損害賠償・慰謝料請求
交通事故の慰謝料は自分で決められない!弁護士に依頼するとどう変わる?
2024.12.02
2023年7月1日から、一定の条件を満たす電動キックボードは、免許なしでも公道で乗れるようになりました。
しかし、電動キックボードの性能や交通ルールを正しく理解できていない人も多く、交通事故が多発しています。
本記事では、電動キックボードの事故が起きやすい原因やよくある事故のパターンなどを紹介します。
電動キックボードの事故に関する損害賠償請求の項目や手続き方法なども解説するので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
はじめに、そもそも電動キックボードとはどういったものなのかを、規格と交通ルールの側面から詳しく解説します。
電動キックボードには、大きく分けて2種類に分類されます。
前提として電動キックボードは、原動機として電動機を用いる車両であるため、定格出力が0.60キロワット以下であっても、道路交通法上は原動機付自転車に該当します。
なお、定格出力が0.60キロワットを超える場合は、その出力に応じて、道路交通法上の普通自動二輪車等に該当します。
そのなかで、2023年7月の法改正により、以下の基準を満たす車両は原則として「特定小型原動機付自転車」、それ以外は「一般原動機付自転車」に分類されるようになりました。
- 車体の大きさは、長さ190センチメートル以下、幅60センチメートル以下であること
- 原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること
- 時速20キロメートルを超える速度を出すことができないこと
- 走行中に最高速度の設定を変更することができないこと
- オートマチック・トランスミッション(AT)機構がとられていること
- 最高速度表示灯が備えられていること など
現在は「特定小型原動機付自転車」の規格を満たす電動キックボードが一般的に利用されているようです。
電動キックボードの交通ルールは、一般原動機付自転車と特定小型原動機付自転車の規格ごとに、以下のように定められています。
一般原動機付自転車 | 特定小型原動機付自転車 | |
免許 | 要 | 不要 |
ヘルメット着用 | 義務 | 努力義務 |
走行場所 | 車道のみ | 車道・普通自転車専用通行帯 |
年齢制限 | 16歳以上 |
そのほか、電動キックボードには、道路標識・信号に従う義務や飲酒運転の禁止など、一般的な車両と同じ交通ルールも適用されます。
とはいえ、特定小型原動機付自転車は車体の大きさや速度などの制限が設けられている分、交通ルールも緩和されており、交通事故の増加につながっていることが問題視されています。
なお、特定小型原動機付自転車のうち、以下の基準を満たしている車両は「特例特定小型原動機付自転車」と呼ばれ、一部の歩道を走行することが認められています。
電動キックボードの交通ルールは複雑な面もあるので、一度警視庁の公式サイトなどで確認しておくとよいでしょう。
【参考元】特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について|警視庁
多くの電動キックボードが該当する「特定小型原動付自転車」の事故件数は、2023年7月~2024年8月までの間に289件起きています。
法改正以前と比較して事故件数は急増しており、死亡事故も起きているなど、事態は深刻です。
なお、都道府県別でみると、半数以上の事故は東京都で発生しています。
次に、電動キックボードの事故が起きやすい原因を詳しく見ていきましょう。
主な原因は以下の4つです。
電動キックボードの事故が起きやすい原因のひとつは、免許がなくても乗れることです。
2023年7月の道路交通法改正により、「特定小型原動付自転車」にあたる電動キックボードは免許不要で運転できるようになりました。
これにより、普段自動車やバイクに乗らない人が交通ルール・マナーを知らないまま電動キックボードを利用するようになり、交通事故につながっているのです。
構造上安定性が低いことも、電動キックボードの事故が起きやすい原因といえるでしょう。
電動キックボードのタイヤは小さくて細いため、路面の影響を受けやすく、わずかな凹凸でも衝撃を感じてハンドルをとられてしまいます。
また、タイヤと地面の接地面積が小さいので、グリップ力にも欠けます。
さらに、立ち姿勢で運転する電動キックボードは重心が高くなり、バランスを崩しやすいことも構造上の問題点といえるでしょう。
利用者が電動キックボードの規格・性能を理解できていないことも、交通事故が増加している要因のひとつです。
電動キックボードの規格・性能は完全に統一されているわけではなく、メーカーごとに違いがあります。
しかし、電動キックボードはそもそも危険な乗りものだという認識がもたれにくいので、速度やブレーキ性能などをしっかりと確認しないまま、軽い気持ちで利用し、事故を起こす人が後を絶ちません。
なかには、「一般原動機付自転車」に該当する電動キックボードを免許なし、ヘルメットなしで利用する人もいるほどです。
電動キックボードは、交通ルール・マナー違反が多い傾向にあります。
実際に通行区分の誤りや信号無視、一時不停止、飲酒運転などで検挙される事例が法改正以降多発しています。
電動キックボードは気軽に乗れるため、交通ルール・マナーに対する意識が低くなり、その結果、事故につながっているものと考えられます。
次に、電動キックボードが関与する交通事故のよくあるパターンを見ていきましょう。
よくあるパターンは以下の3つです。
電動キックボードが関与する交通事故の典型例は、歩行者と衝突する事故です。
たとえば、車道と歩道の区別がない道路では、電動キックボードと歩行者の進路が交錯するケースもよくあります。
自転車事故などと同様に、電動キックボードについても、出会い頭に歩行者と衝突することは十分想定されます。
また、車道と歩道が区別された道路では、一定の条件下で電動キックボードの歩道通行が認められています。
歩道通行時の最高速度は6km/hに抑えられていますが、歩行者と衝突すれば、タイミングなどによっては大けがにつながる可能性も否定できません。
また、電動キックボード側が歩道通行モードに切り替えることなく、違法に歩道を通行するケースも考えられます。
この場合、速度を20km/hまで出せてしまうので、歩行者との衝突事故が発生するリスクは高いといえるでしょう。
電動キックボードは、車道を通行するのが原則です。
そのため、電動キックボードと自動車の衝突事故も想定されます。
電動キックボードは道路の左側端に寄って通行することになっていますが、運転操作のミスや地形へのつまずきなどによって、自動車が通行しているレーンに出てしまうケースも少なくありません。
その際、タイミングが悪ければ、自動車と接触してしまう可能性があります。
また、電動キックボード側が交通ルールを守らず、道路の右側や車道の真ん中を通行している場合にも、自動車との接触事故のリスクはいっそう高まります。
電動キックボードは、単独での自損事故も多発しています。
そもそも電動キックボードを乗りこなすのは簡単ではありません。
路面の状態が悪ければバランスを崩してしまううえ、初心者であれば操作ミスもよくあることです。
その結果、電柱やガードレールにぶつかったり、縁石に乗り上げたりといった事故に発展するケースが頻繁に起こっています。
電動キックボードの事故では、通常の自動車事故のように処理できない点がいくつかあります。
ここでは、電動キックボードの事故でトラブルになりやすいポイントを解説するので参考にしてみてください。
電動キックボードの事故では、保険会社から十分な補償を受けられない可能性があります。
主に2つの理由が挙げられるので、詳しく見ていきましょう。
保険会社から十分な補償を受けられない理由のひとつは、無保険で電動キックボードに乗る人が多いことです。
自動車と同様、電動キックボードも自賠責保険の加入は義務づけられているため、最低限の補償はおこなわれます。
しかし、電動キックボードに乗って事故を起こした加害者が必ずしも任意保険に加入しているわけではありません。
そのため、自賠責保険の補償範囲を超える損害が生じた場合には、加害者が賠償金を支払うことになりますが、経済的に耐えられず、泣き寝入りされてしまう可能性も十分あります。
また、自賠責保険にさえ加入していない利用者も一定数存在するものと考えられます。
レンタルした電動キックボードで事故を起こした場合は、レンタル業者が加入している保険が適用されます。
基本的には、対人対物無制限とされていますが、搭乗者に対する補償は手薄になっていることがあります。
また、車両の修理費が補償対象外とされているケースでは、レンタル品を破損させた場合に自費で修理費を負担しなければなりません。
電動キックボードの事故では、過失割合に関する当事者間の主張が食い違う傾向にあります。
電動キックボードの事故を扱った判例はまだ少なく、過失割合の算定方法が確立されていないためです。
また、交通ルールを知らない人が電動キックボードを運転していた場合には、注意義務違反などが複雑に関係してくるので、適切な過失割合の判断が難しくなります。
過失割合は損害賠償額に直接影響する重要な要素であり、意見が食い違うと示談交渉が難航する可能性が高いといえるでしょう。
歩行中または自動車の運転中、電動キックボードに衝突された場合は、電動キックボードの運転者に対する損害賠償請求を検討しましょう。
電動キックボードの運転者に対して賠償を請求できる主な損害項目は、以下のとおりです。
一つひとつ詳しく解説します。
電動キックボード事故によってけがをした被害者は、加害者に対して、治療にかかった費用全額の賠償を請求できます。
初診料・入院費・通院費・薬剤費など、医療機関や薬局に支払った費用全般が損害賠償の対象となりますので、領収書を保管しておきましょう。
なお、相手が任意保険に加入している場合は、病院に対して治療費を直接支払ってくれるケースが一般的です。
電動キックボード事故によるけがの治療のため、医療機関に通院する際の交通費についても、加害者に対して損害賠償を請求できます。
電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合は、合理的な実費全額が損害賠償の対象です。
自家用車を利用する場合は、走行距離に応じた一定額が損害賠償の対象となります。
タクシー代については、利用の必要性があれば損害賠償が認められることもあります。
電動キックボード事故によるけがの治療やリハビリにつき、装具や器具を購入する必要がある場合は、合理的な実費全額について損害賠償を請求できます。
たとえば、義歯・義手・義足・眼鏡・車いす・コルセット・サポーターなどの購入費用が損害賠償の対象です。
電動キックボード事故によるけがを治療するため、入院または通院が必要となった際、被害者に家族が付き添うケースがあります。
この場合、入院の付き添い1日当たり5,500円から7,000円程度、通院の付き添い1日当たり3,000円〜4,000円を請求できる場合があります。
また、やむを得ず職業付添人に付き添いを依頼した際には、合理的な依頼費用の全額が損害賠償の対象となります。
電動キックボード事故によるけがの治療のため入院した場合、入院中の日用品等の購入に充てた費用を請求できます。
入院雑費は、実際の購入額等にかかわらず、1日当たり1,500円程度が認められるケースが多いです。
電動キックボード事故によるけがの影響で仕事を休んだ場合、収入の減少分を休業損害として請求できます。
仕事を休むために有給休暇を取得した場合も、休業損害の賠償請求が可能です。
休業損害の計算式は下記の通りです。
1日当たりの基礎収入は、原則として以下の金額を用いることになっています。
電動キックボード事故によるけがの治療・リハビリのために入院または通院をした場合、けがに伴う精神的損害について入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの算定基準があり、弁護士基準が最も高額になる傾向があります。
弁護士基準による入通院慰謝料の金額は一般的に、通称「赤い本」と呼ばれる「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」の別表Iまたは別表IIを基準に算定します。
入院・通院の期間やけがの程度によって、入通院慰謝料の金額が変動します。
※なお、この金額は訴訟提起が前提であり、示談交渉段階では1~2割程度譲歩することが多いです。
電動キックボード事故によるけがが完治せずに後遺症が残った場合は、後遺障害等級に応じた慰謝料を請求可能です。
後遺障害慰謝料の算定基準も、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があります。
<弁護士基準による後遺障害慰謝料の目安額>
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級(要介護を含む) | 2,800万円 |
2級(要介護を含む) | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
【参考元】後遺障害等級表|国土交通省
後遺障害等級の認定は、加害者が加入している自賠責保険の保険会社を通じておこないます。
認定される後遺障害等級は、後遺症の部位や程度などによって決まります。
電動キックボード事故によって被害者が死亡した場合は、遺族が加害者に対して死亡慰謝料を請求できます。
死亡慰謝料の金額は、被害者の家庭における立場に応じて異なります。
<死亡慰謝料の目安額>
家庭における被害者の立場 | 死亡慰謝料 |
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親、配偶者 | 2,500万円 |
その他 | 2,000万円~2,500万円 |
電動キックボード事故によって被害者に後遺症が残った場合や被害者が死亡した場合は、将来にわたって失われた収入を逸失利益として請求できます。
<逸失利益の計算式>
1年当たりの基礎収入は、事故前の年収の実額を適用します。
専業主婦・主夫の場合も、賃金センサスに基づく女性労働者の全年齢平均給与額を適用して、逸失利益を算出・請求することが可能です。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 33% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
電動キックボード事故によって被害者が死亡した場合、遺族は葬儀費用の損害賠償を請求できます。
葬儀費用として認められるのは、通夜・祭壇・火葬・墓石などにかかる実費で、原則として150万円程度となることが多いです。
ただし、社会的立場などを考慮して大規模な葬儀が必要な場合は、より高額の葬儀費用が認められることもあり得ます。
自動車の運転中に電動キックボードに衝突され、自動車が破損した場合には、以下の物的損害の賠償を請求できます。
自動車が破損した場合は、修理費用を請求できます。
ただし、修理費が車の市場価格を上回る場合は、市場価格相当額が上限となります。
破損した車の代車を借りるのにかかった費用も、請求することが可能です。
事故車となって中古車市場における評価額が下がった場合、値下がり分の損害賠償を請求できることがあります。
タクシーなどの営業車が稼働できない状態になった場合は、営業上の逸失利益を休車損害として請求できます。
被害車両を稼働できていれば得られたであろう1日あたりの営業利益に、休車した日数を乗じて算出するケースが一般的です。
電動キックボード事故の損害賠償請求は、主に示談交渉または損害賠償請求訴訟を通じておこないます。
まずは加害者と直接、損害賠償についての交渉をおこないます。
加害者が任意保険に加入している場合は、保険会社が示談交渉の相手方となります。
なお、示談交渉を始めるのは、損害が確定し、示談金を正確に算出できるようになってからです。
具体的には、けがが完治したタイミング、または、後遺障害等級認定の結果が出たタイミングで示談交渉を始めます。
交渉で意見がまとまらない場合は、裁判所に対して訴訟を提起し、損害賠償を命ずる判決を求めます。
被害者は、加害者側の過失・損害・事故と損害の因果関係などを立証しなければなりません。
損害賠償請求の示談交渉や訴訟の対応は、弁護士に依頼すれば一任可能です。
電動キックボード事故について、適正額の損害賠償を請求したい方は、まず弁護士に相談しましょう。
電動キックボードが関わる交通事故を起こしたときは、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
経験豊富な弁護士に依頼すれば、示談交渉や訴訟などの手続きを適切に進めてもらえますし、法的な観点から適正額の損害賠償を請求できます。
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