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自賠責保険の上限額は120万?費用の内訳と金額に納得いかない場合の対処法を解説
2024.10.16
轢き逃げされた場合、被害者側でも泣き寝入りする必要はありません。
轢き逃げは検挙率の高い事件です。
事故後の対応をしっかりしておくことで、加害者は見つかりやすくなるでしょう。
また、加害者が万が一見つからなかった場合にも、国の制度を使って最低限の保障は受けられます。
この記事では、轢き逃げされた被害者の方に向けて、以下の内容を中心に詳しく解説します。
また、加害者が判明した場合のベストな対応についてもお伝えしますので、参考にしてみてください。
轢き逃げされたら、けがの治療がまずは第一です。
しかし比較的軽傷であれば、自分で対応できることもあります。
捜査はあくまでも警察の仕事ですが、情報は多いほど逮捕に繋がります。
被害者として、事故に遭った際には以下のことを知っておきましょう。
まずは加害者車両の特徴をできるだけ記憶しておきましょう。
できれば車両のナンバーや車種などがわかればベストです。
轢き逃げが一瞬で、車両ナンバーなどの確認する間もなく逃げてしまった場合でも、色や特徴だけでも覚えておくと、その後の警察の捜査に役立ちます。
また、スマートフォンで写真を撮ったり、音声メモ機能を使ってナンバーを口頭でメモしたりすることも有効です。
もちろん、轢き逃げされた直後でそんな余裕がないことがほとんどでしょう。
その場合でも事故の目撃者がナンバーや車の特徴を覚えていることもあります。
諦めずに周囲に記憶している方がいないか確認してみましょう。
轢き逃げされた場合には、どれほど小さな被害でも、必ず警察を呼んで交通事故証明をとっておきましょう。
事故証明をとっておかないと、轢き逃げされたことを証明できなくなってしまいます。
交通事故証明は、警察の捜査のためにも絶対に必要です。
また、後ほど説明する「政府保障事業」に損害賠償を請求する際にも提出しなければなりません。
ただし、警察に連絡する際は、二次被害を避けるためにも歩道などに移動するなどして安全を確保しましょう。
轢き逃げされたら、自覚症状がなくても念のためすぐに病院を受診しましょう。
交通事故から時間が経ってから受診すると、後に保険会社から、交通事故とけがとの因果関係を疑われてしまう可能性もあります。
また、轢き逃げされたときには興奮して痛みを感じなくても、後からむち打ちなどの症状が出るかもしれません。
けががひどい場合は、現場からすぐに救急車を呼びましょう。
自分で呼ぶことが難しいなら、通行人に頼んで呼んでもらうのもいいでしょう。
交通事故では、本来加害者の保険会社が治療費を負担すべきですが、轢き逃げの場合は健康保険を使って治療することも可能です。
けがの状態が落ち着いたら、加害者の情報を集めましょう。
自分が事故状況をあまり覚えていなかったとしても、現場の近くに防犯カメラがあれば、事故を記録している可能性が高いでしょう。
今はコンビニエンスストアや駐車場など、いたるところに防犯カメラ・監視カメラが設置されています。
カメラの管理者に事情を説明すれば、映像を貸し出してくれる可能性もあるでしょう。
自分で交渉するのが難しければ、警察にカメラの存在を伝え、映像を取得して捜査してもらうこともできます。
また、目撃者も重要な証拠です。
もし事故現場を見ていた人がいた場合、その場で連絡先を教えてもらって、捜査に協力してもらいましょう。
事故を見た人に連絡を促す内容の貼り紙などを、現場近くに貼っておくのも効果的です。
交通事故で人にけがを負わせてしまった場合、車の運転者には救護義務があります。
しかし、たとえ義務がなかったとしても、まず被害者にけががないか確認をするのが通常でしょう。
では、なぜ轢き逃げは発生するのでしょうか。
最も多いと考えられるのは、怖くなってとっさに逃げてしまう、ということでしょう。
車で人をはねることなど、ほとんどの方にとって初めての経験です。
どうしたらいいかわからなくて思わず逃げてしまうことも十分に考えられます。
そういう方は、しばらくして、冷静になってから現場に戻ってきたり、警察に自首したりする可能性もあります。
ただし、交通事故責任を問われることを避けるために、逃げていることも考えられるでしょう。
あってはならないことですが、飲酒運転で判断力が鈍ったために交通事故を起こしてしまうことも考えられます。
呼気や態度などから飲酒運転が発覚することを恐れ、酒気が冷めるまで逃亡している可能性もあります。
飲酒運転に厳罰が適用されることは、今や車を運転する誰もが認識しているでしょう。
刑罰だけでなく、飲酒運転によって解雇されることや、社会的な制裁を受けることもあります。
時間が経ってから自首すれば飲酒運転が発覚しないと考え、一旦逃亡しているのかもしれません。
事故が軽い接触程度だった場合や、夜間で見通しが悪い道路だった場合など、轢き逃げしたことに気づかずに走り去ったとも考えられます。
泥酔して路上に寝ている人を踏みつけてしまって、気づかないまま運転を続けてしまう可能性もゼロではありません。
ただし、多くの場合「気づかなかった」は通用しません。
ほとんどのケースでは、運転手側が注意していれば気づくはずだったと認定され、轢き逃げによる罪が適用されます。
このように、轢き逃げの加害者側には様々な理由があります。
しかし、轢き逃げは捕まる可能性の高い犯罪です。
ほとんどの場合は、加害者は罪を償うことになるでしょう。
以下で、轢き逃げの検挙率と、逮捕された後に適用される罰則について解説します。
轢き逃げは他の犯罪に比べ、検挙率が高い犯罪だといえます。
「令和4年版犯罪白書」によると、軽傷から死亡事故まで全ての轢き逃げ事件検挙率は、2021年の時点で71.7%でした。
死亡事故のみに絞れば98.9%と、ほぼ100%に近い割合で加害者は検挙されています。
また、同じ資料のグラフによると、2002年から2021年まで、検挙率は右肩上がりに伸びています。
ドライブレコーダーや防犯カメラの普及によって証拠が集めやすくなったことも影響し、轢き逃げは「逃げ得」が許されない犯罪となりつつあるのです。
参考:令和4年版 犯罪白書
轢き逃げに適用される罰則は、その悪質さや結果の大きさによっても違います。
加害者には以下のような罰則が適用されます。
場合によっては複数適用されることもあるでしょう。
まずは、交通事故を起こしたにも関わらず、被害者を救助せずに逃亡してしまったことにより、道路交通法の以下の項目が適用されます。
道路交通法72条には、以下のように規定されています。
(交通事故の場合の措置)第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
つまり、交通事故により人にけがを負わせた運転者は、①運転を中止し、②被害者の救助を最優先して③二次被害を防ぐための配慮をしたうえで、④警察に事故の報告をする義務を負います。
これらの義務に違反した場合、運転者は10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(道路交通法第117条2項)。
さらに、事故報告義務違反により3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金刑が科されることもあります。
2014年、交通事故犯の厳罰化の要請により、刑法から交通犯罪を独立させる形で「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」、通称「自動車運転処罰法」が施行されました。
悪質な轢き逃げには、この自動車運転処罰法違反も適用されます。
さらに、飲酒運転で死亡事故を起こした場合には、危険運転致死傷罪と道路交通法違反の両方が適用され、初犯でも実刑が適用される可能性が高くなります。
轢き逃げすると、運転免許の点数にも大きく影響します。
以下は、轢き逃げをした際の違反点数と欠格期間です。
交通事故・違反行為 | 点数 | 欠格期間 |
轢き逃げ事故(全治15日未満の負傷) | 35点 | 3年 |
轢き逃げ死亡事故(専らの不注意/それ以外) | 55点/48点 | 7年/5年 |
轢き逃げ傷害事故(全治30日以上の重症) | 41点~48点 | 5年 |
酒酔い轢き逃げ運転死亡事故 | 90点 | 10年 |
酒気帯び轢き逃げ死亡事故 (0.25mg以上) | 80点 | 10年 |
酒気帯び轢き逃げ死亡事故 (0.25mg未満) | 68点 | 9年 |
酒酔い轢き逃げ傷害事故 | 83点 | 10年 |
酒気帯び轢き逃げ傷害事故 (0.25mg以上) | 73点 | 10年 |
酒気帯び轢き逃げ傷害事故 (0.25mg未満) | 61点 | 8年 |
【参考記事】
轢き逃げをすると、被害者が軽いかすり傷程度の負傷だったとしても、少なくとも3年間は運転免許を取得することができなくなります。
轢き逃げは検挙率の高い犯罪ですが、目撃者がいない、防犯カメラが設置されていないなどの不運が重なり、犯人がわからないこともあり得ます。
その場合でも、自賠責法72条の自動車損害賠償保障事業が適用され、国から被害の保障を受けられます。
政府保障事業とは、国土交通省が実施する、轢き逃げや無保険事故の被害者救済のために損害の填補をおこなう制度です(自賠責法72条)。
保障の範囲は自賠責保険と同じです。
傷害事故で後遺障害が残らなかった場合には、120万円を限度として保障が受けられます。
対象となるのは治療費や休業損害、または慰謝料です。
後遺障害が残った場合には、後遺障害認定等級によりますが、75万円から4,000万円までが限度額です。
後遺障害の場合は、逸失利益や慰謝料も保障の対象となります。
被害者が死亡した場合、支払限度額は3,000万円までで、逸失利益や被害者本人および遺族への慰謝料、葬儀費用が対象です。
【参考記事】自賠責保険(共済)の限度額と保障内容|国土交通省
2020年4月1日現在、以下の窓口から請求できます。
【参考記事】損害賠償を受けるときは?|国土交通省
政府保障事業には時効があり、期限内に請求をしなければ保障を受けられなくなってしまいます。
請求は被害者の被害状況により、傷害、後遺障害、死亡に区分され、それぞれ時効が進む起算日が以下のように異なります(自動車損害賠償保障法第 19 条)。
政府保障事業を請求できる期間(時効)
請求区分 | いつから | 時効 |
傷害 | 治療を終えた日 | 3年 |
後遺障害 | 症状固定日 | 3年 |
死亡 | 死亡日 | 3年 |
【参考記事】自動車総合安全情報
ただし、加害者に対して賠償金を請求できる期限は、2020年の民法改正によって以下のように変更されています(改正民法724条1項及び同724条の2)。
轢き逃げをした相手が発覚する前でも、また加害者が判明した後でも、弁護士に相談・依頼しておくことは有効です。
弁護士に相談することで、轢き逃げ犯の刑事告訴を任せられます。たとえ相手がわからないままでも、被疑者不詳として刑事告訴は可能です。
弁護士に依頼すれば、手続きを全て任せてゆっくり治療に専念できるでしょう。
犯人がわからないのに刑事告訴をしても意味がないと思うかもしれません。
しかし、刑事告訴には、被害者の強い処罰感情を示し、警察の捜査を促す効果があります。
轢き逃げは検挙率の高い犯罪なので、犯人が捕まる可能性は高いでしょう。
被疑者不詳で刑事告訴をしておけば、犯人が捕まった際により厳しい刑罰に処せられるかもしれません。
轢き逃げの加害者が明らかになったときには、弁護士に相手の保険会社との示談交渉を任せられます。
弁護士が介入することで、自力で交渉した場合より、示談金が増額される可能性が高くなるでしょう。
交通事故の慰謝料部分の支払い基準には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあります。
自賠責保険基準が最も低い基準によって慰謝料が算定され、続いて任意保険基準、そして弁護士基準が最も高い基準で算定されます。
つまり、弁護士基準による算定が、被害者に最も有利な金額です。
しかし、自分で交渉すると、任意保険基準が適用されてしまいます。
弁護士基準は任意保険基準よりも2倍から3倍高いともいわれているため、十分な補償を得たいと考えるなら、弁護士に交渉を依頼しましょう。
保険会社の支払金額に納得できない場合には、訴訟提起することも選択肢の一つです。
弁護士に依頼することで、訴訟対応まで全て任せられます。
低い賠償額で泣き寝入りをする必要もないでしょう。
轢き逃げされたら、まずは相手の車の特徴を覚え、警察に通報しましょう。
目撃者がいなくても、今は防犯カメラがいろんな場所に設置されていますので、諦める必要はありません。
また、加害者がなかなか見つからなくても、政府保障事業から最低限の保障を受けることもできます。
轢き逃げにあった際は動揺してしまい、一人で事故対応をするのが心もとないこともあるでしょう。
弁護士に依頼することで、轢き逃げの対応を全て任せ、治療に専念できます。
一人で悩まず、まずは相談してみることをおすすめします。