Instagram(以下、インスタ)の利用者の中には、他人が投稿した内容によって自分の名誉が傷つけられ、困っている方もいるのではないでしょうか。
インスタの投稿で他人の名誉を傷つけた結果、名誉毀損罪で刑事罰が課される可能性があります。
本記事ではインスタの投稿で名誉毀損になるケースや、名誉毀損をされた場合の適切な対処法を詳しく解説します。
写真を投稿するインスタでは、思わぬケースで民事・刑事の責任が問われる可能性があるため、名誉毀損に該当するのはどのようなケースなのか明確に把握しておきましょう。
インスタの投稿で名誉毀損罪が成立する3つの要件
インスタで名誉毀損が成立する要件を確認しておきましょう。
名誉毀損罪について、刑法では以下のように明記されています。
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法|e-GOV法令検索
条文を要約すると、名誉毀損が成立するためには以下の3つの条件が必要になるということがわかります。
- 公然とおこなうこと
- 事実を示すこと
- 相手の社会的評価を低下させる内容を投稿すること
ここからは、インスタの投稿で名誉毀損罪が成立する3つの条件を具体的に解説します。
1.「公然と」とは | 不特定あるいは多数が参照できる状態
「公然と」とは、不特定又は多数が投稿を見られる状態のことです。
インスタの投稿は基本的には誰でも見られるため、原則として「公然と」という要件は成立するものと考えられます。
ただ、インスタにはフォロワーだけに投稿を公開したり、投稿を非公開にしたりすることも可能です。
たとえば、フォロワーが数人しかいない人がフォロワーのみの公開と設定していた場合には、「公然と」の要件に該当しないのでしょうか?
最高裁判例では、事実摘示の直接の相手方が特定少数人であっても、その者らを通じて不特定多数人へと伝播する場合には、なお「公然」といいうると解されています。
このため、フォロワーが数人しかいない人がフォロワーのみの公開と設定していた場合であっても、フォロワーを通じて不特定多数人へと伝わるといえるケースでは、「公然と」の要件に該当するといえます。
裁判例(東京高判昭和58年4月27日)を参照すると、フォロワーを通じて不特定多数人へと伝わるといえるケースかどうかは、投稿内容、フォロワーの立場等を総合考慮して判断されると考えられます。
これを前提とすると、投稿内容とフォロワーの属性から、投稿内容がフォロワーの関心を引くような内容で、フォロワーと同じ属性のユーザーが多数想定できるような場合は、フォロワーを通じて不特定多数人へと伝わるといえるケースにあたり、「公然と」の要件に該当する可能性が高いといえるでしょう。
このため、フォロワーが数人しかいない人がフォロワーのみの公開と設定していた場合であっても、「公然と」の要件を満たす可能性があることに留意しましょう。
2.「事実を摘示して」とは |具体的事実を示すこと
「事実を摘示」とは、具体的事実を示すことです。
摘示とは「あばく」などの意味合いがあります。
つまり、名誉毀損罪が成立するには、具体的な事実内容を投稿することが必要となるのです。
「具体的」かどうかは、真実であることの証明の対象となりうる程度かどうかで判断されると解されています(東京高判昭和33年7月15日参照)。
たとえば「Aさんは過去に性犯罪で逮捕されている」と投稿することは、逮捕の事実の有無は証拠で証明することが可能な具体的な事実であり、「事実を摘示する」行為に該当するといえるでしょう。
他方で、「Aさんは過去に悪いことをした」とのみ投稿することは、基本的には、「悪いこと」が何を指すか不明であり、証拠で証明することが困難なため、具体性を欠き、「事実を摘示する」行為に該当しないと判断される可能性が高いと考えられます。
なお、「事実を摘示」していない場合には、名誉毀損ではなく侮辱罪が成立し得ます。
事実を示していない場合は「侮辱罪」が成立する可能性がある
具体的な事実内容を示さずに相手の社会的地位を貶めるような投稿をした場合は、侮辱罪が成立することがあります。
侮辱罪について刑法では以下のように明記しています。
(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
引用元:刑法 | e-Gov法令検索
たとえば、先ほど挙げた「Aさんは気持ち悪い」「Aさんは頭が悪そう」などの投稿は、具体的な事実内容ではなく、単に投稿者の主観で誹謗中傷しているだけですので、事実を摘示したとはいえず、名誉棄損罪は成立しないと考えられます。
しかし、このような投稿をすることは、Aさんの社会的評価を低下させるような内容により「公然と人を侮辱した」として、侮辱罪が成立すると判断される可能性があります。
【関連記事】侮辱罪で訴えるには?成立要件や証拠の集め方、慰謝料相場などを解説
3.「人の名誉を毀損する」とは | 相手の社会的な評価を低下させる内容を投稿すること
「人の名誉を毀損する」とは、摘示された事実を閲覧した人からの評価が下がる内容であることです。
つまり、摘示された「事実」が、人の社会的評価を低下させるような事実である必要があります。
たとえば「Aさんは過去に性犯罪で逮捕されている」という投稿を見た人は、通常Aさんに対してマイナスの評価をすると考えられます。
このため、このような投稿をすることは、Aさんの社会的評価を低下させるような事実を摘示したとして、「人の名誉を毀損する」に該当すると判断される可能性が高いでしょう。
また、インスタを含むインターネット上の投稿では、同定可能性が問題となることが多いです。
同定可能性とは、投稿の対象となっている個人を特定できることです。
閲覧者が投稿の対象となっている個人が特定できるからこそ、その個人の社会的評価の低下が認められるわけですので、同定可能性は、名誉毀損罪が成立する前提といえるでしょう。
個人名が特定できるように投稿することはもちろん、「田中○郎」のように伏字を使用していても、文脈等から一般の閲覧者が個人を特定できるのであれば、同定可能性が認められる可能性が高いでしょう。
インスタの場合には、氏名の記載がなくても、本人の写真とともに、事実の摘示がおこなわれることもありますが、閲覧者が本人とわかる写真であれば、同定可能性が認められる可能性が高いといえます。
「違法性阻却事由」があれば、例外的に名誉毀損で処罰されない
名誉毀損は「違法性阻却事由」がある場合は、「罰しない」とされています。
「違法性阻却事由」とは通常は違法とされる行為であっても、その違法性を否定する事由のことです。
具体的には以下の事由がいずれもある場合、名誉毀損罪で「罰しない」とされています(刑法第230条の2)。
- 公共の利害に関する事実に係るものであること
- その目的が専ら公益を図ることにあったと認められること
- 真実であることの証明があったこと
たとえば、政治家や芸能人などの不倫報道などは「公共の利益の関する事実」で「公益を図る目的」であると判断される可能性が高いです。
そのため、このような報道は、真実であることの証明がされれば、名誉毀損罪が成立しないケースがほとんどです。
一方、一般個人の場合には、通常、不倫事実の公共性は乏しいと考えられるため、たとえ真実であることの証明が可能であったとしても、違法性が阻却されない可能性があります。
このように、インスタにおける真実の投稿であっても、公共性が認められず、名誉毀損罪が成立する場合があります。
民法上の「名誉毀損」は成立条件が異なるので注意が必要
刑法上の名誉毀損には「事実の摘示」が必要です。
しかし、民法上の名誉毀損は「事実の摘示」が成立要件ではありません。
民法上の名誉毀損は次の要件が揃えば成立します。
- 故意または過失による事実の摘示または意見論評の表明
- これら被害者の社会的評価を低下させるものであること
民法上の名誉毀損は「事実を摘示」しなくても、意見や論評の表明だけで成立し得ます。
たとえば、「AさんはB社を私物化している」などと投稿しても、意見論評の表明によってAさんの社会的評価を低下させるため名誉毀損が成立すると判断される可能性があります。
違法性阻却事由については、基本的に刑事で同様です。
以下の事由がいずれもある場合は、違法性が阻却され、損害賠償義務を負わないこととなります。
- 公共の利害に関する事実に係るものであること
- その目的が専ら公益を図ることにあったと認められること
- 重要部分が真実であること
- (意見論評の場合)意見ないし論評としての域を逸脱したものでないこと
なお、インスタなどのネット上で名誉毀損された場合、民事裁判で認められる賠償額は、おおむね10万円から100万円に収まることが多いです(投稿内容など、個別の事情により左右されます)。
名誉毀損は刑事と民事、それぞれで責任を追及することができ、それぞれで成立要件が異なる点を覚えておきましょう。
インスタ上の名誉毀損では刑事・民事両方の責任を問える可能性がある
インスタ上の名誉毀損行為は、刑事・民事の両方で投稿者に責任を追求できる可能性があります。
民事・刑事それぞれの罰則や責任の問い方を詳しく解説します。
刑事上の責任 | 懲役・禁錮・罰金
刑事責任とは、罪を犯したとことに対して刑罰を受ける加害者側の責任です。
刑事責任には、主に、懲役、禁錮、罰金という3つの罪があります。
- 懲役:罪人を刑務所内に拘置し、労役に服させること
- 禁錮:罪人を刑務所内に拘置すること
- 罰金:犯罪の処罰として科せられる金銭
禁錮には労役はありませんが、懲役には労役があります。
名誉毀損罪では「3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰金」が課されます。
なお、刑事責任は加害者に対して罰を与えるもので、被害者側への補償の問題ではないと理解しておきましょう。
※令和7年6月1日に施行される改正刑法では、懲役刑と禁錮刑が、拘禁刑に一本化されます。
民事上の責任 | 損害賠償や名誉回復、差止請求など
被害者側の損害を補償するのが、民事上の責任です。
民事責任として問えるものには損害賠償、名誉回復、差止請求などがあります。
- 損害賠償:債務不履行や不法行為によって、他人に損害を与えた人が、被害者に対してその損害を賠償すること
- 名誉回復:一度失った名誉を回復すること
- 差止請求:投稿などを削除すること
ネット上での名誉毀損の損害賠償額は 10万円〜100万円 に収まることが多いです。
名誉毀損が認められれば、この程度の賠償額が認められることとなります。
また、民法では名誉回復について以下のように明記しています。
(名誉毀損における原状回復)
第七百二十三条 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
引用元:民法|e-GOV法令検索
事案によっては、裁判所は、名誉毀損をした人に対して、インスタに謝罪文を載せるなどの命令をすることができます。
名誉毀損をされたら、民事的に損害賠償や、名誉を回復するのに適当な処分を請求することが可能です。
インスタで名誉毀損が成立する可能性があるケース
インスタで名誉毀損が成立する可能性があるのは、行為は主に以下の3つです。
- ストーリーなどの投稿
- 投稿に対するコメント
- DM
これら3つを用いて、相手の社会的地位を貶める投稿を事実に基づいておこなった場合には、名誉毀損罪が成立する可能性があります。
それぞれ、どのような内容が名誉毀損に該当するのか具体的に解説します。
コメントで悪口を書く
よくあるケースが著名人のインスタの投稿に対するコメントです。
コメントで誹謗中傷をおこなうと、名誉毀損罪が成立する可能性があります。
たとえば、以下のような内容は公然と事実を摘示して相手の社会的評価を下げるものといえるでしょう。
- 「この店、食中毒で営業停止になったことがある」
- 「この人、反社だよ」
「コメントだったら大丈夫」と考えている人も多いですが、インスタのコメント欄で名誉毀損が成立するケースは珍しくありません。
投稿やストーリーで誹謗中傷をする
インスタの投稿の中で相手の誹謗中傷する行為は、X(旧Twitter)などと同様に名誉毀損罪や侮辱罪が成立する可能性があります。
投稿は、基本的に多くの人が見られるものであるためです。そのため、投稿そのものでの誹謗中傷や、投稿に対するコメントでの誹謗中傷も、「公然と相手の社会的評価を下げる行為」に該当する可能性があります。
また、ストーリーの投稿やストーリーに対するコメントも名誉毀損罪や侮辱罪に該当する可能性があります。
ストーリーは24時間で投稿が削除されますが、その時間内であれば多くのユーザーが確認できる状態ですので「公然と社会的評価を下げる行為」と判断される可能性が高いでしょう。
たとえストーリーであっても、誹謗中傷は絶対にしないようにしてください。
また、誹謗中傷された場合には、弁護士へ相談しましょう。
DMで誹謗中傷をしても原則として名誉毀損に問われないが例外も
インスタのDMで誹謗中傷をおこなっても、原則的には名誉毀損罪に問われることはありません。
DMは相手との1対1のやり取りですので、公然性を欠いているためです。
しかし、公然性を欠いた特定少数に向けたものであっても、そこから不特定多数にも広がっていく可能性があれば「公然と」にあたるケースもあります。
また、DMの内容をスクショにとって公開したような場合には、「公然と」に該当するため、名誉毀損罪が成立する可能性があります。
インスタで匿名の相手に名誉毀損をされたら、相手を特定できる?
インスタで匿名の相手に名誉毀損されたら、相手を特定できる可能性があります。
発信者情報開示請求という方法で、匿名の投稿者の住所や氏名を特定し、刑事告訴や民事訴訟の提起ができる可能性があります。
発信者情報開示請求とは、インターネット上の匿名投稿で他人の権利が侵害された場合に、誹謗中傷された被害者がプロバイダーに対して発信者の情報を開示するように求める請求のことです。
発信者情報開示請求は、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(情報流通プラットフォーム対処法。旧プロバイダ責任制限法)で以下のように定められています。
(発信者情報の開示請求)
第五条
特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し、当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報のうち、特定発信者情報以外の発信者情報については第一号及び第二号のいずれにも該当するとき、特定発信者情報については次の各号のいずれにも該当するときは、それぞれその開示を請求することができる。
一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
投稿者の特定は、以下の2つの事業者に対して発信者情報開示請求を行う方法があります。
- コンテンツプロバイダ:サービス運営元
- アクセスプロバイダ:インターネット接続サービスを提供する事業者
インスタの場合、コンテンツプロバイダはインスタの運営元であるMeta社になります。
しかし、匿名でインスタに登録している場合にはコンテンツプロバイダは個人情報を保有していません。
その場合はIPアドレスの開示を請求します。
次にアクセスプロバイダへ開示請求をおこない、提供を受けたIPアドレスをもとに契約者の住所や氏名の提供を受けるのが一般的な流れです。
【関連記事】発信者情報開示請求とは?誹謗中傷から自分を守るために知っておきたい基礎知識
インスタで名誉毀損をした相手に責任を問う主な方法
インスタで名誉毀損をした相手に責任を問いたいのであれば、以下の3つのステップで相手に責任追及をおこないます。
- インスタ上で名誉毀損があったことを示す証拠を集める
- 相手が匿名である場合は、裁判上の手続きなどで相手を特定する
- 刑事告訴をして名誉毀損罪に問う
- 損害賠償請求をする
それぞれの手順について、以下で詳しく解説します。
①インスタ上で名誉毀損があったことを示す証拠を集める
まずは、インスタで名誉毀損があったことを示す証拠を集めましょう。
名誉毀損の証拠を残す方法はいくつかありますが、基本的には対象の投稿やコメントを、 URL(https:~の文字列)が全て表示される形でスクショしておくことが最も効果的です。
動画の場合には、当該動画を録画しておくとよいでしょう。
インスタの誹謗中傷は投稿者がいつでも削除できるため、削除される前に証拠を残し、客観的に誹謗中傷されたことを証明できるようにしておきましょう。
②相手が匿名である場合は、裁判上の手続きなどで相手を特定する
インスタの投稿は、匿名であるケースも少なくありません。
しかし、民事・刑事ともに相手の住所や氏名がわからないと、訴えることが難しくなります。
そのため、投稿者に責任追及をする場合には、発信者情報開示請求をおこない、発信者の個人情報を特定しましょう。
発信者情報開示請求は被害者本人がおこなうことができますが、例えば、裁判所で以下のような手続きが必要になります。
- 誹謗中傷の証拠とともに裁判所に発信者情報開示命令の申立てをする
- 裁判所で審理開始
- 裁判所が発信者情報開示命令を出す
開示請求の手続きを一般の方がおこなうにはかなり手間がかかります。
誹謗中傷の内容について自分で申し立てなければならないことは、精神的な負担にもなるでしょう。
発信者情報開示請求について不安がある方は弁護士へ相談してください。
③刑事告訴をして名誉毀損罪に問う
名誉毀損をした相手に刑事的な責任を問いたい場合は、名誉毀損罪で刑事告訴をします。
刑事告訴の流れは、以下のとおりです。
- 警察へ相談して告訴状を提出
- 警察による捜査
- 刑事裁判
なお、警察の捜査は発信者情報をもとにおこなわれることが多いため、刑事告訴をする前に発信者情報開示請求をおこない、発信者の個人情報を特定する必要があります。
誹謗中傷が一度だけの場合や初犯の場合には、不起訴になることも少なくありませんが、場合によっては略式起訴や刑事裁判になる可能性もあります。
名誉毀損罪や侮辱罪はそもそも親告罪です。
そのため、被害者側から告訴しなければ、逮捕はおろか捜査されることもありません。
誹謗中傷した人間に刑事的な責任を問いたい場合には、必ず自分から刑事告訴をしましょう。
④損害賠償請求をする
誹謗中傷によって精神的な苦痛を受けた場合には慰謝料を請求できます。
誹謗中傷による社会的評価の低下により損害を被った場合には、その損害賠償を請求することができます。
民事で訴える場合には、前提として、投稿者の特定(氏名・住所の特定)が必要です。
投稿者の特定には発信者情報開示請求などが必要になります。
なお、インターネット上の誹謗中傷の場合、基本的に損害賠償のほとんどが慰謝料です。
拡散を止めるにはインスタに削除依頼を
投稿された内容は、全世界で見える状態になっているため、内容が名誉毀損に該当するのであれば一刻も早く削除する必要があります。
インスタの場合には、利用規約で誹謗中傷などの投稿は禁止とされているため、インスタへ申請することで投稿が削除される可能性があります。
Instagramは有益で多様性のあるコミュニティの育成を目指しています。明らかな脅迫やヘイトスピーチ、個人の誹謗や名誉毀損を意図したコンテンツ、脅迫や嫌がらせとして公開した個人情報、繰り返し発信される好ましくないメッセージは削除されます。報道で取り上げられた人物や、職業や活動内容の関係上多くの一般人に影響力を持つ人物について議論することは許可されています。
人種や民族、国籍、性別、性同一性、性的嗜好、心情、障害、病気を理由に個人への暴力や攻撃を促すことは、絶対に認められません。そういった行為、言動に対抗する煽動的な発言や注意を喚起する発言がシェアされる場合は、許可されることがあります。これらに関連すると思われる投稿では意図を明確にしてください。
公共および個人の安全に害を及ぼす深刻な脅威となる投稿は許可されません。これには、身体的な危害のみならず、窃盗や破壊行為などの金銭的損害を与える脅威も含みます。Instagramでは、報告された脅威を厳密に調べ、さまざまな要素を検討してから、脅威が事実かどうかを判断します。
インスタでは名誉毀損、脅迫、ヘイトスピーチ、国籍、民族、性別、病気などを理由にした個人への攻撃は禁止されています。
これらの投稿を見た人は、インスタへ報告することで、投稿の削除やアカウントのブロックができる場合があります。
他の人に対していじめたり、 嫌がらせをしたりする目的でアカウントが設定されている場合や、 写真やコメントが他の人に対するいじめや嫌がらせを意図している場合は、報告してください。また、 Instagramで他の人があなたや他の人のふりをしていると思われる場合の対処法についてもご確認いただけます。
ご報告にもとづき、 必要に応じてアカウントのブロック等の措置が講じられます。
引用元:報告するには|Instagram
投稿の削除だけでなく、発信者情報開示請求も検討している場合は、証拠を保存する前に削除申請をして、投稿が削除されてしまうと、相手を特定したり訴えたりするのが難しくなる可能性もあります。
誹謗中傷の投稿を見つけたら、まずは証拠を確保し、そのあとに開示請求や削除依頼をおこなってください。
インスタでの名誉毀損は弁護士への依頼がおすすめ!
インスタで名誉毀損された場合には弁護士へ依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼するメリットと、弁護士へ依頼した場合の費用を詳しく紹介します。
弁護士へ依頼する3つのメリット
インスタの名誉毀損の問題を弁護士へ依頼することで、以下3つのメリットを得られます。
- 名誉毀損に該当するか判断してもらえる
- 書類作成や裁判手続きを任せられる
- 相手方との交渉を任せられる
それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。
1.名誉毀損に該当するか判断してもらえる
相手の投稿が名誉毀損罪に該当するのか、侮辱罪に該当するのかを判断するには専門的な知識や経験が必要です。
インターネット上のトラブルに強い弁護士であれば、過去の判例などから投稿された内容が名誉毀損に該当するかどうかを判断してもらえます。
名誉毀損や侮辱罪に該当するのであれば、刑事・民事で相手の責任を問えるため、まずは弁護士に判断を仰ぐとよいでしょう。
2.書類作成や裁判手続きを任せられる
弁護士へ依頼することで、書類作成や裁判所・警察とのやり取りを全て任せられます。
インスタでの名誉毀損の告訴は、基本的に発信者情報開示請求からおこなう必要がありますが、発信者情報開示請求は裁判所とのやり取りが必要です。
申請内容を間違えてしまうと、そもそも相手側の個人情報の入手すらできないことになります。
その後の裁判などについても同様で、一般個人が裁判所とのやり取りをおこなうことは難しく、時間的・精神的な負担も大きいことから、弁護士へ依頼するのがよいでしょう。
3.相手方との交渉を任せられる
名誉毀損は相手方との交渉をおこない、裁判や刑事事件にする前に示談になるケースもあります。
示談になれば被害者側は時間や裁判費用を節約できますし、加害者側も裁判費用や刑事責任を免れるため双方にメリットがあります。
しかし、示談交渉を当人同士がおこなうと感情的になることが多いため、交渉が決裂し、より深刻で感情的な対立を生んでしまうリスクがあります。
弁護士へ依頼すれば示談交渉もおこなってくれるため、加害者側とやり取りをすることに伴う精神的な苦痛はありません。
また、弁護士は交渉のプロですので、被害者にとって有利な条件で和解できる可能性もあります。
裁判所とのやり取りだけでなく、示談まで任せられる点は弁護士へ誹謗中傷被害を依頼するメリットです。
依頼した際の弁護士費用の目安
インスタなどのネット上での誹謗中傷を弁護士へ依頼すると、弁護士費用がかかります。
弁護士への依頼内容ごとの費用の相場は次のとおりです。
着手金 | 成功報酬 | 裁判費用 | ||
---|---|---|---|---|
削除依頼 | 裁判外 | 約5~10万円 | 約5~10万円 | × |
裁判 | 約20万円 | 約15万円 | 3万円 | |
発信者の特定 | IPアドレスの特定 | 約20万円 | 約15万円 | × |
発信者の個人情報の特定 | 約20~30万円 | 約15~20万円 | 6万円 | |
損害賠償請求 | 裁判外 | 約10万円 | 慰謝料の16% | × |
裁判 | 約20万円 | 慰謝料の16% | 3万円 |
加害者の特定で40万円から50万円程度の費用がかかります。
ネット上の誹謗中傷については「訴えても赤字になる」とよくいわれますが、示談で済んだり、加害者の特定費用が損害として認められたりすれば、赤字にならない可能性もあります。
被害の程度や頻度や回数によって認められ得る損害賠償額も異なりますので、詳しくは弁護士へ相談しましょう。
インスタでの名誉毀損についてよくある質問
インスタでの名誉毀損についてよくある質問を紹介します。
- 写真や動画の無断公開は名誉毀損に該当しますか?
- 閲覧者を限定したストーリーでも名誉毀損は成立しますか?
写真や動画の無断公開は名誉毀損に該当しますか?
写真や動画の無断公開は、それだけでは名誉毀損に該当しない可能性が高いでしょう。
無断で写真や動画を公開されただけでは、社会的評価を低下させる事実の摘示とまでは判断しにくいためです。
しかし、写真や動画を本人に無断で公開する行為は、プライバシー権・著作権・肖像権など、別の権利侵害行為に該当する可能性があります。
どのような権利侵害になるのかどうかは個別の判断となるため、詳しくは弁護士へ相談しましょう。
閲覧者を限定したストーリーでも名誉毀損は成立しますか?
名誉毀損が成立するかどうかは、閲覧できる人の数、属性、投稿内容などを総合考慮して判断されます。
なお、たとえば「SNSでのアップはお控えください」などの注意事項が事前に伝達されているイベントの様子などをアップした場合には、例え限定公開であっても、プライバシー権・著作権・肖像権などの権利侵害行為や損害賠償請求の対象になる可能性があります。
限定公開であっても注意事項を十分認識したうえで投稿しましょう。
さいごに|インスタの名誉毀損については弁護士へ相談を!
インスタの投稿で名誉毀損が成立するためには、投稿の内容が公然と、事実を摘示し、相手の社会的評価を下げる内容である必要があります。
ただし、事実を摘示しない場合でも、相手の社会的評価を下げる投稿は侮辱罪に該当する可能性があります。
また、名誉毀損罪や侮辱罪は刑事責任と民事責任の両方を問うことができます。
名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪ですので、被害者側から届出ない限りは捜査されることはありませんし、損害賠償請求をしたいのであれば被害者側が提訴する必要があります。
告訴や提訴をするためには、発信者情報開示請求などで投稿者の特定が必要です。
発信者情報開示請求は裁判所とのやり取りが必要になるため、一般の方が手続きすることは簡単ではありません。
そのため、インスタなどのネットで名誉毀損などの被害にあったら早めに弁護士へ相談しましょう。

