ネットショッピングの利便性が格段に上がり、クレジットカードで簡単にショッピングが楽しめるようになりました。
便利さがゆえに、つい使いすぎてしまうこともあるかもしれませんが、一方で気がつけば請求日には返済に追われて、支払いが滞ってしまうリスクもあります。
「クレジットカードを使いすぎてしまい、返済に手が回らなくなってしまった」「リボ払いを多用したら利息分の返済が困難になってしまった」など、クレジットカードによって破産をしてしまう方が増えています。
利用方法を間違えれば、誰でも簡単に破産に追い込まれてしまうでしょう。
そこで、本記事ではカード破産による生活への影響や手続の流れ、カード破産しないための対処法などを解説します。
メリットとデメリットをきちんと理解すれば、自分が本当に自己破産をすべきかがわかります。
クレジットカードの使い過ぎを防止したい方も参考にしてください。

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カード破産とは?
ここでは、カード破産の定義などの基礎知識を解説します。
クレジットカードの使いすぎで自己破産すること
カード破産は「クレジットカードの使い過ぎが原因で自己破産をすること」を指し、世間一般でいう「自己破産」とほぼ同じ意味で使われています。
裁判所に申立てをすれば財産が換価処分されたりするものの、返済義務がある借金は免責されます。
日本弁護士連合会が公表した「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、クレジットカードを原因とする破産事件は9.35%でした。
2017年の調査結果と比較すると、割合は6.46%から9.35%と2.89%増加しています。
インターネットの急速な進化によってインターネットショッピング市場は拡大しており、今では誰でもカード破産する可能性があり、日頃から計画的にクレジットカードを利用するなどの注意が必要です。
分割払い・リボ払いが原因になることも多い
カード破産に至る理由のひとつとして、分割払い・リボ払いの利用などもあります。
分割払い・リボ払いを利用すれば毎月の負担を一定に抑えられるものの、そのぶん利息が発生して完済までの期間が長くなってしまいます。
なかには十分な返済計画を立てないまま分割払い・リボ払いの利用を重ねてしまい、いつの間にか多額の借金を抱えてしまって返済困難な状況に陥ることもあります。
カード破産後の生活に与える影響
カード破産をおこなうと「借金の返済義務が免除される」「借金の督促を止められる」など、多くのメリットがあります。
しかし「クレジットカードが作れなくなる」「職業に制限がかかる」などのデメリットも多く存在します。
ここでは、メリットとデメリットについて確認していきましょう。
借金の返済義務が免除される
カード破産の特に大きなメリットは、返済義務が免除されることです。
今まで悩んでいた借金問題から解放されて精神的負担がなくなることで、気分はだいぶ軽くなるはずです。
また、収入を貯蓄に回すことができ、経済的な安定も図れます。
家や自動車などの財産を処分する必要がある
カード破産の大きなデメリットは、自由財産以外の財産は処分されてしまう可能性があることです。
自由財産とは、自己破産の手続後も手元に残すことのできる財産です。
持ち家や車などの高額財産は、換価処分対象になることが多いです。
一般的に、換価処分されてしまう財産の具体例としては下記のものがあります。
- 99万円を超える現金
- 20万円を超える預貯金
- 20万円を超える生命保険などの解約返戻金
- 退職金の8分の1(8分の1にあたる金額が20万円を超える場合) など
ブラックリストに登録される
自己破産をおこなう際は、個人の信用情報を記録している信用情報機関にて事故情報として登録されます。
事故情報とは俗にいうブラックリストのことで、破産手続終了後の約5年~10年は借入れやクレジットカードの審査が通らなくなります。
住宅ローンや教育ローンなどは組めなくなるため注意してください。
なお、デビットカード・PayPayなどのQRコード決済・電子マネーなどの利用は可能です。
一部の職業や資格に制限がかかる
破産手続中は、一部の職業や資格に制限がかかります。
制限の対象となる場合は、一時的に仕事を辞めるか別の仕事をしなくてはいけません。
具体的な職業の一例は以下のとおりです。
- 弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士などの士業
- 質屋、古物商
- 生命保険募集人
- 宅地建物取引士
- 警備員 など
制限の対象とならないケースにおいては、基本的に会社側はカード破産によって従業員を解雇することはできません。
なお、制限の対象であり資格を使わないと仕事ができない職業の場合には、別部署への異動や停職処分が課せられる場合があります。
官報に住所や氏名などが載る
官報とは、日本政府が発行する機関紙です。
紙媒体のほか、国立印刷局のホームページにあるインターネット版官報で読めます。
カード破産をおこなうと、官報に氏名や住所が載ってしまいます。
会社で経営者が官報を読む習慣があれば、知られてしまう可能性はあるでしょう。
しかし、一般的には官報の存在自体を知らない方や目にする機会のない方が大半です。
官報から家族・友人・同僚に知られることはあまりないでしょう。
カード破産をしないための対処法
ここでは、カード破産を避けるための対策を解説します。
カードの利用状況を確認して支出を管理する
まずは、自分がどれだけカードを利用しているのか把握しておくことが大切です。
以下の点をチェックして現在の収入とのバランスを見たうえで、普段の支出の中から削れる部分がないか確認しましょう。
- 借入先
- 返済総額
- 毎月の返済額
- 返済日
- 金利
- 完済予定日 など
安易にリボ払いや分割払いは利用しない
「カード破産とは?」で解説したように、十分に家計管理できない人がリボ払いや分割払いを利用すると、いつの間にか借金が膨れてカード破産に至るおそれがあります。
基本的には一括払いで支払うようにして、安易にリボ払いや分割払いを利用するのは避けましょう。
キャッシング機能の利用は避ける
キャッシングはすぐに現金を調達できて便利な機能ではありますが、カード破産のリスクを減らしたいのであれば利用は避けましょう。
多くの場合、借入金額に応じて年15.0%~18.0%程度の金利がかかりますし、期限内までに返済できないと遅延損害金なども発生します。
キャッシングもカードローンなどと同じように借金であり、なるべく手持ちのお金で支払えないものは買わないように心がけましょう。
おまとめローンの利用を検討する
おまとめローンとは、複数社の借金を一本化できるローンのことです。
おまとめローンを利用すれば、これまで借入先ごとにおこなっていた返済管理が楽になります。
また、比較的金利の低いところが見つかれば毎月の負担額を安く抑えられることもあり、特に複数の業者から借金している場合はおすすめです。
債務整理が得意な弁護士に相談する
借金問題で悩んでいる方は、債務整理が得意な弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士なら「このまま自力で完済できそうか」「債務整理する際は自己破産が適切か」などのアドバイスが望めるうえ、代理人として債務整理の手続代行を依頼することもできます。
弁護士事務所の中には初回相談無料のところもあるため、まずは一度相談してみましょう。

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カード破産をする場合の手続の流れ
カード破産を考えている方の中には、精神的に疲弊している方も多いでしょう。
慌てずに落ち着いて、カード破産をおこなう流れを確認していきましょう。
1.弁護士に相談・依頼する
まずは、借金問題に注力している弁護士に相談してください。
自己破産では裁判所とのやり取りが必要で、スムーズに済ませるためにも弁護士に依頼するのが一般的です。
なお、借金問題の解決方法としては自己破産以外にも任意整理や個人再生などがあり、なかには自己破産せずに解決できる場合もあります。
弁護士に相談する際は、現在の財産額や借金額などを詳しく伝えてください。
初回相談料は1時間あたり5,000円~1万円程度ですが、なかには初回無料の弁護士事務所などもあります。
2.破産手続を申し立てる
信頼できる弁護士が見つかった際は、契約して自己破産手続を進めます。
なお、契約には身分証明書と印鑑が必要です。
自己破産手続の依頼をおこなうと、弁護士から債権者に「受任通知」が送られます。
この段階で債権者からの取立ては止まるため、精神的な不安や負担が大幅に軽減されるでしょう。
3.裁判所で審査がおこなわれる
自己破産を申し立てたあとは、裁判所によって申立書類に不備がないかなどの書類審査がおこなわれます。
弁護士に依頼していれば、裁判所からの連絡は弁護士を通じて伝えられるため、弁護士の指示に従って対応してください。
なお、自己破産の手続は「同時廃止事件」「管財事件(少額管財事件)」の二つに大きく分けられ、申立人の財産状況などをもとに裁判所によって判断されます。
- 同時廃止事件:換価処分できるほどの財産を持っていない場合、破産手続の開始と終了が同時におこなわれる手続
- 管財事件:一定以上の財産を持っている場合、裁判所によって破産管財人が選任され、財産調査・換価処分・債権者への配当などがおこなわれる手続
同時廃止事件でかかる日数・時間は以下のとおりで、手続全体に要する期間は3か月~半年程度です。
- 免責審尋:免責審尋まで2か月程度、免責審尋は5分~10分程度
- 免責許可決定の確定:1か月程度
管財事件は同時廃止事件よりも手続が複雑であり、かかる日数・時間は以下のとおりで、手続全体に要する期間は半年~1年程度です。
- 破産管財人との面接:問題がなければ30分~1時間程度
- 破産管財人による財産の処分:3か月程度
- 債権者集会:5分~1時間程度
- 免責審尋:5分~10分程度
カード破産をおこなう前の注意点
借金問題の解決方法としては任意整理や個人再生などもあって、それぞれメリット・デメリットがあり、状況に適した方法を選ぶ必要があります。
なお、生活状況によってはカード破産自体ができない可能性もあります。
ここでは、カード破産をおこなう前の注意点を紹介します。
本当にカード破産が適切か十分に検討する
借金問題で悩んでいる際は、以下の方法なども検討しましょう。
任意整理|業者と交渉して債務を減額する手続
任意整理とは、これまで発生した遅延損害金や利息のカット、返済期間の延長などについて債権者と直接交渉する方法です。
裁判所を通さずにおこなうため、融通が効きやすいという点がメリットです。
また、持ち家や自動車などの換価処分したくない財産がある場合には、任意整理がおすすめです。
しかし、手続後も完済するまで返済を続けなければならないため、収入が安定している必要があります。
個人再生|裁判所を通じて債務を大幅に減額する手続
個人再生は、裁判所を通して借金を大幅に減額してもらう方法です。
減額した借金は、基本的に3年かけて分割して支払います。
借金額に応じて減額の度合いは異なりますが、最大で負債総額の10分の1まで減額されます。
任意整理よりも大きく減額できるのがメリットです。
しかし、個人再生を申し立てるには、3年程度の分割弁済を確実に実行できるだけの収入が必要です。
カード破産できるかどうか確認する
カード破産をしたくても、免責不許可事由に該当していると免責を受けられない可能性があります。
免責不許可事由に該当するものとしては、以下のようなものがあります。
- 債権者名簿の虚偽記載
- クレジットカードの現金化
- 自己破産直前の財産隠匿
- 自己破産手続中の借入れ
- ギャンブルやショッピングなどの浪費による借金
- 一部の債権者にだけ特別な利益を与える目的での弁済の実施
- 裁判所に対する虚偽申告
- 過去の免責申立てから7年以内
- 裁判所がおこなう調査などに対して非協力的である など
カード破産を弁護士に依頼する場合の費用
カード破産の手続を弁護士に依頼する場合、相談料・着手金・報酬金・実費・日当などの費用がかかります。
ここでは、弁護士費用の相場や、弁護士費用が支払えない場合の対処法などを解説します。
弁護士費用の相場
カード破産でかかる弁護士費用の相場としては、以下のとおりです。
- 同時廃止事件:30~40万円程度
- 管財事件:50万円~80万円程度
- 少額管財事件:50万円~60万円程度
弁護士費用が支払えない場合の対処法
弁護士費用が支払えない方は、以下のような対応を検討しましょう。
法テラスを利用する
法テラス(日本司法支援センター)は、国によって設立された法律問題の相談機関で、借金・離婚・相続などのさまざまな法的トラブル解決のための支援をおこなっています。
そのひとつとして、経済的に余裕がない方を対象に無料法律相談を実施しています。
無料法律相談は1回につき30分程度で、同じ問題は3回まで相談可能です。
「収入や資産が一定額以下」などの要件を満たす必要はありますが、弁護士費用・司法書士費用の一時立替えなどもおこなっています。
利用条件や手続の流れなどについて、詳しくは「民事法律扶助業務|法テラス」をご覧ください。
弁護士費用を分割払い・後払いにしてもらう
弁護士費用は、一括払いである場合がほとんどです。
しかし、事務所によっては分割払いや後払いに対応している場合もあります。
弁護士費用の支払いが不安な場合は、相談時に費用について質問してみましょう。
自分で手続をおこなう
自分で自己破産の手続をおこなえば、費用を安く抑えることができます。
しかし、自己破産の手続は複雑で、専門的な書類を間違えずに全て揃えなくてはいけません。
裁判官との面接がおこなわれる場合もあり、その際は適切に回答する必要があります。
また、素人では裁判所に対して借金などの正確な情報が伝えらいことを踏まえ、自分自身での破産申立ては原則的に管財事件に移行することになっています。
管財事件は同時廃止事件に比べて裁判所に支払う「予納金」が高額であり、結果的に弁護士に依頼した場合と費用が大して変わらなくなるでしょう。
なるべくトラブルなくスムーズに解決したいのであれば、借金問題に注力している弁護士に頼るのがおすすめです。
カード破産についてよくある質問
カード破産では難しい法律用語が多く出てくるため、多くの方は理解に苦しんで焦ってしまいます。
さらに、世間では誤解されている情報などもあり、より不安感も大きくなるでしょう。
ここでは、カード破産をおこなう際によくある質問について解説します。
カード破産するとどうなる?破産後に得た財産は?
カード破産した場合、税金などの一部を除く借金の返済義務が免除されます。
ただし、家や自動車などの財産を処分したり、クレジットカードの新規作成やローンの利用ができなくなったりするなどのデメリットもあります。
また、破産手続開始後に得た財産のことを「新得財産」といいますが、新得財産については処分されません。
自己破産すると信用情報は回復しますか?
自己破産をするとブラックリストに載ることになりますが、信用情報は5年~10年程度で回復します。
信用情報が回復しているかどうかは、各信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に開示請求することで確認できます。
カード破産が勤務先にバレたら解雇される?
個人の借金問題は雇用契約に関係ないため、カード破産を理由に解雇はできません。
「勤務先から借金している」というようなケースでなければ問題ないでしょう。
しかし、保険外交員などの一部職業については仕事そのものができなくなるため、別部署へ異動になったりする可能性があります。
また、会社の取締役の場合は、カード破産の手続をおこなうと会社との委任契約が終了することがあり、その場合は役員としての地位を失います。
カード破産すると携帯電話は契約できない?パスポートの取得は?
カード破産しても、携帯電話の契約やパスポートの取得は可能です。
ただし、信用情報機関に事故情報として登録されることで、携帯電話の分割払いの審査には通らない可能性があります。
また、自己破産手続中の旅行については制限される場合があり、出国するには管轄裁判所の許可が必要となることがあります。
カード破産すると選挙権は無くなる?年金はもらえない?
選挙権は18歳以上の日本国民全員に与えられる権利であり、カード破産してもなくなりません。
また、年金についても制限はないため通常どおり受け取れます。
誤解されがちですが、カード破産は全ての国民に認められた正当な権利であり、懲罰の類ではありません。
カード破産すると親族や友人にバレる?
基本的に、カード破産しても親族や友人などに知られることはありません。
戸籍や住民票にも記載されないため、知られる可能性は低いといえるでしょう。
官報の掲載によって知られてしまう可能性はゼロではありませんが、一般の方が読む機会はほとんどありません。
ただし、自宅に債権者が取立てに来た場合に、運悪く知られてしまう可能性はあります。
取立てをストップするためには、弁護士に依頼して受任通知を債権者に発送してもらいましょう。
カード破産後は家族が代わりに支払うことになる?
家族が代わりに返済するのは、基本的に「家族が連帯保証人になっている場合」に限られます。
カード破産をすれば本人は返済義務が免除されますが、連帯保証人の返済義務は残ったままであるため、連帯保証人の家族についても債務整理を検討する必要があるでしょう。
カード破産をおこなう場合には、必ず事前に伝えておくようにしましょう。
なお、カード破産をしないままで債務者本人が亡くなった場合、借金も相続の対象になりますので、相続人となる家族(主として配偶者や子)に迷惑をかけてしまう可能性があります。
さいごに
カード破産をおこなえば、現在の借金問題を解決できる可能性があります。
住宅や自動車などの高価な財産は失ってしまうかもしれませんが、債権者からの取立てなどに怯える必要がなくなり、精神面でも大きなメリットがあります。
もっとも、法律を知らない素人が自力でおこなうと手間も時間もかかってしまいます。
借金問題に注力している弁護士なら、状況に適した解決方法をアドバイスしてくれるうえ、自己破産などの債務整理の手続も一任できるなど、心強い味方になってくれます。
初回相談無料の弁護士事務所も多くあるため、まずは一度相談してみましょう。

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