借金減額制度とは、債権者との交渉や裁判所の手続きによって借金を減額・免除できる方法です。
主に任意整理・個人再生・自己破産・過払い金返還請求の4つの種類があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。
借金で悩んでいる方は、借金減額制度が具体的にどのような手続きをする制度なのか、疑問に思っている方もいるかもしれません。
文字どおり借金を減額・免除できる手続きではありますが、知っておくべきリスクも存在します。
本記事では、借金減額制度のデメリットについて詳しく解説したうえで、各手続きの内容についても紹介します。
自分の場合はどの手続きが適しているのか、債務整理を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
借金減額制度を使うとどうなる? | 制度に共通するデメリット
借金減額制度を使うにあたって、共通するデメリットがあります。ここでは、各手続きに共通するデメリットについて、解説します。
一部のケースを除きブラックリストに掲載され、新たな借り入れなどができなくなる
借金減額制度では、状況に応じて過払い金返還請求・任意整理・個人再生・自己破産をおこないます。
共通するデメリットは、それぞれの手続きをおこなうと信用情報機関に事故情報が登録される点です。
事故情報が登録され、ブラックリストとなると新たな借入やクレジットカードの作成、ローンを組むことはできません。いずれも5年~7年間は事故情報が消えませんが、一部例外もあります。
過払い金返還請求の場合は、引き直し計算で借金が残るか残らないかで信用情報の扱いが異なります。
すでに完済している借金の過払い金請求はブラックリストに掲載されませんが、返済中の借金の過払い金請求をした場合は引き直し計算をしても借金が残るケースがあります。
その場合、任意整理をしたことを示す事故情報が登録されブラックリストに掲載されてしまいます。
ただし、引き直し計算で過払いが発生して過払い金請求をした場合でも、一時的に事故情報が登録されることがあります。
過払い金請求で借金が残らないとわかれば事故情報は削除されますが、一時的に登録されることを留意しておきましょう。
ローン返済が終わっていない高価なものが処分されてしまう可能性がある
個人再生と自己破産では、ローンの返済が終わっていない高価なものは処分される可能性があります。
たとえば、30万円のパソコンをローンで購入して返済中の場合、債務整理をおこなうと処分の対象となります。
個人再生や自己破産は全ての借金が手続き対象となりますが、任意整理では交渉する債権者を選択可能です。
この場合、ローンを組んでいるカード会社を債務整理対象から外すことで、ローンで購入したものを処分されないようにできます。
保証人に迷惑がかかる可能性がある
保証人を立てている借金がある場合は注意が必要です。
債務整理をして借金の減額や免除をされたとしても、保証人は返済義務を免れません。
そのため、債務者の借金を保証人が肩代わりすることになり、多大な迷惑をかけてしまいます。
借金額が大きければ、最悪のケースとして保証人も債務整理をすることになるかもしれません。
ただし、任意整理であれば手続きをおこなう債権者を選べるため、保証人が借金を肩代わりすることを避けられます。
借金減額制度を使う主なメリット
借金減額制度を利用すると、毎月の返済額が減る、あるいは借金が免除される可能性があります。
また、弁護士や司法書士が債務整理の開始を知らせる受任通知を債権者に送ることで督促や取り立てもなくなる点もメリットです。
返済負担が減り生活に余裕が生まれ、かつ精神的にも楽になるでしょう。
ただし、債権者は裁判所を通じて訴訟や強制執行おこなう場合もあるため注意が必要です。
そのような対処も含めて、借金減額制度を利用する際は債務整理を得意とする弁護士や司法書士への依頼をおすすめします。
借金減額診断はなぜ無料?からくりはあるの?
借金減額診断のほとんどは法律事務所が運営しており、借金で悩んでいる方が気軽に相談できる窓口として無料で提供しています。
なお、借金減額診断をすると必ず債務整理をしなくてはいけないわけではなく、診断結果を参考に債務整理のメリットやデメリットを踏まえたうえで、どのような手続きが適切かを知るきっかけにできます。
借金減額診断で電話番号やメールアドレスを入力すると、運営元から連絡が来ることもあり、法律事務所に依頼した場合はヒアリングとして借金状況の詳細を聞かれるでしょう。
ヒアリング内容をもとに適切な診断結果をもらえるため、法律事務所が運営元であれば安心して利用できます。
しかし、全ての運営元が法律事務所とは限らず、なかには悪徳業者も存在します。
特に、住所や勤務先を入力する項目がある場合は個人情報を悪用される危険性があるため、運営元の会社名やプライバシーポリシーの記載があるかを確認してください。
ベンナビ債務整理が提供している借金減額シミュレーションは、無料で安全に利用できるツールです。
借入総額や毎月の返済額、利率、地域を入力するだけで、借金がいくら減額できるかを簡単に把握できます。
また、居住地域から債務整理が得意な法律事務所を検索できるため、弁護士選びの手間も省けます。
簡単入力するだけの診断ツールとなっているため、借金問題で悩んでいる方は気軽に利用してみてください。
借金減額制度における方法ごとのデメリット
借金減額手続きには、それぞれ以下のようなメリットがあります。
種類 | 概要・メリット |
---|---|
任意整理 | 任意整理は裁判所を介さない手続きであり、債権者との交渉で遅延損害金や利息をカットしてもらい、毎月の返済額を減らすことができます。 手続きする債務対象を選択することができるため、保証人を立てている借金を外すことも可能です。 |
個人再生 | 個人再生は裁判所を介す手続きで、住宅などの財産を残したまま借金の元本を約80%減額できます。 任意整理よりも大幅な減額が期待できるため、借金額が多く財産を残したい場合は個人再生が適しています。 |
自己破産 | 自己破産は裁判所を介す手続きで、全ての借金がゼロになるという大きなメリットがあります。 免責許可が決定されれば、多額の借金も全額免除されます。今後においても借金を返済できる見込みがなく、複数社から借入している場合などは自己破産が適しているといえます。 |
過払い金請求 | 過払い金とは消費者金融、クレジットカード会社などが取り過ぎていた利息のことです。 払い過ぎた利息の返金を受ける手続きを過払い金返還請求といい、裁判所も認めている正式な手続きとなります。 完済している場合はブラックリストに掲載されず、周囲にバレずに手続き可能です。 |
しかし反対に、各手続きにはデメリットも存在します。
以下では、それぞれの債務整理手続きに関するデメリットを詳しく見ていきましょう。
任意整理で借金を減額する3つのデメリット
債権者と交渉をおこなう任意整理において、把握しておくべき3つのデメリットを紹介します。
1.元金は減らない
任意整理は利息のカットや3年~5年の分割払いを債権者と交渉して、毎月の返済額を減らす手続きであるため元本は減りません。
借金額が多い場合は利息をカットしても返済期間は最長5年と定められているため、毎月の返済額が変わらない、逆に増えてしまうケースもあります。
2.必ず減額に応じてもらえるとは限らない
債権者は任意整理に応じる義務はないため、減額幅や返済期間が希望どおりにならない可能性があります。
たとえば、借入をして日が浅い、一度も返済をしていない、定職に就いていない方は和解交渉が難しい傾向にあります。
任意整理に応じたとしても、短期間での分割払いや遅延損害金、将来利息のカットなしといった条件でしか対応してくれない業者もあるため注意が必要です。
3.安定した収入がないと利用できない
任意整理をしても返済義務は続くため、安定した収入が必要です。
3年~5年は毎月の返済が必須となるため、返済への不安材料があると和解交渉に応じてもらえない場合もあります。
アルバイトやパート勤務でも、毎月一定の収入があれば任意整理の手続きは可能です。
しかし、任意整理が適しているかは収入や返済額によって異なるため、弁護士への相談をおすすめします。
個人再生で借金を減額する5つのデメリット
個人再生は借金を大幅に減額できますが、注意すべき5つのデメリットがあります。
ここからは、個人再生のデメリットについて、詳しく解説します。
1.官報に掲載される
個人再生の手続きをおこなうと、国が発行している官報に個人再生を開始した事実と個人情報が掲載されます。
官報を日常的に見ている職業に就いている方が周囲にいない場合、個人再生の事実がバレることはほとんどありません。
しかし、金融機関などで働いている知り合いや家族がいる場合、個人再生をおこなったことがバレる可能性はゼロではないことを覚えておきましょう。
2.手続きが複雑で時間がかかる
個人再生の手続きは裁判所を介すため、必要書類の準備などやるべきことがたくさんあります。
また、手続きが完了するまで1年以上かかるケースもあるため時間や労力を要す点もデメリットです。
そのため、弁護士のアドバイスを受けながら進めたほうがスムーズでしょう。
3.安定した収入が必要
個人再生は自己破産のように借金が免除されないため、返済を続けていくうえで安定した収入が必要です。
毎月の返済額は減るものの3年間~5年間は返済義務があるため、毎月きちんと支払っていける収入があることは条件となります。
4.手続き後は計画通りに返済しなくてはならない
万が一、計画どおりに返済ができなかった場合は、債権者からの申し立てにより再生計画が取り消される可能性があります。
再生計画が取り消されると減額された借金が元に戻るため、返済遅れがないようにしなければなりません。
ただし、業績不振により給与が減額されたなど、やむを得ない事情がある場合は返済期間を延長することも可能です。
5.手続きの対象とする債権者を選択できない
個人再生は任意整理と違い手続きの対象となる債権者を選べないため、全ての債権者に対して手続きをおこなうことになります。
保証人を立てている借金も対象となり、その場合は保証人が返済を肩代わりすることになるため、事前に事情を話しておく必要があるでしょう。
自己破産で借金を減額する6つのデメリット
全ての借金をゼロにできる自己破産ですが、その代わりにいくつかのデメリットもあります。
以下で詳しく見ていきましょう。
1.官報に掲載される
自己破産をおこなうと、個人再生と同じく官報に個人情報が掲載されます。
なぜ掲載されるかというと、債権者に対して自己破産の開始を知らせて、債権者が自己破産の手続きに参加する機会を与えるためです。
これは破産法第10条に定められており、法律に従った運用となるため掲載は避けられません。
2.一時的に職業制限がある
自己破産の場合は手続きが終了するまでの期間、一部の以下に挙げている職業に就けなくなります。
- 弁護士・司法書士・税理士などの士業
- 公証人
- 警備員
- 交通事故相談員
なお、資格が剥奪されるわけではなく、あくまで手続き中の期間のみであるため、終了すると制限はなくなります。
3.持ち家などの財産を手放さなくてはならない
自己破産では財産を債権者の配当に充てるため、価値のある財産は手放さなければなりません。
たとえば、持ち家や土地、貴金属や骨董品など金銭的価値が高いものが対象となります。
一方で、価値が20万円以下の車や預貯金、支払いが終わっている家具や家電などの生活必需品は処分されません。
4.借金をつくった経緯や理由によっては選べない
自己破産は借金の原因や経緯が問われ、例としてギャンブルや浪費が原因の借金は免責不許可事由に該当するため、免責できない場合があります。
ただし、裁判所に裁量免責が認められた場合は、免責不許可事由に該当する内容でも自己破産は可能です。
この場合、管財事件や少額管財事件になるため時間やお金がかかることになるでしょう。
なお、税金や養育費などの免責不許可債権については、自己破産をおこなっても免除されることはありません。
5.管財事件の場合は、郵便物が破産管財人へ転送される
自己破産は同時廃止事件・管財事件・少額管財事件といった3つの手続きがあり、借金の原因や財産の状況に応じて適用される手続きが異なります。
管財事件の場合は破産手続き中の期間、破産管財人に郵便物が転送され確認されます。
これは債権者や債権額、破産者の財産などを正確に把握するためです。なお、郵便物は後日返却されるため没収されません。
6.手続きの対象とする債権者を選択できない
個人再生と同様に、自己破産も全ての債権者に対して手続きをおこなうため、対象となる借金を選ぶことができません。
万が一、債権者名簿に親戚など特定の債権者を載せなかった場合は免責不許可事由に該当するため、免責が認められない可能性があります。
保証人がいる借金について自己破産をおこなう場合は、事前に事情を説明する必要があるでしょう。
過払い金返還請求で借金を減額する2つのデメリット
広告などでもよく目にする過払い金返還請求ですが、誰でも対象というわけではなく利用するには条件が存在します。
ここからは、過払い金返還請求で借金を減額するうえで挙げられる2つのデメリットを解説します。
1.利用できるケースが限られる
過払い金返還請求は、2010年6月17日以前にお金を借りていたかが重要になります。
なぜなら、2010年6月18日以降は法改正によりグレーゾーン金利は撤廃され、過払い金が発生していないからです。
しかし、法改正以前に借入や返済をしていた場合は過払い金が発生している可能性があります。
この期間に該当しない場合は対象外となるため、利用できるケースが限られるのです。
また、過払い金返還請求は時効があり、最後に借入・返済をした日から10年以内であることが条件となっています。
なお、民法改正により、2020年4月以降に発生した過払い金返還請求は、過払い金請求の権利が行使できることを知ってから5年が時効になっています。
2.交渉次第で満額返還されるとは限らない
過払い金は、返還請求をおこなっても満額返還されるとは限りません。
返済を受けられるかどうかは過払い金の交渉先の経営状態によって変わり、仮に借入先が倒産している場合は手続きをおこなえません。
交渉を必要とする手続きをおこなう際は、弁護士などに依頼したほうが有利に進められる可能性があるでしょう。
借金減額制度を利用することをおすすめする人・自力完済をおすすめする人
借金減額制度はさまざまなデメリットもあるため、自力で完済を目指したい方もいるでしょう。
ここからは、借金減額制度の利用が向いている方、自力で完済できる方の特徴を紹介していきます。
借金減額制度を利用することをおすすめする人
- 借入総額が年収の3分の1を超えている
- 返済が滞っている
- ほかのカード会社から借金をして返済をしている
- 返済額に対して利息の割合が高く元本が減らない
返済が困難な状況が続けば、滞納によって給与を差し押さえられたり、お金を工面できずに医療が受けれなかったりと、さまざまな悪影響が出ます。
借金減額制度を利用することで、借りては返す負の連鎖を断ち切り、人生をやり直せるきっかけになるでしょう。
自力で完済したほうがよい人
- 分割すれば自力で返せる額
- 返済までの見通しがついている
- 今後ローンで大きな買い物をする予定がある
自力で完済をする指標としては、このまま返済を続けて完済できる見込みがあるかどうかが挙げられます。
ボーナスが出た月には返済額を繰り上げたり、利息の低いおまとめローンを利用してコツコツ返済しながら生活水準をキープできたりする場合は、借金減額制度を利用しないに越したことはありません。
債務整理をするとブラックリストに登録され5~7年はクレジットカードやローンの審査が通らないため、大きな買い物をする予定がある方は自力での返済をおすすめします。
借金減額によるデメリットについてよくある質問
ここからは、借金減額制度を利用する際のデメリットについて、よくある4つの質問に回答していきます。
1.借金減額制度を利用したことは周囲にバレますか?
家族や勤務先の関係者が保証人になっていなければ、借金減額制度を利用した事実がバレることはありません。
しかし、家族や勤務先の関係者が保証人になっている場合は、返済の請求が届くため注意が必要です。
知り合いや親族に保証人がいるかつ、周囲にバレたくない場合は任意整理をおすすめします。
任意整理では、手続きをおこなう債務を選択できるため通知や請求によってバレることを防止できます。
2.借金減額制度を利用すると、財産を全て失ってしまうのですか?
自己破産の場合のみ、生活必需品などを除き価値のある財産は失うことになります。
生活必需品とは衣類や家具、家電や99万円以下の現金、仕事に必要な用品などが挙げられ、これらは自由財産として残すことが可能です。
個人再生は原則として財産を手放すことはありませんが、ローンが残っている所有権留保付自動車はローン会社に引きあげられることになるでしょう。
一方で、任意整理は手放したくない財産がある場合は交渉の対象から外すことができるため、今までどおりに財産の保持が可能です。
3.借金減額制度を利用したことが戸籍に載りますか?
債務整理は個人の債務に関する手続きで戸籍とは無関係なため、借金減額制度を利用した事実が戸籍に載ることはありません。
4.借金減額制度を利用すると選挙権がなくなるって本当ですか?
金減額制度と選挙権は全く別の話であるため、債務整理をおこなったからといって選挙権がなくなることはありません。
さいごに|借金減額を考えるなら弁護士へ相談
借金減額制度は、それぞれの手続きにデメリットが存在します。
各手続きのデメリットを理解したうえで、現在抱えている借金を減額・免除できないか検討してみましょう。
まずは法律事務所などの借金減額診断を利用しながら、どれくらい借金が減るのかをシュミレーションしてみるのがおすすめです。
また、借金は自力で完済できることがベストですが、完済が難しいほど借金問題に悩んでいる方は弁護士への相談をおすすめします。
ひとりでは解決できない問題でも、法律への豊富な知識をもとに適切なアドバイスをしてくれるため、解決への糸口となることが期待できます。

