任意整理は、利息のカットや返済期間の見直しによって月々の負担を減らし、3年から5年にかけて借金の完済を目指す手続きです。
任意整理をすることで、過払い金が返還されて残りの元本を減額できたり、遅延損害金の支払いが不要になったりするため、借金問題の解決に向けて有効な手段をいえるでしょう。
しかし、任意整理は裁判所を介さずに手続きを進める分、債権者との交渉力が重要になります。
そのため、法律を熟知する弁護士や司法書士によるサポートが必須といえますが、どちらに依頼するのがよいのでしょうか。
本記事では、任意整理は弁護士と司法書士どちらに依頼すればいいのかを解説します。
また、弁護士と司法書士の違いや選び方についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
弁護士と司法書士の一般的な違い | 任意整理に関わらず
まずは、弁護士と司法書士の一般的な違いについてみていきましょう。
任意整理に関わらず、弁護士と司法書士では法律問題について対応できる範囲・業務が異なります。
主な業務内容や受任できる訴額、代理権が認められる裁判所など、弁護士と司法書士の一般的な違いは、以下のとおりです。
異なる点 | 弁護士 | 司法書士 |
---|---|---|
主な業務内容 | ・和解、示談交渉 ・訴訟活動 ・法律相談など | ・登記や供託に関する手続き ・民事調停、仲裁事件、裁判外和解などの代理 ・裁判所や検察庁に提出する書類の作成など |
受任できる訴額 | 制限なし | 140万円以下 ※認定司法書士に限る |
代理権の認められる裁判所 | 全ての裁判所 | 簡易裁判所のみ ※認定司法書士に限る |
弁護士と司法書士ではできることが異なる
弁護士と司法書士では、そもそもおこなえることが違うことを知っておきましょう。
弁護士は、社会で生活する方の事件や紛争について、法律を熟知している者という立場から、適切な予防や対処方法、解決策をアドバイスができます。
主な弁護士活動としては以下が挙げられます。
- 法廷活動
- 紛争予防活動
- 人権擁護活動
- 立法や制度の運用改善に関与する活動
- 企業や地方公共団体などの組織内での活動
なお、弁護士にはあらゆる法律分野について弁護士活動が認められていますが、弁護士法72条により、弁護士以外の人が弁護士活動をおこなうことは禁止されています。
一方、司法書士の主な業務は不動産登記や会社や法人登記に関する手続きです。
加えて、個人再生や自己破産の書類作成代理業務などもおこなうため、豊富な経験や実績を誇り債務整理を得意分野とする司法書士も存在します。
しかし、一般的には任意整理を含む債務整理に関する専門家は弁護士であり、司法書士はあくまでも手続きのサポートしかおこなえないのです。
また、弁護士のように法的手続き全般を請け負えず、原則として司法書士は法律行為の代理や法律相談をおこなうことを認められていません。
例外的に、法務大臣の認定を受けた司法書士のみ簡易裁判所の訴訟代理権が与えられ、法律相談などをおこなうことができますが、扱える事件の金額には制限があるため任意整理を依頼できないケースがあると理解しておきましょう。
弁護士は法律や裁判、司法書士は登記に特化しているといえます。
それぞれの違いを理解したうえで、適切な相談相手を選びましょう。
任意整理における弁護士と司法書士の違い
任意整理における弁護士と司法書士の違いについて解説します。
まずは、受任できる債権額と訴訟になった場合の違いをみていきましょう。
弁護士 | 司法書士 | |
---|---|---|
受任できる債権額 | 制限なし | 140万円以下 ※認定司法書士に限る |
訴訟になった場合 | どの裁判所事件でも対応可能 | 簡易裁判所に限り対応可能 ※認定司法書士に限る |
任意整理を含め受任できる1社ごとの債権額|司法書士は140万円以下の場合に限る
任意整理をおこなう際に重要なのは、受任できる債権額です。
司法書士が代理人として関われる範囲は、債権者への借金が140万円以下の場合に限られます。
そのため、訴訟や紛争の目的となる財産の価額が140万円を超える事件については、司法書士が代理人になることも法律相談をおこなうこともできません。
一方で、弁護士は金額における制限が一切ないため、借金額に関わらず依頼が可能です。
たとえば、司法書士に相談して途中で140万円を超えると判明した場合は、直ちに法律相談を中止して弁護士へ依頼しなければなりません。
賃金業者1社からの借金が140万円を超える場合は、司法書士ではなく弁護士に相談してください。
なお、140万円というボーダーラインは、借金の総額ではないことに注意しましょう。
仮に借金の総額が200万円でも、A社の借金が130万円、B社の借金が70万円と、各債権者への借金額が140万円以下の場合、司法書士に任意整理を依頼しても問題ありません。
債務整理としてよくおこなわれる過払い金に関しても、司法書士が対応できるのは140万円までです。
債務額と同様に、1社あたり140万円を超えている過払い金案件については、司法書士が受け持つことはできないため弁護士に相談してください。
訴訟代理が認められる裁判所|司法書士は簡易裁判所のみ
弁護士と司法書士では、訴訟の代理人になれる裁判所にも違いがあります。
司法書士の訴訟代理が認められているのは簡易裁判所のみで、地方裁判所などのそのほかの裁判所での訴訟代理は認められていません。
一方で、弁護士には制限がなく、どの裁判所でも訴訟代理が可能です。
任意整理で裁判化するケースは多くはありませんが、債権者が訴訟を起こしたり、交渉が長期化したことによって裁判化したりする可能性はゼロではありません。
裁判となった場合、司法書士が関与できるのは簡易裁判所までなので、万が一控訴されたり、地方裁判所へ移送されたりすると、新たに弁護士を雇わなければならないでしょう。
任意整理の費用は弁護士と司法書士であまり変わらない
任意整理を依頼する費用に関して、一般的に弁護士より司法書士のほうが安い場合が多いです。
しかし、実際のところ任意整理の手続きにかかる費用は弁護士と認定司法書士で大きな差はありません。
任意整理にかかる費用の目安は以下のとおりです。
- 相談料が0円から1万円
- 着手金が3万円から10万円
- 報酬金が案件が成功した際、債権者1件につき2万円から5万円
- 減額報酬金は借金の減額に成功した場合のみ減額分の10%
日本司法書士会連合会によると、認定司法書士の報酬は、着手金や成功報酬など名目を問わず1件につき5万円までが上限ですが、日本弁護士連合会では任意整理の着手金に関する上限は定められていません。
この規定の有無から、弁護士より認定司法書士のほうが費用がかからないイメージがあるのです。
しかし、実際にかかる費用に大きな差はなく、たとえば過払い金に関する報酬に関しては、弁護士・司法書士のどちらに依頼してもあまり違いはありません。
弁護士会と司法書士会では過払い金返還請求の報酬の割合が規定により定められていますが、どちらも訴訟なしで20%、訴訟ありで25%と同じ割合です。
なお、任意整理にかかる費用は弁護士や認定司法書士に関わらず事務所ごとで異なります。
少しでも費用を抑えるために、複数の事務所から見積もりを取って比較しましょう。
任意整理は弁護士と司法書士とではどちらに依頼するのがおすすめ?
任意整理をおこなう際は、弁護士と司法書士ではどちらに依頼すればよいのでしょうか。
ここからは、ケース別に弁護士・司法書士のどちらに依頼すべきかを解説します。
1社ごとの借金額(元金)が140万円を超えるなら弁護士へ
司法書士が債権者に対して請求できる借金額の上限は、元金140万円以下までです。
1社ごとの借金額が140万円を超える場合は弁護士へ相談してください。
元金の計算は利息や遅延損害金を含まず1社ごとにおこない、計算の結果1社の借金総額が140万円以上の場合は弁護士しか対応できません。
弁護士は金額に関係なく対応できますが、司法書士は140万円以下でも認定司法書士のみしか対応できないと理解しておきましょう。
複数社から借り入れがある場合は弁護士へ
複数社から借入がある場合も弁護士へ相談しましょう。
仮に、複数の借入先から借金をしていて総額が1千万円近いとしても、それぞれの借金額が140万円以下であれば司法書士が対応できます。
しかし、司法書士が債務者の代理人として扱える任意整理には、債務や過払い金の金額以外にも条約があります。
万が一、訴訟となった場合に簡易裁判での訴訟代理権はあるものの、地方裁判所の代理人になることはできません。
その点、弁護士は全ての借入先に対して法的な観点をもち任意整理の交渉をおこなうため、訴訟に発展した際でも心強い存在となるでしょう。
また、借入額や利率などの現状を把握したうえで適切に準備を進め、複数社からの借金をスムーズに返済できるよう無理のない計画を立ててくれるのもうれしいポイントです。
任意整理以外の債務整理も視野に入れているなら弁護士へ
任意整理以外の債務整理も視野に入れている場合は、弁護士へ依頼してください。
たとえば、収入に比べて借金額があまりに多い場合、あるいはすでに債権者から訴訟を起こされてしまっている場合は任意整理では対応できないため、個人再生や自己破産を検討しなければなりません。
なお、個人再生や自己破産は地方裁判所に申し立てをおこなう必要があります。
司法書士は裁判所に提出する自己破産や個人再生の書類の作成はできますが、裁判所への申し立て、やり取りに関しては対応できないため本人がおこなわなければなりません。
また、認定司法書士でも代理人業務が認められているのは簡易裁判所に限られているため、弁護士でなければ対応できません。
抱えている借金の状況を整理して、どの債務整理が適切かを含めて弁護士へ相談してください。
闇金からの借り入れがある場合は弁護士へ
正規の賃金業者に対する債務整理は弁護士と司法書士のいずれも対応できますが、闇金業者からの借入がある場合は必ず弁護士に依頼してください。
闇金は違法な賃金業社であることから対応が難しいため、債務整理だけでなく闇金対応に精通している弁護士のサポートが必須です。
なお、闇金業社は債務整理の手続きを開始しても違法な取り立て行為を続ける恐れがあるため、適切に対処する必要があります。
任意整理を依頼する弁護士、司法書士の探し方
ここからは、解決できる確率を上げるためにも重要となる、任意整理を依頼する弁護士や司法書士の探し方を解説します。
債務整理の解決実績がどのくらいあるかをチェック
弁護士や司法書士に債務整理を依頼する際は、実績を必ず確認しましょう。
弁護士と司法書士はどちらにも得意分野があり、とくに弁護士の場合は全ての法律問題に対応できる分、得意分野は明確です。
経験や実績が乏しい弁護士に依頼すると、債権者への対応が遅れて長期にわたり取り立てに遭う可能性があります。
また、債権者への対処に失敗してトラブルに発展してしまうリスクもゼロではありません。
そのため、事前に事務所のホームページなどを確認して債務整理の解決事例を確認しておきましょう。
必要な費用についてきちんと説明がある
任意整理を依頼する際の必要な費用について、事前にきちんと説明がある弁護士や司法書士を選びましょう。
手続きが完了してから予想以上の費用を請求されたというトラブルも少なくありません。
借金を整理できても後々多額の費用を払わなければいけないといった事態を防ぐためにも、依頼前に費用を確認のうえ、きちんと説明してくれる、かつホームページに明確な費用が記載されている弁護士・司法書士を選んでください。
電話などで問い合わせて、おおよその費用を尋ねておくと、より安心できるでしょう。
実際に相談してみて、相性がよいと感じる
雰囲気がよいと感じた事務所が見つかれば、まずは相談してみましょう。
依頼をするにあたっては事務所内の雰囲気だけでなく、弁護士や司法書士との相性も非常に重要です。
相談に対して丁寧かつ迅速に対応してくれる、些細なことでも気軽に聞けるなど親身な事務所であれば安心できます。
事務所の知名度も判断基準のひとつですが、初回相談無料を活用して相性を見極めましょう。
任意整理を依頼する弁護士、司法書士を探せる窓口
ここからは、任意整理を依頼する弁護士や司法書士を探せる窓口を紹介します。
ベンナビ債務整理|経験豊富な弁護士を簡単に見つけられる
債務整理を得意とする弁護士を探す際は、ベンナビ債務整理の活用をおすすめします。
ベンナビは全国の法律事務所から、条件に合う弁護士や法律事務所を検索できるサービスです。
事務所プロフィールには弁護士紹介や解決事例、料金表など、依頼先を選ぶうえで参考になる情報が掲載されているため、法律トラブルに応じて効率よく弁護士や法律事務所を検索できます。
オンラインや電話相談に対応している法律事務所も数多く掲載されているため、ぜひチェックしてみてください。
法テラス|費用のことが不安なら
任意整理の費用が不安な方は法テラスの利用がおすすめです。
法テラスは経済的に困っている方を対象に、弁護士費用や司法書士費用などの立て替え制度を設けています。
なお、弁護士費用の立て替え制度を利用する際は、以下の条件を満たしている必要があります。
- 収入や資産が一定基準以下であること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
審査に通ると援助が開始され、依頼した弁護士や司法書士が問題解決のために動いてくれます。
なお、立て替え費用は無利息で分割できるため、無理のないペースで返済可能です。
弁護士会|債務整理の無料法律相談を実施している地域が多い
弁護士会とは弁護士及び弁護士法人を会員として構成されている団体で、弁護士法によって定められた法人です。
原則として地方裁判所の管轄区域ごとに設立されており、日本には全部で52の弁護士会があります。
借金問題や債務整理の相談を無料でおこなっている地域が多く、最適な解決方法を一緒に考えてもらえるため心強いでしょう。
なお、相談は予約が必須なので、事前に電話予約をしてから相談に行きましょう。
司法書士会|各都道府県に司法書士会がある
司法書士会では、地域ごとに借金などの無料相談をおこなっています。
たとえば東京司法書士会では、対面相談はもちろん、電話相談やオンライン相談にも対応しており、借金問題や不動産登記などについて相談可能です。
また、サイト内では司法書士を検索することもできるので、身近な司法書士を探して相談・依頼したい方とっては便利でしょう。
さいごに|任意整理を依頼する弁護士は「ベンナビ」で探そう
本記事では、任意整理は弁護士と司法書士どちらに依頼すればよいか解説しました。
弁護士と司法書士では、対応できる借金額などに違いがあるため、事前にどちらに依頼すべきかを決めておきましょう。
はっきりとどちらに相談すると決められている場合は良いですが、判断がつかない場合や、相談先を迷った場合は対応できる範囲の広さから、弁護士に相談をしておくことをおすすめします。
任意整理はほかの債務整理と比較してデメリットが少ないため、借金問題で困った際に検討すべき救済手段ですが、弁護士や司法書士などのサポートは必須です。
任意整理を検討している方は、まずは弁護士や司法書士に相談し、今後の方針についてアドバイスを得ましょう。
なお、任意整理の問題を解決に導いてくれる弁護士を検索する際は、ベンナビをおすすめがおすすめです。
ベンナビでは相談無料・24時間対応、電話・メール・オンライン相談が可能で、債務整理に注力している弁護士を多数掲載しています。
居住地域と相談内容を選択すると簡単に近くの弁護士を検索できるため、問題を円滑に解決するうえで有効です。
任意整理は早い段階での相談が解決のカギとなるため、ぜひ利用してみてください。