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自賠責保険の上限額は120万?費用の内訳と金額に納得いかない場合の対処法を解説
2024.10.16
自分の車をぶつけられた、反対に他者の車にぶつけてしまったなど、物損事故が発生してしまったとき、どのように対処するべきか正しく認識できていますか?
本記事では、万が一物損事故が起きてしまった場合の手続きの流れや注意点について解説します。
物損事故とは、死傷者がゼロで物の損害だけが発生した事故のことを指します。
一方で、事故の中でひとりでも人がけがを負ったり、亡くなってしまったりすると、人身事故として扱われるようになります。
以下では、物損事故と人身事故にどのような違いがあるのか解説します。
物損事故と人身事故では、主に刑事責任(懲役や罰金)の重さと行政責任(免許停止や取り消し)の重さに差があります。
物損事故の場合、加害者の過失割合が10割となることは珍しいため、刑事責任や行政責任を問われることは基本的にありません。
ただし、無免許運転や飲酒運転など、その他の交通違反とあわせて責任を問われることはあります。
一方、人身事故の場合は加害者の過失割合が高くなることがほとんどです。
そのため、刑事責任や行政責任を問われることが多くなります。
たとえば、人身事故によって死亡者が出てしまった場合、過失運転致死罪に問われ、7年以下の懲役または100万円以下の罰金となる可能性があります。
そのほかの違いとして、物損事故の場合は自賠責保険が適用されないという点が挙げられます。
軽微なけがをして治療費が発生した場合には、なるべく人身事故に切り替えて、自賠責保険が適応されるようにしたほうがよいでしょう。
また、警察が作成する書類にも差が出ます。
人身事故の場合、実況見分調書という詳細な資料が作られますが、物損事故の場合、物件事故報告書と呼ばれる簡易的な書類の作成に留まります。
物損事故 | 人身事故 | |
刑事責任 | なし | あり |
行政責任 | なし | あり |
民事責任 | あり | あり |
自賠責保険の適用 | されない | される |
警察の作成書類 | 物件事故報告書 | 実況見分調書 |
物損事故が発生したときは、以下の手順に沿って対処してください。
事故が発生した際にはまず、けが人がいるかどうかを確認します。
万が一けが人がいた場合は、救護活動を最優先におこないます。
速やかに救急車を呼び、意識の確認や止血の実施などできる範囲の応急処置をおこなってください。
事故の現場で注意すべきは二次被害の発生です。
車が動くようであれば、交通の妨げにならない場所まで車を移動します。
もし動かすことが難しい場合は、停車していることが遠くからでもわかるよう、ハザードランプや発煙筒を使いましょう。
負傷者の救護や二次被害の防止が済んだら、事故の発生を警察に報告します。
なお、警察への報告は、物損事故・人身事故にかかわらず、必ずおこなう必要があることを覚えておきましょう。
警察に届け出をおこなうと、交通事故証明書が発行されます。
この証明書はのちに保険会社に提出をおこなう必要があるため、必ず確認しておきましょう。
続いて、事故現場の状況の記録と、事故相手との連絡先交換をおこないます。
このステップはのちにおこなう示談交渉に活かされるため非常に重要です。
事故現場の状況を記録する際には、状況をわかりやすくまとめておくのに加えて、スマートフォンで写真や動画を撮影しておくのもよいでしょう。
また、相手と連絡先を交換する際にはただ口頭で情報を出してもらうのではなく、免許証や車検証を提示してもらい確認するようにしてください。
のちに確認しやすいよう写真を撮ったり、会話を録音したりしておくことをおすすめします。
状況の確認が終わったら、事故の発生を保険会社に連絡します。
事故相手が任意保険に加入しているかどうかで、この先の対応に影響がありますが、まずは保険会社の指示を仰ぎましょう。
保険会社に連絡しただけで保険の等級は下がることはなく、保険を使うと判断したタイミングで初めて等級に影響があります。
なお、ご自身が保険に未加入の場合は連絡する必要はないものの、治療費などが発生しても自分で支払う必要があります。
事故発生後は車両の修理をおこなう必要があります。
車が走行不可で動かせない場合は、レッカー移動を手配する必要もあります。
レッカー移動は保険会社の特約によって、費用を負担してもらえることもあるので確認しておきましょう。
また、事故によってどれくらいの損害があったかわかるよう資料をまとめます。
車であれば車両の修理費用や代車費用などが該当します。
また、車以外の損害があれば内容を写真と共にまとめておきましょう。
損害に関する資料がまとまったら、示談交渉をおこないます。
物損事故の場合、車両の時価額や評価額、過失の割合についてが争点となります。
示談内容がまとまったら、書面で合意内容をまとめ、交渉は終了となります。
物損事故が発生した場合、以下の項目で賠償金を請求することが可能です。
事故により破損した車両の修理費用を請求できます。
請求する際には、まず相手の保険の担当者と交通事故による破損の範囲をすり合わせます。
すり合わせた内容に基づき、修理会社に見積もりを依頼し、修理金額が確定することになります。
ただし、修理金額が車の時価総額を上回る場合は、時価総額が請求の上限となります。
壊れた車を修理したことにより、車の評価額が下がることがあります。
これを評価損といい、損害賠償の請求項目になることがあります。
評価損が認められるかは、以下の要素に影響されます。
また、車のフレームなど、修理に即して中古販売時に表示義務が生じるパーツを直した際は、評価損が認められる可能性が高くなります。
車を修理している間や、買い替えに至るまでの期間は代車が必要となります。
その場合の代車使用料も賠償請求が可能です。
期間は修理や買い替えに要する標準的な期間まで認められ、2〜3週間程度になることが多いでしょう。
また、代車の車種は、元の車に準じたものを選んだ際の金額まで請求できます。
もし車が全損となっていた場合は、車の買換費用も請求することが可能です。
ただし、金額の上限はもとの車の時価総額に基づきます。
また、買い替えに関する諸費用も請求することができます。
買い替えに関する諸費用には、購入に関する手数料やもとの車の廃車費用などが該当します。
タクシーやバスなど営業車両が事故に遭い、修理をおこなった際には、車両が営業できなかった期間が生じます。
その期間の利益は、休車損害として請求することが可能です。
休車損害は、得られたはずの平均利益からガソリン代などの諸経費を差し引いて、営業できなかった日数を掛け合わせることによって計算されます。
ただし、余剰車両があり、営業できる車両数に影響がなかった場合は、休車損害は発生しません。
積荷損は、トラックなどが事故に遭い、運んでいた積荷に破損があった場合に請求できるものです。
精密機器や家電など衝撃に弱いものを乗せていた場合、請求される可能性があります。
しかし、積荷によっては非常に高額になるため、トラブルになるケースや裁判に発展するケースも珍しくありません。
タイヤのパンクや、破損の影響によって自走できなくなった場合には、レッカーを呼ぶことになります。
この場合、レッカー代を請求することができます。
また、全損となった場合には廃車の手続きにかかる費用等も請求することが可能です。
物損事故の場合、原則として慰謝料は請求できません。
破損したものの補填によって賄うことが基本となるため、修理費用や買替費用の請求が中心となります。
ただし例外として、連れていたペットが負傷した場合、慰謝料の請求が認められた判例があります。
ペットは法律上、物として扱われますが、精神的な苦痛を加味された結果となります。
人身事故の場合は慰謝料を請求できることもあるため、軽度でもけがをしていた場合は、人身事故に切り替えられないか確認してみましょう。
物損事故は、人身事故として扱われた場合に比べて、賠償金の面で不利になることがあります。
そのため、どれだけ軽微だとしても、けがが見つかったら人身事故へ切り替えることが大切です。
物損事故から人身事故に切り替えない場合、請求できる賠償金が少なくなります。
理由は、物損事故の場合請求できるのは、破損した物の補填のみとなるため、慰謝料が請求できない点にあります。
あとからでもけがに気づいたら、人身事故に切り替えて治療費を支払ってもらうのがおすすめです。
人身事故では治療費以外にも、以下の項目で賠償金を請求できる可能性があります。
物損事故から人身事故に切り替えないデメリットとして、過失割合の立証に有効な資料が作成されないことが挙げられます。
人身事故の場合、過失割合で争いが生じた際には、警察が作成する実況見分調書をもとに主張を展開します。
しかし、物損事故の場合は実況見分調書は作成されず、より簡易な報告にとどまる物件事故報告書までしか作成されません。
その結果、過失割合の争いで不利になることが考えられます。
物損事故から人身事故に切り替えたい場合は、以下の手順を参考に手続きをおこなってください。
物損事故から人身事故に切り替える際には、人身事故である証明をおこなう必要があります。
証明となる資料としては、病院で作成してもらえる診断書が有効です。
注意点として、事故から通院までに時間が空いてしまうと、事故と負傷の因果関係が証明しづらくなります。
その結果、診断書を作成してもらっても、警察に切り替えを拒否されることも考えられます。
そのため、遅くとも事故発生から1週間以内には通院するようにしましょう。
診断書を作成してもらったら、警察署へ診断書を提出し、人身事故への切り替えを申請します。
必要となる書類は事故の内容や警察署によって異なる可能性があるため、担当の警察官の指示に従ってください。
警察署に診断書を提出したら、手続きは完了となります。
人身事故への切り替えが認められた場合は捜査が開始されますが、書類の作成が遅れたり、事故と負傷の因果関係が認められなかったりした場合は、切り替えが認められないこともあります。
人身事故への切り替えが認められた場合、警察による捜査が開始されます。
捜査の一環として実況見分がおこなわれます。
当事者への取り調べがおこなわれることもあるので、求められたら協力しましょう。
また、おこなわれた実況見分をもとに調書が作成されます。
この実況見分調書は、示談交渉や賠償金請求において大きな影響力をもちます。
物損事故では以下のようなトラブルに遭う可能性があります。
それぞれについて解決策を紹介します。
物損事故では、過失割合や損害額について話し合いがまとまらず、示談交渉に時間がかかることがあります。
交渉を保険の担当者に依頼している場合や自分でおこなっている場合は、弁護士に交渉を依頼してみるのもひとつの手段です。
なお、弁護士に依頼する場合は保険会社の弁護士費用特約が利用できないか確認しておきましょう。
利用できれば実質的に弁護士費用が無料となるので、使わない手はありません。
当て逃げをされ、加害者が見つからない場合は、損害賠償を請求する先がなく、自身で修理費を負担しなくてはいけません。
場合によっては車両保険の保険金がおりることもありますが、翌年以降の保険料が上がる可能性があるため、慎重な判断が必要といえます。
最後に物損事故について、よくある質問とその回答を紹介します。
一般的に物損のみの事故であれば、違反点数が付与されたり、ゴールド免許が取り消されたりということはありません。
行政処分上は無事故扱いであり、罰金や反則金もありませんが、損害に対する弁済はおこなう必要があります。
ただし、無免許運転や飲酒運転など、重大な交通違反を含む場合は上記の限りではありません。
物損事故を起こして保険を利用すると、ノンフリート等級は下がってしまいます。
ノンフリート等級とは、保険料を定めるための区分のことで、事故が起きて保険を使うと変動し、翌年以降の保険料が割増されることになります。
保険を利用しなければ等級の低下は発生しないため、軽微な事故であれば、保険を利用しないのも有効です。
事故発生後に動揺してしまい相手の連絡先を聞き忘れてしまった場合は、まずは警察に連絡を取りましょう。
警察に届け出がされていれば、警察が作成する交通事故証明証によって相手の連絡先を確認することができます。
ただし、当て逃げの被害者となってしまった場合は、相手の連絡先がわからないこともあります。
その場合は、自分で修理をおこなうか、政府の補償事業を利用するのも検討してください。
もらい事故の場合、被害者の過失割合がゼロとなるため、経済的な利益のない保険会社は示談交渉を担当してくれません。
そのため、一般的には示談交渉を自らおこなう必要があります。
しかし、交通事故の知識がない一般人が、相手の保険会社の担当者と示談交渉をおこなうのは難しいものです。
その際に選択肢にあがるのは、弁護士に示談交渉を依頼することです。
加入している保険に弁護士費用特約が含まれていれば、費用をかけずに弁護士を利用できることもあるので確認してみましょう。
物損事故では、破損した車の修理費用を中心に、損害賠償を請求できます。
ただし、人身事故と比べると慰謝料の請求ができなかったり、過失割合で揉める可能性があったりするなど、交渉で苦労する場面も見られます。
物損事故の示談交渉で悩んでいる場合は、弁護士に相談するのもひとつの手段といえます。
弁護士費用特約の利用で、実質負担なく依頼できることもあるので検討してみることをおすすめします。