任意整理
債務整理でブラックリストに載る期間|載らないケースや確認方法を解説
2024.11.01
債務整理をしたことが会社にバレてしまっても、それだけでクビになることはありませんが、できれば会社には知られないように手続きを進めたい方も多いのではないでしょうか。
債務整理をおこなうと、今後の利息をカットできたり、借金の返済義務が免除されたりするため、生活を立て直す余裕が生まれます。
一口に債務整理と言っても、任意整理・個人再生・自己破産など方法はさまざまあり、どれを選ぶかでうまく債務整理できるかが変わってきます。
本記事では、債務整理をしたことが会社にバレるのかどうかや、バレたときにどうなるのか、会社や家族にバレずに債務整理する方法について詳しく解説します。
結論からいうと、債務整理をしたことが会社にバレるかどうかは、選択する手続きや、手続きの進め方によります。
債務整理には、大きく分けて任意整理・個人再生・自己破産という3つの種類があり、それぞれの特徴を簡単にまとめると次のようになります。
種類 | 特徴 |
任意整理 | 債権者と交渉して、今後の利息等をカットする |
個人再生 | 裁判所を通し、借金を大幅に減額してもらう |
自己破産 | 裁判所を通し、借金の返済義務を免除してもらう |
一般的に、任意整理であれば会社や家族にバレる可能性が低く、個人再生や自己破産ではバレる可能性が高くなってしまいます。
とはいえ、任意整理の場合でもバレる可能性はゼロではないため、慎重に手続きを進めるようにしましょう。
ここでは、任意整理が会社にバレにくい理由について詳しく解説します。
任意整理は債権者と直接交渉をおこなう手続きであるため、どの債務を整理の対象とするのか、自分で選ぶことができます。
例えば、A社からの借り入れと、自分が働いているB社からの借り入れがある場合、A社からの借り入れだけを任意整理の対象とすることで、B社に知られることなく返済の負担を軽くすることが可能です。
これに対し、個人再生や自己破産では、原則として全ての債務が整理の対象となるため、自分が働いている会社からの借り入れがあるような場合には、必ず会社にもバレてしまいます。
そのため、自分が働いている会社からの借り入れがあり、かつ、債務整理することを会社に知られたくないような場合には、任意整理をおこなうのがおすすめです。
任意整理は、債務者と債権者との間でおこなわれる私的な交渉・契約であるため、任意整理を行なったことを第三者に知らせる必要はありません。
個人再生や自己破産では、手続きをおこなった人の氏名や住所などが官報(国が発行する新聞のようなもの)に掲載されますが、任意整理の場合には官報に掲載されることもありません。
任意整理の交渉時、債権者に勤務先の情報を伝えることはありますが、これはあくまで任意整理後の返済が滞った場合における連絡先の確認であり、任意整理をした事実が通知されるわけではないので安心してください。
債務整理をすると、その情報が個人信用情報機関に登録されます。
情報が登録されている間は、クレジットカードの発行やローンを組むことができなくなり、いわゆるブラックリストと呼ばれる状態となります。
もっとも、個人信用情報機関の情報にアクセスできるのは、銀行やクレジットカード会社などの金融機関だけであり、一般的な企業が参照できるわけではありません。
そのため、個人信用情報機関に情報が登録されたとしても、そのことが勤務先に通知されることはありませんし、勤務先が金融機関でない限り会社側から調べることもできません。
ここまで紹介したように、任意整理は債務整理のなかでも会社にバレにくい手続きではありますが、例外的に会社にバレる可能性もあります。
以下では任意整理をしたことが会社にバレるケースについて、具体例を3つ紹介します。
まずは、勤務先からの借り入れを任意整理の対象としたケースです。
この場合、勤務先との間で任意整理の話し合いがおこなわれることになるため、当然勤務先にバレてしまいます。
勤務先からの借り入れの例は、勤務先が金融機関でいち利用客として借り入れをしている場合や、給料の前借り、従業員貸付制度を利用していた場合などがあります。
このような場合には、勤務先以外からの借り入れを債務整理の対象とするなどの工夫が必要です。
任意整理は自己破産とは異なり、手続きが終わったあとも借金の返済義務が残る手続きです。
そのため任意整理をした後に返済が滞ると、債権者が給与の差し押さえなどの法的手段に出る可能性があります。
給与の差し押さえは裁判所名義で職場に通知されるため、職場に借金のことがバレてしまいます。
そのため任意整理をおこなう場合には、手続きのあとに返済を続けられるかを慎重に検討し、どうしても難しいようであれば自己破産も検討しましょう。
任意整理をしたことをSNSに投稿したり、誰かと話しているところを職場の人に聞かれたりして任意整理の事実が発覚するケースもあります。
近年では、コンプライアンスの観点から従業員のSNS投稿をチェックしている企業もあるため、たとえ匿名でのアカウントであっても安易な投稿は禁物です。
任意整理の過程では、弁護士または債権者と連絡を取り合う機会も増えますが、できれば自宅などプライベートが確保できる環境で連絡するか、メールなど第三者に情報が漏れづらい手段を用いるようにしましょう。
任意整理は比較的会社にバレにくい手続きではあるものの、個人再生のように大幅な減額が見込めるわけではなく、自己破産のように返済義務がなくなるわけでもありません。
そこで個人再生や自己破産を検討している方もいるかと思いますが、これらの手続きは会社にバレやすいため注意が必要です。
個人再生および自己破産は裁判所を通じた公的な手続きであり、最終的には裁判所による許可が必要です。
そのため申請にあたっては、以下のような収入に関する書類が必要となり、これらの書類の発行を会社に依頼することで怪しまれる可能性があります。
必要書類の準備にあたり、たとえば「生命保険の加入のため」などと嘘をつくことは違法ではありませんが、のちにバレてしまった際の心象は悪くなってしまうでしょう。
個人再生および自己破産をすると、申請者(債務者)の氏名や住所などの個人情報が官報に掲載されます。
そのため官報を頻繁にチェックする金融機関・公務員・不動産関係などの職業である場合、官報への掲載をきっかけに個人再生または自己破産の事実がバレる可能性があります。
もっとも、ほとんどの企業では官報のチェックはおこなっていないため、基本的に官報への掲載をきっかけにバレてしまうリスクはそれほど高くありません。
任意整理では債務整理の対象を自分で選ぶことができるのに対し、個人再生および自己破産では、原則として全ての債務が整理の対象となります。
したがって、会社からの借り入れがある場合には会社に対しても通知がいくこととなり、債務整理をしていることがバレてしまうのです。
また自宅や自動車のローンが残っていると、原則として自宅・自動車を手放す必要があるため、このことをきっかけにバレてしまう可能性もあります。
債務整理をしたことが会社にバレてしまっても、債務整理の事実だけを原因として、解雇や減給、降格などの処分が下されることはありません。
仮にこれらの処分を下された場合には、違法な措置であるとして会社を訴えることも可能です。
ただし、債務整理をきっかけに何らかの損害を会社に与えた場合には解雇等の処分が下される可能性はあります。
また、自己破産をおこなうと一部の職業・資格に制限が課せられるため、その点で不利益を被る可能性にも注意が必要です。
ここからは、会社にバレずに債務整理をおこなう際のポイントについて詳しく紹介します。
債務整理の手続きを弁護士に依頼すると、その後の窓口を全て弁護士が代行するため、債権者からの連絡が自宅や職場にかかってくることはなくなり、会社にバレるリスクは低くなります。
また、債務整理に必要な書類の集め方や、手続きの進め方についてもアドバイスを受けられるので、細心の注意を払いながら会社にバレる可能性をできる限り小さくすることができます。
任意整理および個人再生は、手続きが終わったあとも返済義務が残り、毎月決められた額を返済する必要があります。
もし手続きが終わった後に滞納してしまうと、預金や給与の差し押さえなどの法的措置を受ける可能性が高く、会社にバレてしまうこととなります。
そのため債務整理をおこなう際には、今後の返済についてしっかりと検討したうえで、余裕をもって返済できるプランを組み立てるようにしましょう。
任意整理または個人再生をしたあと、どうしても返済できない事情がある場合にはできる限り早急に弁護士に相談しましょう。
返済日を過ぎてしまうと債権者の心象が非常に悪くなり、職場への連絡や法的手段に移行してしまう可能性もあります。
毎月の返済がきついという場合にも早めに弁護士に相談し、和解内容の見直しといった解決策を検討することも重要です。
次に、債務整理をおこなう際の注意点を詳しく解説します。
債務整理により借金の返済が軽くなるというメリットもある一方、生活に大きな影響を及ぼすデメリットを受ける可能性もあるため、しっかりと内容を確認しましょう。
任意整理・個人再生・自己破産のいずれをおこなうにしても、同居している家族に隠し通すことは非常に困難です。
特に個人再生や自己破産の場合には、同居している家族の収入に関する書類の提出を求められることが多いため、手続きの早い段階でバレてしまう可能性があります。
任意整理は比較的家族にもバレづらい手続きではありますが、手続き後も返済義務が残ることから、債権者からの通知等でバレてしまうこともあります。
また、どの債務整理をおこなうにしても、債務整理をした事実が個人信用情報機関に登録され、一定期間はクレジットカードの発行やローンを組むことができなくなってしまいます。そのことが原因でバレる可能性も考慮しなければなりません。
債務整理の種類によっては、自宅や自動車などを手放す必要があります。
実際に手放す必要があるかどうかは個別の事情によって異なりますが、一般的には次の表の通りの措置が講じられます。
手続き | 自宅・車などの扱い |
任意整理 | 自宅等のローンを債務整理の対象とした場合には手放す必要がある |
個人再生 | 自宅等のローンが残っている場合には手放す必要がある(自宅を残す方法もある) |
自己破産 | 原則として、自宅等は手放す必要がある |
個人再生では、自宅等のローンを完済している場合には手放す必要はありませんが、その分返済額が多くなる可能性があるため注意が必要です。
なお、自己破産をおこなう場合でも、例えば個人タクシーを経営しており、生活の再建にタクシー車両が必要であるようなケースでは、当該車両を手放す必要はありません。
このように、自宅や自動車の扱いについては、選択する債務整理の種類や個別的事情によって異なるため、あらかじめ弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産の申し立てをおこない、免責許可がおりるまでの間(3ヵ月から6ヵ月ほど)は、一部の職業・資格に制限がかけられ仕事に就くことができなくなってしまいます。
資格制限の代表例としては、以下の職業があげられます。
基本的には、「他人から金銭や貴重品を預かる仕事に関しては、資格制限がかけられる」と考えていいでしょう。
個人再生および任意整理ではこのような資格制限はかけられていないため、どんな職業についている場合であっても安心して手続きをおこなうことが可能です。ただし、これらの手続きは手続き後も返済義務が残るため、安定した収入があることが条件となります。
最後に、会社や家族にバレないように債務整理をしたものの、結果としてバレてしまった方たちの体験談を紹介します。
40代男性のAさんは、複数社のカードローンからの借り入れが300万円にのぼり、利息の返済さえままならなくなったため、カードローン会社と自力で交渉をおこない、今後の利息をカットするようお願いしていました。
いくつかのカードローン会社にはすぐに応じてもらえましたが、1社だけは頑なに「弁護士を通して連絡してください」との一点張りで、いっさい話し合いに応じてもらえませんでした。
そうしているうちに、Bさんは上司から呼び出され、「君の来月の給料を差し押さえると、裁判所から通知がきたぞ。大丈夫か?」と告げられました。
任意整理手続きを弁護士に依頼すれば、一時的に債権者からの督促が止まりますが、自力で交渉しても督促を止めてくれると限りません。
そのため、すでに滞納期間が3ヵ月以上などの長期にわたっている場合には、早急に弁護士に相談することをおすすめします。
地方都市に在住している30代女性のBさんは、クレジットカードのショッピング枠の返済が滞り、自力での返済は困難と判断したため自己破産を決断しました。
弁護士費用を用意できなかったため、インターネットや書籍で調べながら自力で手続きを進めていましたが、いくら調べても出てくる情報は東京の裁判所に関する情報ばかりで、手続きは難航しました。
そのうち、裁判所からの書類が自宅のポストに届いているのを家族が発見し、結局Bさんが自己破産を検討していることは家族にバレてしまいました。
Bさんが親の協力を得て弁護士に相談したところ、Bさんの経済状況であれば個人再生を選ぶべきであったこと、弁護士費用の後払いに応じている法律事務所も増えていることを伝えられ、大変ショックを受けたそうです。
このケースからもいえるとおり、弁護士費用がもったいないといって自分で判断すると、最善の選択ができなくなる可能性が高くなります。費用が心配な方は、後払い対応などまずは弁護士に相談するのがおすすめです。
本記事では、債務整理をしたら会社や家族にバレるのかどうかや、バレずに債務整理をする方法について紹介しました。
債務整理には大きく分けて任意整理・個人再生・自己破産の3種類がありますが、会社にバレずに債務整理をしたい場合には、私的な手続きである任意整理がおすすめです。
もっとも、任意整理であっても会社にバレる可能性はあるため、弁護士に相談しながら慎重に手続きを進めるようにしましょう