自己破産
自己破産できる金額はいくら?借金額以外の条件や手続き費用の目安額などを解説
2024.11.12
「自己破産をしたいが、できれば自宅を残したい」
「家族に引っ越しを強いるのはしのびない」
「なんとか自宅だけは守れないか」
このように、思い出の詰まった家を手放すことは辛いものです。
自宅を手放したくないがために、自己破産をためらう方も多いでしょう。
自己破産すると、原則持ち家は手放すことになりますが、住み続ける方法がないわけではありません。
この記事では、持ち家のある方が自己破産をする際の注意点や、持ち家を手放さずにすむ例外ケースについて解説します。
記事を最後まで読むことで、自己破産での持ち家売却の流れや、引っ越しをするタイミングなどもわかるでしょう。
持ち家を失うことが不安で自己破産をためらっている方は、ぜひ参考にしてみてください。
自己破産をすると、原則持ち家は処分されてしまいます。
やむを得ず持ち家を手放すことになると、家族そろって引っ越しをしなければなりません。
自己破産中に持ち家を処分される方法としては、以下の2つが挙げられます。
ここでは、自己破産手続き中に、持ち家がどのように処分されるのかについて解説します。
住宅ローンを完済していない場合、自己破産をすると、ローン会社が自宅を競売にかけてしまいます。
自宅には抵当権がかけられているのが通常で、ローン会社には売却代金から優先的にローン残高を回収できる権利があるからです。
競売の手続きは、以下のような流れで進みます。
競売開始から落札までは半年から1年程度かかります。
その間に引っ越し先を見つけて、家を引き渡さなければなりません。
ただし、実際は破産が始まると、ローン会社自身が競売を申し立てるケースは少なく、ほとんどの場合、破産管財人による任意売却として進められます。
自己破産は、破産者の財産の所有状況によって、「同時廃止事件」または「管財事件」に分けられます。
自宅が持ち家である場合、換価できる財産を所有しているため、管財事件が適用されるのが通常です。
管財事件で自己破産の手続きをおこなうことになると、裁判所は「破産管財人」を選出します。
破産管財人は、破産者が所有する財産を調査・管理・処分して現金に換え、債権者に配当する役割を担います。
持ち家は、換価できる財産として「破産財団」に分類され、破産管財人によって任意売却されるのが一般的な流れです。
破産管財人が任意売却するためには、抵当権をもつローン会社の同意を得る、つまり抵当権を抹消してもらう必要があります。
しかし、通常、競売よりも任意売却のほうが売却価格は高くなるため、ローン会社は任意売却に同意して、破産管財人による売却を選択することが多いようです。
破産管財人による任意売却の手続きは、以下のような流れで進みます。
競売や任意売却でも買い手がつかなかった場合には、自己破産しても自宅の処分を免れる可能性もあります。
競売は、一定期間内に入札者を募る「期間入札」のあと、早く入札した者が落札者となる「特別売却」を経て、価格を下げて再度「期間入札」をおこなう流れが通常です。
民事執行法では、この「期間入札」「特別売却」の流れを3回繰り返しても入札の参加者が出なければ、裁判所は競売手続きを停止できると規定しています(同法第68条の3)。
また、破産管財人による任意売却でも買い手がつかない場合、破産管財人は売却を諦め、裁判所の許可を得て持ち家を破産財団から放棄します。
このように、持ち家が破産者に戻るのは、不動産の競売手続きが停止された場合、もしくは破産管財人が売却して換価することを諦めた場合のみです。
ただし、破産管財人が不動産を放棄する可能性は非常に低いでしょう。
よほど売りにくい場所などでない限り、破産管財人が破産者の自宅を放棄することは、基本的にはないようです。
自己破産する際には、持ち家の処分は免れません。
ただし、破産者本人が居住している住宅全てが、破産によって処分されてしまうわけではありません。
以下で、破産した場合に持ち家はどうなるのか、パターン別に解説します。
自己破産の手続き前に住宅ローンを完済している場合は、ローン会社の抵当権がついていないため、持ち家は破産管財人によって任意売却されます。
法律上は、破産管財人による売却も競売でおこなうように定められていますが、通常は任意売却のほうが競売よりも高い金額での落札が期待できるため、任意売却を選択されることがほとんどです。
任意売却では、破産管財人が売主となって売却手続きを進め、買い手と売買契約を結びます。
決済手続きが完了すると、破産者は自宅を引き渡さなければなりません。
任意売却によって得られた売却代金は、債権者へ配当するための資金となります。
なお、不動産の購入希望者が複数人いて、破産管財人に対して依頼があれば、「任意入札」が実施されることもあります。
ローン返済中の場合、裁判所から破産手続き開始決定が出ると、住宅ローンのローン会社は、抵当権をもとに競売を申し立てることができます。
抵当権は破産手続き開始決定に優先するため、破産手続きが始まっても債権者平等の影響を受けず、抵当権者であるローン会社は家の売却代金から優先して弁済を受ける権利があるからです。
ローン会社が競売を申し立て、最も高い金額を入札した者が落札者となります。
破産者は落札者との売買が成立した時点で、やはり自宅を引き渡さなければなりません。
ただし、実際ローン会社は自分で競売を申し立てるより、破産管財人による任意売却に協力するでしょう。
任意売却でも競売でも、抵当権者が優先的に弁済を受けられることには変わりません。
破産管財人に任せれば、ローン会社は競売を申し立てる手間を省くことができます。
また、通常任意売却は競売よりも高く売却できるため、ローン会社としては、自分で競売を申し立てるよりも多く弁済を受けられることになるのです。
自宅が共有名義になっている場合、あくまでも破産した本人の持ち分のみが破産の換価対象となるため、共有者の持ち分には影響がありません。
自宅が共有名義であった場合は、破産者の持ち分のみが換価処分され、共有者の持ち分は残ることになります。
ただし、ひとつの不動産のうち、破産者名義の持ち分のみを売却することは現実的ではありません。
実際は共有者名義の部分も一緒に売却され、共有者は売却代金から持ち分に応じた金額を受領することになります。
また、破産管財人が自宅を任意売却する前に、共有者に対して、破産者の持ち分を買い取る意思がないか確認されることもあるようです。
共有者が自身の持ち分の売却を拒んだ場合でも、破産管財人は共有状態を解消するために、裁判所に「共有物分割請求訴訟」を提起できます。
共有物分割請求訴訟とは、共有状態の解消を目的として、裁判所が分割方法を決める訴訟です。
共有物が自宅である場合には、共有者が破産者の持ち分を買い取る「代償分割」か、持ち家を売却し、売却代金を所有割合に応じて分ける「換価分割」の方法がとられます。
結局、共有名義になっていたとしても、破産で自宅を失うことは避けられないと考えたほうがいいでしょう。
自宅が破産者以外の名義になっていれば、その家を失うことはありません。
自己破産で処分されるのは、あくまでも破産者本人名義の財産のみだからです。
ただし、自己破産前に自宅を守るために名義を家族などに移す行為は、財産隠しとみなされることもあります。
発覚すれば、破産による免責を受けられない可能性もあるでしょう。
賃貸住宅であれば、自己破産の影響は受けません。
家賃さえ支払っていれば、破産を理由に大家や管理会社から退去を迫られることはないため、破産をしてもそのまま住み続けることが可能です。
ただし、家賃を滞納した状態で自己破産をすると、大家や管理会社が破産債権者となるため、賃貸借契約を解除されてしまう可能性もあります。
また、収入に見合わない家賃の賃貸住宅に住んでいる場合、破産管財人によって賃貸契約を解除されることもあるでしょう。
基本的に、自己破産をするなら自分名義の自宅は手放さざるを得ません。
破産によって貸付金を全額回収できなくなった債権者にとって、不動産の売却代金は貸付金を回収するための資金となるからです。
ただし、以下のような場合なら、持ち家を残せる可能性もあります。
家族が家を一括購入してくれれば、そのまま住み続けることは可能です。
ただし、破産者名義の家を購入するためには、破産管財人による任意売却において、相場と同じ価格で購入しなければなりません。
家族が割安な価格で破産者の家を購入することは、債権者の利益に反するためです。
破産手続き上は家族であるか否かにかかわらず、正当な売買契約が交わされる必要があります。
また、通常分割払いは認められないうえ、銀行からの融資を受けられる可能性は低いため、代金は一括で支払わなければなりません。
リースバックとは、売却した家の新しい所有者と交渉し、賃貸契約を結ぶことで、自己破産後は家賃を支払って住み続けるという方法です。
さらに、将来的に再度自宅を買い取る意思があるのなら、リースバックの契約時に「再売買の予約」をしておくことで、資金が貯まり次第、自宅を買い取ることもできます。
リースバックをする際に注意すべきことは、リースバックするからといって売却代金を低く設定できないことと、それにともない、相場どおりの家賃を支払わなければいけないことです。
また、ローン会社や破産管財人と相談のうえで、手続きを進める必要があります。
持ち家を絶対に手放したくないなら、自己破産以外の債務整理をおこなうのが現実的といえます。
債務整理には、ほかに「個人再生」と「任意整理」があり、どちらの手段でも家を残すことは可能です。
個人再生とは、裁判所に申し立てることで借金の残元金を減額させ、その額を基本的には3年かけて分割で支払っていく手続きです。
どれくらい減額されるかは借金額によって異なりますが、5分の1から最大10の1まで圧縮されます。
さらに、「住宅ローン特則」を使えば、住宅ローンを手続きから除外することができるため、自宅を失うことはありません。
次に述べる任意整理よりも大きく債務減額ができることも、個人再生を選ぶメリットになるでしょう。
ただし、個人再生を申し立てるためには、3年程度の分割弁済を確実に続けられるだけの安定・継続した収入があることが条件です。
確実に分割弁済できることを証明できないと、裁判所からの許可はおりません。
任意整理とは、今までに発生した遅延損害金や今後の将来利息のカット、返済期間の延長について債権者と交渉し、和解を目指す方法です。
裁判所を通さずに、弁護士などが直接債権者と交渉して進めます。
債務整理手続きのなかで最も減額できる額が少ない方法ですが、裁判所を通さないため融通が利きやすいメリットがあります。
住宅や車など、失いたくない所有物がある場合、それを避けてほかの債務だけを任意整理することも可能です。
ただし、和解後は分割払いが予定されているため、安定して返済を継続できるだけの収入が必要です。
自己破産前は、なるべく多くの財産を残したいと考えるかもしれません。
しかし、だからこそ破産前の財産処分は厳しくチェックされます。
特に持ち家がある場合、以下の行為に十分注意しましょう。
自己破産することがわかっていながら、自宅を守るために家族などに所有権を移転することは、債権者を害する行為に該当します。
自己破産では、過去2年間の財産の動きについて、破産管財人による綿密な調査が実施されます。
2年以内に所有権を別の人に移しているにもかかわらず、正当な金額の支払いを受けた記録がなければ、財産隠しとみなされる可能性が高いでしょう。
また、破産管財人には「否認権」があります。
破産前の所有権移転が債権者の利益を害するものだと判断されれば、名義変更は無効とされるでしょう。
財産隠しは免責不許可事由となり、破産による債務免除を受けられなくなる可能性もあります。
それだけでなく、悪質と判断されれば刑事責任を問われる可能性もあるのです。
「詐欺破産罪」では、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方を科されます(破産法第265条第1項)。
自宅を守りたいからといって、自己破産前に名義変更の手続きをすることはおすすめできません。
適正価格以下の金額で破産前に自宅を売却すると、破産管財人に否認権を行使され、売買を無効とされる可能性があります。
破産管財人が売却したほうが高い売却代金を得られたのであれば、債権者にそれだけ多くの配当ができたと考えられ、債権者を害する行為に該当するからです。
これから破産する方にとって、少しでも財産を残しておきたいと考えるのは自然なことです。
そのため、自己破産前の財産処分行為は、裁判所にも破産管財人にもしっかりとチェックされます。
不動産の所有権移転は登記に記載されるため、隠しきれるものではありません。
発覚すれば刑事責任をも問われる可能性があることを念頭に、破産前の誤解を招くような財産処分はなるべく避けましょう。
自己破産は多くの経験者にとって、人に詳しく話したい内容ではないでしょう。
だからこそ、正確な情報が伝わらず、事実とは違ううわさが出回ることもよくあります。
以下で、自己破産についてよくある疑問について解説します。
同居の家族に知られずに自己破産をするのは難しいでしょう。
自宅の名義が破産者本人なら、自宅の売却は免れず、家族全員が引っ越しを余儀なくされるからです。
また、自己破産を申し立てる際は、生計を同じくしている家族の収入を証明する書類も提出しなければなりません。
ただし、離れて暮らす家族であれば、保証人などになっていない限り、知られずに自己破産をすることは可能です。
夫婦名義の不動産でも、一方が破産すれば自宅を失うことは避けられません。
住宅ローンが未完済の場合、家全体にローン会社の抵当権がかかっているため、全体が競売にかけられてしまうからです。
また、住宅ローンを完済している場合には、本来は破産者の持ち分のみが売却されることになりますが、現実的には全体が売却されるのが通常です。
自宅の売却代金から持ち分の割合を按分した額が、破産者以外の持ち分権者に支払われることになります。
自己破産の開始決定が出ると、買い手に自宅を引き渡される前に引っ越しをしなければなりません。
ただし、破産管財人と話し合い、引っ越しまでにある程度準備の時間をもらうことは可能です。
その間に賃貸住宅や親族の家などに引っ越す手続きを進めましょう。
破産しても賃貸借契約はできるので、破産者名義でアパートなどを借りて引っ越すことは可能です。
ただし、家賃保証会社が信用情報機関に加盟している会社である場合は、破産の事実が発覚すると審査が通らない可能性もあります。
その場合、家族名義で契約することや、公営住宅に引っ越すことなどを検討しましょう。
自己破産後5年から7年程度は住宅ローンを組むことはできません。
自己破産をすると、破産の事実が事故情報として信用情報機関に記録されてしまいます。
住宅ローンを組む際、ローン会社は必ず信用情報機関に契約者の信用情報を照会するため、そこで破産の事実が発覚すれば、ローンの審査には通りません。
記録は5年から7年程度残るため、その間は住宅ローンを組むことは難しいでしょう。
なお、自身が事故情報に登録されているかどうかは、以下の3つの機関に開示請求すると確認できます。
【参考記事】
自己破産をする場合、原則破産者名義の持ち家を維持するのは難しいでしょう。
どうしても持ち家を維持して自己破産したい場合は、親族に一括購入してもらう方法や、リースバックして住み続ける方法もあります。
しかし、どうしても自宅を手放せない場合は、自己破産以外の選択肢を検討するのが現実的でしょう。
債務整理には、任意整理や個人再生という方法もあります。
債務免除とはいきませんが、個人再生なら元金の5分の1、最大で10分の1程度まで債務を減らすことも可能です。
債務状況や家族構成などによっても、どの手段を選択すべきかが違います。
自己破産やそのほかの債務整理手続きに詳しい弁護士に相談し、最適な方法を選びましょう。