個人再生で車を残す方法|ローン返済中の車はどうなる?を徹底解説

個人再生で車を残す方法|ローン返済中の車はどうなる?を徹底解説

個人再生は車などの財産を手元に残しつつ、借金の返済負担を軽減できる手続きです。

裁判所が再生計画を認めると、毎月の返済負担が5分の1まで圧縮されるので、無理のない全額返済が可能になるでしょう。

ただし、状況によっては車が差し押さえられるため、仕事や生活に支障をきたす恐れもあります。

本記事では、個人再生で車を残す方法や、弁護士に債務整理を依頼するメリットなどをわかりやすく解説します。

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この記事を監修した弁護士
春田 藤麿弁護士(弁護士法人春田法律事務所)
「お客様の期待を上回る結果を目指す」「生涯にわたり、お客様のパートナーとなる」ことを理念とし、2016年に設立。現在は全国にオフィスを構え、個人・法人を問わず、ニーズに合わせたサポートを提供。

個人再生しても車を残せるケース

個人再生は一部の財産を失う場合もありますが、以下のようなケースは車を残せます。

日常生活に車が欠かせない方や、仕事にマイカーを使っている方は、車を残せる状況をよく理解しておきましょう。

現金一括購入やローンを完済した車

現金一括購入やローンを完済した車であれば、個人再生しても手元に残せます。

ローン返済中の車はディーラーやローン会社の名義になっており、個人再生では回収されますが、支払いが完了した自分名義の車は処分されません。

高額な車は差し押さえられる可能性あり

個人再生には「清算価値保障の原則」があるため、高額な車は差し押さえられるかもしれません。

清算価値保障の原則とは、債務者が所有財産のすべてを返済に充てる基本的なルールであり、自己破産した場合を想定しています。

個人再生によって借金を大幅に減額しても、高額な車を手元に残すと清算価値が増えるため、返済額を上げなければ債権者の納得を得られないでしょう。

清算価値の増加によって再生計画どおりに返済できないときは、車を売却して債権者への返済に充てなければなりません。

現金一括購入やローンの返済が終わっている車でも、清算価値が高い場合は手元に残せない可能性があります。

なお、概ね、初年度登録から5年以上経過している車(財産評価は各裁判所によって運用が異なります)は清算価値に計上されないため、個人再生しても手元に残せます。

ローン返済中の車でも所有権留保がない場合

個人再生する場合、ローン返済中の車は没収されますが、所有権留保の特約がなければ手元に残せます。

所有権留保とは、車のローンを完済するまで債権者が車の所有権を保有する契約です。

信販会社などの自動車ローンは所有権留保が設定されるため、車の所有者は債権者になっており、購入者は単なる使用者に過ぎません。

ただし、銀行系のローンは担保不要の契約が多く、所有権留保を設定しない場合があります。

銀行や信用金庫、労働金庫などで自動車ローンを契約しているときは、ローン返済中の車でも手元に残せる可能性があるでしょう。

所有権留保は車検証で確認できるため、所有者が自分の名義であれば、基本的には没収されません。

車の名義が家族になっている場合

家族名義の車は清算価値に計上しないため、ローンが残っていても処分の対象にはなりません。

ローン契約の内容は忘れてしまうケースも多いので、所有者が誰なのか、車検証を確認しておきましょう。

個人再生で所有権留保のある車を残す方法

ローン返済中の車に所有権留保がある場合、個人再生では没収されるため、仕事や生活に支障をきたすかもしれません。

通勤や病院通いなどに車を使っており、他に代替手段がないときは、以下の方法で車を残せる可能性もあります。

債権者と別除権協定を交渉する

個人再生で車を失いたくないときは、債権者と別除権協定を交渉してみましょう。

別除権協定とは、車の時価相当額を支払う代わりに、信販会社などが車を処分しないようにする取り決めです。

債権者の合意だけではなく、裁判所の許可も必要ですが、車が仕事に欠かせない状況であれば、別除権協定を認めてもらえる可能性があります。

たとえば、個人タクシーのドライバーが車を失うと、収入を得る手段がなくなるため、借金を減額しても再生計画どおりの返済が難しくなります。

車を残したほうが債権者にとってもメリットがある場合は、別除権協定の交渉に応じてもらえるかもしれません。

なお、「再生計画どおりの返済に車が欠かせない」といった状況が必要になるため、車が収入に直結しているかどうかが重要です。

「車を失うと不便になる」などの理由では、別除権協定を認めてもらえないでしょう。

第三者弁済を家族などにお願いする

家族や親戚などによるローンの返済を「第三者弁済」といい、自分の代わりに完済してもらうと、個人再生の際に車を残せます。

ただし、債務者が同居している配偶者や子どもなどの名義でローンを返済すると、「偏頗弁済」になる可能性があります。

「へんぱべんさい」と読む返済方法ですが、債権者平等の原則を逸脱するため、個人再生が認められなくなる恐れがあるでしょう。

債権者と任意整理を交渉する

任意整理は特定の債権者と直接交渉し、返済プランなどを見直してもらう方法です。

債権者との交渉に成功すると、返済期間を長くして1回あたりの返済額を少なくする、または今後発生する利息をカットするなど、返済負担を軽くできます。

自動車ローン以外のローンを任意整理しておけば、借金の返済負担を軽くしつつ、車はそのまま残せます。

弁護士に任意整理を依頼すると、過払い金を回収できる可能性もあるでしょう。

ただし、任意整理すると個人信用情報機関の事故情報に登録されるため、借金完済から5年間は新たな借入れができません。

ETCカードやクレジットカードも使えないので、高速道路の料金や日常的な買い物は現金決済が基本となります。

自己破産しても車を残せるケース

返済不可能な借金があるときは、自己破産も検討してください。

自己破産には以下のメリット・デメリットがあり、場合によっては車を残せるため、個人再生と比較してみましょう。

自己破産のメリット・デメリット

自己破産のメリット・デメリットは以下のようになっており、車を残せるケースもあります。

【自己破産のメリット】
  • 借金が帳消しになる
  • 最低限の財産を残せる
  • 強制執行による差し押さえがない
【自己破産のデメリット】
  • 高額な財産は処分される
  • 5~7年間は新たな借入れやクレジットカードの契約が制限される
  • 免責負荷の債権がある
  • 保証人に迷惑がかかる
  • 職業制限がある

自己破産すると一定の財産は処分されますが、生活に必要な家具類や、概ね、初年度登録から5年以上経過した車は手元に残せます。

借金がすべて免除されるため、自己破産後は人生の再起を図れるでしょう。

なお、税金や罰金などの債務は免責不可になっており、保証人を設定した借金であれば、自己破産後に保証人が一括返済しなければなりません。

自己破産した人は保険の外交員や警備員、貸金業などの職業に就けないため、転職を予定している場合は注意が必要です。

個人再生で車を残すときの注意点

個人再生で車を残すときは、必ず以下の注意点を理解しておきましょう。

財産を隠す行為や、特定の債権者へ優先的に返済する行為があれば、個人再生を認めてもらえなくなります。

個人再生直前に車の名義を変更する行為

個人再生の直前に車の名義を変更した場合、財産隠しとみなされる恐れがあります。

特に理由もなく配偶者や子どもなどの名義にすると、「車を残す目的で意図的に名義を変更した」と判断されるため、個人再生の申し立てを受理してもらえなくなるでしょう。

偏頗弁済は免責不許可の可能性あり

個人再生はすべての債権者を平等に扱うため、特定の債権のみ優先的に返済すると、偏頗弁済に該当します。

たとえば、車を残したいために自動車ローンだけ優先的に完済した場合、債権者平等の原則が損なわれてしまい、免責不許可になる可能性があります。

自動車ローンだけ完済したいときは、第三者弁済が可能かどうか、家族や親戚に相談してください。

個人再生後でも車の購入・ローンはできる?

個人再生するとブラックリストに登録されるため、5~7年程度はローンを組めません。

所有権留保によって車を引き揚げられたときは、以下の方法で車を購入してください。

現金一括で車を購入する

個人再生中であっても、現金一括の車購入は制限されません。

どうしても車が必要な状況であれば、初年度登録から5年以上経過した中古車を現金一括購入してください。

家族名義の車を借りる

家族名義の車は処分の対象にならないため、その車を借りて使用することは可能です。

減額された借金の返済が終わり、個人信用情報機関の事故情報が削除されるまでは、家族名義の車を借りておきましょう。

個人再生の完了後にローンを契約する

個人再生が完了し、ブラックリストも削除されると、ローンで車を購入できます。

ただし、審判会社などは独自の信用情報を管理しているケースがあるため、過去にローンを組んだ会社は避けたほうがよいでしょう。

さいごに|車を残して債務整理したいといきは弁護士に相談を

個人再生は一定の財産を残せる手続きですが、ローンがある車は基本的に差し押さえられますし、車を必要とする特別な事情がなければ、別除権協定の交渉も難しいでしょう。

任意整理で借金を減額する場合も、専門知識や交渉力が欠かせません。

車を残して債務整理したいときは、まず弁護士に相談してみましょう。

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※一部の法律事務所に限り初回相談無料の場合があります
この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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