自己破産
自己破産を理由にアパートを追い出される?追い出されない対策と新規で借りるコツ
2024.12.23
自己破産とは、裁判所の許可を得て、ほぼ全ての借金を免除してもらう手続きです。
自己破産をした場合、一部の財産を除いてほとんどの財産が処分されてしまいます。
そのため、自己破産を理由に賃貸アパートも退去する必要があるのか不安に思っている方もいるでしょう。
そこで本記事では、自己破産を検討している方に向けて、以下の内容について説明します。
本記事を参考に、自己破産と賃貸アパートの関係についてしっかりと理解しましょう。
ここでは、自己破産をしたあとに賃貸アパートに住み続けられるのか、追い出されるのかについて説明します。
自己破産をしても、すぐに賃貸アパートを追い出される心配はありません。
かつては、民法によって賃貸人による解約申入権が認められていたため、裁判例や学説により限定的に解釈されていたものの、賃貸人は自己破産を理由に賃貸アパートの契約解除を求めることができました。
しかし、2004年の新破産法制定に伴い同条文は削除されたため、現在は自己破産を理由とする賃貸アパートの契約解除はできなくなっています。
自己破産をする前に賃貸アパートの家賃を滞納している場合は、追い出される可能性があります。
家賃滞納を理由に賃貸人が賃借人を強制退去させるための主な要件は、以下のようになっています。
ここでいう長期間の滞納とは、一般的には6か月以上(少なくとも3か月以上)の滞納が目安となっています。
なお、自己破産により滞納家賃は免責されますが、家賃滞納(債務不履行)の事実がなくなるわけではないため、場合によっては追い出されてしまうでしょう。
破産管財人とは、自己破産の一種である「管理事件」で破産者の財産の管理や処分を担当する人(裁判所が選任する裁判所側の弁護士)のことです。
この破産管財人には、破産法第53条の規定により、破産者の賃貸借契約を解除する権利が認められています。
破産管財人が選任されたからといって必ずしも賃貸アパートの契約を解除されるわけではありませんが、収入に対して高額な家賃のアパートに住んでいるケースなどでは解除される可能性があります。
自己破産後も現在の賃貸アパートに住み続けるためには、滞納状態を解消しておくことが重要です。
しかし、複数の借金がある状況で滞納家賃だけを支払う行為は偏頗弁済といい、裁判所に自己破産が認められなくなる可能性が生じるため注意が必要です。
偏頗弁済になるのを避けつつ、滞納家賃を支払う方法には、親族などに支払ってもらう第三者弁済などがあります。
なお、第三者弁済であっても偏頗弁済に該当する可能性はあるため、自己破産が得意な弁護士に相談してアドバイスを得ることをおすすめします。
ここでは、自己破産をした人が新しく賃貸アパートの契約ができるかどうかについて説明します。
自己破産をしたからといって、新しく賃貸アパートの契約ができないという制限はありません。
また、貸主や管理会社がおこなう入居審査では、自己破産の有無に関する調査はされないことが一般的です。
「賃貸アパートの家賃と収入が見合わない」などの理由で審査に落ちる可能性はありますが、通常は自己破産が理由で審査に落ちるということは考えられないでしょう。
賃貸保証会社を利用する場合は注意が必要になります。
この理由は、CICやLICCなどに加入している賃貸保証会社は、自己破産や代位弁済の事実を確認できるからです。
仮に賃貸保証会社が申込者の信用情報を確認し、自己破産や代位弁済の事実を把握した場合は、支払い能力に問題があると判断されてしまい、審査に通らないことになるでしょう。
なお、賃貸保証会社に関連する団体はいくつかありますが、自己破産や代位弁済について共有しているのは主に上記の3つとなります。
【参考】
指定信用情報機関のCIC
日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関
全国賃貸保証業協会 HOME
ここでは、賃貸契約の審査に通りやすくなるための対処法を紹介します。
自己破産の事実を不動産会社に申告する必要はありません。
しかし、事前に「信用情報に傷がついている」と不動産会社に相談しておくことで、審査に通りやすい物件を紹介してくれたり、貸主と交渉したりしてくれる可能性があります。
なお、不動産会社には守秘義務があるため(宅地建物取引業法第45条)、自己破産をした事実が他人に知られる心配はないでしょう。
物件の種類でいうと、公営住宅やUR賃貸住宅などがおすすめとなっています。
これらの物件であれば、保証会社や連帯保証人などがなくても借りられる可能性があります。
なお、入居基準や家賃などはそれぞれ異なるため、公式サイトなどで確認してください。
通常、保証会社は貸主や管理会社などが指定しています。
しかし、CICやLICCに加盟している保証会社の場合、審査が通るのは難しいといえます。
そこでこれらが指定されている場合は、CICなどに加盟していない保証会社を利用できないか交渉してみましょう。
いわゆる独立系と呼ばれる保証会社に変更できれば、自己破産の事実を知られないため審査に通る可能性が高まります。
両親や兄弟姉妹などに、連帯保証人を依頼するのもおすすめです。
物件によっては「賃貸保証会社は必須、連帯保証人は不要」というものもあります。
このような物件であれば保証会社の代わりに、連帯保証人をつけるよう交渉できる可能性があります。
なお、そもそも連帯保証人の候補者がいない場合や「賃貸保証会社と連帯保証人の両方が必須」の場合などでは、この対策を取るのは難しいでしょう。
本来、賃貸アパートの契約者と実際の入居者は、同じでなければなりません。
しかし、賃貸人の承諾があれば契約者と入居者が異なる「代理契約」をおこなえます。
代理契約の場合は、契約者の収入などについて審査されるため、入居者が自己破産をしていても問題になりません。
なお、代理契約ができるのは通常、3親等以内の親族となるため、身近に候補者がいないか探すようにしましょう。
自己破産以外の債務整理には、任意整理や個人再生などがあります。
これらの手続きでも、家賃を滞納している場合には、賃貸アパートを解除されるリスクがあります。
また、信用情報機関に事故情報として登録されるため、賃貸アパートの審査に影響が出る可能性はあるでしょう。
ただし、自己破産と異なり破産管財人は選任されませんので、破産管財人による賃貸借契約の解除はありません。
自己破産をした場合、原則として現在の賃貸アパートに住み続けることができます。
しかし、長期間の家賃滞納がある場合や破産管財人が選任された場合には賃貸借契約を解除されるリスクがあるでしょう。
なお、仮に賃貸借契約を解除されて追い出されたとしても、自己破産が理由で新しい賃貸アパートが見つからないという事態にはならないため安心してください。
賃貸アパートのことを含め、自己破産について知りたい場合は、債務整理が得意な弁護士に相談してみましょう。
ベンナビ債務整理には自己破産の手続きが得意な弁護士が多数掲載されているため、まずは身近な弁護士を探して相談することをおすすめします。