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クレジットカードの借金を債務整理で減額するデメリットをわかりやすく解説
2024.10.08
テレビのコマーシャルやSNSの広告などでたまに見かける「借金減額制度(救済措置)」ですが、どのような制度なのか気になっているものの、本当に信頼できるものなのか半信半疑な方もいるかもしれません。
結論からいうと、「借金救済制度(救済措置)」は債務整理のことを指し、怪しいものではありません。
言葉の感じからは歴史で習った「徳政令」のようなものを連想するかもしれませんが、特別な法律が施行されているというわけではなく、従来からある制度を活用したものだと考えてください。
債務整理の方法には、さまざまな種類があります。
それぞれについて正しい知識を理解したうえでしかるべき手続をおこなえば、借金の負担を軽減することができます。
本記事では、借金減額制度(債務整理)によって負債が少なくなる仕組みや、制度を利用するメリット・デメリットなどについて解説します。
弁護士に依頼した場合に費用目安や、専門家や業者に依頼した場合の注意点についても紹介するので参考にしてください。
まず、テレビのコマーシャルやWeb広告などで見かける「借金減額制度」「借金救済制度」などと呼ばれるものは、いずれも債務整理手続のことを指しており、広告によっては「過払金請求」も含めていることもあります。
債務整理自体は怪しいものではありませんが、どのような制度なのかが具体的に説明されていない場合も多くあるため、なかなか理解しづらい部分もあるでしょう。
ここでは、債務整理の種類をはじめ制度の概要について解説します。
債務整理とは、借金の返済が難しくなった場合に、裁判所または債権者との交渉を通じて、返済額の減額や免除を求める法的手続の総称です。
債務整理は、大きく分けて以下の3種類に分けられます。
借金の種類を問わず利用できますが、手続の種類によっては一定の条件があります。
債務整理をおこなうことで借金の返済負担を軽減する一方、信用情報に影響があるなどのデメリットもあるため、慎重に検討する必要があります。
各手続きの詳しい内容は、追って詳しく解説していきます。
広告によっては「国が認めた借金救済制度」などと謳うものがありますが、これは一般的に自己破産や個人再生のことを指しています。
たとえば、自己破産や個人再生は裁判所をとおしておこなわれる、法律に則った手続きであることから「国が認めた」といえなくはありません。
これらに対し、任意整理はカード会社などと直接交渉する手続きのため、「国が認めた」という表現はあまりなじみません。
しかし、債務整理を促す広告の多くは、任意整理も含めて「国が認めた」としていることが多くあります。
「国が認めた」という文言は、あくまでも広告の謳い文句である点は理解しておくとよいでしょう。
債務整理には、具体的にどのような方法があるのでしょうか。
ここでは、借金減額制度(債務整理)で借金が少なくなる仕組みについてそれぞれ解説していきます。
任意整理は、借金の債務者と債権者が利息の減額について話し合い和解を目指す手続のことです。
(和解)
第六百九十五条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
債権者との交渉が成立すれば、将来利息や遅延損害金をカットしてもらうことで返済が必要な借金総額を減らし、返済期間を原則3年(最長5年程度)に延長(猶予)してもらうことができます。債権者との取引が長かった場合など、例外的に遅延損害金のカットが認められる場合もあります。
任意整理の場合、裁判所をはじめとした公的機関をとおさないことから、比較的シンプルかつ短期間で手続きを進められます。
ただし、債務者がお金を貸している債権者と直接交渉には応じないことがほとんどのため、代理人として弁護士や司法書士が交渉を進めることが一般的です。
また、中には任意整理中に過払金が発生していることが判明し、過払金返還請求の手続きへ移行するケースもあります。
個人再生とは、裁判所に申立てをおこない、元金を含めた借金を大幅に減らす手続きのことをいいます。
(再生計画の効力等)
第二百三十二条 小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定したときは、第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる債権は、それぞれ当該各号に定める金額の再生債権に変更される。
個人再生は、借金を最大10分の1程度まで減額でき、原則3年間(最長5年間)での分割払いをおこないます。
裁判所をとおしておこなう公的な手続きのため、提出した再生計画をもとに着実に履行することが求められます。
しかし、その分借金の減額効果が大きいことや、持ち家などの資産は保有したままにできることなどが個人再生のメリットとして挙げられます。
自己破産とは、借金の返済が困難な状況になった場合に裁判所に申し立てて免責許可を得ることで、原則として残債務の支払いが免除される制度です。
(免責許可の決定の効力等)
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
引用元:破産法 | e-Gov法令検索
裁判所から免責許可が認められれば、その後の借金の返済は原則不要となります。
ただし、一定価値のある財産を手放す必要があったり、また手続終了までの一定期間就けなくなる職業があったりするなど、さまざまな制限を受けることになります。
自己破産は借金問題の最終的な解決手段のひとつとされていますが、弁護士の助言を仰ぎながら慎重に検討することをおすすめします。
ここでは、借金減額制度(債務整理)を利用することによるデメリットについてそれぞれ解説していきます。
項目 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
---|---|---|---|
ブラックリストに載る | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
連帯保証人に迷惑がかかる | △ | ⚪︎ | ⚪︎ |
財産を没収される可能性がある | × | × | ⚪︎ |
官報に掲載される可能性がある | × | ⚪︎ | ⚪︎ |
職業が制限される可能性がある | × | × | ⚪︎ |
債務整理をすると、信用情報機関に事故情報が一定期間登録されます。
これを「ブラックリストに載る」と、表現することもあります。
期間中は、利用中のクレジットカードが利用停止となるほか、新たにローンを契約したり、クレジットカードの新規作成ができなくなったりするなどの制限があります。
なお、ブラックリストに載る具体的な期間は債務整理の方法や信用情報機関によって異なりますが、おおよそ5年〜10年程度です。
保証人・連帯保証人を設定した借入れを債務整理の対象にすると、保証人・連帯保証人に一括返済を求められてしまいます。
ただし、任意整理を選択し、保証人を設定した借入れを整理対象から外して債務整理をおこなえば、保証人への影響を回避できます。
自己破産をすると、持ち家や自動車、高価品など、生活に必要な最低限以外の財産は一定限度を超える場合には回収・処分され、債権者に分配されます。
しかし、持ち家や自動車を手元に残したい場合は、個人再生や任意整理の手続きを利用することで、一定の条件の下で財産を守ることができる可能性があります。
個人再生や自己破産を選択すると、政府が発行する機関誌である「官報」に氏名や住所が掲載されます。
個人再生や自己破産の情報は「官報」に掲載されますが、一部のWebサイトや図書館などでしか閲覧できないため、基本的には家族など周囲にバレる可能性は極めて低いと考えられます。
ただし、弁護士や司法書士などの士業、金融機関や保険会社に勤めているなど、官報を日々チェックしているような業種の方が周囲にいるような場合は、債務整理をおこなったことを知られてしまう可能性も否定できません。
【関連記事】官報とは?自分の名前が載るケースと記載内容を解説・人に知られるリスクは?
自己破産の手続き中は、一部の資格や職業が制限され、一時的に就業できなくなる可能性があります。
具体的には、弁護士や公認会計士などの士業、証券会社の外交員、生命保険募集員、損害保険代理店などの他人の財産や情報を扱う職業が制限の対象となり、免責許可決定が出るまで当該職業に就くことができません。
ただし、自己破産の手続きが終わるとともに「復権」し、それ以降は以前と同じように就労できるようになります。
債務整理をおこなう場合、費用はどのくらいかかるのでしょうか。
ここでは、借金減額制度(債務整理)を利用する際の弁護士費用の目安についてそれぞれ解説していきます。
費用の目安 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
---|---|---|---|
着手金 | 2万円〜10万円 | 約30万円~50万円 | 約20万円〜60万円 |
報酬金 | 2万円〜3万円 | 約0~10万円 | 約0円〜40万円 |
その他費用 | 書類作成料・交通費・裁判費用 | 約2万円〜3万円 (予納金が必要な地域あり) | 予納金(1万円〜50万円) |
合計額 | 社数による | 30万円〜80万円程度 | 30万円〜100万円程度 |
※目安額はいずれも借金額が500万円の場合を想定
着手金とは、弁護士に依頼する際に支払う初期費用のことです。
着手金の金額は弁護士や案件によって異なりますが、一般的には、事件の類型、難易度、必要とされる弁護士の労力などを考慮して決められます。
たとえご自身が望む結果にならなくても支払わなければならないため、依頼する弁護士は慎重に選ぶ必要があるでしょう。
報酬金とは、債務整理の過程で減額または回収した金額に応じて発生する費用です。
着手金と報酬金の両方の費用がかかる法律事務所と、報酬金はなく着手金のみの法律事務所があります。
どちらが得なのかは一概にいえませんが、最終的にかかる総額の見積もりを事前に確認することが重要です。
実費とは、依頼後に発生した書類作成料、交通費、裁判費用などの実際にかかった費用です。また、裁判所をとおす債務整理手続を取る場合には官報に掲載するための費用が掛かります。
実費は着手金に含まれている場合と含まれていない場合があるため、依頼する前に費用内訳をよく確認するようにしましょう。
債務整理をする際は、どこに相談すればよいのでしょうか。
ここでは、借金減額制度(債務整理)について安心して相談できる窓口を3つそれぞれ解説していきます。
ベンナビ債務整理は、累計相談数約11万9,000人を超える(2024年6月時点)、債務整理を専門とする弁護士や司法書士を探せるポータルサイトです。
お住まいの地域や相談内容のほか、「オンライン相談可」「初回の面談相談無料」などの詳細な条件を指定でき、ご自身の状況や希望にかなう専門家を見つけることができます。
そのほか、「借金減額シミュレーション」や「債務整理診断」もでき、ご自身の状況を把握したい方にもおすすめです。
法テラス(日本司法支援センター)には、収入や資産などが一定基準以下の方を対象にした、弁護士や司法書士費用などの立替え制度があります(民事法律扶助制度)。
制度の利用には審査が必要となりますが、条件に当てはまる方は相談してみましょう。
具体的には、交渉や調停、裁判などの手続きの代理や、裁判所に提出する書類の作成を弁護士や司法書士に依頼した場合の費用(着手金・実費など)を法テラスが立て替えてくれます。
その後、着手金については、法テラスとの契約のあと、原則として月5,000円の分割で法テラスに返済していきます。
制度の詳細や資力基準などの詳細については、法テラスのWebサイトを確認してください。
【参考】弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ|法テラス
弁護士会が運営する法律相談センターでは、債務整理をはじめとした借金問題に関する初回30分程度無料の面談による法律相談を実施しています。
相談には、債務整理はじめとした多重債務問題を得意とする弁護士が対応してくれ、相談後にそのまま依頼することもできます。
中には、電話やオンライン相談が可能なセンターもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
【参考】借金相談(破産、債務整理等)|弁護士会の法律相談センター
ここでは、弁護士や司法書士などの専門家へ借金減額制度(債務整理)を依頼する場合の注意点について解説します。
債務整理をおこなう際の弁護士費用については、着手金と解決報酬金は一般に借入先(債権者)の件数で金額が決まります。
そのため、借入先が多いほど依頼費用が高くなる傾向にあります。
しかし、法律事務所では事前におおよその金額を伝えてくれるため、あとから「費用倒れ」が判明することはほとんどないと考えられます。
任意整理事態は個人でもおこなうことは不可能ではないものの、債権者との交渉をスムーズに進めるのであれば、弁護士へ依頼をするのが賢明といえます。
借金減額診断などの結果はあくまでも目安でしかなく、実際に借金を減額できるかどうかは借入先や取引状況のほか、職業や収入によって異なります。
また、債権者が同意してくれるかどうかも要素のひとつとなるでしょう。
司法書士は、交渉や訴訟において140万円以下の過払金や債務のみを扱うことができます。
そのため、高額の過払金発生の可能性がある場合や140万円を超える債務がある場合は、はじめから弁護士に依頼する必要があります。
司法書士事務所に依頼する場合は、調査時に借金額が140万円を超えた際の対応方針や、費用の扱いについて事前に問い合わせておくとよいでしょう。
依頼する法律事務所や司法書士事務所の正体が不明な場合は、利用を避けるのが賢明でしょう。
信頼できる事業者かどうか確認するためには、Webサイトに事務所名や所在地、代表者名などの情報が適切に記載されているかをチェックすることが重要です。
思わぬトラブルに巻き込まれるリスクを避けるためにも、十分な情報開示がされていることを確認してから依頼するようにしましょう。
借金問題に悩んでいる方であれば、借金減額制度(債務整理)を利用することでご自身にかかる負担を和らげることができます。
ただし、債務整理をおこなう場合は、ご自身のケースに最も適した手続を選択することが重要です。
安易に自分だけで判断しようとせず、弁護士に相談して助言を仰ぐことをおすすめします。
とはいえ、いきなり弁護士へ相談することに抵抗を覚える方は、まずはインターネット上で公開されている「借金減額診断シミュレーター」を活用し、減額できる金額の大まかな見通しを把握したうえで、債務整理をするべきかどうかを検討するのもひとつの手です。
ただし、パソコンやスマートフォンで入力した簡単な情報だけで、正確な結果を予想することは不可能であることに留意しておいてください。
また、「減額」されると表示されているのは、今確定している元金のことではなく、将来の利息がなくなる分として表示されている場合もあります。
中には、診断の結果を示さずに、勧誘の電話を何度もかけてくるという事務所もあるという情報もありますので、十分に注意して利用してください。
より正確なアドバイスを希望する場合は、債務整理問題を得意とする弁護士に相談することで、個々の状況に合わせた最善の選択を提案してくれるでしょう。
債務整理について相談できる弁護士を探す際は、ぜひ「ベンナビ債務整理」を活用してみてください。
結論からいうと、「借金救済制度(救済措置)」は債務整理のことを指し、怪しいものではありません。
言葉の感じからは歴史で習った「徳政令」のようなものを連想するかもしれませんが、特別な法律が施行されているというわけではなく、従来からある制度を活用したものだと考えてください。
債務整理の方法には、さまざまな種類があります。
それぞれについて正しい知識を理解したうえでしかるべき手続をおこなえば、借金の負担を軽減することができます。