過払い金請求
過払い金請求の流れ自力でおこなう場合と弁護士に依頼する場合の違いも解説
2024.11.11
過払い金とは、利息制限法で定められた上限金利を超えて支払った利息分のお金を指します。
本来は支払う必要がなかったお金であることから、借入先に対して過払い金を請求することで取り戻すことが可能です。
しかし、過払い金請求には「借金を完済してから5年または10年」「請求できる権利があると知ったときから5年」などの時効期間が存在します。
この時効期間が経過し、消滅時効の援用をされると、過払い金を請求する権利が消滅してしまいます。
そのため、過払い金請求の時効には、注意する必要があります。
本記事では、過払い金請求の時効に関するルールや、すでに完成から10年以上が経過し時効が完成していても、過払い金を請求できる場合について解説します。
弁護士であれば安心して十分なサポートを受けられる可能性が高いためです。弁護士に相談するメリットは以下の通りです。
・漏れのない正確な請求ができる
・債権者と対等に交渉を進められる
・訴訟に発展した場合もスムーズに対応できる
・債務整理もセットで依頼できる(過払い金返還請求をしても債務が残る場合)
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過払い金を請求する権利は時効が完成し、相手方に消滅時効を援用されることで消滅してしまうことがあります。
過払い金請求の時効には、以下の種類があり、どちらか早いほうが経過した時点で時効が成立します。
過払い金請求で「権利を行使することができる時」とは、借金の完済により取引が終了した時点です。
そのため、借金の完済から10年の経過により過払い金請求の時効が完成します。
他方、「権利を行使することができることを知った時」とは、過払い金の存在を知った時点が挙げられます。
借金の完済から10年が経過していなくても、過払い金の存在を認識してから5年が経過すれば、その時点で時効が成立する可能性があるため注意が必要です。
そのため、過払い金が発生していると考えられる場合には、早めに過払いの請求に着手することが大切です。
はじめに、過払い金請求の時効が完成する期間と、その起算点について見ていきましょう。
過払い金請求の時効期間は、借入先である金融機関と最後に取引した時期によって異なります。
なぜなら、2020年4月1日付で施行された改正民法によって、時効のルールが変更されたためです。
借入先である金融機関との最後の取引が2020年3月31日であった場合、過払い金請求をおこなうための権利は、最後の取引日から10年が経過することで消滅します。
10年以上経過すると、過払い金請求ができないといわれるのは、このためです。
金融機関との最後の取引が2020年4月1日以降におこなわれていた場合、最後の取引日から5年が経過することで、過払い金を請求する権利が消滅します(民法166条1項1号)。
このように過払い金が請求できる期間は、民法が改正されたことで5年に短縮されています。
過払い金請求における時効期間の起算点は、借入先である金融機関との「最後の取引日」となります。
「最後の取引日」とは、債務を完済済みであれば完済日、未完済であれば最後の入出金(返済または借入れ)がおこなわれた日を指します。
たとえば、2009年4月1日に借り入れた金銭を2014年4月1日に完済し、そのあとは取引をおこなっていないとします。
この場合、完済日である2014年4月1日を起算点として、10年が経過することにより過払い金請求権の時効が完成します。
具体的には、2024年4月1日が経過すると、過払い金を請求できなくなってしまうのです。
ただし、同じ金融機関などから完済・借入れを繰り返した場合には、取引の一連性(後述)の有無によって、時効の起算点が変化することがあります。注意しましょう。
前述のとおり、借金の完済が2020年3月31日以前の場合でも、過払い金を請求できる権利は完済してから10年で消滅します(2020年4月1日以降の場合は5年)。
しかし、借金の完済から10年以上経過していても、以下の4つのいずれかに該当する場合は時効が完成しません。
結果として、引き続き過払い金を請求できる可能性があります。
消滅時効は、一定の手続きを取ることで、時効の完成を一時的に阻止することができます。
これを旧民法では「時効の停止」、現行民法では「時効の完成猶予」といいます。
時効の停止または完成猶予の効果が生じているうちは、消滅時効が完成しません。
そのため、完済から10年以上経過していたとしても、引き続き過払い金請求をおこなうことができます。
時効の停止・完成猶予の効果を生じさせる具体的な事由については、後述します。
過払い金請求に関する法的手続きをおこなうことで、消滅時効をリセットしてゼロに戻すことができます。
これを旧民法では「時効の中断」、新民法では「時効の更新」といいます。
消滅時効が中断または更新されると、時効期間はその時点から再びカウントされます。
したがって、完済から10年以上が経過していても、依然として過払い金請求をおこなうことができます。
時効の中断・更新の効果を生じさせる具体的な事由については、後述します。
同じ金融機関との間で何度も完済・借入れを繰り返していた場合、過払い金請求権の消滅時効の起算点については、以下の2つの考え方があり得ます。
法的にどちらの考え方が採用されるかについては、各借入れが「ひとつの連続した貸付取引である」と評価されるかによって決まるというのが、最高裁判例の立場です。
最高裁は以下の事情を考慮したうえで、各借入れが「ひとつの連続した貸付取引である」と評価できる場合、前の取引の過払い金をあとの取引の返済に充当する合意が存在するとしています(最高裁平成20年1月18日判決)。
そして、複数の借入れから成る一連の取引が、過払い金充当合意を含む基本契約に基づく継続的取引であれば、全ての取引が終了した時点から過払い金請求の消滅時効が進行すると判示されています(最高裁平成21年1月22日判決)。
したがって、完済・借入れが繰り返されていても、各借入れがひとつの連続した貸付取引であると評価されれば、完済後10年以上経過していても、過払い金請求が時効消滅していない可能性があるのです。
貸金業者が不法行為をしていた場合についても、時効期間が過ぎていても過払い金の請求をおこなえます。
貸金業者から以下のような不法行為がおこなわれていないか確認しましょう。
このような不法行為がおこなわれていた場合、被害者が損害を知ったときから3年が消滅時効の期間となります。
そのため、最後の取引日から10年以上経過していたとしても、過払い金を請求することが可能です。
過払い金請求の時効完成を阻止するためには、時効の「完成猶予」または「更新」のいずれかの措置を講じる必要があります。
また2020年3月31日以前であれば、時効の「停止」または「中断」事由の発生をもって、消滅時効が完成していないことを主張できます。
以下のいずれかの事由が発生した場合、時効の完成猶予の効果が生じます。
簡易的に時効の完成猶予の効果を生じさせたい場合には、内容証明郵便を送付する方法が一般的です(民法150条1項)。
ただし、完成猶予の効果は6ヵ月間しか続かないため、訴訟の提起などの準備を進めましょう。
以下のいずれかの事由が発生した場合、時効の更新の効果が生じます。
2020年3月31日以前に適用されていた旧民法では、以下の時効の停止・中断事由が定められていました。
民法改正附則10条2項により、2020年3月31日以前に時効の停止または中断の事由が発生した場合、停止・中断の効力が有効に生じます。
なお、2020年3月31日以前に成立した債権(過払い金請求権など)であっても、今後の手続きによって時効の完成を阻止したい場合には、完成猶予または更新の手続きを取ることが必要です。
過払い金請求は、以下の流れでおこないます。
時効期間にも注意しつつ、早めに請求の手続きに着手しましょう。
過払い金を請求するための手続きの流れ
過払い金請求をおこなう際には、まずは弁護士に相談するのが安心です。
弁護士は、過払い金を正確に計算してくれるほか、実際の請求手続きも全面的に代行してくれます。
適正額の過払い金を回収したい場合には、弁護士に請求を依頼するのがよいでしょう。
また借金が未完済の状態であれば、弁護士が金融機関などに受任通知を発送することで、取立てを止められるメリットがあります。
無料相談を実施している弁護士も多いので、一度弁護士に相談してみましょう。
消滅時効の完成が迫っている場合には、ひとまず相手方に内容証明郵便による請求書を送付し、消滅時効の完成を猶予するのがよいでしょう(民法150条1項)。
正確な過払い金額がわかっていなくても、債権者・債務者・借入日などを記載すれば、過払い金請求権を特定できます。
なお、弁護士に依頼している場合には、受任通知と請求書を兼ねた内容証明郵便を発送することも多いです。
前述のとおり、内容証明郵便による時効の完成猶予の効果は、6ヵ月間に限定されています。
そのため、弁護士とコミュニケーションを取りながら、法的手続きを通じた請求の準備を迅速に進めましょう。
実際に請求する過払い金額は、「引き直し計算」をおこなうことで算出します。
まず利息制限法の上限金利が適用されたと仮定して、本来支払うべき債務の金額を求めます。
そして、その金額と実際に支払った債務の金額を比較して、後者が上回っていれば、その金額が過払い金です。
引き直し計算の方法は複雑ですが、最近では計算ツールを公開するウェブサイトもあります。
また弁護士に相談することで、引き直し計算によって正確な過払い金を算出してもらえます。
過払い金請求をスムーズにおこなうためには、引き直し計算を正しくおこなうことが大切です。
自身での対応に不安がある場合には、弁護士に相談してください。
引き直し計算が完了したら、過払い金額を記載した正式な請求書を相手方に送付し、和解交渉を提案します。
和解交渉では、過払い金額や支払方法について、当事者が話し合いにより調整をおこないます。
和解が成立すれば、早期かつ低コストで過払い金を獲得できる点が大きなメリットです。
一方、当事者間の意見の対立が激しく、和解が不成立となるケースもあります。
その場合は、過払い金請求訴訟を提起し、裁判所に場を移して請求を続けましょう。
弁護士に依頼すれば、和解交渉・訴訟による請求のいずれについても、手続きを全面的に任せられます。
法的に根拠のある主張を展開できることに加えて、債権者対応や裁判所対応の手間が省けることも大きなメリットです。
訴訟を提起すると、判決が確定するまでの間は、過払い金請求権の消滅時効の完成は猶予されます(民法147条1項1号)。
訴訟の判決が確定すると、時効の更新の効果が生じ、過払い金請求権の消滅時効期間がリセットされます(同条2項)。
過払い金の支払いを命ずる判決が確定した場合、そのあとの過払い金請求権の消滅時効期間は、判決確定日から10年です(民法169条1項)。
和解交渉が成立した場合には、和解の内容にしたがって、過払い金の精算をおこないます。
また、訴訟で過払い金の支払いを命ずる判決が確定した場合、相手方は確定判決の内容にしたがって、過払い金を精算する義務を負います。
もし相手方が確定判決を無視して、過払い金を支払おうとしない場合には、裁判所に強制執行を申し立てましょう。
裁判所が相手方の財産(預貯金・売掛金・不動産など)を差し押さえたうえで、その換価・処分等をおこなうことにより過払い金を回収できます。
強制執行を申し立てたい場合には、弁護士に依頼するのがスムーズです。
過払い金を請求するための権利は、完済日から5年または10年が経過すると時効が消滅してしまいます(完済日の時期かによって、消滅時効期間が変わります)。
過払い金があることが疑われる場合には、権利の時効消滅を阻止するため、早めに検討へと着手することが大切です。
弁護士に依頼すれば、過払い金の計算から実際の請求まで、必要な手続きを一任できます。
過払い金請求をおこないたい場合には、お早めに弁護士までご相談ください。
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