交通事故後の対応
自損事故で保険金はいくらもらえる?保険の種類ごとに詳しく解説
2024.10.16
交通事故を起こした(に遭った)ときには、加害者・被害者どちらの立場であったとしても、「現場対応、警察への通報、保険会社対応」の処理をする必要があります。
ただ、交通事故は人生で何度も巻き込まれるものではないため、誰しも「何をすればよいかわからない」「保険会社から言われたことが正しいか勝手に判断してよいのか不安だ」という状況に追いこまれかねません。
本記事では、交通事故の加害者・被害者双方のために、以下3点についてわかりやすく解説します。
交通事故を起こしたとき(あるいは交通事故の被害者になったとき)、初動でやるべきことは以下4点です。
交通事故を起こした(に遭った)ときには、気が動転して何をすればよいかわからなくなるかもしれません。
ただ、これら4つは全て必ずおこなう必要があります。
心を落ち着けて、ひとつずつ確実に対応しましょう。
交通事故の現場にけが人がいる場合には、最優先で救護してください。
特に、自動車の運転者やそのほかの同乗者には「救護措置義務」があります。
負傷者を救護しなければ道路交通法違反の容疑で刑事罰(※)が科されかねません(道路交通法第72条第1項前段、第117条第1項・第2項、第117条の5第1項第1号)。
けが人を安全な場所に移したあと、必要であれば119番で救急車を手配してください。
負傷者の状況次第では、救急隊員が到着するまでの間、指示にしたがって応急処置をおこないましょう。
負傷者対応が済んだあとに、事故車を安全な場所に移動してください。
自動車の損傷が激しく自走が難しい状況なら、ハザードランプや発煙筒・三角表示板を使い、道路を通行する車両に危険を知らせましょう。
これらの危険防止措置義務に違反すると、道路交通法違反により刑事罰(※)が科される可能性があります(道路交通法第72条第1項前段、第117条第1項・第2項、同法第117条の5第1項1号)。
※人を負傷させた運転者か、事故の状況(人身事故か物損事故か)等に応じて、「10年以下の懲役または100万円以下の罰金」、「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」または「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」
交通事故が発生したときは、自動車などの運転者には警察への「報告義務」があるため、被害状況の大小を問わず、かならず警察に通報しなければいけません。
報告義務に違反して110番通報しなかったり、捜査員が到着する前に現場から離れたりしてしまうと、報告義務違反を理由に「3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金」が科されます(道路交通法第72条第1項後段、同法第119条第1項第17号)。
また、保険対応などの交通事故の事後処理をするには「交通事故証明書」が必要ですが、警察に通報しなければこの証明書が発行されないので、保険金が支払われないリスクも生じかねません。
救護義務・危険防止措置義務・報告義務を果たしたあとは、加入している任意保険会社に連絡をしてください。
交通事故発生時の注意点やその後の流れ、確認事項などについて丁寧に案内してもらえます。
通常、保険会社は24時間体制で窓口を開設しているので、早朝深夜帯の交通事故でもその場で連絡することが可能です。
保険内容次第では、レッカーや代車の手配もしてくれるので、電話連絡の際に確認ください。
なお、被害者の場合、仮に過失割合が「加害者10:被害者0」になると想定され、被害者側が責任を問われることがないと思われるケースでも、その後過失割合が争点になる可能性があったり、加害者側から充分な賠償を受けられなかったりするリスクもあるので、ご自身が契約している保険会社に連絡することを強くおすすめします。
交通事故現場で警察に通報したあとの流れについて解説します。
交通事故が起きた場合、加害者・被害者問わず感情的になりがちですが、今後の手続きをスムーズにすすめるため、冷静になってお互いの連絡先を交換してください(警察到着前に連絡先交換をしなかったとしても、捜査員から「連絡先は交換しましたか?」などの問いかけをされるのが一般的です)。
相手と連絡先を交換する際は、以下を必ず確認し記録しておきます。
相手と名刺交換をしたり、相手方の保険証書や車両ナンバーをスマートフォンで撮影させてもらったりするのもひとつの手です。
交通事故当時の状況や過失割合で後々争いが生じそうなときには、証拠を記録しておくことも忘れないようにしてください。
事故当時は相手方が反省をして「自分が悪い」と言っていたとしても、後日保険会社から連絡があったときにはすっかり主張内容が変わっているというケースも少なくありません。
示談交渉で不利にならないようにするためにも、事故現場の証拠保全は重要です。
たとえば、交通事故の目撃者がいるなら、事故当時の状況をあとから説明してもらう必要が生じたときのために、連絡先を交換しておくのがおすすめです。
また、相手方の車両に生じたキズだけではなく、「キズが生じていない箇所」も写真に記録しておきましょう。
相手方の車両にドライブレコーダーが搭載されているかも確認ください。
交通事故現場に警察が到着すると、実況見分と聞き取り捜査がおこなわれます。
なお、交通事故で深刻な被害が発生し現場での捜査活動が難しい場合、後日警察官が自宅を訪れたり出頭を求められたりするなどして、事情聴取と実況見分に応じることになります。
実況見分では、交通事故現場の状況が確認されます。
交通事故当事者の立会いのもと、事故当時の様子の説明を求められ、現場の様子が記録されて「実況見分調書」が作成されます。
実況見分では、以下がチェックされます。
なお、実況見分の立会いは一般的に任意捜査の一環としておこなわれますが、交通事故当事者が飲酒運転の罪などの容疑で逮捕されるケースでは、強制的に実況見分への立会いが求められます。
聞き取り捜査では、交通事故現場に到着した捜査員から事故当時の状況などについて尋ねられます。
聞き取り捜査では、警察官からの質問に正直に答えることが必要です。
場合によっては、自分の説明が相手の説明と矛盾することもありますが、正確に答えている自信があるのであれば安易に主張を曲げてはいけません。
聞き取り捜査で話した内容が、示談交渉の際に大きな影響を及ぼす可能性もあります。
必要であればドライブレコーダーの映像を提出するなど、自分の証言が正しいと裏付けることを心がけましょう。
交通事故の状況次第ですが、一般的な聞き取り捜査で確認されるのは以下の項目です。
なお、軽微な交通事故なら現場で簡単に事情聴取を受けるだけですみますが、深刻な交通事故の場合には供述調書が作成されることもあります。
供述調書には署名・押印を求められるので、内容を精査したうえで、納得できない内容が記載されている場合には修正を求めましょう。
交通事故を起こした場合、状況次第では以下の容疑をかけられることもあります。
問われる可能性のある罪名 | 内容 |
過失運転致死傷罪 (自動車運転死傷処罰法第5条) | 自動車を運転するときに必要な注意を怠って人を死傷させたときに成立する犯罪。法定刑は「7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金」。 |
危険運転致死傷罪 (自動車運転死傷処罰法第2条、第3条) | 自動車の危険な運転(飲酒運転、速度超過、信号無視など)によって人を死傷させたときに成立する犯罪。 アルコールや薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で運転して事故を起こした場合のほか、重大な交通の危険を生じさせる速度や態様で走行させ、事故を起こした場合、人に傷害を負わせたときの法定刑は「15年以下の懲役」、人を死亡させたときの法定刑は「1年以上20年以下の有期懲役」(同法第2条)。 アルコールや薬物、一定の病気の影響により、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」で運転して事故を起こした場合、人に傷害を負わせたときの法定刑は「12年以下の懲役」、人を死亡させたときの法定刑は、「15年以下の懲役」(同法第3条)。 |
過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪 (自動車運転死傷処罰法第4条) | アルコールや薬物の影響により死傷事故を起こした者が、その場から逃走してアルコールや薬物が体内から抜けるのを待つ、事故後にさらに飲酒する、大量に水等を飲んでアルコール濃度の減少を図るなど、そのアルコール等の影響や程度の発覚を免れる行為をした場合に成立する犯罪。法定刑は、「12年以下の懲役」。 |
ほかにも、酒気帯び運転の罪(道交法第65条第1項、第117条の2の2第3号)、酒酔い運転の罪(道交法第65条第1項、第117条の2第1号)、無免許運転の罪(道交法第64条、第117条2の2)などの容疑で逮捕されるケースもあり得るでしょう。
警察に逮捕されると、逮捕・勾留によって数日から数週間身柄拘束される可能性があるので、勤務先に迷惑がかかる可能性があります。
また、起訴されて有罪判決が確定した場合には、刑事罰とは別に勤務先の就業規則次第で懲戒処分が下される可能性もあります。
刑事罰が科される状況になると刑事手続きへの対応を要するので、示談交渉などを得意とする弁護士に対応を依頼することを強くおすすめします。
交通事故を起こした場合、加害者は民事の賠償責任を問われます。
交通事故によって生じた損害をどのような配分で負担し合うのかが争点になることが多いので、少しでも有利な示談条件で和解契約成立を目指すなら、事故後すみやかに弁護士まで依頼してください(任意保険に弁護士特約が付帯されている場合には、保険サービスとして弁護士に相談・依頼できます)。
交通事故をめぐる民事の賠償責任については、保険会社を介して解決を目指すことになります。
先ほど説明したように、けが人を救助して警察に連絡したあとは、自分が契約している保険会社に交通事故に遭った(交通事故を起こした)旨を報告してください。
保険会社側から報告して欲しい内容を適宜伝えられるので、わかる範囲で返答するだけで差し支えありません。
保険会社側から報告を求められるのは以下の事項です。
交通事故でけが人が発生した場合、本格的な示談交渉を開始するには、症状固定まで待つ必要があります。
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状が改善しない状態のことです。
交通事故によるけがで治療が必要になった場合、加害者側には症状固定までの治療費・交通費、休業損害の賠償金、入通院慰謝料などを請求できます。
言い換えると症状固定まで待機することで、これらの金額が確定するわけです。
車両に損傷が生じた場合には、交通事故で生じた被害額を計算するため修理費用の見積もりを取る必要があります。
示談交渉では、後述の過失割合に加えて、損傷箇所が交通事故によって引き起こされたのか、修理の工程は適切なものなのかなどが争点になることも多いです。
交通事故の損害額が確定したら、事故当事者間で賠償責任の配分について話し合いをおこないます。
この話し合いのことを「示談交渉」と呼びます。
示談交渉の内容に合意したあと、和解契約を締結して、契約内容にしたがってそれぞれ賠償責任を負担することになります。
交通事故の示談交渉の主な争点は「過失割合」です。
過失割合とは、交通事故に対する当事者それぞれの責任割合を意味します。
たとえば相手方に7割、自分に3割の責任があるとされた場合、お互いに生じた損害について相手が7割、自分が3割分の負担をするわけです。
交通事故の賠償責任は、このように当事者それぞれの「過失割合」にしたがって金銭負担額が決定されます。
交通事故の態様によって過失割合は異なります。
たとえば、「四輪車同士の事故なのか、四輪車と二輪車の事故なのか」「それぞれが走行していた道路の道幅に差異はあるのか」「交差点侵入時の信号はどのような様子だったのか」などの個別具体的な事情が総合的に考慮されて、「10:0」「9:1」「8:2」などの比率で過失割合が決定されます。
つまり、過失割合が「10:0」になるケース以外では、”交通事故の被害者”とされる当事者にも一定の過失責任があるということです。
「走行中に横から衝突されたから、全額弁償して欲しい」と希望しても、事故当時の状況次第では被害者にも過失割合があるとされる可能性があるので、少しでも有利な過失割合での示談成立を目指すなら、交通事故案件を得意とする弁護士へ対応を依頼することが推奨されます。
交通事故の過失割合について示談交渉がまとまると、和解契約の内容どおりに賠償額を支払って民事争訟は解決します。
通常の交通事故の場合、賠償額の支払いは保険会社を通じておこなわれます。
保険会社の事務処理の混雑状況次第ですが、示談書を交わしてから保険金が支払われるまでの期間は概ね2週間程度です。
保険会社からあらかじめ指定された期日までに支払いが済まされない場合には、保険会社に連絡をして、処理手続きの進捗を確認ください。
ここまで紹介したように、交通事故を起こしたときには、警察への通報から保険会社を通じての賠償額の支払いに至るまで、さまざまな手続きをしなければいけません。
交通事故処理の手続きをする際は、特に以下3点には注意が必要です。
交通事故を起こしたときには、「人身事故・物損事故のどちらで届け出をするか」が重要です。
たとえば、けがをしていたのに物損事故として届け出をしてしまうと、後日保険会社に治療費の支払いを求めた場合に、「物損事故だから、治療費は保険料で支払えない」と拒否されてしまう可能性があります。
交通事故でけが人がいる場合や、少しでもけがをした可能性があり病院で受診したいと考えている場合は、かならず「人身事故」として届け出をしておくことをおすすめします。
相手方から「物損事故扱いにしてほしい」と言われても、簡単に応じてはいけません。
交通事故後の治療が長引いていると、保険会社から症状固定について問い合わせがあったり、治療費の支払い打ち切りを打診されたりすることがあります。
症状固定を認めると、その時点で「交通事故によって生じた損害額=治療費」が確定してしまうので、症状固定後の治療費支払いを請求するのが難しくなってしまいます。
また保険会社に一度打ち切られた治療費の支払いを、再開してもらうのも非常に困難です。
保険会社から症状固定の打診があっても、簡単に応じてはいけません。
症状固定の判断をするのは医師です。
症状固定について保険会社からしつこく打診された場合は、医師に相談しましょう。
医師と相談した結果、治療の継続が必要と判断された場合は、症状固定でない旨をまとめた意見書の作成を医師に依頼します。
そのうえで医師が作成した意見書を保険会社へ提出して、治療の継続が必要な旨を主張しましょう。
それでも保険会社側から一方的に治療費の支払いを打ち切られた場合、後から打ち切り後に自己負担で支払った治療費を保険会社に請求する必要があります。
かならず病院などの領収書などを保管しておき、保険会社に治療費を請求する際に提示しましょう。
保険会社から症状固定や治療費の支払い打ち切りをしつこく打診された場合、自分で交渉するのが難しい場合は交通事故の対応を得意とする弁護士に相談することを強くおすすめします。
弁護士は専門知識と交通事故対応の経験をもとに、保険会社との交渉を代行してくれるからです。
交通事故の示談交渉は、事故の加害者・被害者間で直接話し合いをするのではなく、「被害者と”加害者側の保険会社”」もしくは「双方の保険会社同士」でおこなうのが一般的です。
当事者間では冷静な話し合いが難しく、また、過失割合などの法的な争点について具体的な交渉を期待できないからです。
ただし、保険会社は支払う保険金をできるだけおさえようとして、相手方にとって不利な示談条件を提示してくるケースが少なくありません。
相手方の保険会社から提示された示談条件に不満がある場合には、弁護士などの専門家のアドバイスを求めるのがおすすめです。
交通事故の示談交渉は弁護士に依頼することを強くおすすめします。
交通事故の案件を得意とする弁護士に相談することで、以下4点のメリットを得られるからです。
交通事故の賠償額を算定するとき、保険会社は「任意保険基準」を参照するのに対し、弁護士は過去の裁判例などを反映した「弁護士基準」を参照します。
そして、任意保険基準よりも弁護士基準を参照した方が、被害者にとって適切な賠償額が算出されるのが一般的です。
交通事故の被害者になったときには、弁護士に対応を依頼し弁護士基準による賠償額を算出・請求してもらうことをおすすめします。
弁護士へ対応を依頼することで、過失割合の認定を適切におこなうよう交渉してもらうことが可能です。
保険会社は、事故の状況を、あらかじめ用意されたテンプレートに当てはめて過失割合を判定します。
このとき、交通事故の個別事情(視界、天気、速度、同乗者との会話など)が過失割合を考慮する際に見落とされてしまうことがあるのです。
弁護士は依頼を受けた交通事故の個別事情を精緻に分析したうえで、依頼人にとって少しでも有利な過失割合になるよう、相手方と示談交渉を進めてくれるのです。
交通事故を起こすと、保険会社との連絡や書類のやり取りなどに相当手間がかかります。
保険会社から提示された条件に不満があったとしても、自分の希望を主張するのは簡単ではありません。
弁護士に依頼をすれば、保険会社への対応を一任できるので、精神的・肉体的な負担を軽減できるうえに、納得できる示談条件を勝ちとれる可能性もはるかに高くなるのです。
後遺障害認定の対応を任せられるのも、弁護士に依頼するメリットです。
交通事故で負ったけがの症状がいつまでも残る場合には、症状固定のタイミングや後遺障害認定が争点になります。
後遺障害認定とは、交通事故によって残った後遺症が後遺障害にあたるか判定し、14ある等級のいずれかに分類することです。
後遺障害が認められたり、より重い後遺障害の等級に判定されたりすることで、賠償額が各段に高くなる可能性があります。
そのため、示談交渉では後遺障害認定の結果が重要なのです。
交通事故対応を得意とする弁護士であれば、より有利な判定結果を導くために有効な資料や検査、診断書の書き方などを把握しています。
そのため、弁護士に後遺障害認定の対応を依頼することで、依頼人にとって適切な後遺障害等級を獲得しやすくなるわけです。
交通事故に遭った際(を起こした際)は、ほとんどのケースで保険会社と交渉をする必要がありますが、慣れない事故処理でさまざまな不安が生じるのは当然です。
ただし保険会社が主張する賠償の条件や内容が、必ずしも事故の当事者にとって適切とは限りません。
保険会社の提示した賠償の条件や内容をそのまま受け入れると、事故当事者が損をしてしまう可能性もあります。
少しでも有利な条件や、適切な賠償を求めるなら、交通事故の対応を得意とする弁護士へ依頼することを強くおすすめします。
「ベンナビ交通事故」を使えば、希望にあう弁護士を無料相談の可否や地域別などで簡単に検索可能です。
弁護士へ対応を依頼するか検討している場合は、ぜひ活用ください。
参考:交通事故鑑定や事故現場の検証解析調査の依頼手順と注意すべきこと|R&I