債務整理は借金を減らしたり、支払いに猶予を持たせたりする手続きのことで、任意整理・個人再生・自己破産の3種類があります。
債務整理には、借金生活から解放されたり、借金負担が軽くなったりするメリットがありますが、もちろんデメリットも存在します。
本記事では、債務整理のデメリットについて詳しく解説します。
任意整理や個人再生、自己破産といったそれぞれの手続きについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
全ての債務整理に共通する3つのデメリット
債務整理には大きなメリットがあるものの、その反面デメリットもあります。
ここでは、全ての債務整理に共通する3つのデメリットを紹介します。
1.ブラックリストに登録される
債務整理をおこなうと信用情報機関に事故情報として登録され、いわゆるブラックリストという状態になります。
ブラックリストに登録されると一定期間は新しい借入ができないため、ローンを組んだりクレジットカードを作ったりすることができません。
信用情報機関により違いはありますが、ブラックリストに登録される期間は自己破産や個人再生は5年から10年、任意整理は完済から5年程度といわれています。
ブラックリストに登録されると日常生活に支障をきたすため、債務整理をするか否か判断に悩む方は少なくありません。
【関連記事】ブラックリストとは?確認方法やデメリット、登録情報から解除される方法を解説
2.手続きに時間と費用がかかる
債務整理の手続きには時間と費用がかかることもデメリットです。
任意整理・個人再生・自己破産のそれぞれの手続きに要する期間と費用の目安は次の表のとおりです。
債務整理の期間と費用の目安
債務整理の種類 | 期間 | 費用 |
任意整理 | 3ヵ月〜6ヵ月程度 | 5万円〜15万円程度 |
個人再生 | 3ヵ月〜6ヵ月程度 | 50万円〜80万円程度 |
自己破産 | 3ヵ月〜6ヵ月程度 | 50万円〜130万円程度 |
どの債務整理手続きも弁護士へ依頼するのが一般的なので、手続きの費用とは別に弁護士費用が必要です。
弁護士に依頼すると債権者に対して受任通知が送付され、債権者からの督促や返済がストップするため、その間に弁護士費用を準備しましょう。
なお、弁護士費用は分割払いが可能な場合が少なくありません。
弁護士の経験や実績によって解決までに時間を費やすこともあるため、費用が心配だからと弁護士への依頼をためらわず、まずは相談してみましょう。
3.保証人に迷惑がかかる
債務整理をおこなう際の大前提として、保証人に迷惑がかかることを忘れてはいけません。
住宅ローンなどを含めた借金をする際、友人や知人、配偶者といった周囲の誰かに連帯保証人になってもらうことがあります。
連帯保証人とは債務者が支払いをしなくなったとき、代わりに負債の返済をすべき立場であり人的担保ともいいます。
保証人の義務は、債権者が個人再生や自己破産をした場合でもなくなりません。
債務者が債務整理をおこない、債務が減るあるいは免除された場合、保証人はその分の負債を全額支払わなければならなくなります 。
多くの場合は連帯保証人に負債残金を一括請求されるため、大きな負担を負わせることになるのです。
場合によっては、連帯保証人になっている方についても同時に債務整理の手続きを取ったほうが良いケースもありますのでご相談ください。
任意整理、個人再生、自己破産のそれぞれのデメリット
ここからは、任意整理と個人再生、自己破産のデメリットについて解説します。
それぞれに生じるデメリットは異なるため、詳しく見ていきましょう。
任意整理のデメリット
任意整理とは、債権者と交渉のうえ将来の利息や遅延損害金の返済を免除してもらったり、長期の分割払いに応じてもらったりして、余裕をもった支払いが可能になる状況を目指す手続きです。
一般的に、和解後の将来利息をゼロにしたうえで、3年から5年程度の分割で返済を目指します。
任意整理は、裁判所を介さずに進めるためスピーディに手続きを進められることや、連帯保証人に迷惑がかからないことも特徴です。
任意整理は対象とする債権者を自分で選択して手続きできるため、保証人がついている借金を対象から外しておこなうことで、保証人に迷惑がかかるのを避けることができます。
一方で、任意整理には以下のようなデメリットもあります。
任意整理の主なデメリット
- 元金は原則として減額できない
- 安定した収入がなければ手続きしてもらいにくい
- 希望の条件を聞き入れてもらえない可能性がある
- 一部将来利息カットが難しい会社が存在する
- 信用情報機関に情報がブラックリストとして登録される
任意整理では、借金の元金は減額されず、債権者の意思決定次第では返済期間を希望に沿って調整できない点には注意しましょう。
なお、裁判所を介さないことから法的義務は生じないため、債権者側が必ず交渉に応じてくれるわけではありません。
結果は交渉次第であることから大幅な借金減額が期待できず、債権者によってはまったく交渉に応じてくれない場合もあります。
個人再生のデメリット
個人再生とは、裁判所へ申し立てをして債務の大幅な減額を認めてもらい、原則3年から最長5年をかけて分割で支払う手続きです。
いくつかの条件をクリアすると住宅を手放さず手続きできるため、資産を守りながら債務整理がしたい方に適しています。
また、個人再生をしても自動車ローンを完済していれば車を手元に残せます。
個人再生は借金の元金も減額の対象になるため、返済負担を大幅に減らせる可能性があります。
しかし、個人再生には以下のようなデメリットが存在します。
個人再生の主なデメリット
- 手続きの対象となる債権者を選べない
- 個人再生をした事実が官報に掲載される
- 保証人に借金を肩代わりさせることになる
- 手続きが複雑で時間がかかる傾向がある
- 家族に内緒で手続きをすることは難しい
個人再生は返済負担を大幅に減らせる可能性がありますが、整理の対象を選ぶことはできません。
そのため、保証人付きの借金がある場合は、保証人に一括請求がいってしまう恐れがあります。
また、同一家計の収支全体を裁判所に報告する必要があるため、家族に秘密で手続きを進めることは難しい場合もあります。
任意整理では支払えないような多額の借金を抱えている、持ち家など処分したくない財産がある、保険外交員や警備員などに就いていて自己破産をおこなえないなどに該当する方に適しています。
自己破産のデメリット
自己破産とは裁判所に申し立てをして、債務の全額免除を認めてもらう手続きです。
借入の原因がギャンブルや浪費である場合は、免責不許可事由に該当し自己破産が認められないケースがあるものの、 裁判所で免責決定が出されれば税金などの非免責債権を除く全ての債務が免除されます。
債務が大きく返済の目処が立たない、あるいは生活保護の受給中により生活に必要最低限の収入しか得られない場合に適しています。
債務整理のなかでも自己破産に対してネガティブなイメージを抱いている方は多いかもしれませんが、人生を再スタートするうえで有効な手段といえるでしょう。
しかし、そんな自己破産にも以下のようなデメリットが存在します。
自己破産の主なデメリット
- 一定以上の価値がある財産が処分される
- 借金の理由によっては免除されない場合がある
- 周囲に知られやすい
- 保証人に借金を肩代わりさせることになる
- 職業や行動、郵便物に制限がかかる
自己破産は借金を帳消しにできる代わりに、債権者への返済に充てるために土地やマイホーム、貴金属や骨董品などの金銭的な価値が高い財産は処分されます。
また、自己破産の手続きを進めると全ての債権者に連絡がいくため、債権者の中に友人や知人が含まれていれば自己破産に踏み切っていることを知られてしまいます。
これらのデメリットをしっかりと理解したうえで、自己破産をするか慎重に検討してください。
こんなデメリットはない!債務整理に関するよくある誤解
債務整理には、デメリットとして考えられがちなことがいくつかあります。
間違った認識は債務整理を躊躇する原因にもなるため、解消しておきましょう。
【債務整理に関するよくある誤解】
- 債務整理をすると会社をクビになる
- 債務整理をすると戸籍に載る
- 債務整理をすると選挙権がなくなる
- 破産をすると海外旅行ができない
- 債務整理をすると引越しができない
自己破産をすると会社をクビになるという情報をネット上で目にすることがありますが、自己破産が原因で懲戒解雇になることは原則としてありません。
また、戸籍に載る、選挙権がなくなる、海外旅行や引越しができないなども全て誤解で、このようなデメリットはないため心配する必要はありません。
債務整理のデメリットについて知りたい場合の相談相手2選
債務整理のデメリットについては、弁護士もしくは司法書士に相談すると知ることができます。
どちらも借金問題に関する法律を熟知しているため、適切な方法で解決へと向かえるでしょう。
ここからは、弁護士・司法書士それぞれに相談・依頼することでどのようなサポートを受けられるか解説します。
1.弁護士
弁護士は、法律に関するあらゆるトラブルに対処できるため、個人再生や自己破産など債務整理の幅広い手続きをサポートしてもらえます。
また、訴訟や刑事事件などの裁判に代理人として対応することも可能です。高額な借金を抱えている、複数の債権者が絡む複雑な場合でもスムーズに対応してもらえるでしょう。
万が一、債権者から訴訟を起こされた場合でも弁護士なら適切に対処できるのもうれしいポイントです。
なお、債務の総額が140万円を超える場合は弁護士でなければ対応できません。
2.司法書士
司法書士は民事事件に対応しており、登記や遺言書の作成などの書類作成が主な業務ですが、中には債務整理を得意とする司法書士も存在します。
司法書士には、任意整理をはじめとする債務整理や過払い金の手続きをサポートしてもらえます。
しかし、債務額が大きい、あるいは個人再生や自己破産を検討している場合は司法書士は対応できません。
1社あたりの債務額や過払い金額が140万円を超える場合や、簡易裁判所での訴訟がもつれた場合などは司法書士が対応できないケースもあります。
一般的に、司法書士のほうが弁護士よりも費用を抑えて依頼可能ですが、裁判所とのやり取りを任せることもできますし、万が一を考えると弁護士に依頼するのが得策といえるでしょう。
さいごに|債務整理にはデメリットがあることもよく理解しておこう
本記事では、債務整理のデメリットについて解説しました。
多額の借金を抱えている場合、今後の人生をよりよいものにするためにも債務整理が必要な可能性はゼロではありません。
しかし、債務整理にはメリットだけでなくデメリットがあることについても理解しておきましょう。
債務整理をおこなうと日常生活にどう影響するのか、自身の借金状況ではどの債務整理が適切なのか、保証人への迷惑を少しでも軽減させるにはどうすればよいのかを押さえておいてください。
また、債務整理を進める際に弁護士と司法書士が対応できる範囲の違いを理解することも欠かせません。
借金問題を解決して前向きな人生を送るためにも、早い段階で弁護士への相談をおすすめします。