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債務整理のネット完結は原則できない!できる限りネットで済ませる方法も解説
2024.11.25
債務整理とは、借金を合法的に減額・免除できる手続きの総称です。
「手続きが大変そう」「弁護士とのやり取りが面倒」といった理由から、債務整理をネット完結でできる方法を探している方も多いのではないでしょうか。
しかし、結論からいうと、原則として債務整理をネット上での手続きのみで完結させることはできません。
本記事では、債務整理はネット完結ができない理由や、ネットのみで済ませようとした場合のリスクを中心に解説します。
また、記事後半では、できる限りネットで債務整理の手続きを済ませるコツや、債務整理を依頼する専門家の選び方も紹介します。
手間を抑えて借金を減らしたい方はぜひ参考にしてください。
債務整理は原則として、ネット完結ができないものと考えておきましょう。
債務整理とは、法律に基づいて合法的に借金を減額・免除できる手続きで「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類が含まれます。
そして、弁護士や司法書士などの専門家に債務整理を依頼する場合は、直接面談をしなくてはいけないルールがあります。
また、対面での面談を省略すると、専門家が借金の状況を把握しにくくなるうえ、依頼者もリスクやデメリットに関する適切な説明を受けられない可能性が出てきます。
そのため、対面で面談をおこない、専門家と細かく情報を共有しながら、今後の対応について慎重に検討することが求められているのです。
債務整理は、自分自身で書類を用意して債権者と交渉したり裁判所に申し立てたりするか、一連の手続きをほぼ全て弁護士などの専門家に依頼するかの二択の方法があります。
専門家に依頼して債務整理を進める場合、代理人として債務整理を受け持つ弁護士や司法書士は、それぞれ「日本弁護士連合会」「日本司法書士会連合会」の規則に則って業務を遂行する必要があります。
その規則のなかには、それぞれ「債務整理を担当する専門家は依頼者と直接面談をおこなう」というルールがあるため、オンライン面談やメールのやり取りのみで債務整理を完結させることはできません。
仮にネット完結での債務整理を受け付けている事務所が存在するとしたら、グレーゾーンで営業している危険な事務所である可能性が高いといえるでしょう。
原則として債務整理はネット完結ができませんが、以下の2つの場合に限りネット完結ができる可能性があります。
具体的にどのようなケースが該当するのか、詳しく見ていきましょう。
過払い金返還請求のみを依頼する場合は、例外的に債務整理のネット完結ができることがあります。
過払い金返還請求とは、消費者金融に対して支払いすぎた利息を返してもらうように請求する手続きのことです。
2010年以前に消費者金融からお金を借りていた方は、「グレーゾーン金利」と呼ばれる違法な高金利で返済していた可能性があります。
この場合、過払い金返還請求をおこなえば、適法な金利との差分を返してもらうことが可能です。
ただし、ネット完結で過払い金請求ができるのは「すでに完済している借金について過払い金請求をする場合」に限られるため注意しましょう。
返済中の借金は過払い金請求によって信用情報に傷をつけてしまうリスクがあるほか、返還後に残っている借金を債務整理しなければならないケースもあるので、ネットで完結させることは難しいといえます。
特別な事情がある場合も、ネットでの債務整理手続きの着手が認められる可能性があります。
特別な事情には、例えば以下のようなケースが該当します。
第三条 (前略)ただし、面談することに困難な特段の事情があるときは、当該事情がやんだ後速やかに、自ら面談をして、次に掲げる事項を聴取することで足りる。
引用元:債務整理事件処理の規律を定める規定|日本弁護士連合会
(面談) 第5 債務整理事件の依頼を受けるにあたっては、依頼者又はその法定代理人と直接面談して行 うものとする。ただし、次に掲げる場合等合理的理由の存する場合で面談以外の方法によって 依頼者本人であることの確認及びその意向が確認できるときは、この限りでない。
(1)従前から面識がある場合
(2)依頼者が現に依頼を受け又は受けようとしている者の保証人(連帯保証人を含む。)で ある場合で、債権者の厳しい取り立てを速やかに中止させる必要があるとき
(3)依頼者が離島などの司法過疎地に居住する場合で、債権者の厳しい取り立てを速やかに 中止させる必要があるとき
直接面談することなくネットのみで債務整理の依頼ができる条件は一律に定められているわけではないので、面談が難しい合理的な理由がある場合は、専門家に相談してみることをおすすめします。
なお、例外的な事情があったとしても、当該事情がやんだ後速やかに弁護士等が依頼者と直接面談することが求められており、基本的には、弁護士・司法書士と一度も直接面談せずに債務整理手続きのすべてをネットで完結することは難しいと考えておいた方が良いでしょう。
次に、債務整理ではネット完結が認められず、対面での面談が重要とされる理由を解説します。
債務整理で対面での面談が重要とされる理由のひとつは、債務状況の正確な把握が必要であるためです。
債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があり、それぞれ手続きの流れや費用、減額できる借金の金額、減額に伴い生じるリスクなどが大きく異なります。
そのため、債務整理を進めるうえでは、一人ひとりの借金額や生活状況に合わせて、適切な方法を選択しなければなりません。
例えば、任意整理は借金にかかる将来利息のみをカットしてもらい、残った元本を3年〜5年間の期間で返済していく手続きです。
つまり、元々利息が少ない自動車ローンや奨学金などの返済に苦しんでいる方にとって、任意整理は適していないといえます。
以上のような事情から、依頼者の状況に合わせて適切な債務整理を実施するために、メールや電話などではなく直接の面談をおこない、債務状況を正確に把握する必要があります。
依頼者自身が債務整理のメリット・デメリットをきちんと理解するためにも、専門家との対面での面談が必要とされています。
債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの手続きがあり、それぞれに以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
任意整理 | ● 債務整理の相手を自由に選べる ● 裁判所を介さないので手続きが比較的容易 | ● 減額できるかどうかは交渉次第 ● カットできるのは原則将来利息のみ |
個人再生 | ● 借金を大幅に減額できる ● 住宅を残せる可能性がある | ● 全ての債権者を裁判所に申告する必要がある ● 官報に氏名・住所が載る ● 担保権付きの財産は処分される ● 安定した収入を求められる |
自己破産 | ● 借金がなくなる | ● 全ての債権者を裁判所に申告する必要がある ● 官報に氏名・住所が載る ● 一定額以上の価値のある財産が処分される ● 破産手続き中は職業制限を受ける ● 借金の原因がギャンブルである等の免責不許可事由がある場合には借金の免除を認めてもらうための手続きが厳しくなる |
また、どの債務整理を選んだとしても、信用情報機関に数年間事故情報が登録され、クレジットカードやローンが使えなくなるというデメリットが存在します。
弁護士や司法書士が各手続きのメリット・デメリットをしっかりと説明し、依頼者も正しく理解したうえで債務整理を実施するためには対面での面談が欠かせないステップとなります。
債務整理をネットで完結させようとした場合には、以下のようなリスクが生じる可能性が高いでしょう。
それぞれ、簡単に紹介します。
債務整理をネットで完結させた場合に起こりうるリスクのひとつは、適切に対応してもらえないことです。
債務整理をすれば、借金が減額・免除されて暮らしが良くなるケースも多いですが、一人ひとりの状況に適した手続きを選ばないと損をしてしまう可能性もあります。
例えば、自己破産を選ばないと借金問題が解決しないほど借金が膨らんでいるにもかかわらず、ネット完結で申し込んだことによって十分な説明や聞き取りがなされないまま、任意整理を進める流れになるかもしれません。
そうすると、任意整理をしても状況は改善せず、結局自己破産をしなくてはならなくなり、任意整理をした分だけ無駄に時間や費用がかかってしまう可能性があります。
以上のように、ネット完結で債務整理をしようとすると、自分の状況をきちんと説明することが難しく、むしろ状況を悪化させるおそれがあるのです。
債務整理に失敗しやすくなることも、債務整理をネットで完結させることによるリスクのひとつといえるでしょう。
債務整理は、申し込めば必ず借金の負担が軽くなるというわけではありません。
例えば、任意整理は債権者と交渉したうえで将来利息をカットしてもらう手続きですが、これまでに返済実績がなかったり、契約してから数ヵ月しか経っていなかったりする場合は、交渉がうまくいかずに失敗に終わる可能性もあります。
また、個人再生や自己破産では、借金の経緯や生活状況によって裁判所から減額・免責を認めてもらえないこともあります。
失敗するリスクをできるだけ減らし、適切に債務整理を選び成功させるためには、依頼者の借金額や債務整理に至った経緯について詳細に確認しなくてはなりません。
以上のような事情から、十分な聞き取りが難しいネット完結での債務整理は、失敗に終わるリスクが高いといえます。
債務整理をネット完結させようとすると、デメリットやリスクについて十分に理解しないまま手続きを進めてしまい、想定していなかった不利益を受ける可能性があります。
債務整理は、合法的に借金を減額・免除できるありがたい救済制度ですが、まったくのノーリスクで進められるものではありません。
例えば、デメリットについてしっかりと理解しないまま「借金を全額免除できるらしい」という軽い気持ちから自己破産を選択すると、持ち家や自動車など、生活するうえで必要なものを失い、後悔してしまう可能性もあるでしょう。
メールやオンライン面談などのネットのみの手続きでは、弁護士などの専門家からの説明に疑問点があったとしても質問できる機会が少なくなります。
その結果、十分にデメリットを理解できないまま手続きを進めてしまい、想定外の不利益を被るリスクが高いといえます。
債務整理は、手続きごとに費用相場がある程度決まっていますが、ネット完結させようとすると不当に高い費用を請求されるリスクがあります。
債務整理を専門家に依頼した場合は「着手金」「成功報酬」「減額報酬」など、さまざまな名目で費用を請求されます。
費用の内訳や計算基準などについては十分に説明を受けるべきですが、ネットのみでの手続きだと十分な説明がなされないまま手続きが進んでしまう可能性が高いでしょう。
相場よりも高い費用がかかると、いくら借金が減額できたとしても効果が薄くなってしまいます。
適切な金額で債務整理するためにも、弁護士とは直接面談をしたうえで手続きを進めるべきです。
債務整理をネット完結させることは原則できませんが、手続きの一部分をネット上で済ませて、手間を省くことは可能です。
ここでは、ネットで債務整理の手続きを済ませるコツを簡単に紹介します。
できる限りネットでの債務整理の手続きを済ませたいのであれば、オンライン相談やメール・LINEでの問い合わせ対応が可能な事務所を選びましょう。
債務整理を依頼するからといって、全てのやりとりを対面でおこなう必要はありません。
直接面談に加えて、形式的な情報の共有や簡単な質問であれば、オンラインツールを使って、効率的に済ませるのもひとつの方法です。
特にメール・LINEであれば好きな時間に利用できるので、普段仕事で忙しい人にとっては大きなメリットに感じられるでしょう。
平日夜間や休日の対応が可能な事務所を選ぶことも、債務整理を効率的に進めていくためのポイントです。
メールやLINEでの相談であれば、24時間受け付けている法律事務所も多くあります。
また、依頼者の都合に合わせて対応時間を幅広くとっている事務所であれば、「仕事で忙しい」「平日の昼間の訪問が難しい」といった事情にも柔軟に対応してくれるはずです。
債務整理を相談・依頼する専門家は、以下の基準で選ぶとスムーズに手続きが進められます。
では、専門家選びのポイントをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
借金問題について相談する際は、債務整理の解決実績が豊富な専門家を選びましょう。
例えば、弁護士は法律の専門家ですが、それぞれ得意分野をもっているケースが一般的です。
債務整理など借金問題の解決に注力している弁護士もいれば、債務整理の経験は少なく、相続や離婚問題など別ジャンルの解決実績が多い弁護士もいます。
債務整理は債権者との交渉や裁判所への提出書類の準備など、専門的な知識・経験を要する業務が多いため、この分野の実績が豊富な弁護士に相談することが問題解決の近道といえるでしょう。
また、債務整理のうち任意整理・個人再生・自己破産のいずれが解決策として適しているかは、一人ひとりの借金の状況によって異なります。
債務整理の解決実績が豊富な専門家であれば、自分の状況に合わせて最適な解決法を提案してくれるはずです。
各事務所の解決実績については、ホームページや口コミなども参考にしてください。
債務整理を専門家に依頼する際には、費用体系が明確かつ妥当な設定となっているかどうかも非常に重要です。
費用体系や内訳が明確に提示されていない事務所に依頼すると、依頼したあとに成功報酬などを追加で請求されてしまうリスクもあります。
債務整理の手続きごとの費用相場は、おおよそ以下のようになっています。
(※報酬体系は各事務所によって異なりますので、詳細は弁護士等の専門家にお問合せください。)
周辺地域の費用相場よりもあまりに高額な費用を提示された場合は、依頼を検討し直したほうが賢明といえるでしょう。
債務整理を円滑に進めるためには、専門家との相性も重要です。
話しづらいと感じた専門家に債務整理を依頼すると、債務整理の手続きの不明点や不安を解決しないまま、どんどん手続きが進められてしまうおそれがあります。
そのため、わかりやすく説明してくれるか、意見を尊重してくれるか、親身になって応じてくれるかなど、専門家の人柄や考え方にも注目しておくことが重要です。
LINEやメールでは親身に相談に乗ってくれる印象があっても、実際に対面で面談をしてみたら高圧的に感じてしまい、疑問点について質問したり追加で説明を求めたりするのが億劫になってしまうケースもあるかもしれません。
気になる専門家がいた場合には、無料相談の機会などを利用して、一度は対面で会話する機会を設けるようにしましょう。
最後に、債務整理のネット完結についてよくある質問を紹介します。
あとで余計な心配をしなくて済むように、同様の疑問を抱えている方はぜひ参考にしてみてください。
原則として、債務整理をオンライン面談だけで契約することはできません。
対面での面談を省略すると、依頼者に適した債務整理を選ぶための聴き取りが不十分になる可能性が高いうえ、債務整理のデメリットについて依頼者がきちんと理解できないリスクがあるためです。
ただし、「自然災害の影響で事務所に訪問ができない」「重い病気で外出ができない」など、どうしても対面での面談ができない特別な事情がある場合は、オンライン面談で契約できる可能性もあります。
事情を説明すれば柔軟に対応してくれる事務所があるかもしれないので、まずは一度、相談してみることをおすすめします。
任意整理は、裁判所を通さず、債権者との交渉によって借金の減額を目指す手続きです。
基本的には債権者と専門家との間でやり取りが進められるため、自己破産手続きのように裁判所に行く必要はなく、弁護士等の専門家と直接面談する回数も他の手続きに比べて少ないことが一般的です。
とはいえ、原則的には対面相談が必要で、ネット完結で依頼することは難しいといえます。
対面相談を省略すると、弁護士との意思疎通が難しくなり、間違った債務整理の方法を選んだり、デメリットを把握しないまま依頼してしまったりするリスクがあります。
オンライン手続きを活用するのもひとつの方法ですが、少なくとも一度は対面相談の機会を設けることが重要です。
本記事では、債務整理がネット完結できない理由や、債務整理をスムーズに進めるための専門家の選び方などについて紹介しました。
依頼者の借金額や借金の経緯、生活状況などによって、選ぶべき債務整理の手続きは異なります。
そのため、適切な解決策を選ぶためには、債務整理の解決実績が豊富な専門家と直接面談して、自分の状況についてしっかりと聴き取りをおこなってもらうべきです。
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