損害賠償と慰謝料の違い|示談に役立つ損害賠償請求の知識

損害賠償と慰謝料の違い|示談に役立つ損害賠償請求の知識

「損害賠償」と「慰謝料」はよく混合して認識されやすいですが、正確には意味合いが少し異なります。

損害賠償が請求できても慰謝料の請求はできない状況もあるので、加害者に金銭を請求する際には、事前にその違いについて理解を深めておいほう方がよいでしょう

本記事では、交通事故における損害賠償と慰謝料の違いについて紹介します。

加害者との示談交渉の際にお役立てください。

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この記事を監修した弁護士
磯田 直也弁護士(ルーセント法律事務所)
交通事故の相談の対応分野は、死亡事故や人身事故、慰謝料・損害賠償、後遺障害等級認定の相談などを含む幅広い分野で対応してきた実績と経験があります。
(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)

損害賠償と慰謝料の違い

損害賠償とは

損害賠償とは、ある当事者が他者に対して法的に責任を負う損害を与えた場合に、その損害を金銭的に補償する法的概念です。

これは民法の重要な分野で、不法行為や契約違反などによって生じた損失を埋め合わせることを目的としています。

損害賠償の対象となるのは、財産的損害(物的損害や逸失利益など)だけでなく、精神的苦痛に対する慰謝料なども含まれます。

賠償額の算定は、実際に被った損害の程度や、加害者の過失の度合いなどを考慮しておこなわれます。

また、損害の発生を予見できたか、回避する努力をしたかなども判断材料となります。

慰謝料とは

慰謝料とは、精神的苦痛や心の傷に対する金銭的な賠償のことです。

主に不法行為や契約違反によって生じた非財産的損害を補償するために支払われます。

具体的には、交通事故による怪我や後遺症、名誉毀損、プライバシー侵害、セクハラ、離婚問題などの場合に認められることが多いです。

慰謝料の額は、被害の程度、加害者の過失の度合い、社会的影響などを考慮して裁判所が決定します。

本来は慰謝することが容易ではない精神的苦痛を、金銭的賠償により可能な限り緩和することを目的としています。

損害賠償と慰謝料を4つの項目で比較

損害賠償と慰謝料は、どちらも被害者への補償を目的としていますが、以下の点で異なります。

損害賠償慰謝料
対象となる損害主に財産的損害(物的損害や逸失利益など)が対象精神的苦痛という非財産的損害が対象
算定方法実際に被った経済的損失を客観的に計算精神的苦痛の度合いや社会的影響を総合的に判断して決定
法的根拠民法上の一般的な概念損害賠償の一内容として位置づけ
適用範囲広範囲の法的紛争に適用主に人格権侵害や身体的被害をともなう事案で認められる

両者は補完的な関係にあり、多くの場合、損害賠償と慰謝料があわせて請求されます

以下の図のようなイメージを持つと損害賠償と慰謝料の違いが理解しやすいかもしれません。

一般的な損害賠償の範囲には慰謝料も含まれていますが、「損害賠償=慰謝料」という認識は間違いなので、ご注意ください。

損害賠償の種類

次に損害賠償の種類を確認していきましょう。

損害賠償は大きく分類すると、「財産的損害」と「精神的損害」の2種類です。

財産的損害

財産的損害とは、事故や事件によって失った財産・利益に対しての損害賠償です。

車の修理代や仕事を休んでいる間のお給料など、金銭に対して影響の生じる損害賠償は基本的に財産的損害に該当します。

なお、実際に失った財産に関する財産的損害を「積極損害」、事故や事件がなければ得られたはずの利益を得られなかったことに関する財産的損害を「消極損害」といいます。

交通事故の代表的な財産的損害
積極損害消極損害
物損の修理代休業損害
病院の治療費用逸失利益

事故被害でモノが壊れたり負傷を負ったりしている状況であれば、財産的損害は請求できると考えて問題ありません。

精神的損害

精神的損害とは、事故や事件によって負わされた精神的苦痛に対して請求できる損害賠償、いわゆる慰謝料です。

基本的に物損事故では請求できませんが、人身事故であれば請求が認められます。

交通事故被害で請求できる慰謝料
入通院慰謝料入通院が必要な傷害を負わされた精神的苦痛に対する慰謝料
後遺障害慰謝料後遺症を負わされた精神的苦痛に対する慰謝料
死亡慰謝料遺族が被害者を失った精神的苦痛に対する慰謝料
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慰謝料の金額を決める3つの基準

財産的損害に関しては、損害の費用や利益を求める方法が明確で金額を把握しやすいといえます。

しかし慰謝料は、精神的な苦痛という曖昧な基準であるため、どのように金額が決定されるのかイメージしづらいと思われます。

交通事故の慰謝料には3つの算出基準があり、同じ負傷の度合いでも、どの基準が適用されるかによって金額が変わります。

交通事故の慰謝料を決める3つの基準
自賠責基準交通事故により負傷した被害者に対して、法令で決められた最低限の補償をおこなうことを目的とした基準。
任意保険基準自動車保険会社が独自に設けている基準。自賠責基準よりも多くの保障が受けられる。
弁護士基準裁判所の判例などを参考にした基準。自賠責基準や任意保険基準よりも高額な慰謝料が設定されることが多い。

以下で、それぞれを詳しく解説します。

自賠責基準とは

自賠責基準とは、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)における保険金の支払いに関する基準のことです。

これは、交通事故による人身被害の補償額を算定するための指針となります。

具体的には、傷害の程度、入院日数、通院日数、後遺障害の等級などに基づいて、支払われる保険金の額が定められています。

この基準は、公平で迅速な被害者救済を目的としており、最低限の補償を保証するものです。

ただし、自賠責基準は最低限の補償を定めたものです。

実際の損害がこれを上回る場合は、任意保険会社への請求や訴訟によって追加の補償を求めることができます。

任意保険基準とは

任意保険基準とは、自動車保険会社が独自に定める損害賠償額の算定基準のことです。

自賠責保険の基準を上回る補償を提供するために使用されます。

慰謝料の算定においても、自賠責基準よりも高額な基準を設定していることが多いです。

ただし、各保険会社によって基準が異なる場合があり、統一された基準ではありません。

弁護士基準とは

弁護士基準とは、交通事故などの損害賠償案件において、弁護士が被害者の立場に立って算定する賠償額の基準です。

この基準は、自賠責基準や任意保険基準よりも高額な賠償を求めることができる場合が多く、より充実した被害回復に資すものです。

弁護士基準は過去の裁判例や判例を参考にしながら、被害者にとってより有利な賠償を獲得することを目的としています。

訴訟や示談交渉の際に、この基準を用いて保険会社と交渉することで、より高額な賠償を得られる可能性が高まります。

「弁護士基準>任意保険基準>自賠責基準」で弁護士基準の慰謝料が最も高額です。

多くの事故では自賠責基準か任意保険基準が適用されますが、弁護士に対応を依頼した場合には弁護士基準が適用される可能性が高くなります。

まとめ

慰謝料はあくまで損害賠償の一部です。

交通事故の慰謝料は人身事故の場合だと請求ができますが、物損事故では基本的に請求は認められていません。

適正な金額の損害賠償を請求するには、被害者自身が何を請求できるのかを認識しておく必要があります。

損害賠償に関して不明点がある場合はそのまま放置せず、弁護士への無料相談を利用して確認しておくことを強くおすすめします。

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この記事の調査・編集者
みーさん
2017年にライターとしてアシロに入社し、主に交通事故とIT分野の執筆に携わる。2019年によりIT媒体の専任ディレクターになり、コンテンツの執筆・管理などを行っている。
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