自己破産
自己破産した後の生活はどうなる?よくある不安と知っておきたいポイント
2024.11.28
借金の返済が難しくなり、自己破産を考えている方の中には、仕事への影響が気になる方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、自己破産をすることで一部の仕事には制限がかかり、職に就けなくなる場合があります。
そのため、どのような職業について制限がかかるのか、自分の仕事には影響がないのかをしっかり理解しておくことが大切です。
本記事では、自己破産により制限される仕事について解説します。
あわせて、仕事を再開できるタイミングや必要な手続きについても説明するので、ぜひ参考にしてください。
裁判所に自己破産の申し立てをおこない、破産手続きの開始が決定すると破産者になります。
特定の仕事をおこなっている人の場合、破産者になると法律の定めによって一定期間は仕事に就けなくことがあるので注意しましょう。
とくに、一部の職業については制限がかかると資格の登録ができなくなったり、取り消されてしまったりするため、影響は甚大です。
では、具体的にどのような仕事が制限の対象となるのでしょうか。
以下にて、自己破産によって制限を受ける仕事を紹介します。
弁護士や司法書士などの士業に就いていた場合、自己破産をすると制限を受けます。
自己破産をした場合は各士業における欠格事由に相当し、自己破産を申し立てて手続き開始決定がなされ、復権するまでは士業の登録が取り消され、新たに登録すること自体もできなくなります。
一定期間は該当の仕事に就くことができないため、日常生活に大きな支障をきたしかねません。
なお、自己破産をした際に制限を受ける士業の具体例は以下のとおりです。
生命保険募集人や警備員などの職業に従事する方は、自己破産申し立てをして開始決定から復権までの間は就労できません。
募集人資格に関しても、破産手続きの開始から自己破産の許可が降りて、免責決定になるまでの期間は制限されてしまいます。
生命保険募集人や警備員などの一部資格保有者は他人の財産を預かる可能性があるため、法律により破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者は登録ができないと定められているのです。
また、一部職種は破産手続き開始決定があったことを都道府県知事などに報告する義務があり、破産管財人が破産者に代わって廃業届を提出します。
廃業届が提出されると免許や資格、許可などが取り消されるため、資格が必要な仕事も一定期間はおこなうことができません。
自己破産による制限は、会社の取締役や執行役、監査役などの会社役員も対象となるため注意しましょう。
会社役員は会社との間で委任契約を締結しており、自己破産は委任の終了事由に該当するため、自己破産をすることにより会社との委任契約は終了します。
会社役員には自己破産による欠格条項はないものの、自己破産申し立てをおこない開始決定がされると民法により委任契約が終了するため、それに伴い自動的に退任となるのです。
自己破産をしたいものの、仕事ができなくなるのは避けたいという方は少なくないでしょう。
今後の人生において、仕事ができない可能性を考えると自己破産の決断は難しいところです。
しかし、ほとんどのケースでは自己破産の手続きが終わると、以前と同じように働くことができます。
まずは、以下で自己破産手続きの流れを確認しましょう。
自己破産手続きの流れのとおり、仕事の制限は免責許可決定の確定後に解除されます。
自己破産手続きをおこなったとしても、免責許可決定により債務を帳消しにしてもらえるため、多くの場合は免責許可決定の確定をもって職業に関する制限も解除されるのです。
多くの場合、仕事の制限を受ける期間は自己破産の手続き中のみであり、免責許可決定が確定して復権すると今までどおりの職種に従事できます。
ただし、自己破産の申し立てから免責決定までの期間は数ヵ月あり、すぐに復職できるわけではありません。
会社の取締役などであればすぐに復帰できますが、複雑なケースの場合は半年以上かかることも考えられます。
なお、自己破産の申し立てから復帰までの目安期間は、次の表を参考にしてください。
同時廃止 | 約2ヵ月 |
管財事件 | 約2ヵ月〜6ヵ月 |
自己破産手続き中に制限される職種に就いている方は、職場内での仕事内容の変化により、自己破産をしたことが周囲に知られる可能性が非常に高いです。
また、自己破産後はクレジットカードを作成できない、ローンを組めないといった制限があるため、会話の中で知られてしまうリスクもゼロではありません。
自己破産手続き中は休職をする、あるいは資格が不要なポジションで働くことは可能です。
しかし、復職したものの周りに噂が広まってしまったり、心配されて腫れ物に触るかのような扱いになったりと、職場での居心地が悪くなり自主退職をしてしまう方は決して珍しくありません。
とはいえ、自己破産が原因で退職した場合でも資格や免許を再申請することで、同じ職種への再就職が可能です。
自己破産により仕事を制限されると、法律によって一時的に資格が使えなくなります。
そのため、すでに資格を取得し登録している場合など、一定の資格については自己破産をおこなったことを報告しなければなりません。
また、自己破産手続きが完了した際には、資格の再登録や再任が必要なケースもあるでしょう。
ここからは、制限が解除されたあとに必要な手続きについて解説します。
宅地建物取引士の資格制限が解除されると、再登録をおこなう必要があります。
宅地建物取引士などの資格を持っている場合は、破産手続き開始決定を受けてから30日以内に登録している都道府県知事に届け出なければなりません。
また、自己申告により宅地建物取引士証も返納するため、仮に個人で宅建業を営んでいる場合は宅建業の免許も取り消しとなります。
自己破産手続きが完了し、免責決定が出たあとは再登録をおこないましょう。再登録の手続きにも1~2か月程度はかかります。
なお、取得した資格自体が失われるわけではないため、再度試験を受ける必要はありません。
自己破産をしても宅地建物取引士の試験を受けることはできますが、免責許可を受けて復権していなければ試験に合格しても宅地建物取引士として登録を受けることはできないため注意してください。
会社役員は委任契約が終了して地位を失った場合でも、株主総会で再任されれば就任できます。
会社の取締役や監査役は自己破産により委任契約が終了しますが、自己破産自体は会社役員であることの欠格事由ではありません。
そのため、破産手続き中でも株主総会で再任されれば、同じ役職に留まることが可能です。
また、仮に取締役が自己破産をしても会社や会社の債権者に個人の財産を奪われることはありません。
取締役といっても、自己破産をすることだけで会社に対して特別な責任を負うわけではないのです。
自己破産を検討しても、仕事に対する不安がありなかなか決断できない方は多いでしょう。
ここからは、自己破産と仕事に関するよくある質問を紹介します。
自己破産自体は法律上の解雇理由にならないため、会社をクビになりません。
労働契約法第16条によると客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効になると規定されています。
自己破産による解雇は合理的な理由ではないうえ、社会通念上相当とは認められない可能性が高いでしょう。
しかし、生命保険募集人などは所属する会社の就業規則や雇用契約書で、自己破産した者は解雇すると定められている場合があります。
仮に会社規定に解雇事由として記載されていても、それ自体が無効と判断されるケースは少なくありませんが、制限対象となる職業の場合は自己破産が合理的な理由になる可能性がゼロとはいえません。
自己破産が原因で仕事を解雇になる可能性がある場合は、早めに弁護士に相談して慎重に対応する必要があるでしょう。
また、公務員も基本的に自己破産を理由に解雇されることはありませんが、公正取引委員会や教育委員、人事院の人事官などの一部委員に関しては職を失うことがあります。
しかし、それ以外の職業に関しては自己破産により解雇される可能性は低いです。
自己破産をしても、仕事道具を差し押さえられることはありません。
たとえば、自動車を所有している場合は債権者は自動車を差し押さえることができ、それをお金に換えて配当を受けられますが、民事執行法131条により仕事に欠くことができない道具に関しては差し押さえ禁止財産と定められています。
しかし、ローンで自動車を購入していると信販会社が所有権を有しているため、返済が見込めない場合は信販会社が車を引き上げる権利を持っていることがあります。
そのため、自己破産とは別に担保権の行使として引き上げられることがあることを覚えておきましょう。
自己破産の経験があっても資格の取得は可能です。
自己破産の手続き中でも司法試験・司法書士試験・税理士試験・宅建といった試験の受験資格には影響しないため、自由に受験できます。
また、たとえ手続き中に試験があり合格した場合でも、資格が剥奪されることはありません。
しかし、自己破産は欠格事由となり、仮に試験を合格しても自己破産の手続きが終わるまでは資格の登録ができません。
資格を登録できるのは、免責許可決定を受け復権したあとになります。
本記事では、自己破産により制限される仕事や再開できるタイミング、必要な手続きなどについて解説しました。
自己破産は全ての借金を帳消しにできるため、経済的な面から考えると最終手段として有効です。
しかし、期間限定ではあるものの現在の仕事に制限がかかる場合があることを忘れてはいけません。
免責決定を受けるまでの約3ヵ月から半年間は、士業や警備員などは職を失ってしまいます。
とはいえ、免責決定後には制限が解除されるため、自己破産により一生今の仕事ができなくなるわけではなく、かつ自己破産が原因で解雇になることもほとんどありません。
将来就けない職業や取得できない資格もないため安心してください。
なお、資格制限にかかる職業に就いている、または借金問題で悩んでいる場合は債務整理を得意とする弁護士に相談しましょう。
弁護士に依頼することで大きな安心が得られ、精神的な負担も軽減します。
初回相談無料を実施している法律事務所は数多くあるため、それらを活用して弁護士から有効なアドバイスを受けましょう