任意整理
債務整理と任意整理の違いは簡単!自分にあった方法を選んで負担を減らそう
2024.11.22
債務整理を考えている方の中には、このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
債務整理とは、借金を減額または免除してもらう法的手続き全般のことを指します。
債務整理には3種類の手続きがあり、任意整理もその一つです。
本記事では、債務整理とよく混同されやすい任意整理について、メリットやデメリットを詳しく解決します。
また、任意整理をおすすめできる方や、任意整理を避けるべき方の特徴についても紹介するので、任意整理をしようか迷っている方はぜひ参考にしてください。
まずは、債務整理と任意整理の違いについて簡単に解説します。
任意整理は、複数ある債務整理の手段の中の一つです。
債務整理とは、借金を減額・免除してもらう手続き全般を指し、その中の一つとして任意整理が含まれています。
任意整理以外にも、法的な借金減額手段として「個人再生」「自己破産」があり、これら3つを合わせたものを総称して「債務整理」と呼びます。
言葉自体は似ていますが「債務整理=任意整理」というわけではないので理解しておきましょう。
任意整理とは、債権者と直接交渉し、借金にかかる利息のカットや分割をしてもらう手続きのことです。
自分自身で債権者に連絡して任意整理を進めるのも可能ですが、弁護士や司法書士などの専門家を通じて交渉を進めるのが一般的です。
消費者金融やカード会社のリボ払いなどの年利は年15%~18%ほどと高いため、利息だけでもカットできれば借金の返済負担を大幅に減らせる可能性があるでしょう。
任意整理によって利息をカットしてもらえたあとは、3年間〜5年間の期間で借金の元本を返済します。
とはいえ、お金を貸して利息をつけて返してもらうことで利益を上げている貸金業者が、どうして任意整理による利息のカットに応じてくれるのか疑問に感じる方もいるかもしれません。
たしかに、任意整理に応じること自体に貸金業者にとってのメリットはありません。
しかし、任意整理に応じずにそのまま返してもらえるように待っていると、お金を貸している相手が個人再生や自己破産などのより強力な債務整理を進めてしまい、利息だけでなく元本も回収できなくなるリスクがあります。
そのため、貸金業者は「利息は大目に見るから、せめて元本だけでも払ってほしい」という苦肉の策として、任意整理による利息のカットに応じてくれるわけです。
ただし、貸金業者側の経営状況等から、利息のカットには成功しない場合もあります。
債務整理の中には任意整理以外にも個人再生と自己破産が含まれます。
ここでは、個人再生や自己破産について、任意整理との違いを比較しながら簡単に紹介します。
個人再生とは、裁判所に申し立てることで最大で10分の1にまで借金を減額できる手続きです。
任意整理は、弁護士などの専門家を通じて債権者と交渉して利息のカットや分割をしてもらう手続きですが、個人再生は裁判所が間に入り、民事再生法という法律に則って元本も含めた借金減額をおこないます。
また、個人再生は「住宅ローン特則」という決まりによって、ローン返済中の持ち家を残しながら借金を減額できる点が大きな特徴です。
個人再生では利息だけでなく元本も減額できるので、任意整理と比較すると減額効果は高い手続きといえるでしょう。
一方で、裁判所を通す分、手続きがやや複雑で費用や期間がかかるほか、整理対象にとなる借金を選ぶことができません。
そのため、保証人がついている借金を背負っている場合は保証人に迷惑がかかるデメリットがあります。
自己破産は個人再生と同様、裁判所を通した手続きです。
自己破産を裁判所に申し立てると、税金や保険料などの一部をのぞいてほぼ全ての債務を免除してもらえる可能性があります。
利息しかカットできない任意整理や、最大でも10分の1までしか元本を減額できない個人再生と比較すると、自己破産は借金の返済義務自体が帳消しになる点がメリットです。
借金問題の解決方法としては、最も強力な手続きといえるでしょう。
ただし、一定以上の価値がある財産は没収されてしまったり、手続き中は一部の職種で資格制限がされたりなど、リスクも大きい手続きです。
自己破産は、任意整理や個人再生しただけでは借金問題が解決しないという方にとってはありがたい手続きですが、デメリットについてもしっかり理解したうえで選択する必要があるでしょう。
任意整理をするメリットは、主に以下の5つです。
それぞれのメリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。
任意整理は、同居している家族など周囲の人たちに、債務整理をしたことや借金自体について知られるリスクを抑えられる点が魅力です。
個人再生や自己破産は、裁判所を通す手続きである分、家に届く裁判所からの通知や書類の準備などによって家族にバレてしまう可能性が高いでしょう。
一方で、任意整理は自宅に裁判所からの通知が届くことがないうえ、手続きのほとんどを弁護士に任せられるため、家族にバレるリスクは少ないといえます。
また「同居している家族に借金について知られたくない」と要望を伝えれば、弁護士からの自宅への書類の送付も法律事務所の名前ではなく個人名で送るなど、家族にバレないような配慮をしてくれるはずです。
任意整理を弁護士に依頼すると、債権者からの支払いの催促を止められるメリットもあります。
任意整理を依頼された弁護士は、債権者に対して「受任通知」という手紙を送ります。
受任通知とは、弁護士が債権者に対して「私がこの人の任意整理を担当することになったので、今後は私に連絡してください」と知らせる手紙のことです。
受任通知を受け取った債権者は、債務者に対して取り立てや連絡をしてはいけないと貸金業法第21条によって定められています。
そのため、任意整理を弁護士に依頼すれば債権者からの連絡のストレスからも解放されるでしょう。
任意整理は、保証人に迷惑をかけずに借金の減額が可能です。
任意整理などの債務整理によって減額・免除されるのは、あくまで債務整理をした本人の債務のみです。
そのため、保証人がついている借金について債務整理した場合は、減額された分の借金が保証人に請求される可能性が高いです。
個人再生や自己破産は、整理する対象の借金を選べず、全ての借金について減額手続きをしなくてはならないため、保証人がついている借金がある場合は保証人に迷惑がかかる恐れがあります。
一方で、任意整理は整理する対象の借金を選べるため、保証人がついている借金について任意整理の対象から外すことによって、保証人へ迷惑をかけるのを防げるのです。
家や車など、手元に残したい財産を手放さずに済むのも任意整理のメリットです。
個人再生や自己破産の場合、手続きの関係上、以下のような財産を手放さなくてはなりません。
手続き | 手放す必要のある財産 |
個人再生 | ローンが残っている自動車・バイク |
自己破産 | 査定額が20万円以上の財産(東京地裁の場合) |
一方で、任意整理は手放したくない財産については、整理対象から外すことで手元に残すことが可能です。
任意整理は、個人再生や自己破産とは異なり整理する借金を選べます。
保証人の有無や、手放したくない財産があるかどうかなど、一人一人の状況や希望に合わせて柔軟に借金を減額できるのが任意整理の大きなメリットといえます。
任意整理のデメリットを理解していないままで手続きを進めてしまうと「任意整理をしなければよかった」と後悔する恐れがあるため注意しましょう。
任意整理のデメリットは、主に以下の6つです。
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
任意整理をすると、いわゆる「ブラックリスト」に登録されてしまいます。
ブラックリストとは、個人の借金に関する情報を保管している信用情報機関に「任意整理をした」という事故情報が記録された状態のことを指します。
カード会社や金融機関などは、信用情報機関の情報を元に審査をするため、ブラックリストになっている間は審査に落ちやすくなってしまいます。
最長で任意整理によって減額した借金を完済してから5年間はブラックリストとなるため、ローンやクレカが使えないと困るという方は慎重に判断すべきです。
また、個人再生や自己破産などほかの債務整理でも、やはり一定期間ブラックリストになってしまうことを覚えておきましょう。
ショッピングローンやリボ払いなど、高額なものを購入してローンを返済途中の場合は、任意整理をすると購入したもの自体を回収されてしまう恐れがあります。
ローンの返済途中に任意整理によってローンを減額すると、契約通りの料金を払わなかったことになるため、契約違反として商品を回収されてしまう可能性があるのです。
とくに、自動車やローンには「所有権留保」という決まりがあり、ローンを完済するまでは所有権が債権者にあるため、商品を回収される可能性が高いでしょう。
パソコンや電子機器などの場合も、契約書の内容によっては任意整理で回収される恐れがあるため、任意整理の対象にするものは弁護士の助言を参考にして選ぶのが得策です。
任意整理をした借金に連帯保証人がついている場合は、連帯保証人が代わりに債務を負うことになるケースが多いです。
連帯保証人とは、契約者が債務を負えなかった場合に代わりに支払う義務を持つ立場であり、借金について契約者本人と同じ責任を持っています。
任意整理によって減額されるのは、あくまで任意整理をした契約者本人の債務のみであるため、減額された分の支払いは連帯保証人が負わなくてはいけません。
そのため、任意整理をする際は連帯保証人・保証人の有無をしっかり確認し、保証人となっている家族に迷惑をかけないようにする必要があります。
任意整理は、債権者と交渉のもと借金の利息のカットや分割をしてもらう手続きです。
債権者によっては、交渉に応じてくれず、任意整理が失敗に終わる可能性もあります。
とくに、以下のような債権者との交渉は難航するケースが多いでしょう。
交渉がうまくいくかどうかは、弁護士の腕によっても変わります。
そのため、確実に借金を減額するためには借金問題に注力している法律事務所に相談するのがおすすめです。
任意整理は、借金の利息のカットや分割をしてもらったうえで、3年~5年の期間で元本の完済を目指す手続きです。
場合によっては、任意整理後の毎月の返済額があまり変わらないケースや、むしろ高くなる可能性もあるので注意しましょう。
任意整理前 | 任意整理後 | |
借入額 | 300万円 | 300万円 |
金利 | 15% | 0% |
返済期間 | 60ヵ月 | 36ヵ月 |
毎月の返済額 | 71,369円 | 83,333円 |
返済総額 | 約428万円 | 300万円 |
このように、任意整理によって利息はカットできたものの、当初の予定よりも早期に完済するように求められたことにより、毎月の返済負担は増えてしまうケースもあります。
任意整理によって返済負担が苦しくなると、結局滞納してしまい個人再生や自己破産を選ばなくてはいけなくなる可能性もあるため、慎重にシミュレーションしておくのが大切です。
任意整理での債権者との交渉でなかなか和解に至らない場合は、債権者から訴訟を起こされる可能性があります。
債権者から訴訟を起こされると手続きが長引くだけでなく、債権者が勝訴すると財産の差し押さえを受ける恐れもあります。
任意整理が訴訟まで発展するケースは多くありませんが、任意整理を依頼した弁護士との連絡を怠るなど、交渉が長引く要因を自分で作らないようにしましょう。
以下の4つのいずれかに当てはまる方は、任意整理による借金問題の解決がおすすめです。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
任意整理は、ほかの債務整理と比較してリスクが少ない代わりに、減額対象になるのは借金の利息や遅延損害金のみです。
そのため、安定した収入があり、利息だけでもカットされれば借金の完済が目指せそうな方は任意整理の検討がおすすめです。
反対に利息をカットされても返済の見込みが経たない方は、別の方法を検討するのがよいでしょう。
任意整理が向いているかどうかに、借金額による明確な基準は存在しません。
しかし、借金額がそれほど高くない方の場合は、個人再生や自己破産よりも任意整理を選んだほうがいい可能性が高いでしょう。
消費者金融が貸し出せる金額は年収の3分の1までと制限する「総量規制」というルールがあるように、一般的に「年収の3分の1程度の借金があると、計画的な完済は難しい」といわれています。
年収の3分の1程度の借金を背負ってしまった場合は、個人再生や自己破産によって借金の元本ごと減額または免除してもらう必要があるでしょう。
逆に、年収の3分の1未満の借金であれば、任意整理で利息さえカットすれば計画的な返済が可能となる可能性が高いです。
たとえば、年収が600万円程度の方であれば、200万円以下の借金は任意整理による解決が現実的な選択肢となるでしょう。
任意整理は、手続きの中で過払い金を取り戻せる可能性もあります。
過払い金とは、「消費者金融に払いすぎたお金(利息)」のことです。
2006年以前に消費者金融からお金を借りていた方は、過払い金を取り戻せる可能性があるため、任意整理を検討する価値があるでしょう。
個人再生や自己破産だと、全ての借金が減額・免除の対象となるため、ローン返済中の自動車や持ち家など、財産の一部を処分しなくてはならない可能性があります。
一方で、任意整理は整理対象の借金を選べるため、都合の悪いものは整理対象から除外するなどの工夫をすれば、財産を処分しなくて済みます。
ローンを払い終えていない車や持ち家など、失いたくない財産がある方は、任意整理による借金減額がおすすめです。
以下のいずれかに当てはまる方は、任意整理ではなく個人再生や自己破産を選んだほうがよいでしょう。
それぞれのケースについて、以下で詳しく解説します。
任意整理は、借金の利息のカットや分割をしてもらったうえで3年〜5年での完済を約束する手続きです。
そのため、安定した収入を得られておらず、3年〜5年での分割払いで返済できそうにない方は任意整理はするべきではないでしょう。
具体的には、借金の元本が200万円であれば、3年〜5年での分割払いだと月々の返済額は3.3万円〜5.6万円程度となります。
任意整理をする前に、現在の収入から家賃などの生活費を差し引いたうえで、継続して返済が可能かどうかよくシミュレーションしましょう。
任意整理をすると、最長で「減額した借金を完済してから5年間」はブラックリストとなりクレカやローンが使えなくなります。
そのため、借金返済から5年以内に住宅や自動車の購入のためにローンを組もうと考えている方は、任意整理が向かない場合があります。
任意整理は、弁護士に依頼するのにも債権者一社あたり5万円〜10万円程度の費用がかかります。
そのため、任意整理によって10万円程度の利息が減額できないと損になってしまうでしょう。
弁護士に相談する際に、任意整理を依頼した際にかかる弁護士費用と、実際にカットできる可能性がある利息の金額をよく確認してください。
任意整理は、借金の利息や遅延損害金のみをカットする手続きなので、奨学金や住宅ローンなどの金利が低い借金の解決には適していません。
奨学金の返済に困っている方は、まずは日本学生支援機構に相談して支払い猶予や免除の措置をとってもらえないか検討するべきです。
また、住宅ローンなど金利が低い借金の返済が苦しい場合は、住宅ローンの借り換えや返済計画の見直しなども検討しつつ、ローン会社に相談してみましょう。
「借金を返すためにほかの会社からお金を借りている」など、すでに多重債務に陥っている方は、任意整理だけでは問題が解決しない可能性が高いです。
多重債務に陥っている方は、すでに元本が膨れ上がっており、任意整理をしても十分な減額効果が得られないでしょう。
また、複数社と交渉する必要があり、時間も費用もかかってしまうリスクもあります。
すでに多重債務に陥っている方は、弁護士と相談のうえ、個人再生や自己破産など任意整理以外の選択肢を検討すべきでしょう。
任意整理を含む債務整理にかかる費用の相場は、以下のとおりです。
手続き名 | 費用相場 |
任意整理 | 債権者1社あたり5万円〜10万円 |
個人再生 | 30万円〜80万円 |
自己破産 | 30万円〜100万円 |
任意整理は、個人再生や自己破産とは異なり裁判所に納める費用などがないため、発生する費用は弁護士に支払う報酬だけとなります。
しかし、整理対象にする債権者が増えるほど、交渉の手間もかかるため費用も膨らんでしまいます。
債権者の数や借金の総額などに応じて、適した債務整理を選びましょう。
それぞれ債務整理にかかる費用の内訳や、費用を支払えない場合の対処法については下記記事を参考にしてください。
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本記事では、債務整理の一種である任意整理について、メリット・デメリットや向いている人の特徴などを紹介しました。
合法的に借金を減らせる手続きである債務整理には、任意整理以外にも個人再生や自己破産があり、借金や収入の状況によってどの手続きを選ぶべきかは異なります。
債務整理の経験が豊富な弁護士であれば、一人一人の状況に合わせて適切な解決策を提案してくれるはずです。
自分に向いている債務整理を知りたい方は、まずは専門家である弁護士に相談してみましょう。