個人再生は債務減免効果が大きく、浪費やギャンブルが原因で借金を作ってしまった人が、住宅や車を守りながら債務整理をしたい方におすすめです。
しかし、個人再生にもデメリットがあることも覚えておかなければなりません。
本記事では、個人再生のデメリットについて詳しく解説します。
また、個人再生に関するよくある誤解や知っておくべき注意点についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
個人再生を選択した場合の6デメリット
債務整理の中で個人再生を選択した場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
ここからは、考えられる6つのデメリットを紹介します。
1.ブラックリストに登録される
個人再生の手続きを進めると信用情報機関に事故情報が登録され、いわゆるブラックリストになります。
信用情報機関とは個人の返済能力や事故情報などの信用情報を管理・提供する機関で、クレジットカード会社や信販会社系のCIC、消費者金融系のJICC、銀行や信金・信組・農協系のKSCなどがあります。
ブラックリストに登録されると5年から10年は信用機関に情報が残るため、新規でクレジットカードを発行したり、家や車を購入する際に新規でローンを組んだりはできません。
なお、ブラックリストに登録された場合でも、デビットカードやデポジット形式のETCカード、現金チャージ型のキャッシュレス決済などは利用できるため、現金払いしかできない生活に陥ることはありません。
2.官報に掲載される
個人再生の手続きは対象者は全ての債権者であるため、裁判所は全ての債権者が参加できるよう債務者の情報や手続きのスケジュールを官報に掲載します。
官報は国が発行している新聞のようなもので、誰かに見られると個人再生をした事実を知られるリスクがあります。
しかし、一般の方で定期的に官報をチェックしている人は非常に少ないと考えられるため、あまり気にすることはないでしょう。
ただし、闇金業者などは名簿を細かくチェックしていることがあります。
悪徳業者であれば記載されている住所などの情報をもとに、融資に関するダイレクトメールなどを送ってくることがあります。
お金に困っているとみられて詐欺行為のターゲットとされる可能性もあるため注意してください。
3.保証人に迷惑がかかる
個人再生は保証人がついている債務も対象となるため、債権者が保証人に対して借金返済を求めることがあります。
ローンを組む際に保証人を立てる方は多いですが、個人再生をした場合は保証人が借金を肩代わりすることになり、連帯保証人は借金を一括で支払わなければなりません。
しかし、全ての借金に対して保証人がいるわけではなく、カードローンやクレジットカードの発行に原則保証人は不要です。
もし、借金に保証人を立てていなければ、誰かに肩代わりさせることはないため迷惑はかかりません。
4.財産が処分される可能性がある
クレジットカードやショッピングローンで購入したものの所有権は支払いが完了するまで債権者にあるため、仮に代金の支払いが終わっておらず、支払い中のものがあれば、債権者から所有権を主張されて取り戻しを受け、手元から失う可能性があります。
しかし、これはあくまでも返済中の高価なものに考えられることで、完済している高価なものには影響ありません。
たとえば、車を所有しておりすでに完済している場合は、手続きが終わっても引き続き利用できます。
5.返済額が増えてしまう可能性がある
個人再生には、清算価値保障の原則というものが定められています。
清算価値保障の原則とは、所有している財産の合計額より多くの額を返済しなければならないという原則です。
そのため、場合によっては返済額が増える可能性がある点に注意しなければなりません。
たとえば、残債が500万円の住宅の査定価値が1,000万円というケースでは、差額となる500万円は財産額として清算価値に上乗せされます。
清算価値保障の原則は自身が所有している財産に対して適用されるため、対象の財産が多いほど返済額が高額になります。
その結果、個人再生の手続き自体がスムーズに進んでも、返済額が増えることで期待するほどには借金の返済義務軽減効果が得られなくなる可能性はないとは言えません。
とはいえ、個人再生による返済額の軽減効果は大きいことも少なくないため、まずはご相談いただくことをお勧めします。
6.手続きに多くの時間と手間がかかる
個人再生の手続きは一筋縄ではいかず、複雑な法的手続きであることから多くの時間と手間がかかります。
とくに、退職金・保険解約返戻金・自動車・不動産・相続財産などの清算価値の計算や、再生計画案の再生計画案の作成は、法律の知識が乏しいと一人でおこなうことは困難です。
裁判所や債権者とのやり取りを本人がおこなうことも大きな負担になり、より時間がかかると考えられます。
また、個人再生の手続きは裁判所を通しておこなうため、弁護士からの指示のもと収入や財産に関わる資料と毎月の家計簿を含むさまざまな書類や資料を準備することが望ましいです。
しかし、裁判所に申し立てるための書類集めは非常に手間がかかり、負債額を把握したうえで正確な再生計画案を作成することも簡単ではありません。
なお、個人再生の手続きは細かく定められており、法律に従ってひとつずつ確実に進めていくため時間を要します。
そのため、弁護士に依頼したとしても裁判所に再生計画認可決定が下されるまで1年以上かかることもあると覚えておきましょう。
個人再生をする際に心配しなくてよいこと4つ
個人再生には多くの方がデメリットだと勘違いしていることがあります。
ここでは、個人再生をおこなうにあたって心配しなくてよい4つのことを紹介するため、不安を解消しておきましょう。
1.会社をクビにはならない
個人再生をすると、今の仕事ができなくなり会社をクビになると思っている方は一定数いるかもしれません。
しかし、基本的に個人再生を理由に会社を解雇されることはありません。
個人再生などの債務整理は法律に則った個人の権利で、本人が会社に提供できる労働力には影響しません。
そのため、会社は個人再生を理由に解雇を迫ることはできないのです。
仮に、個人再生の事実が会社に知られて解雇されることがあれば不当解雇にあたるため、別途対応が必要でしょう。
個人再生をおこなうことは個人のプライベートであるため、その事実を会社に伝える必要はありません。
そもそも裁判所から個人再生の事実が会社へ連絡されることもなく、基本的に本人が公開しない限り知られる可能性は低いです。
2.資格や職業の制限は受けない
基本的に個人再生の手続きに就業制限はないため、資格や職業の制限を受けることなく従来どおりに働けます。
個人再生の手続き終了後は、再生計画に基づいて減額した借金を原則3年間で返済しなければなりません。
つまり、手続き後も一定の収入と返済能力が必要となるため、資格や職業を制限して職に就けなくなるような状況にする必要はないのです。
また、個人事業主の方も個人再生をしたあとも事業を継続できる可能性が高いです。
自己破産の場合は財産などが処分され事業の継続が難しくなりますが、個人再生は財産が没収されず、仕事道具や在庫、売掛金などはそのまま残ります。
自己破産と比較しても、個人再生のほうが事業を継続しやすいでしょう。
3.選挙権・被選挙権はなくならない
選挙権や被選挙権は憲法で保護されている人権であり、個人再生を理由に権利を失うことはありません。
債務整理をしたら選挙権がなくなるということはまったくの誤解であり、個人再生後もこれまで通り選挙で投票できます。
4.戸籍や住民票などに記載されない
個人再生をおこなった事実が戸籍や住民票に記載されることはありません。
個人再生の事実は唯一官報のみに掲載されますが、日常的に官報を確認している方は少ないことから知られるリスクは低いでしょう。
個人再生を検討している方が知っておくべき2つの注意点
個人再生は借金を大きく減額できるうえ、住まいを手放さずに済む可能性があるため、借金問題に悩む方が検討することが多い方法です。
しかし、どんな場合でもおこなえるというわけではありません。個人再生の手続きをおこなううえで知っておくべき2つの注意点を紹介します。
1.個人再生が認められないケースもある
個人再生はどんなケースでも認められるわけではありません。
個人再生が認められないケースとして、以下が挙げられます。
- 返済困難な状況ではない
- 借金の総額が5,000万円を超えている
- 個人再生をしても返済の見込みが立たない
- 安定した収入を見込めない
- 持っている財産が多額
- 受任通知発送後に新しい借り入れをする
- 特定の債権者のみ返済していた
- 提出書類を正確に記載していない
- 再生計画の提出期限を守らない
- 債権者に反対された
- 月々の返済ができない
- 申し立て費用が準備できない
個人再生をおこなうには、あくまでも多額の借金があり支払不能、もしくは返済が困難な状況であることが前提です。
また、個人再生の目的は簡易迅速な手続きで借金を減額することで債務者の再生を図ることです。
そのため、借金の総額が大きい場合は債務を圧迫し債権者に与える影響が大きいと考えられ、個人再生はできないとされています。
個人再生が難しい場合は、自己破産や任意整理などを検討する必要があるでしょう。債権者の動向を十分に理解して、確実な再生計画を考えなければなりません。
個人再生ができるかどうかや、どの債務整理の方法を選ぶべきかについては弁護士に相談のうえで決めるのがおすすめです。
2.税金や社会保険料の滞納金などは免除されない
個人再生の手続きでは、個人の税金や社会保険料の滞納金などは免除されません。
債務整理によって免除されない債権のことを非免責債権と呼びます。
なお、非免責債権には以下のようなものが挙げられます。
- 所得税
- 市県民税
- 固定資産税
- 自動車税などの税金
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料
- 養育費
- 婚姻費用
これらは破産法で非免責債権とされており、免除や減額ができず債務整理で支払いを免れません。
税金の滞納は一般的な借金と異なり、役所から差し押さえされます。
国や自治体による差し押さえの対象は、預金・給料・保険・不動産など多岐にわたります。
とくに給料を差し押さえられる場合は、勤務先にその旨の通知が届くため注意しなければなりません。
法人の税金や社会保険料は破産手続きの終了により法人が消滅するため、支払い主体がなくなり法人税の支払い義務がなくなります。
さいごに|個人再生がベストかどうか知りたいなら弁護士に相談を!
本記事では、個人再生のデメリットについて解説しました。
個人再生は返済金額を減らせるという大きなメリットがある一方、ブラックリストに掲載されたり、手続きが複雑であったりとデメリットもあります。
そのため、債務整理をするうえで個人再生が適切か、弁護士に相談してください。
債務整理の経験が豊富な弁護士に依頼することで手続きの手間が省ける、かつ法的観点から的確なアドバイスを受けられ、適切な手続き選択をすることができます。
自身の収入で個人再生が可能か否かについても法律に関する知識に基づき判断してもらえます。