自己破産を理由にアパートを追い出される?追い出されない対策と新規で借りるコツ

自己破産を理由にアパートを追い出される?追い出されない対策と新規で借りるコツ

自己破産とは、裁判所の許可を得て、ほぼ全ての借金を免除してもらう手続きです。

自己破産をした場合、一部の財産を除いてほとんどの財産が処分されてしまいます。

そのため、自己破産を理由に賃貸アパートも退去する必要があるのか不安に思っている方もいるでしょう。

そこで本記事では、自己破産を検討している方に向けて、以下の内容について説明します。

  • 自己破産をした人が今いる賃貸アパートに住み続けられるのかどうか
  • 自己破産をしたあとに賃貸アパートを追い出されないためのポイント
  • 自己破産をしたあとの新たな賃貸アパートの契約の可否
  • 自己破産が原因で賃貸アパートを契約できない場合の5つの対処法 など

本記事を参考に、自己破産と賃貸アパートの関係についてしっかりと理解しましょう。

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この記事を監修した弁護士
春田 藤麿弁護士(弁護士法人春田法律事務所)
「お客様の期待を上回る結果を目指す」「生涯にわたり、お客様のパートナーとなる」ことを理念とし、2016年に設立。現在は全国にオフィスを構え、個人・法人を問わず、ニーズに合わせたサポートを提供。

自己破産をした場合に今いる賃貸アパートに住み続けられるのか?

ここでは、自己破産をしたあとに賃貸アパートに住み続けられるのか、追い出されるのかについて説明します。

原則としてすぐに賃貸アパートを追い出されることはない

自己破産をしても、すぐに賃貸アパートを追い出される心配はありません

かつては、民法によって賃貸人による解約申入権が認められていたため、裁判例や学説により限定的に解釈されていたものの、賃貸人は自己破産を理由に賃貸アパートの契約解除を求めることができました。

しかし、2004年の新破産法制定に伴い同条文は削除されたため、現在は自己破産を理由とする賃貸アパートの契約解除はできなくなっています

賃貸アパートの家賃を滞納していると追い出される可能性がある

自己破産をする前に賃貸アパートの家賃を滞納している場合は、追い出される可能性があります。

家賃滞納を理由に賃貸人が賃借人を強制退去させるための主な要件は、以下のようになっています。

【家賃滞納を理由に強制退去させるための要件】
  • 長期間、家賃を滞納していること
  • 賃借人に家賃を支払う意思がないこと
  • 賃貸人と賃借人の信頼関係が壊れていること など

ここでいう長期間の滞納とは、一般的には6か月以上(少なくとも3か月以上)の滞納が目安となっています。

なお、自己破産により滞納家賃は免責されますが、家賃滞納(債務不履行)の事実がなくなるわけではないため、場合によっては追い出されてしまうでしょう。

破産管財人によって賃貸借契約が解除される可能性がある

破産管財人とは、自己破産の一種である「管理事件」で破産者の財産の管理や処分を担当する人(裁判所が選任する裁判所側の弁護士)のことです。

この破産管財人には、破産法第53条の規定により、破産者の賃貸借契約を解除する権利が認められています。

破産管財人が選任されたからといって必ずしも賃貸アパートの契約を解除されるわけではありませんが、収入に対して高額な家賃のアパートに住んでいるケースなどでは解除される可能性があります。

自己破産をしたあとに賃貸アパートを追い出されないためのポイント

自己破産後も現在の賃貸アパートに住み続けるためには、滞納状態を解消しておくことが重要です。

しかし、複数の借金がある状況で滞納家賃だけを支払う行為は偏頗弁済といい、裁判所に自己破産が認められなくなる可能性が生じるため注意が必要です。

偏頗弁済になるのを避けつつ、滞納家賃を支払う方法には、親族などに支払ってもらう第三者弁済などがあります。

なお、第三者弁済であっても偏頗弁済に該当する可能性はあるため、自己破産が得意な弁護士に相談してアドバイスを得ることをおすすめします。

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自己破産をしたあとの新たな賃貸アパートの契約の可否

ここでは、自己破産をした人が新しく賃貸アパートの契約ができるかどうかについて説明します。

自己破産をしても賃貸アパートの契約はできる

自己破産をしたからといって、新しく賃貸アパートの契約ができないという制限はありません

また、貸主や管理会社がおこなう入居審査では、自己破産の有無に関する調査はされないことが一般的です。

「賃貸アパートの家賃と収入が見合わない」などの理由で審査に落ちる可能性はありますが、通常は自己破産が理由で審査に落ちるということは考えられないでしょう

賃貸保証会社の審査に通らず契約できない可能性はある

賃貸保証会社を利用する場合は注意が必要になります。

この理由は、CICやLICCなどに加入している賃貸保証会社は、自己破産や代位弁済の事実を確認できるからです。

  • CIC:信販系の保証会社が加盟している信用情報機関のこと
  • JICC:消費者金融系の保証会社が加盟している信用情報機関のこと
  • LICC(全国賃貸保証業協会):賃貸保証会社が加盟している家賃等弁済情報取扱機関のこと

仮に賃貸保証会社が申込者の信用情報を確認し、自己破産や代位弁済の事実を把握した場合は、支払い能力に問題があると判断されてしまい、審査に通らないことになるでしょう。

なお、賃貸保証会社に関連する団体はいくつかありますが、自己破産や代位弁済について共有しているのは主に上記の3つとなります。

【参考】
指定信用情報機関のCIC
日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関
全国賃貸保証業協会 HOME

自己破産が原因で賃貸アパートを契約できない場合の5つの対処法

ここでは、賃貸契約の審査に通りやすくなるための対処法を紹介します。

1.あらかじめ不動産会社に相談しておく

自己破産の事実を不動産会社に申告する必要はありません

しかし、事前に「信用情報に傷がついている」と不動産会社に相談しておくことで、審査に通りやすい物件を紹介してくれたり、貸主と交渉したりしてくれる可能性があります。

なお、不動産会社には守秘義務があるため(宅地建物取引業法第45条)、自己破産をした事実が他人に知られる心配はないでしょう

2. 公営住宅やUR賃貸住宅などを選ぶ

物件の種類でいうと、公営住宅やUR賃貸住宅などがおすすめとなっています。

  • 公営住宅:市町村や都道府県などの自治体が管理・運営している賃貸住宅のこと
  • 公社住宅:各都道府県の地方住宅供給公社が管理・運営している賃貸住宅のこと
  • UR賃貸住宅:都市再生機構が管理・運営している賃貸住宅のこと

これらの物件であれば、保証会社や連帯保証人などがなくても借りられる可能性があります。

なお、入居基準や家賃などはそれぞれ異なるため、公式サイトなどで確認してください。

3.利用する保証会社について交渉する

通常、保証会社は貸主や管理会社などが指定しています。

しかし、CICやLICCに加盟している保証会社の場合、審査が通るのは難しいといえます。

そこでこれらが指定されている場合は、CICなどに加盟していない保証会社を利用できないか交渉してみましょう。

いわゆる独立系と呼ばれる保証会社に変更できれば、自己破産の事実を知られないため審査に通る可能性が高まります

4.保証会社の代わりに連帯保証人をつける

両親や兄弟姉妹などに、連帯保証人を依頼するのもおすすめです。

物件によっては「賃貸保証会社は必須、連帯保証人は不要」というものもあります。

このような物件であれば保証会社の代わりに、連帯保証人をつけるよう交渉できる可能性があります。

なお、そもそも連帯保証人の候補者がいない場合や「賃貸保証会社と連帯保証人の両方が必須」の場合などでは、この対策を取るのは難しいでしょう。

5.代理契約で賃貸アパートを借りるようにする

本来、賃貸アパートの契約者と実際の入居者は、同じでなければなりません。

しかし、賃貸人の承諾があれば契約者と入居者が異なる「代理契約」をおこなえます。

代理契約の場合は、契約者の収入などについて審査されるため、入居者が自己破産をしていても問題になりません

なお、代理契約ができるのは通常、3親等以内の親族となるため、身近に候補者がいないか探すようにしましょう。

自己破産以外の債務整理でも賃貸アパートの契約に関する影響はある

自己破産以外の債務整理には、任意整理や個人再生などがあります。

  • 任意整理:債権者と直接交渉し、遅延損害金や将来利息をカットする手続き
  • 個人再生:裁判所の許可を得て、借金額を最大10分の1まで減額する手続き

これらの手続きでも、家賃を滞納している場合には、賃貸アパートを解除されるリスクがあります。

また、信用情報機関に事故情報として登録されるため、賃貸アパートの審査に影響が出る可能性はあるでしょう。

ただし、自己破産と異なり破産管財人は選任されませんので、破産管財人による賃貸借契約の解除はありません

さいごに|自己破産のことで不安があるなら弁護士に相談しよう!

自己破産をした場合、原則として現在の賃貸アパートに住み続けることができます

しかし、長期間の家賃滞納がある場合や破産管財人が選任された場合には賃貸借契約を解除されるリスクがあるでしょう。

なお、仮に賃貸借契約を解除されて追い出されたとしても、自己破産が理由で新しい賃貸アパートが見つからないという事態にはならないため安心してください。

賃貸アパートのことを含め、自己破産について知りたい場合は、債務整理が得意な弁護士に相談してみましょう。

ベンナビ債務整理には自己破産の手続きが得意な弁護士が多数掲載されているため、まずは身近な弁護士を探して相談することをおすすめします。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法ナビ債務を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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