冬になると注意が必要となるのがスリップ事故です。
スリップ事故は、路面が凍結することで車が滑って発生するため、実際に被害に遭った際「過失割合はどうなるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
そこで本記事では、スリップ事故による過失割合について、決まり方や状況別の基本過失割合を紹介します。
スリップ事故の被害に遭って悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
過失割合とは
過失割合とは、発生した交通事故における責任の割合のことをいいます。
この責任の割合によって、後々の損害賠償額などが決まることになります。
例えば、損害が1,000万円の事故の場合、過失割合が加害者8:被害者2だとすると、それぞれの賠償額は加害者側が800万円、被害者側が200万円です。
実質的には、割合を相殺して加害者側へ600万円を請求する形になります。
過失割合の決まり方
過失割合は、当事者の交渉によって最終的に合意か、裁判で決められます。
なお、過失割合を決める際には、判例タイムズ社が発行している「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」を参考にするのが一般的です。
この書籍では、交通事故の当事者(四輪車・二輪車・歩行者など)と、交通事故の状況(交差点・対向車同士の事故・駐車場など)などの判例がまとめらており、基準となる過失割合を確認することができます。
この基準となる過失割合のことを「基本過失割合」と呼びます。
その後、基本過失割合を基準に、事故時の状況に応じて加算・減算が行われて、最終的な過失割合が決められるのです。
【状況別】スリップ事故における過失割合起こる事故の例と過失割合
ここからは、スリップ事故における過失割合を事故の状況別に紹介します。
スリップした車に追突された場合|基本の過失割合は10:0
スリップ事故でもっとも多いのはスリップした車に追突された場合で、この場合の過失割合は10:0です。
通常、前方を走っている車は進路変更をおこなう場合には同一進路の後方車に対する注意を払う義務があります。
しかし、進路変更などの事情がない限り後方車に注意を払うのは現実的ではないでしょう。
一方で、後方車は急ブレーキを踏まれても停車できるように車間距離を保つ義務があるとした上で、前方車に危害を加えない運転をしなければなりません。
そのため、同一方向に進んでいる場合の注意義務は後方車にあるとされ、過失割合も10:0となるのです。
スリップした車に追突されて玉突き事故を起こした|基本の過失割合は最後方の車10割
スリップした車に追突されて玉突き事故を起こした場合、最後方の車の過失割合が10割となります。
玉突き事故の場合も単純な追突事故と同様に、最後方の車に注意義務があることには変わららないのです。
玉突き事故ではない場合|ケースによって過失割合を検討する
3台の車が関係する事故で玉突き事故ではない場合は、ケースによって過失割合を検討します。
問題となるのは車が先頭からA・B・Cと走っていて、3台の車が関係する事故が起きた場合です。
Cがスリップした場合は、そのままCに過失割合が付きますが、Aがスリップした場合・Bがスリップしたケースも考えらえます。
この場合は、ケースによって過失割合の検討が必要です。
BがスリップしてAに追突し、衝撃で減速した結果Cが追突する場合には、AとBとの関係ではBの過失が100%です。
しかし、巻き込まれたCのスピードや車間距離・スタッドレスタイヤの装着の有無などによって過失割合を3車でどう配分するかを検討する必要があります。
また、Aがスリップした結果、減速してB・Cが追突したときには、B・Cのスピード車間距離・スタッドレスタイヤの装着の有無などの検討が必要です。
スリップ事故の過失割合に影響する要因
スリップ事故においても基本的な過失割合はあるものの、事情によっては基本過失割合から加算・減算を行う必要があります。
過失割合が加算・減算されるケースについて、以下でみていきましょう。
急ブレーキを踏んだ
前を走る車が急ブレーキを踏んだかどうかは、スリップ事故の過失割合にも影響します。
一般論として、同一方向に進行している場合、先頭を走る車が急ブレーキを踏むことは後続の車に危険を及ぼすのは当然です。
雨で路面が濡れている・雪道や凍結している路面ではなおさらでしょう。
スリップ対策をしていない
スリップ対策をしていないことは事故の過失割合に影響します。
車の運転者は、道路状況に応じて必要な対策をとることが求められています。
雨が降って路面が滑りやすくなった場合にはスピードを落とす、車間距離を空けるといった対策をしなければなりません。
雪や路面凍結している場合は、タイヤチェーンやスタッドレスタイヤの装着が不可欠です。
これらを怠っていた場合、過失割合に影響する可能性があるでしょう。
スピードが出すぎ・車間距離をつめすぎ
スピードが出すぎている、車間距離をつめすぎていることは過失割合に影響します。
雨で濡れていたり、積雪・路面凍結している場合にはスピードを落とし、車間距離をより空けるなどの対策をするべきです。
このような対策をしなかった当事者は、過失割合に影響します。
スリップ事故における過失割合についての注意点
スリップ事故における過失割合については、次のような注意が必要です。
スリップ事故では過失割合の交渉が難航することが多い
スリップ事故では過失割合の交渉が難航することが多いです。
過失割合の交渉をするにあたって、相手方保険会社の主張する過失の有無を見極めるために、事故当時の状況を正確に把握する必要があります。
そのために用いられるのが、交通事故の状況について調べた実況見分調書です。
しかし、雨や雪道・凍結路面などでのスリップ事故については、通常の交通事故よりもブレーキ痕を発見するのが困難でしょう。
また時間が経過すると積雪によってさらに状況がわかりづらくなる可能性があります。
そのため、事故直後に余裕があれば、写真を手持ちのスマートフォンや携帯電話で現場を撮影しておくとよいでしょう。
ドライブレコーダー・防犯カメラの映像があれば有力な証拠となる
スリップ事故ではドライブレコーダーや防犯カメラの映像が有力な証拠となります。
スリップ事故は、路面のブレーキ痕などの証拠が残りづらいのが特徴です。
そのため、ドライブレコーダーを搭載してれば、事故時の状況の有力な証拠になるでしょう。
また、事故現場の近くに防犯カメラがある場合には、防犯カメラの映像も有力な証拠です。
これらの証拠を集めて、保険会社が主張する過失割合に適切に反論しましょう。
保険会社が示す過失割合に納得がいなかない場合の対応方法
保険会社が示す過失割合に納得がいかない場合、次のような対応をおこないましょう。
保険会社と交渉する
まずは、保険会社と過失割合について交渉します。
過失割合は、保険会社が保険金の提示をする中の一つの項目です。
保険会社は運転者にどのような過失があり、その過失によって過失割合がどのように変化するのかを示します。
事実関係を確認したうえで過去の裁判例などを参考に保険会社の主張に反論し、適切な過失割合を主張しましょう。
裁判を起こす
保険会社と過失割合について合意できない場合には、裁判を起こすことも検討しましょう。
裁判は、損害賠償請求をする被害者の側から起こす必要があります。
また、訴状や準備書面などの書類の作成のほか、主張する事実については証拠を提出して証明する必要があるので、弁護士に依頼するのがよいでしょう。
交通事故ADRを利用する
裁判のほか、紛争解決手段としては交通事故ADRの利用が挙げられます。
交通事故ADRとは、交通事故に関する裁判外紛争解決手続き(ADR)です。
交通事故ADRを利用すれば、弁護士などの専門家によって、示談のあっせんや審査会による審査などをおこなってもらえます。
さいごに|スリップ事故にあった場合には弁護士に相談しよう
本記事ではスリップ事故にあった場合の過失割合について解説しました。
スリップ事故については後方から追突した場合には基本的に10:0ですが、ケースによっては交渉が難航することもあります。
雪道などでは証拠が残りにくいといった特徴もあるので、過失割合についての争いになりやすいでしょう。
スリップ事故の過失割合でもめている、もめそうな場合は早めに弁護士に相談してください。
弁護士なら適切な主張で被害者が有利になるように交渉を進めてくれますよ。

