過払い金請求とは、消費者金融に対して払いすぎた利息を取り戻す手続きのことです。
利息制限法などの改正の影響により、2010年の6月以前に消費者金融に対して返済をしていた方は、現行の法律では違法となる高金利での支払いをしていた可能性があります。
そのため、違法な金利で支払った利息分については、過払い金請求で取り戻すことができるのです。
消費者金融に対する過払い金請求は、法律でも認められている正当な手続きですが、いくつかのデメリットが存在するので注意が必要です。
本記事では、過払い金請求のデメリットや、過払い金請求をおこなう際の注意点について詳しく紹介します。
消費者金融に対して過払い金請求をした際の3つのデメリット
消費者金融に対して過払い金請求をした際のデメリットは、主に以下の3つです。
- 完済していない場合は信用情報機関に登録される
- 同じ消費者金融から新たに借り入れができなくなる
- 借金があったことを家族に知られる可能性がある
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
1.完済していない場合は信用情報機関に登録される
借金をまだ完済していない消費者金融に対して過払い金請求をすると、信用情報機関に登録されてしまいます。
信用情報機関とは、個人の借金に関する情報を登録している会社のことであり、借金の滞納履歴や債務整理をした情報などが記録されています。
「過払い金請求をした」という情報自体が信用情報機関に登録されることはありません。
しかし、返済中の借金について過払い金請求をすると、債権者と交渉のもと借金の利息を減額してもらう手続きである任意整理と同じ扱いとなり、「任意整理をした」として信用情報機関に情報が記録される可能性が高いといえます。
過払い金請求によって信用情報機関に情報が登録されると、以下のようなデメリットが生じます。
【信用情報機関に登録された場合のデメリット】
- クレジットカードの新規発行ができなくなる
- 現在使っているクレジットカードが契約更新または途上与信のタイミングで強制解約となる
- 住宅ローンや自動車ローンなどを含め新たな借入ができなくなる
- 奨学金や住宅ローンなどの保証人になれなくなる など
なお、信用情報機関に任意整理の履歴などの金融事故情報が記録された状態のことを「ブラックリスト」とも呼びます。
過払い金請求をしたことによってブラックリストになってしまうと、一定期間はローンやカードなどの審査に通らなくなってしまうので注意が必要です。
ただし、すでに完済している借金について過払い金請求をした場合はブラックリストとなる心配はありません。
ブラックリストの仕組みや、自分がブラックリストとなっているかどうかの確認方法などは以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】ブラックリストとは?確認方法やデメリット、登録情報から解除される方法を解説
2.同じ消費者金融から新たに借り入れができなくなる
過払い金請求自体は法律で認められた正当な手続きなので、仮に過払い金の存在が発覚した場合に消費者金融が返還を拒むことはできません。
しかし、消費者金融からすると「一度支払ったお金を返せ」と要求されるのは、嬉しいことではないでしょう。
そのため、過払い金請求をした会社内での顧客名簿に「過払い金請求をした顧客」として登録され、今後は一切取引をしてもらえなくなる可能性が高いといえます。
このような状態は「社内ブラック」とも呼ばれ、最長でも5年~7年程度で解除される一般のブラックリストとは異なり、社内ブラックは原則として半永久的に解除されることはありません。
また、社内ブラックの情報はグループ会社・関連企業にも共有されるため、実際にこれまでに取引をしていない会社とも、契約を断られる可能性が生じます。
たとえば、アコムからの借金について過払い金請求をした際は、親会社である三菱UFJグループのカードローンなどの審査にも通らなくなる可能性が高いといえるでしょう。
消費者金融に対して過払い金請求をすると、同じ消費者金融や関連企業から新たに借り入れをすることは難しくなるので注意が必要です。
3.借金があったことを家族に知られる可能性がある
過払い金請求をする際は、消費者金融から取り寄せた取引履歴を元に、過払い金が本当に存在しているか調べる必要があります。
過払い金請求をしている間の消費者金融からの郵便物などによって、同居している家族には借金についてバレてしまう可能性があるでしょう。
法律事務所に過払い金請求を依頼すれば、個人名で郵便物を送付するなど、家族にバレないように配慮してくれるため、家族にバレたくない方は弁護士などの専門家への依頼がおすすめです。
消費者金融に対する過払い金請求の手続きが難しいというデメリットもある
過払い金請求は、以下のような手順を踏めば専門家に依頼せずに自力でおこなうことも可能です。
- 消費者金融に取引履歴の開示を依頼する
- 過去の返済について、現行法律での上限金利内の利息で計算し直す(引き直し計算)
- 引き直し計算した結果を元に消費者金融と交渉し、過払い金を返還してもらう
しかし、これらの作業は素人が自力でおこなうのは非常に難しく、とくに非協力的な消費者金融の場合はなかなか手続きが進まず精神的な負担も大きくなってしまいます。
ここでは、消費者金融に対する過払い金請求を自分でおこなう際のデメリットについて簡単に紹介します。
取引履歴が開示されない可能性がある
貸金業者は、取引履歴の開示を求められたら応じなくてはいけないと貸金業法によって定められています。
しかし、「過去の取引データはすでに消えている」「社内の都合により取引履歴の開示には応えられない」などの言い分により、取引履歴の開示になかなか応じてくれない消費者金融もいます。
また、開示されたとしても、過去の取引全てではなく、一部の期間のものだけというケースも考えられるでしょう。
一部の取引履歴しか開示してもらえない場合は、開示された部分の情報や、通帳の記録などをもとに、どれだけの利息を支払っていたか推定する必要があります。
こうした作業は素人にはとても難しく、また推定内容によっては消費者金融側が過払い金請求に応じてくれないリスクも生じるでしょう。
裁判所によると、取引履歴を元にして過払い金の存在を立証する義務は、過払い金請求をする側が果たさなくてはいけません。
自分で消費者金融に取引履歴の開示請求をした結果、十分な取引履歴が開示されなかった場合は、過払い金請求自体が難しくなる可能性が高いといえるでしょう。
利息の引き直し計算が複雑で間違えやすい
過払い金請求をする際は、過去の取引履歴を元に、払いすぎた利息がいくらなのかを計算する「引き直し計算」を正確におこなう必要があります。
しかし、数年以上の長い期間にわたる返済の引き直し計算は非常に複雑で間違えやすく、正確におこなうには根気と緻密さが要求されます。
引き直し計算が間違っている状態で過払い金請求をしたとしても、「根拠が不十分である」として、過払い金の返還に応じてくれない可能性が高いでしょう。
インターネット上などで配布されている引き直し計算ツールなどを利用する選択肢もありますが、確実に過払い金を取り戻すには弁護士などの専門家に依頼するのが無難です。
場合によっては訴訟が必要になってしまう
消費者金融に対して過払い金請求をしても、こちら側の提示額に消費者金融が納得してくれず、なかなか和解ができないケースもあります。
過払い金請求に対して強気に出てくる消費者金融の場合は、訴訟を通して過払い金の返還請求をする必要があります。
自分で裁判所に申し立てて訴訟を起こすことも可能ですが、裁判所への提出書類の準備や審問への出席など多大な労力が必要となります。
弁護士に過払い金請求を依頼すれば、訴訟に発展した場合もそのまま代理人として手続きを進めてくれるため安心です。
消費者金融に対して過払い金請求をおこなう際の4つの注意点
消費者金融に対して過払い金請求をおこなう際は、以下の4点に注意しましょう。
- 過払い金が発生していない場合がある
- 過払い金の返還請求権には事項がある
- 請求先がすでに倒産している可能性がある
- 過払い金が少ないと費用倒れになる可能性がある
それぞれについて、簡単に解説します。
1.過払い金が発生していない場合がある
過払い金請求の対象は、原則として利息制限法などの改正がおこなわれた2010年6月以前の借金です。
しかし、消費者金融によっては、法改正がおこなわれる以前から利息改定の対応をしており、2007年~2009年頃の取引でも過払い金が発生していない可能性があります。
具体的に大手の消費者金融で過払い金が発生している可能性がある期間は以下のとおりです。
- アコム:2007年6月18日以前
- プロミス:2007年12月19日以前
- アイフル:2007年8月1日以前
- レイク:2007年12月2日以前
これらの消費者金融から借金をしていた場合は、2010年以前の借入だからといって過払い金が発生しているとは限らないため注意が必要です。
実際に過払い金が発生しているか確認するには、弁護士などの専門家に相談しましょう。
2.過払い金の返還請求権には時効がある
過払い金は、2010年6月以前の借金について発生している可能性があります。
ただし、過払い金の返還請求権には時効があり、完済してから10年間が経過しているものについては過払い金の返還請求ができません。
過払い金があるかもしれない方は、早急に弁護士に相談するのがおすすめです。
3.請求先がすでに倒産している可能性がある
過払い金の返還請求が認められて以降は、多くの消費者金融が倒産しています。
自分が借りていた消費者金融が倒産していた場合、請求する相手がすでに存在していないことになり、過払い金の返還請求はできません。
合併などにより名称が変更となっているだけの場合は、過払い金請求ができるケースもあるため、弁護士などの専門家に相談してみましょう。
4.過払い金が少ないと費用倒れになる可能性がある
過払い金請求は、弁護士などの専門家に依頼しておこなうのが一般的ですが、費用として着手金や成功報酬などで数万円かかります。
過払い金の金額によっては、弁護士費用のほうが高くついてしまい費用倒れになってしまう可能性もあるでしょう。
弁護士などの専門家に見積もりを依頼すれば、回収の見込みがある過払い金の金額と、弁護士に支払う費用を算出してくれるため、まずは話だけでも聞いてみるのがおすすめです。
なかには、回収できた場合に、その中から弁護士費用を差し引くとして、赤字にならないような報酬体系としている弁護士もいるようです。
さいごに|過払い金請求を検討しているなら早めに弁護士に相談しよう
本記事では、消費者金融に過払い金請求をする際のデメリットや注意点について紹介しました。
過払い金請求の手続きは複雑で、デメリットやリスクも一人ひとりの状況によって異なります。
過払い金をしたことによってブラックリストとなってしまう可能性もあるでしょう。
また、過払い金の返還請求権は完済から10年間で時効となるため、早めに請求しないと過払い金を取り戻せない恐れもあります。
過払い金請求を検討している方は、少しでも早く弁護士に相談しましょう。

