新車や高級車であった場合
物損事故の被害を受けた車両が新車や高級車の場合には、加害者に請求できる賠償額が高額になる可能性が高いです。
というのも、物損事故の被害を受けた車両は事故車として扱われるため、市場価値が下落するからです。
この市場価値の下落分は「評価損」と呼ばれます。
評価損を算出する際には、購入してからの期間、走行距離、中古市場における人気の程度、国産車か外車かなどの諸般の事情が総合的に考慮されます。
なお、修理代や買い替え費用とは異なり、評価損をいくらと見積もるかについては、加害者側の保険会社との交渉が難航するケースが少なくありません。
評価損を正確に算出して相手方に納得させるには中古市場の動向などを踏まえた客観性のある査定が必要になるので、交通事故実務に詳しい弁護士に相談・依頼することを強くおすすめします。
3.被害車両が営業車などであった場合
物損事故の被害車両が営業車であった場合には、加害者側に請求できる賠償額が高額になる可能性があります。
というのも、営業車などの事業に使用している車両が物損事故の被害にあうと、車両の修理や買い替えが済むまでの間、当該車両を事業の用に供することができず、休車損害が発生するからです。
しかし、営業車などで物損事故に巻き込まれたときに、常に休車損害が認められるわけではありません。
休車損害が発生するのは、以下の要件を満たすときです。
- 物損事故発生日以降、事故車を業務で使用する必要性があったこと
- 事故車の代わりに使用できる遊休車や予備車を所有・保有していなかったこと
- 事故車以外の保有車両のスケジュール調整などをしても業務の穴埋めができなかったこと
- 業務に供していた車両が物損事故にあったこと(トラック、バス、タクシーなど)
休車損害を請求する際には、事業実態を踏まえたうえで1日あたりの売り上げ額を算出するなどの精緻な作業が求められます。
休車損害を認めるかどうか、認めるとして休車損害をいくらと算定するかについては、相手方との意見が衝突することが多いので、できる限り交通事故トラブルに強い弁護士に相談・依頼をするべきでしょう。
4.特別な事情で慰謝料が発生した場合
交通事故によって精神的苦痛が生じたときには、加害者に対して慰謝料を請求できます。
慰謝料は物損に対する賠償とは別物として位置付けられているため、慰謝料と物損に対する賠償を両方請求できれば、結果として加害者から受け取る額は大きくなるでしょう。
なお、加害者に対して慰謝料を請求できるのは、原則として人身事故に限られます。
交通事故が物損事故として扱われている場合、加害者に対して慰謝料請求をすることはできません。
ただし、以下のような特別な事情がある場合には、物損事故でも加害者側に慰謝料を請求できる可能性があります。
- 最初は物損事故として届出をしたが、しばらくしてから交通事故によってけがや後遺症を負っていたことが判明し、人身事故に切り替えた場合
- 家族同然に扱っていたペットが交通事故が原因で死傷したり、重い後遺症を負ったりした場合
- 墓石や芸術品、思い出の品物など、被害者にとって特別なものが壊された場合
- 加害車両が自宅に突っ込んで引っ越しを余儀なくされた場合
- 飲酒運転や煽り運転など、加害者の運転の悪質性や違法性が高い場合 など
とはいえ、物損事故で慰謝料請求をしても、相手方に任意での支払いを拒否されて、民事訴訟で争わざるを得ない可能性が高いです。
被害者本人だけで対応するのは難しいので、必ず交通事故裁判の経験豊富な弁護士に依頼をしてください。
物損事故で慰謝料請求するときの注意事項やポイントについては、以下の記事でも紹介しているので、合わせて参考にしてください。
【関連記事】物損事故でも慰謝料をもらえた5つのケース | 請求できる条件と対策も解説|ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)
過失割合10対0の物損事故で示談金を適切に受け取る5つのポイント
過失割合10対0の物損事故に巻き込まれたときには、弁護士に依頼しない限り、被害者本人が相手方との示談交渉や民事訴訟をおこなわなければいけません。
ここでは、過失割合10対0の物損事故の加害者から適切な金額の示談金を受け取るためのポイントを5つ紹介します。
- 物損事故にあったとき、すぐに警察に通報する
- 物損事故の現場で加害者と連絡先を交換する
- 物損事故に関する証拠・資料を確保する、目撃者の連絡先を入手する
- 物損事故として届け出をしたあとにけがが発覚したときには、すぐに人身事故に切り替える
- どれだけ軽微な物損事故でも念のために一度は交通事故の対応が得意な弁護士に相談する
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1.事故後に必ず警察に通報する
物損事故に遭った際は、必ずすぐに警察に通報しましょう。
たとえば、「修理代を支払うから警察に通報するのはやめて欲しい」とお願いされて応じたり、「車に少しキズがついた程度だからわざわざ警察を呼ぶ必要はないだろう」と判断したりするのは厳禁です。
というのも、警察に届出をしておかないと交通事故証明書を入手できないからです。
交通事故証明書を取得できないと、加害者側の保険会社から保険金を支払ってもらうのが難しくなったり、民事裁判で交通事故被害を証明できず損害賠償請求が認められにくくなったりするリスクが生じます。
また、道路交通法により、物損事故に関係する車両の運転者や乗務員には、負傷者などの救護義務・危険防止措置義務・報告義務が課されている点にも注意が必要です。
物損事故が発生したにもかかわらず、警察に110番通報をせずに現場から立ち去ってしまうと、報告義務違反を理由に「3ヵ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金刑」の範囲で刑事罰を科されかねません。
そのため、物損事故の被害にあったときには、必ずその場で110番通報をして警察官の指示を仰ぐようにしてください。
2.加害者と連絡先を交換しておく
物損事故の現場では、氏名、住所、電話番号、勤務先情報、保険会社の情報、ナンバープレートの番号などをメモしておきましょう。
過失割合10対0の物損事故の被害にあったときには、被害者側が加入している自動車保険の示談代行サービスは使えないので、弁護士に依頼しない限り、被害者本人が加害者との対応をしなければいけません。
相手方の連絡先などがわからなければ示談交渉などを開始することさえできないので、物損事故が起きたときには、必ず現場で加害者と連絡先などを交換してください。
3.証拠や資料などを確保しておく
物損事故で生じた損害分を加害者側に請求するには、損害賠償請求権が存在することやその金額を客観的に証明できる証拠・資料が必要です。
そのため、過失割合10対0の物損事故の被害にあったときには、以下のような証拠・資料を手元に用意しましょう。
- 事故現場や損傷箇所を撮影した写真・動画
- ドライブレコーダーの映像
- 現場を撮影した防犯カメラ・監視カメラなどの映像
- 事故現場を目撃していた人の連絡先や証言
- 修理代の見積書や作業明細、レッカー代の請求書 など
4.けががある場合は人身事故に切り替える
当初は物損事故として届出をしてしまったものの、その後、むちうちなどの自覚症状が出てきたときには、できるだけ早いタイミングで人身事故への切り替え手続きを済ませましょう。
なぜなら、人身事故として扱われなければ、治療費や入院費用、器具購入費、慰謝料などを加害者側に請求できなくなってしまうからです。
また、人身事故に切り替えれば実況見分調書が作成されるので、過失割合などが争点になったときの有力な証拠として活用できます。
さらに、人身事故であれば、加害者の刑事責任を追求することも可能です。
ただし、交通事故発生日から時間が経過するほど、被害者が主張しているけがや症状と交通事故との間の因果関係を証明するのが難しくなる点に注意が必要です。
場合によっては、加害者側が交通事故との間の因果関係を否定する主張をし、治療費などを支払ってもらえない可能性もあります。
そのため、本来であれば物損事故と思われるような事故態様であったとしても、念のために事故当日もしくは翌日に病院を受診して、最初から人身事故として届出を済ませるのがおすすめです。
物損事故として届出をしてしまった場合でも、診断書などがあれば人身事故への切り替え手続きが可能なので、できるだけ早いタイミングで警察署で手続きをおこなってください。
5.交通事故トラブルが得意な弁護士に相談しておく
10対0の物損事故に巻き込まれたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください。
というのも、交通事故トラブルへの対応を得意とする弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得られるからです。
- 加害者側から提示された賠償額が示談金相場とかけ離れていないかを精査してくれる
- 物損事故で生じた賠償項目をひとつずつ丁寧にピックアップしてくれる
- 加害者側との示談交渉を代理してくれる
- 過失割合や賠償額で争いが生じたとしても、客観的証拠を活用しながら、依頼者にとって有利な示談条件での合意を目指してくれる
- 人身事故に切り替える必要が生じた場面でも、加害者に対して慰謝料などを請求するためのポイントについてアドバイスをくれる
ベンナビ交通事故では、交通事故トラブルへの対応が得意な弁護士を多数紹介中です。
物損事故が起きたあと、弁護士のアドバイスをもらうタイミングが早いほど有利な状況を作り出しやすいので、お早めに弁護士へご相談ください。
過失割合10対0の物損事故における示談金に関するよくある質問
さいごに、過失割合10対0の物損事故の示談金相場についてよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
Q.過失割合10対0の物損事故の示談交渉では何に気を付けるべき?
過失割合10対0の物損事故では、被害者側に一切落ち度がないため、被害者側の任意保険会社の示談代行サービスを利用することができません。
そのため、過失割合10対0の物損事故をめぐる示談交渉においては、特に以下の点に注意が必要です。
- 修理費用や買い替え費用、その他積載物に生じた損害額などを示す明細などを手元に保管する
- 加害者側との示談交渉の際に、「自分にも悪いところがあった」などの不利になる発言をしない
- 加害者側から提示された賠償額が示談金相場から著しく低いものではないかを精査する
- 加害者側との電話や手紙などのやり取りを丁寧におこなう
- 人身事故への切り替えが必要な状況になったときには、すぐに病院を受診して、警察にて切り替え手続きを済ませる
- 加害者側の保険会社から不誠実な対応をとられたとしても、安易に相手方の主張を受け入れるなどして妥協しない
- 加害者が自動車保険に加入しておらず、任意で示談金を支払ってもらえないときには、民事訴訟や強制執行などの法的措置を検討する など
このように、過失割合10対0の物損事故でも、事後処理における注意事項は少なくありません。
被害者本人だけでの対応が難しかったり不安を感じたりする場合には、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談をしてください。
Q.物損事故の示談金にはどのような費用が含まれるの?
物損事故の示談金には、物損事故で生じた損害が含まれます。
代表的な費用項目は以下のとおりです。
【物損事故の示談金に含まれる主な費用項目】
- 修理費用
- 買い替え費用
- レンタカー費用
- 評価損
- 休車損害
- レッカー費用
- 積載物に生じた損害 など
過失割合10対0の物損事故では、被害者本人がこれらの損害項目をひとつずつ計上しなければいけません。
計上漏れがあると適切な金額について賠償請求できないので、可能な限り弁護士に相談することを強くおすすめします。
Q.物損事故の場合は慰謝料を請求することはできないの?
物損事故の場合、被害者が加害者に請求できるのは、物的損害分に限られます。
原則として、物損事故では慰謝料を請求することはできません。
ただし、家族同然に扱っていたペットが物損事故で死亡したなど、特別な事情がある場合には、例外的に慰謝料を請求できる可能性があります。
物損事故が原因で過大な精神的なストレスを負ったと感じている場合には、慰謝料請求の可能性も含めて、交通事故トラブルへの対応を得意とする弁護士に相談・依頼をしてください。
さいごに|物損事故の示談金相場は数十万円だが高額になるケースもある!
10対0の物損事故の示談金相場は数十万円程度です。
ただし、購入したばかりの新車が物損事故被害にあった場合や、営業車を運転中に交通事故に巻き込まれた場合などでは、示談金相場よりも高額の賠償金を請求できる可能性があります。
そのため、物損事故の被害者になったときには、被害者側に生じた損害を正確に算出したうえで、加害者側との間で交渉を進める必要があるといえるでしょう。
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