非接触事故とは?被害者向けに損害賠償請求をする際のポイントを中心に解説

非接触事故とは?被害者向けに損害賠償請求をする際のポイントを中心に解説

物理的な接触を伴わない非接触事故は、因果関係を証明するのが難しいほか、加害者から言いがかりをつけられるなどのトラブルが発生しやすい事故です。

そのため、過失割合が不当に高くついてしまったり、損害賠償額が少なくなってしまったりすることもあります。

非接触事故にあってしまったら、どのように対応すればよいのでしょうか?

本記事では、非接触事故にあった場合の対応や、非接触事故特有の注意点などを解説します。

加害者が損害賠償請求に応じてくれない場合の対処法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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この記事を監修した弁護士
佐藤 光太弁護士(ステラ綜合法律事務所)
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非接触事故とは?物理的な接触はないが危険行為により被害が発生した事故のこと

非接触事故とは、物理的な接触はないものの、加害者の危険な行為が原因で発生した交通事故のことです。

相手の行為によって直接的ではないものの、ほかの人・物にぶつかったり、自分自身がけがをしたりしたケースが非接触事故に該当します。

具体的には、以下のケースが挙げられます。

【非接触事故に該当する可能性があるケース】

  • 自転車が角を曲がろうとしたところ、ぶつかりそうになった歩行者が転倒し骨折した
  • 車の運転中に急に右折してきた車を避けたところ、ぶつからなかったものの急ブレーキの衝撃で首を痛めた
  • 横断歩道を渡っているときに車がギリギリまで接近してきたので、驚いて転倒し打撲した
  • バイクの運転中、合図なく進路変更してきた車を避けたところ、バランスを崩して転倒し骨折した

非接触事故が成立するための条件は、被害者がけがを負っていることです。

転倒しても無傷だった場合は非接触事故に該当しないことがあるので注意しましょう。

非接触事故でも損害賠償請求は可能!加害者に対して請求できるお金

非接触事故は物理的な接触がないため、加害者に損害賠償を請求できないと思っている方もいるでしょう。

しかし、相手の危険行為が事故の原因であることを証明できれば、損害賠償を請求できます。

非接触事故で加害者に請求できる損害賠償項目は以下のとおりです。

1.積極損害|治療費や通院費など

積極損害とは、交通事故が原因で実際に支払った費用のことです。

具体的には、以下の費用が該当します。

  • けがの治療費
  • 入院・通院費
  • 車両・ヘルメット・衣服などの修理代・買い替え代
  • 代車費用
  • レッカー代

車両・ヘルメット・衣服などの修理代・買い替え代は、事故当時の時価を基に賠償額が算定されます。

実際に支払った全額を請求できるわけではないので注意しましょう。

2.消極損害|休業損害や逸失利益など

消極損害とは、交通事故にあわなければ本来得られたであろう利益のことです。

具体的には、以下の費用が消極損害に含まれます。

  • 休業損害:交通事故によるけがが原因で仕事を休んだために減った収入
  • 逸失利益:交通事故によるけがが後遺障害として残った場合に、将来得られたはずの利益

3.慰謝料|入通院慰謝料や後遺障害慰謝料など

慰謝料は、交通事故による被害者の精神的な損害・苦痛に対する賠償のことです。

非接触事故における慰謝料には、以下のものが含まれます。

  • 入通院慰謝料:入院・通院を強いられたことで発生した精神的苦痛に対する慰謝料
  • 後遺障害慰謝料:交通事故によるけがが後遺障害として残ったことで生じた精神的苦痛に対する慰謝料
  • 死亡慰謝料:被害者が死亡したことで被った精神的苦痛に対する慰謝料

慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つがあり、最も高額なのが弁護士基準です。

弁護士基準は、弁護士が慰謝料を算定するときに使う基準なので、慰謝料をできるだけ増やしたいなら弁護士に依頼するのが得策です。

非接触事故の特徴|通常の交通事故より揉める可能性が高い2つのポイント

非接触事故は物理的な接触がないため、接触事故に比べ以下の点でトラブルになりやすいといえます。

1.加害者の危険行為とけがの因果関係|損害賠償請求権が否定される可能性がある

非接触事故は、けがの原因が加害者の危険行為であることを証明するのが難しい事故です。

たとえば、車の運転中に急に右折してきた車を急ブレーキで避けたところ、その衝撃で首を痛めてしまったとします。

この場合、加害者の「急に右折してきた」という行為と、被害者が「首を痛めた」ことの間に、被害者の「急ブレーキをかけた」という行為が存在します。

そのため、「被害者が首を痛めたのは本当に加害者の行為が原因だったのか?」「被害者が急ブレーキをかけなくても事故は起こらなかったのではないか?」ということが争点となり、揉めてしまう可能性があるのです。

しかし、過去の判例では以下の判決が下されています。

接触がないときであつても、車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したものであつて、歩行者がこれによつて危難を避けるべき方法を見失い転倒して受傷するなど、衝突にも比すべき事態によつて傷害が生じた場合には、その運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係を認めるのが相当である。

引用元:裁判所|最高裁判所判決(昭和47年5月30日)

直接の接触がなかったとしても、危険を避けるべき方法を見失い転倒しけがをした場合は、因果関係を認めるべきであるとしています。

このことから、急に右折してきた車を避けるために急ブレーキをかけてけがをしたケースでも、因果関係が認められる可能性は十分にあるといえるでしょう。

2.被害者側の過失割合|被害者の過失に応じて損害賠償額が減額される可能性がある

非接触事故は、事故当時の状況に応じて被害者側の過失割合が修正されます。

過失割合とは交通事故に対する責任の割合のことで、被害者の過失が多いほど損害賠償額が減額されます。

通常の接触事故であれば、「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」を基に算定するのが一般的です。

しかし、非接触事故の場合、状況によっては被害者にとって不当な過失割合になることがあるため、事故の具体的な状況を考慮して過失割合が調整されます。

事故の状況を考慮する際は、加害者の危険行為を避けるための被害者の行動が適切だったのかが焦点となります。

過去には、基本の過失割合は「加害者:被害者=50:50」だったものの、事故の状況を考慮した結果、最終的に「加害者:被害者=70:30」に修正された事例がありました。

通常の接触事故とは異なり、被害者の回避行動の適切性が争点となりやすい点は留意しておきましょう。

非接触事故の被害者が取るべき対応|損害賠償請求で有利になるために!

非接触事故にあった場合、被害者はどのように対応すればよいのでしょうか?

賠償金を少しでも多く受け取るために、以下のことを忘れずおこないましょう。

1.必ず警察に連絡する

非接触事故にあったら、すぐに警察に連絡しましょう。

道路交通法では、交通事故が発生したら速やかに警察に報告することが義務づけられています。

また、警察に連絡しないと、損害賠償や保険金の請求に必要な「交通事故証明書」が発行されません。

あとでけがが発覚しても治療費や慰謝料を受け取れないおそれがあるため、必ず警察に届け出をしてください。

2.病院を受診して検査を受ける

体に痛みやしびれなどがなくても、必ず病院を受診して必要な検査を受けてください。

事故直後はなんともなくても、あとから痛みが出てくることがあります。

病院に行くのが遅れてしまうと、交通事故との因果関係を証明できず、治療費を払ってもらえない可能性もあるので、速やかに受診しましょう。

3.目撃者や証拠などを確保する

非接触事故は因果関係を証明するのが難しいため、目撃者や証拠を確保しておくことも大切です。

加害者が「自分は悪くない」「被害者が勝手に転んだだけだ」と主張してくることも考えられるので、しっかり反論できるようドライブレコーダーの映像や目撃情報などを集めておきましょう。

ドライブレコーダーの映像がない場合や目撃者がいない場合、警察が作成する事故の詳細な状況をまとめた「実況見分調書」が重要な証拠資料となります。

実況見分には積極的に協力し、事故の状況をできる限り詳しく正確に説明するようにしましょう。

交通事故との因果関係をしっかりと証明できれば、過失割合が有利に調整され、損害賠償額の増額にもつながります。

4.交通事故が得意な弁護士に相談する

過失割合を少しでも減らし、より多くの損害賠償を受け取りたいなら、弁護士に相談しましょう。

交通事故トラブルが得意な弁護士に相談すれば、事故の状況を客観的に把握したうえで適切な過失割合を主張してもらえます。

ただでさえ因果関係の証明が難しい非接触事故でも、弁護士の力を借りることでトラブルを有利に解決できる可能性が高くなるでしょう。

対応方法に少しでも不安があるなら、弁護士に頼ることをおすすめします。

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非接触事故の加害者が損害賠償請求を拒否している場合の対処法

非接触事故は加害者との物理的な接触がないため、加害者が損害賠償請求を拒否する可能性も考えられます。

加害者が損害賠償を支払ってくれない場合、どのように対処すればよいのでしょうか?

ここでは2つの方法を紹介します。

1.交通事故紛争処理センターに相談する

交通事故紛争処理センターには、和解のあっせんを無料でおこなってくれるサービスがあります。

弁護士が中立的な立場で話し合いを進めてくれるので、自分で交渉するよりもスムーズにトラブルを解決できる可能性が高くなるでしょう。

費用は一切かからないので、金銭的な負担を避けたい方は利用してみてください。

最寄りのセンターは交通事故紛争処理センターのホームページで確認できます。

和解あっせんサービスを利用したい方は、住所地または事故地の最寄りのセンターを探して電話予約をしてください。

ただし、当事者同士の主張に大きな乖離がある場合や、和解の成立が困難と判断された場合は途中で終了となることがあるため注意しましょう。

2.通常訴訟の提起をする

加害者との示談交渉が難しい場合は訴訟を提起しましょう。

訴訟をおこなう場合は、裁判所に訴状を提出したあとに加害者と裁判で争うことになります。

最終的には裁判所で判決が言い渡されますが、実際には途中で和解することがほとんどです。

判決や和解には強制力があるので、加害者に確実に損害賠償を支払わせたいなら訴訟提起を検討しましょう。

ただし、訴訟費用がかかるうえ、解決までに時間がかかる点に注意が必要です。

また、裁判では法律的な知識が求められるため、訴訟に発展したら弁護士に依頼しましょう。

非接触事故についてよくある質問

ここからは、非接触事故についてよくある質問をまとめています。

非接触事故についてより詳しく知りたい方は参考にしてください。

非接触事故でけがをしていなくても損害賠償請求はできるか?

非接触事故でけがをしていなくても、車両や所持品が破損した場合は損害賠償を請求できます。

ただし、請求できるのはあくまで事故当時の時価に相当する金額です。

修理代や買い替え代の全額を請求できるわけではないので注意しましょう。

また、物損事故では慰謝料を請求することはできません。

慰謝料は身体に生じた損害による精神的な苦痛に対して支払うものなので、けがをしていない場合に請求するのは困難でしょう。

非接触事故で加害者が警察に連絡せずに立ち去った場合はどうすべきか?

非接触事故で加害者が立ち去ってしまった場合は、加害者の車のナンバーを記録し、すぐに警察に連絡しましょう。

車のナンバーがわかれば、あとで加害者を特定しやすくなります。

ナンバーを確認できなくても、車種や車の色などを覚えておけば特定できる可能性があります。

また、事故の証拠を確保することも大切です。

ドライブレコーダーの映像や事故現場の写真、現場付近の防犯カメラ映像などは重要な証拠となり得るので、できる限り集めておきましょう。

目撃者の連絡先を聞いて、今後の捜査に協力してもらいたいと伝えておくのもおすすめです。

さいごに|非接触事故の被害に遭ったらできる限り早く弁護士に相談を!

非接触事故とは、物理的な接触がなくても、加害者の危険な運転などが原因で発生した事故のことです。

非接触事故にあった場合でも、通常の交通事故と同じく慰謝料や損害賠償を請求できますが、非接触事故は物理的な接触がないため、因果関係を証明するのが困難です。

そのため、非接触事故にあってしまったら、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

交通事故トラブルが得意な弁護士に相談・依頼すれば、事故の状況を基に適切な過失割合を主張してもらえます。

損害賠償額を増額できる可能性が高くなるので、ぜひ一度相談してみてください。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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